俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第二十章 漏れ出す者

第265話 チュートリアル:君は凄いレスラーだ♂

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 だらしねぇという、戒めの心。

 歪みねぇという、賛美の心。

 仕方ないという、許容の心。

 それが『妖精哲学の三信』である。

 三信を語るにはまず、それが属する『妖精哲学』という物について解説が必要である。

 『妖精哲学』とは、某黎明期に通ずる攻略者黎明期。そこに突如として出現した自称『妖精』と謳う人物たちが発端である。

「ああん♂」

 妖精の姿。妖精の思想。

 そこから妖精とは何か、どうあるべきかを追究する人間が現れた事に端を発し、その彼らを所謂『妖精哲学者』と定義する事から始まった、一種の学問であり、文字通りの哲学である。

 そしてそれら妖精哲学者たちが、レスリングシリーズより発見した普遍かつ不変の原理が下記の妖精哲学の三信と呼ばれる三文であった。

「あ、あなたは……!?」

「米倉でーす♂」

 尚、妖精哲学者の他に同様の論理追究を行う者たちに兄貴(開祖である米倉)哲学者という語も散見されるが、用法や意味に特に違いがみられないため、同意義の言葉と推定し・・・妖精哲学者=兄貴哲学者として統一するものとする。

 先ほども述べた三信。

 だらしねぇという、戒めの心。

 歪みねぇという、賛美の心。

 仕方ないという、許容の心。

 それらを論ずる妖精哲学上に於いて絶対普遍の真理とされており、この教義を外れた妖精哲学上の議論は論理的には破綻するとされている。

 妖精哲学者つまるところの、レスリングシリーズファンたちに於いてはこれら三つの訓えを守れぬ者は妖精哲学者に非ずという異端のレッテルを貼られてしまう事になる。

「おー激しい( ^ω^)」

「ッ!?」

 ただ逆に言えばこの訓えを守り抜いた者こそ、人間の殻を捨て、人の新たなるステージである妖精への覚醒に匹敵する“ゲイパレスへの扉に至る悟り”を開くことが可能になるとされる。

「――」

 不動優星は言葉に詰まる。驚きを隠せない。

 直前までホモリンの餌食になるのを覚悟をしたと言うのに、そのホモリンは消滅。代わりに優星の背後には筋肉隆々上半身裸にジーンズ姿の屈強な男たちが立っていた。

 優星は彼等の事を見た事があった。

 否。知っている。

 当然だろう。自分たちファイブドラゴンと同じく、今勢いのある中堅サークルだったからだ。

 ひとたび剣を振るえばモンスターが両断され、雄らしい筋力に任せた白兵戦は一級品。

 一部国連や諸外国のサークル。そして日本では自他認める折り紙付きの実力集団。

 人々は彼らを、サークル『パンツレスラーズ』と呼ぶ。

「パンツ……レスラーズ……」

「ホイ♂」

 パンツレスラーズサークル長――米倉が優星に白い歯を見せて笑顔を作る。

 ホモリンに襲われる覚悟を決めたいた優星。ゆっくりと立ち上がるもホモリンの恐怖、そして米倉率いるパンツレスラーズの威風堂々とした出で立ちに脚が震えた。

「よ、米倉さん……! いや、米倉兄貴!! 来てくれたんですね!!」

 先ほどまでハイライトが消えた瞳だったというのに、米倉たちの出現に眼に光を取り戻した優星。

(ホモリンに対して米倉さんたちの増援は大きい!! 勝算はある!!)

 スタンピードの緊急招集はダンジョンに潜っていたサークルたちに遅れて伝達された。先鋒隊の優星たちとは別に、遅れて参戦してくるサークルが存在する。そのうちの一つがパンツレスラーズだった。

 実力者ぞろいのパンツレスラーズだが、ホモリンが相手となればその実力は一層に発揮する。

 故に優星は歓喜した。米倉たちの増援に。

 ――(一緒に)挑もう♂

 そう言ってくれると優星は思っていた。

 しかし現実は。

「だらしねぇし……♂」

「……え」

 米倉、まさかの叱咤。

 だらしねぇという、戒めの心。妖精哲学の三信の一つを口走った。

 瞬間――

「――ッ!?」

 優星に電流はしる。

(……そうだ。俺は、俺はなんて馬鹿でだらしなかったんだ。……惹句たちがホモリンに倒されたことに絶望し、何の抵抗も無く俺も受け入れようとした)

 拳を握る。

(だがそれは逃げに他ならないッ!! 惹句や黒鵜、流美の仇を取る事に!! それから逃げる事に他ならない!!)

「仕方ないね♂」

「――ッ!?」

 優星に二度目の電流はしる。

(そうだ。俺の心の弱さを否定してはいけない……!! 強がらずに仕方ないと受け入れるしかない!! 受け入れる事で強くなれるんだ!!)

 半透明の機械の腕が出現。

「歪みねぇな♂」

「――ッ!?」

 優星に三度目の電流はしる。

(俺の体の奥底から湧き上がる歪みない力ッ!! 絶望を乗り越え、自分の弱さすら受け止めるッ!! それがこの湧き上がる力なのか……!!)

 白のマフラーがゆらゆらと風に乗る。

 握った拳と連動して半透明の機械の腕も拳を作る。

「だらしない弱気な考え。仕方ないと受け入れる気概。そして歪みない力ッ!! 俺はすべてを超越しッ! すべてを受け入れて己が力とする!!」

 瞬間、優星を中心に熱風が噴いた。

「『同期《シンクロ》』発動!!」

 熱風が更に広がり、奮起している攻略者たちに熱さを感じさせた。

 スキル『同期《シンクロ》』は絆の強さを表現するスキルである。優星と対象の人物の関係が深ければ深い程、力が増す。

 しかし今、絆を育んだ惹句たちに意識は無い。では誰と絆を結んでいるのか。

「な、なんだよこの感じ」

「力が……湧いてくる……」

 絆を結んだ相手。それは熱風を浴びた攻略者たちであった。

 シンクロで繋がった対象同士のスキルを制限時間付きで使用可能になる効果。そこにプラスαで力も増幅する効果も含まれるが、今回の場合は対象が大勢であり、制限時間付きの力が増幅する効果がだけが適応された。

「うおおおお!!」

「行くぞオオオ!!」

 故に力が増しゴブリンとホモリンを次々と倒していく攻略者たち。

 そしてスキル使用者の優星は。

「スターダスト・フィストオオオオオオオオオオオ!!!!」

 纏った機械の腕を突き出して浮遊し突進。星屑をばら撒きながらモンスターたちを蹂躙した。

 そして彼らも動き出す。

「うわぁぬっぷぬっぷ……♂」

 城之内。

「悦に入る♂」

 鎌田。

「いい目してんね~サボテンね~♂」

 いかりや。

「イクぞおらぁ♂」

 木吉。

「構わん! Hいこっ♂」

 そして米倉。

 パンツ取られたら負けのパンツレスリング。勃発♂
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