俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
222 / 288
第十八章 VS傀儡君主

第222話 チュートリアル:GARO

しおりを挟む
 それは突如として起こった。

 俺が次元ごとキングレオを斬り、空間がズレると同時に撃破を確信した。だがしかし、空間が元に戻ろうとする作用と同じ風に、縦真っ二つにしたキングレオが逆再生の如く元に戻った。

幻霊霧剣ファントム・フォグ・ソードの斬撃が効いていない……)

 次元を絶つ事のできるファントム・フォグ・ソード。まともにくらえば一溜りどころか勝負を決するチート剣だというのに、空間ごと再生したキングレオには通用しなかった……。単純に、俺の力不足だという事だ。

 ――ブン

 音を立ててキングレオの鼻が奥へと押し込まれた。するとルービックキューブを解く様に全体が駆動するとレオの顔が開き、まばゆい光が俺を射した。

 眩しすぎる光。しかしファントム・アイで見る光景は眩しさなどではなく、絵具を撒き散らしてぐちゃぐちゃにした光景。

 その中心には、一つの影があった。

 黄金の鎧はエルドラドを想起させるけど、こっちは宝石が付いているのじゃなくて黒い模様がうねる様に描かれている。

 黒の下地に刺々しい黄金の鎧。その鎧兜は獅子の顔。怒れる獣神を精巧に表した顔の作りがなんとも言い難い。そして右手にはギラギラと光る銀色の剣があった。

『傀儡の獅子 オライオン』

『チュートリアル:傀儡の獅子 オライオンを倒そう』

 オライオン。君主の俺でもビシビシ伝わる圧倒的威圧感。その眼差しは鋭く、今にでも吐く息が見えてきそうだ。

 正直に思う。もう牙〇にしか見えない。

 深夜枠の特撮番組の〇狼にしか見えない。

 たまたま目が覚めて何となく深夜のテレビ見てたらGAROOOOOOOOOOOO!!!! って放送してて、しかも結構お色気回っぽくてドキドキしたのを覚えている。あの頃はまだ俺も澄んだ瞳をしていたよ……。

「……」

 つかそもそもなんで牙〇なんだよ……。カルーディの奴ファンだったのか? それとも偶然か? まぁどちらにしても――

「――お前がヤバイ糸の親玉だろ」

「……」

 オライオンは何も言わない。何も言わないなりに、俺は無言の返答と受け取る。

 キンピカをよく観察してみると、アイツの背中から半透明な無数の糸が束になって出ている。と言うか、キングレオの中身がもはや糸の世界みたいにうねっている。

 俺にはわかる。あの糸の集合体はかなり危険だという事が。触れてはいけない。そんな第六感じみた感覚が俺に過る。

「……」

 そして何故カルーディの奴はこんなにもライオンを推すのか。俺には計る事は出来ないけど、牙〇はゆっくり動いたのは分った。

 空中を歩く。浮いて移動しているのでなく、足を付いて空中を歩いている。

 瞬間――

 ――オライオンの眼が光った。

 ――ッガキン!!

「――!!!!」

「ッ!?」

 音の壁を超える速度。瞬時に幻霊霧剣ファントム・フォグ・ソードを構えてオライオンの剣と肉薄。火花が散り、霧が揺蕩う。

 瞬時に感じた。

(こいつ、強いぞ!!)

 互いの剣を押しつけ合う。鋭いライオンの眼光がフード奥の俺の目と合わさった。

「オラ!!」

「――」

 剣の押し付け合いは俺の勝ち。衝撃波を生む鍔迫り合いにオライオンは堪らずバランスを崩しながら後退。

 すかさず追撃。

 斜めに振り切ったソードを構え直し、黄金の鎧に真横から斬りつける。

「――」

 しかし浅い。オライオンがとっさに体をくねらせ鎧の表面だけを俺に傷つけさせた。

 再び斬りつけて斬るオライオン。

 俺も負けじと応戦。

「ッ!!」

「――」

 鍔迫り合い。

 そして力押しで斬りつける。

 それが幾度も幾度も続き、この空間を縦横無尽に駆けまわりながら斬り合った。

 オライオンの登場により停止し、力なく横たわるモンスターたちの目には連続する衝撃波の嵐が見えているのだろう。たぶん。

 押している。

「ファントム・ニードル!!」

 俺が押している。

「ファントム・アーム!!

 間違いなく俺が押している。

「――」

 だが鎧が裂け、兜も割れ、どれだけ傷ついてもオライオンは止まることは無かった。まるで負けると分かっていても、譲れない何かがある様に俺に突撃をかまして来る。

 俺はそこに、カルーディとは別のナニカを感じた。あの醜悪な思想を持つ君主とは違い、このオライオンの剣を受け止めていると、押し切れると分かっていても、刃同士を押しつけてしまう。

 ――何かを訴えかけている。

 俺にはそう思える。

 でも、俺には意を汲む時間も余裕も在りはしない。

 だから。

「――ファントム・ミラージュ」

 グサッ――

「――」

 四つの俺の分身。

 俺に斬り掛かろうとしたオライオンを実体化した霧の剣で刺した。

 ミラージュの肩から覗くオライオンの眼はどこか儚く、そして悔しそうに、光を失った。

 分身が役目を終え露と消える。

 デンデデン♪

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:ギフト』

「……」

 幻霊霧剣ファントム・フォグ・ソードを仕舞い、蠢くキングレオの中身を見ながら思った。

 オライオンは、俺に何を伝えたかったのかと。

 強かった。本当に強かった。強かっただけに、俺を本気で止めたいと言う意志は感じられなかった。

 最初の一撃がピーク。それからはベターな差し合いのキャッチボール。

「……」

 考えても仕方ない。俺たちには足踏みする時間が無いのだから。

「さっさとエルドラドと合流しないと……」

 そっと、右手をキングレオに向ける。

幻霊昇華ファントム・サブリメーション――」

 俺の背後に黑の空間が出現。そこから無数の黒い手が伸び、危険な糸の空間ごと巨大なキングレオを包み込んだ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...