空は青いか?

乱川 カナト

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スカイフリューゲル

#1

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くまたか高等学校での入学式を終え3日が経った頃、部活動紹介が始まった。入学式の日は熱狂的な勧誘の嵐に圧倒され、気付いた頃には手で抱える程のチラシを貰っていた。
「ねぇ、かなは部活何にするか決めた?」
 私の肩をトントンと指で叩いて聞いてきたのはクラスメイトの中川 遥なかがわ はるかだった。
 耳にかけた金髪はサラサラしていていい匂いがする。見た目はギャルっぽいのに意外と乙女な部分がある子だ。
「まだ決めてないよ」
「だよね~。あたしもどれがいいか悩んじゃってさ」
 二人で盛り上がっていると後ろから低く冷たい声がした。
「......冠崎かんざき かな...さんですか」
 振り向くとそこにはクリーム色の髪で目が隠れる程伸びた前髪の男性が立っていた。
「......」
「冠崎かなさん...ですよね」
「は、はい」
 見下す様な視線と鋭い目付きに私達はたじろいでしまう。そもそも何故私の名前を彼が知っているのか謎でもあった。
 恐らく先輩だと思われる彼はワイシャツの上から綺麗な青色のジャージを羽織っていて、明らかに他の生徒と異なるその服装は更に威圧感を与える。
「あのー、先輩とかなは知り合い...なんですか?」
「......貴様には聞いていない。部外者がしゃしゃり出るな」
「ちょ?!部外者って!いくら何でも─」
 遥が先輩に噛み付くように言うと今まで見たことが無い目付きでただ一言、
「凡人は失せろ」
 と言い放った。
 何...?今の。まるで人として見ていないような目付きだった。
「おい、こら秋月あきづき!お前何勝手に新入生の席に移動してんだ!さっさと戻れ!」
 1年生が座る場所に異様な格好がいれば先生達が気付かないはずがない。教頭と強面の先生が2人がかりで秋月と呼ばれる先輩を無理やり連れていった。
「......おい、冠崎。その名を背負う者なら分かるはずだ」
「何訳の分からんことを言ってるんだ?!」
「ったく、これだからスカフリ部の奴らは...」
 一瞬、秋月先輩のせいで体育館の中がざわついたが先生達が外に連れ出すとすぐにまたガヤガヤと部活動紹介の準備が始まった。
「何なのアイツ~!かな、あんな嫌な奴と知り合いだったの?!」
「え?!知らないよ!そもそも初めて会った人だし...」
「じゃあ何でその名前を背負う者なら~とか言ってたの?」
「こっちが聞きたいくらいだよ...それにしてもあの先輩」
 まるで私と会ったことがある様な話し方だったな。
「あの先輩がどうしたって?思い出したの?」
「ううん」
 私はその時知らなかった。彼に隠された秘密を。
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