オメガ学級委員長はド変態

明帆

文字の大きさ
20 / 54
第1章

第19話 佐野と俺と井沢の距離

しおりを挟む
 ——ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ…
「佐野…もっと奥…きて…」
「もっと奥って…奥にトゲトゲローター入っちゃってるじゃん。先端に刺さって、強く挿入できない」

 今日は体育祭だ。だが、俺と佐野はセックスに打ち興じている。俺は抑制剤の副作用として、発情期後に猛烈な性欲に襲われる。運悪く、今日がその日なのだ。

「ひゃっあ…っぁあ!」
「ねえ、りょう…声もっと抑えて」
 いつ人が来るかも分からない裏庭で、佐野に立ちバッグで抱かれている。佐野の左手が口を覆っているが、それでも喜びの声は止められない。

「んっ…む、りっ…気持ち、良すぎってぇ…あっあぁぁぁぁ!」
 後ろの窄まりの潮吹きが止まらず、佐野の腰の動きに合わせてバシャッ、バシャッ、バシャッ、バシャッと、潮が漏れ出る音が聞こえる。

「中、すっごい……どうなってんのっ…もう、イキそっ…」
 窄まりの中には、激しく動き回るローターが2つ入っている。しかもイボが付いているので、以前のものよりも刺激が強い。

 ローターが内壁をウネウネと波立たせ、佐野の高まりを何度も刺激しているようだ。
「ひゃっあん!っん、佐野っ…強っ……いっあぁ…」
「うっごめ…もう無理っ……イクっ…」
 バシャッ、バシャッ、と佐野の腰が全身を強く打った後、高まりから佐野の欲望が溢れ出た。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……りょう…大丈夫…?」
 佐野は俺に声をかけながら、後ろの窄まりからローターを抜いて、身なりを整えてくれた。
「…んっ…はぁ、はぁ…も、問題ない」
 俺はあまり体力に自信がないので、本当は体育祭中にこんなことはしたくない。だが、やはりド変態なので自身の性欲は止められない。疲れているはずなのに、いつでも佐野を誘ってしまう。

 一方佐野は、体育祭の出番がクラスの誰よりも多いはずだが、全く疲れを見せていない。むしろ肌艶が良く、活気にあふれているようにさえ見える。

「さあ!この昼休憩が終わったら、待ちに待った二人三脚だ!やったー!皆の前でりょうとイチャイチャできるー!」
 佐野は二人三脚=イチャイチャすることだと思っているようで、満面の笑みだ。

「ああ、それなんだが、言い忘れていた。二人三脚は基本的に男女ペアだから…」
「ええっ!?嘘でしょ?じゃ、じゃあ、りょうと一緒に走れないってこと…?」
「そうなるな。いや、知っているものかと思っていたんだが」
「知らないよ!どうして選手決めのときに教えてくれなかったの!」

 佐野は涙目になっている。本気で怒っているようだ。佐野は、二人三脚で俺と一緒に走ることを条件に、クラス対抗リレーへの出場を承諾してくれた。

 しかし、今までの体育祭を見ていれば分かるように、二人三脚は基本的に男女ペアとなっている。

「悪い。結果的にだます形になってしまった。あれは冗談で言っているのかと
…」
「冗談なわけないじゃん!なんで男同士のペアはダメなの?」
「ダメではないが、慣習で…」
「もういい!」

 プンスカ、という言葉が合うような怒り方である。佐野には悪いが、かわいらしいと思ってしまう。

 選手決め後、俺は男同士で二人三脚に出られるように、体育委員にかけあおうとした。しかし女子2人から『佐野くんと二人三脚に出たい』という申し出があったので、じゃんけんで勝った方に出てもらうことにした。

 やはり男女で出た方がその場が盛り上がるし、クラスの女子の体育祭に対するモチベーションも向上するだろう。

 佐野は文句を言いながらも、二人三脚に出場する選手の集合場所に向かっていった。俺は役員席に座り、佐野の出番を見守ることにした。

 二人三脚の最終組が走り始めたので、佐野を応援する。佐野と一緒に走っている女子は、嬉しそうに顔をほころばせている。また、応援するクラスメイトも楽しそうだ。

 やはり俺の選択は正しかった。だが、なぜか胸の奥がチクチクと痛む。佐野と女子が楽しそうにハイタッチをしている姿を、俺は喜べないでいる。正しい選択をしたはずなのに、ドロドロとした黒い感情が自身を支配する。

 ——嫉妬、なのかもしれない。だが今は、学級委員長としてやるべきことが山ほどある。この感情とは向き合えない。

 その後も順調に競技は進み、いよいよ最後のクラス対抗リレーとなった。どの学年も最も盛り上がる競技だ。

 足が速い佐野は、もちろんアンカーだが、その1つ前のランナーは井沢だ。あの2人、喧嘩せずに問題なく終わることができるのだろうか。

 パン!というスターターピストルの音とともに、多くの生徒や保護者の声援でグラウンドは埋め尽くされた。俺も声援を送りながら、佐野と井沢を注視する。

 2人は、話すどころか目も合わせず、自チームを応援しているだけのようだ。こちらの杞憂であった。

 あまりにも視線を送り過ぎたのか、佐野と目が合った。距離にして100メートル以上は離れていると思うが、佐野のパッと花開くような笑顔がはっきりと見えた。

 自分の心臓が耳元にあるように、強く速く脈を打っている。誰よりも輝いて見えるのは、佐野が明るい陽キャだからだろうか。佐野は俺に向かって大きく手を振っている。小さく手を振り返して応えると、佐野はさらに破顔した。

 目が離せなかった。

 その後、ほぼ最下位でバトンを渡された井沢が一気に追い抜き、3位に順位を上げた。そしてアンカーの佐野にバトンが渡ったとき、グラウンド中の人から大きな歓声が上がった。

 佐野は、沸き立つグラウンドを颯爽と走り抜け、その大きな身体を生かして前を走るランナーを追い抜いていく。グラウンドの熱気が最高潮に達したとき、佐野は1位でゴールした。

 地鳴りするような大歓声が上がり、佐野の周りはたくさんの生徒であふれかえった。

 先ほどはあんなに近くに感じた佐野の笑顔が、今はどうしてかすごく遠く感じる。俺のクラスは、惜しくも総合優勝は逃したものの、学年では1位を獲得。各々がさまざまな感情を胸に抱き、体育祭は幕を下ろした。

 閉会式後は体育委員の片付けを手伝い、忘れ物の整理などの雑用に追われていた。長時間外に居たので、身体はものすごく疲れているが、内奥の欲望は佐野を求めている。

 だが、佐野も疲れているだろう。自身の性欲処理に佐野を付き合わせてはいけない。今日は自慰行為で我慢しよう。

 雑用をさっさと済ませ、ローターが入ったバッグを持ち、校内のトイレに向かう。その途中、先ほど佐野と行為に及んでいたあの裏庭から、女子の声が聞こえてきた。

「さっきは一緒に走れて、しかも1位でうれしかった」
「うん、俺も楽しかったよ」
 女子が話している相手が佐野だと気づき、なぜか物陰に隠れてしまった。

「私、実は…ずっと前から、佐野くんが好きでした。もし良かったら、付き合ってくれませんか?」
 他人の告白を盗み聞きするなんて、俺は学級委員長としても人としても、間違った行為をしている。

 だが、足が動かない。佐野はこの女子と付き合うのだろうか。そうしたら、俺と佐野の関係も自然と終わるのだろうか。

「そうだったんだ、俺そういうの疎いから全然気づかなかった。素直にうれしいんだけど、ごめん。好きな人がいるんだ」
 好きな人…?初耳だ。俺は佐野と淫らな行為をするばかりで、佐野がどんなものや人が好きなのか知ろうともしていなかった。

「そっかー、残念。でも何となく分かってた。これからは友達として接してくれるとうれしいな」
「うん、もちろん!」
 その後2人は仲良く雑談をしながら、校門の方へと歩いて行った。佐野もあの女子も、さわやか過ぎる。

 俺は、恋愛は勉学の邪魔でしかないという考えだ。佐野との行為については恋愛を伴っておらず、有り余る性欲を解消できるので問題ないと思っている。

 だがなぜか分からないが、あの女子のことがうらやましい。佐野に自分の気持ちを伝えて、今後の関係についての希望にも言及している。立派である。

 俺は佐野とどうなりたいのか。このまま身体だけの関係でい続けても良いものなのか。もし佐野に彼女ができたら、俺はどうすれば良いのだろう。

 考えても分からないことは、本人に聞くのが一番だ。だが、なぜか佐野に聞くことができないでいる。俺は何を恐れているのだろう。

「こんなところで何ぶつぶつ言ってんの?」
「わっ!」
 すっかり自分の世界に入ってしまっていたので、後ろから声をかけられて驚いた。
「い、井沢くん。お疲れ様」
「おつかれ。で、何してんの?こんなとこで」

「いや、なんでもない」
 物陰に座り込んで、心の声を呟いてしまっていたようだ。最近、佐野に本音を言うようになったせいか、気づかぬうちに心の声が口から出てしまっているときがある。気をつけなければ。

 立ち上がり、再度校舎に向かおうとしたとき、グッと手首を掴まれた。
「んっ!」
 振り返ると同時に、井沢の唇が自身の唇と重なった。
「なっ、何するんだ!」
「佐野とも同じことしてたじゃん。俺も同じアルファなんだから、してもいいだろ?」

 井沢にいつ見られたのだろう。だが良く考えれば、佐野と学校で口付けやそれ以上のことを何度もしているので、誰かにどこかで見られていても不思議ではない。

「……俺は、誰とでもこういうことをするわけじゃない」
「ふーん……じゃあ、佐野のことどう思ってんの?」
「それは……そ、それよりも、なぜそんなことを井沢くんに言わないとならないんだ?」

 井沢が何を考えているのか分からない。そんな奴と、人気がない裏庭にいることに急に恐怖を感じた。
 後退りをして、井沢と距離と取ろうとするが、逆に井沢は前へ進んで俺との距離を詰めてくる。

「やっぱり、佐野のこと好きでもなんでもないんじゃん。アルファだからヤってるんだろ?だったら俺でもいいじゃん」
 井沢と俺との距離がどんどん縮まってくる。ドンッと背中に壁が当たり、いよいよ逃げ場がなくなった。

「や、やめろっ」
 再び井沢が口付けをしてきた。両肩をすごい力で押さえつけてくるので、身動きが取れない。
 井沢の舌が、俺の口内を動き回る。不思議なことに全く気持ち良くない。佐野と同じ行為をしたときは、とろけるような気持ち良さが全身を駆け巡ったというのに。

「い、ざわくっ……やめ、やめてくれっ…」
 とにかく早く終わって欲しいという気持ちしか起こらない。井沢から逃げる方法を考えなければならないのに、佐野のことばかり思い出してしまう。

「おい、何してんだよ」
 佐野の声がしたかと思うと、口から井沢の舌が消え、肩の圧迫感がなくなった。目を開けると、芝生の上に井沢が倒れていた。

 佐野が井沢を地面に叩きつけたのか、井沢はゴホゴホと咳をして苦しそうにしている。

「佐野!」
 安堵感が一気に押し寄せ、なりふり構わず佐野に抱きついた。それに応えるように、佐野はぎゅっと抱き返してくれた。

 俺は紛れもなく、佐野のことが好きなんだ。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...