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私はマデリンと別れた後、いろいろと今までのことを考えました。
思えば私は長いことマデリンの愚痴聞き役しかしていない気がします。
マデリンの愚痴を聞き、慰め、励ましの言葉を掛けるだけの役割。
私の話を聞いてくれたことがあったかしら?
私の都合を聞いてくれたことがあったかしら?
マデリンといて何か楽しいことがあった?
マデリンの話を聞いてあげるのは私しかいないと思わされていたけれど、単にマデリンは人を選んでいただけなのかもしれません。
リリアナ達とは華やかな楽しい関係を。
夫や義母とは従順で穏やかな関係を。
そしてその人達への不満を全て私にぶちまけてマデリン自身はスッキリする。
でも私は、誰にも言わないでという約束を律儀に守り、マデリンの愚痴を溜め込んでもう爆発寸前です。
このうえ、不倫の秘密を一緒に負担してあげることは出来ません。このままでは私が壊れてしまいそう。
私はその夜、思い切って全てをブライアンに打ち明けました。
聞き終わった後ブライアンは静かに言いました。
「本当の友達なら不倫は止めるべきだよ」
「でも結婚生活が辛くて心の病気になってしまうって……」
「夫に何か原因があったとして、それで不倫をしていいという理由にはならない。それならば離婚をして、一人になってから堂々と恋愛をすればいいんだ。夫の財力と若い彼氏とのトキメキ、それを両方欲しがる欲張りな人間としか僕には思えない」
「あ……」
私は目から鱗が落ちたような気がしました。
「それに、もし君がマデリンを容認するのなら、僕は君もマデリンと同じく不倫を是とする人間なのだと思うだろう。今の法律のもとでは不倫は罪なんだから」
いつの間にか私の目からは涙が流れていました。
「ありがとうブライアン。私が間違っていたわ。友達なら全て受け入れてあげなければと思っていたの。でも私とマデリンの関係は既に対等な友達ではなかったのね。これはただの依存なんだわ」
私はマデリンと話をしようと思いました。きっちりと、最後の話を。
翌週、私は初めて自分から連絡を取り、マデリンと会うことにしました。
マデリンはいつものように遅刻して来ました。
「セシリア、連絡くれて嬉しいわ! あなたに話したいことがあったの」
そう言ってすぐに夫や義母の愚痴を言い始めました。
「待って、マデリン。私、あなたに話があるの」
「なあに? それより、早く彼とのデートの話も聞いてもらいたいわ」
私はいつものように曖昧な笑顔を作ることなく、真っ直ぐにマデリンを見つめて言いました。
「マデリン。あなたが不倫を続けると言うのなら、私はもうあなたとは会わないわ」
「何ですって? 何言ってるの、セシリア? 」
「何って、言った通りよ。私は不倫は許されることではないと思っているの。だから、あなたに不倫をやめて欲しいと思ってる。それが出来ないのなら、もう友達ではいられないわ」
「酷いわ、セシリア! 私がどんなに辛い生活を送っているか、知ってるでしょう? それに不倫じゃないわ。純愛なのよ。私達間違っていないわ」
「ならば先に離婚するべきよ。今のあなた達は完全に不倫だわ。私はそんなあなたとは付き合いたくないの」
マデリンは顔を真っ赤にしました。
「わかったわ! あなたがそんな人だと思わなかった。私の気持ちをわかってくれていると思っていたのに、偽善者だったのね! 私こそ、もう会いたくないわ。二度と私を呼び出さないで!」
自分のお茶代をテーブルに叩き付けると、足音荒く店を出て行きました。
(終わった……)
私は大きく息を吐き出しました。何故だか、とても肩が軽くなった気がします。
(結局、マデリンの方では私のことを友達とは思っていなかったのね。都合のいい人間だっただけ。でも偽善者というのは当たってるわね。私は、ただ『いい人』でいたかっただけなのだから)
私はテーブルの上に散らばったお金を集めながら、十年に及ぶ『いい人』生活が終わったことに喜びを感じていました。
思えば私は長いことマデリンの愚痴聞き役しかしていない気がします。
マデリンの愚痴を聞き、慰め、励ましの言葉を掛けるだけの役割。
私の話を聞いてくれたことがあったかしら?
私の都合を聞いてくれたことがあったかしら?
マデリンといて何か楽しいことがあった?
マデリンの話を聞いてあげるのは私しかいないと思わされていたけれど、単にマデリンは人を選んでいただけなのかもしれません。
リリアナ達とは華やかな楽しい関係を。
夫や義母とは従順で穏やかな関係を。
そしてその人達への不満を全て私にぶちまけてマデリン自身はスッキリする。
でも私は、誰にも言わないでという約束を律儀に守り、マデリンの愚痴を溜め込んでもう爆発寸前です。
このうえ、不倫の秘密を一緒に負担してあげることは出来ません。このままでは私が壊れてしまいそう。
私はその夜、思い切って全てをブライアンに打ち明けました。
聞き終わった後ブライアンは静かに言いました。
「本当の友達なら不倫は止めるべきだよ」
「でも結婚生活が辛くて心の病気になってしまうって……」
「夫に何か原因があったとして、それで不倫をしていいという理由にはならない。それならば離婚をして、一人になってから堂々と恋愛をすればいいんだ。夫の財力と若い彼氏とのトキメキ、それを両方欲しがる欲張りな人間としか僕には思えない」
「あ……」
私は目から鱗が落ちたような気がしました。
「それに、もし君がマデリンを容認するのなら、僕は君もマデリンと同じく不倫を是とする人間なのだと思うだろう。今の法律のもとでは不倫は罪なんだから」
いつの間にか私の目からは涙が流れていました。
「ありがとうブライアン。私が間違っていたわ。友達なら全て受け入れてあげなければと思っていたの。でも私とマデリンの関係は既に対等な友達ではなかったのね。これはただの依存なんだわ」
私はマデリンと話をしようと思いました。きっちりと、最後の話を。
翌週、私は初めて自分から連絡を取り、マデリンと会うことにしました。
マデリンはいつものように遅刻して来ました。
「セシリア、連絡くれて嬉しいわ! あなたに話したいことがあったの」
そう言ってすぐに夫や義母の愚痴を言い始めました。
「待って、マデリン。私、あなたに話があるの」
「なあに? それより、早く彼とのデートの話も聞いてもらいたいわ」
私はいつものように曖昧な笑顔を作ることなく、真っ直ぐにマデリンを見つめて言いました。
「マデリン。あなたが不倫を続けると言うのなら、私はもうあなたとは会わないわ」
「何ですって? 何言ってるの、セシリア? 」
「何って、言った通りよ。私は不倫は許されることではないと思っているの。だから、あなたに不倫をやめて欲しいと思ってる。それが出来ないのなら、もう友達ではいられないわ」
「酷いわ、セシリア! 私がどんなに辛い生活を送っているか、知ってるでしょう? それに不倫じゃないわ。純愛なのよ。私達間違っていないわ」
「ならば先に離婚するべきよ。今のあなた達は完全に不倫だわ。私はそんなあなたとは付き合いたくないの」
マデリンは顔を真っ赤にしました。
「わかったわ! あなたがそんな人だと思わなかった。私の気持ちをわかってくれていると思っていたのに、偽善者だったのね! 私こそ、もう会いたくないわ。二度と私を呼び出さないで!」
自分のお茶代をテーブルに叩き付けると、足音荒く店を出て行きました。
(終わった……)
私は大きく息を吐き出しました。何故だか、とても肩が軽くなった気がします。
(結局、マデリンの方では私のことを友達とは思っていなかったのね。都合のいい人間だっただけ。でも偽善者というのは当たってるわね。私は、ただ『いい人』でいたかっただけなのだから)
私はテーブルの上に散らばったお金を集めながら、十年に及ぶ『いい人』生活が終わったことに喜びを感じていました。
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