前世は大聖女でした。今世では普通の令嬢として泣き虫騎士と幸せな結婚をしたい!

月(ユエ)/久瀬まりか

文字の大きさ
10 / 63

アンドリュー王子の訪問

しおりを挟む
「ねえメラニー、やっぱりドレスの準備が先かしら」

 結婚の準備もいろいろあるが、なかでも楽しいのはドレスやアクセサリーを揃えることだ。

「そうですねえ。ウエディングもですが、既婚婦人用のドレスもたくさん作っておかなければいけませんね」

「あら。そうだったわ……そうね、可愛いドレスは今しか着られないのね。髪も、結婚したらずっと纏めておかないといけないのよね?」

「そうですとも。少女みたいにふわふわと下ろしていられるのもあと八ヶ月ですよ」

 既に結婚して子供もいるメラニーがからかう。いつまでも少女気分だ、と言いたいのだろう。

 ぷーっと口を尖らせた私はメラニーに聞きたいことがあったのを思い出した。

「ねえメラニー、その……キスって結婚式で初めてするのよね?」

「そうですねえ、アイリス様はそうなりますかね。私たちの身分では式なんて挙げませんからね、気にせず先にしてましたよ」

「ええ! そうなの? メラニー!」

「そりゃあそうですよ。他の令嬢方だって、内緒にしてるだけでみなさんなさってますよ。アイリス様が天然記念物並みの乙女なだけです」

 知らなかった……七十年も乙女をやってたから、てっきりみんなそうだと思っていたけれど。今の女の子は進んでるの?!

(だったら、我慢しないで先に進んでも良かったのね……そしたら聖女の力だって失くすことが出来たのに)

 いやいや、きっとエドガーはそんな女の子は嫌いに違いない。手を取るだけで赤くなってしまうんだもの。
 私は、前世でも傷を癒すためにいろんな人の手を取り続けていたから、それだけは慣れているのだ。

(ここまできたら式まで待つ……? いや、もしいい雰囲気になったら流れでキスくらい……)

などと考えていると、ドアがノックされ執事がうわずった声で私を呼んだ。

「アイリス様! 第二王子殿下がお見えになりました。アイリス様にお会いしたいと」

「へ?!」

 思わず変な声が出た。あの王子がなぜ? 嫌な予感はするけど、相手は王族。会わないわけにはいかない。

「わかりました。お父様もお兄様も今いらっしゃらないのよね? 私が応対しますから、客間にお通しして」

 それから急いで支度をし、客間へ向かった。

「お待たせいたしました、アンドリュー殿下」

「こちらこそ、突然訪れる無礼を許してくれ。もう一度、君に会って確かめたいことがあって」

「確かめたいこと……何でしょうか?」

 王子は壁際に控えるメラニーをチラッと見て、コホンと咳払いをした。席を外せ、ということだ。
 
 メラニーはどうしたものか思案していたが、私が頷くと静かに退室して行った。

「実は……」

 ゆっくりと近づいてきた王子は、パッと一歩近寄ると同時に懐から短剣を取り出し、剣を持った手を振り上げて私の顔を斬りつけようとした。

「きゃあっ……!」

 驚いた私はつい、防御してしまった。手から光が溢れ出し、王子の足が止まる。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います

黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。 レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。 邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。 しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。 章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。 どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。 表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

処理中です...