俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第二十章 漏れ出す者

第266話 チュートリアル:わふー>ω<

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「ふぐり!!♂」

「♂」

 ――ッドガ!!

 上半身裸と上半身裸。激突。

 両手を恋人繋ぎで握りあり、互いの耳をふれあい肩をぶつけ合う。

 視認できる衝撃波を生む取っ組み合い。

 それに触発されたなのか、男性攻略者たちを得物と認識していたホモリンたちが一斉にパンツレスブラザーズに視線を注ぐ。

 誰より先に今し方ホモリンに対し、己が雄が遺伝子的に優位かどうか、爆ぜる汗の飛沫が散る取っ組み合いをしたのはパンツレスラーズの実質的二番手――木吉だった。

「♂」

 両手を握り合って力比べ。食い込む指。最初の一握りで勝利を確信したホモリンだったが……。

「何気に強いですね……♂」

「♂!?」

 強く握り返されるホモリン。ナイスガイ♂な笑顔を向ける木吉は焦りを表情に出すホモリンと違い余裕の表情。

「――全てはチャンス!!」

 怯んだ隙を見逃さず空かさずホモリンの後ろに回り込んだ木吉。

 ――ッパン!!

「」

 爆音と共に衝撃波が可視化する程の威力の尻叩き。

 つまりはスパンキングの威力により、ホモリンは消滅。

「イケメ~ン?イケメ~ンwww?」

「♂」

 マッシブな体つきだが木吉とは違い細身の体躯の城之内。

 取っ組み合う両者。

 生まれ持った性格によるのか、渋めなイイ男のホモリンに対しまさかの煽り。

 言葉の意味が伝わらずとも城之内の言っている事は分るホモリン。おもわず苦笑。

「♂」

 ホモリン。ニヤつく城之内に足払い。バランスを崩す戦法を取る。

「エッチめ……言え!」

 ホモリンの思惑を読んでいた城之内。最小限の動きだけで足払いを避ける。

 ご挨拶と言わんばかりに城之内も反撃。

「♂!?」

 力任せに押し倒しホモリンの背中を土で汚し、見つめ合った体勢から180度回転。互いの股間を魅せつけ合う形になる。

 ホモリンの蛮族風の衣装。その股間を見た城之内は一言。

「ほっそい♂ティンコ」

 煽りを言うと。

「破いちゃえ~~♂」

 ビリビリと局部の布を破いた。

 そして彼だけが見えたモノに一言感想。

「……ティンコおっきいね♂」

 ――ッパン!!

「♂――」

 態勢を変えられてスパンキング。ホモリン消滅。

「♂」

「♂」

「♂」

 パンツレスラーズの登場によりホモリンの『ウホ♂いい男センサー』が過敏に反応を示した結果、増えに増えたホモリンたちが一斉にレスラーたちを視姦。所に言うハートキャッチプ〇キュア状態であった。

 集団で襲い掛かっていたさっきまでとは違い、律儀にも一対一での対決が成されている中、細身の体躯である城之内をも凌ぐ細マッチョな鎌田は三体のホモリンに追いかけられていた。

「あーもうしつこいチンポ!」

「♂」

 鎌田の菊門から香ばしい香りが漂っていると言う根も葉もない噂。ミツバチの様にそれに釣られたホモリンたちは是が非でもブチコミたい一心である。

「体がいつも大きいんだよ!」

 トレーニング相手はもっぱら米倉や木吉といった体格のいいレスラーばかり。そんな日がな一日の愚痴をついこぼしてしまう鎌田。

 逃げ回っていた鎌田だが、ついに痺れを切らす。

「あージャスコにバッグを――」

 思い出したかのように後ろを振り向き急転換。

「♂!?」

 驚いたホモリンの一体に飛びつき、小柄な体格を活かしてホモリンの関節を畳む。

「リラックマぁ……!」

「♂」

 ホモリンをうつ伏せに倒した鎌田はマウントを取る。つい何気に勢い余って大好きなキャラクターを呟いてしまう。

 ――ッペチ

 鎌田の攻撃。それは頬をはたく行為であった。

 ――ッペチ

「♂」

 しかし攻撃力が劣っているのか、ホモリンには大したダメージが蓄積せれていない。

 上半身を起こそうとするホモリン。ついに形勢逆転と思われたその時。

「蟹になりたいね♂」

「♂!?」

 耳にした言葉にホモリンは戦慄。身を硬直させて小さく痙攣した。

「蟹になりたいね♂」

「!?」

「どやねん? 蟹になりたいね♂」

「!?!?」

「ね? 蟹になりたい♂」

「!?!?!?」

 鎌田の真骨頂――本格的♂洗脳を開始。

 体格や筋力が他のレスラーに劣る鎌田が編み出した戦術。それは呪詛を口にしている様な洗脳だった。

「蟹になりたいね♂」

 言葉通り、呪詛を吹き込まれた者は人間やモンスター問わず、『蟹に成りたくなる』という。

 呪詛を聞いた人間は蟹に成りたい欲求に駆られ、指でピースしてしまう始末。しかしそれは『蟹』という生物・形を知っている故の安易な挙動でそうするが、モンスターともなれば話は別である。普通に露と消える。

 それもそのはず、『蟹』の存在を認知できない、又はしないからである。

 それに習いホモリンも露と消える。そう思われたが、ギリギリ意識がハッキリしているホモリンの眼に写った者は――

「うおおおおおおおおおお!!」

 半透明の機械の腕を突き出して無双している某人物。そのあまりにも特徴的な頭部を視認し、図らずもあれが蟹なんだとホモリンは思った。

 そして。

「♂♂♂♡」

 アへ顔ダブルピースで消滅。

「チンポ♂朝立ち」

 いかりや、真昼間だというのにジーンズの股間付近がもっこり。

 これにはホモリンたちもニッコリ。

「TNTN♂マイウェイ~」

「♂」

 既にマウントを取っていたいかりや。脚を骨盤、首筋に置きホモリンの左腕を引っ張る。

「ぎゅうううううううううう!!」

「♂!?  ♂!?!?」

 痛がるホモリンは地面を叩いて降参の意志を示すも、引っ張る事に夢中ないかりやはタップに気付かない。

 これに青筋を立てたホモリン。

「♂」

 いかりやの足首を捻って関節技をくりだした。

「痛ってえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?」

 いかりや、堪らず絶叫。どこか西洋訛った日本語を話すレスラーズだが、この叫びは明らかに日本語ネイティブのソレであったのは言うまでもない。

 ワニが得物を仕留める様――デスロールをかますホモリン。それに沿う様にいかりやも回転し、痛さで地面をタップ。

「アカンもう勘弁して……」

 たまらず弱音。

「うわぁ~やっぱり怖ぇよぉ……」

 そして泣き言。

 いかりやの本音が吐露される。

 彼はレスラーズ一のHで目がビジネスマ~ンだが、レスラーズ一のビビりでもあった。

 しかし、そんな彼にも意地がある。

 ――ッパシ!

「ッへ……どうじゃ♂」

「!?」

 如何に痛かろうが、負ける訳にはいかないのが攻略者。攻略者として、そしてレスラーズとしての意地で関節技から脱出に成功。

「しっかりしとき……腐っていいのか?」

 自分自身に問いかける。

 当然答えは出る。

「超スピード♂!!」

「!?」

 残像を残す程の超スピードでホモリンの背後を取るいかりや。

「メガンテ♂」

 ――ッパン!!

 ホモリンの臀部、スパンキング。

「――」

 ホモリン、消滅。

「手ぬるいわ♂」

 両腕に力こぶを作り、意気揚々。

 そして忘れてはいけないこの妖精。

「いざぁ……♂」

 パンツレスラーズサークル長――米倉。

 二番手の木吉。

 お調子者の城之内。

 潜在能力MAXの鎌田。

 強かないかりや。

 歓声♂沸く各々が活躍するのを見て、サークル長として鼻が高い米倉。

「せや、差ぁつけるで~♂」

「♂」

 独特のリズムが奏でるご機嫌スキップでホモリンと対峙。

 眼前には無数のホモリン。冷や汗が止まらない男性攻略者たちを尻目♂に、米倉は果敢にも先導に立った。

 そして。

「――ヴォオ!!」

 ――ッグワン!!

 空間を揺るがす程の米倉の叫び。

 空気を震わし、地面を震わし、体の芯をも震わす弩級の音。

 妖精色の覇気。炸裂。

「」

「」

「」

 刺激が強すぎる故のオーバーキル。波及する覇気は瞬く間に千、二千のホモリンたちをノックアウト。消滅させた。

「いやぁ、スイマセーン♂」

 対ホモリン超過剰突起戦力妖精――その名も米倉。

 パンツレスラーズの戦闘は続く。


 先行を駆ける影が一つ。

 ――シュン!

 スタンピードの最奥。洞窟の奥深くにて、今、闇夜を切り裂く一筋のきらめきが一閃を書いた。

「――」

 首を刎ねられたのは、このスタンピードをスタンピードたらしめた首魁――エグゼクティブオーガゴブリン。

 その御大将を倒したのは忍者風の男。ディメンションフォースの妻夫木蓮その人であった。

「……あっけな」

 日本のスピードスターを誇るが故の苦悩。それは如何な敵をも速攻で決着をつけてしまう何とも贅沢な悩みであった。

 失敗すれば日本を窮地に落としいてる程のスタンピード。その首魁ならば自分を心の底から満足させてくれると思っていた妻夫木だったが……。

「所詮は少しだけ知性があるだけか……」

 ヒカリゴケが群生する洞窟。その中で一人佇む妻夫木。

 スタンピードを終わらせるには首魁を倒せばよい。それが国連の提示だった。

 したがい、エグゼクティブオーガゴブリンを倒したのであらば、前情報通りならばモンスターのリポップは消え、緩やかにモンスターの減少が見込めるはず。

「……まぁボスは倒したし、こんな湿気のあるところはおさらばしよかな」

 着けているマスクを直した時だった。

「――ッ!?」

 今までに感じた事のない緊張感に見舞われたのは。
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