空は青いか?

乱川 カナト

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スカイフリューゲル

#10

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 校舎東棟の3階奥にある広い空き教室が「スカイフリューゲル部」の部室になるようだ。
 ドアを開けると既に椅子に座って新入生が来るのを待ち構えていた先輩達と緊張した様子の新入生が立っていた。冠崎も恐る恐る部室に足を踏み入れるとまるでそれが合図であるかのように、先輩達は立ち上がる。
「よし。それじゃあ、これ以上見学者も来ないようだし部活を始めようか」
 皆の顔を見ながら副部長の四阿あづまが開始の号令をかけると彼の隣に立っていた華奢な茶髪の女性が話し出した。
「今回は見学という事ですし、軽くトレーニングでも体験させてみたらどうでしょうか?」
「うん。その方が普段どういう練習をするのかわかりやすいしね」
 手に紙がはさまれてるボードを持ちながら彼女が一歩下がると、四阿が前に進み出て見学者にジャージに着替える様に指示を出す。
 女子更衣室にいたのは冠崎と鴻戯こうぎという凛とした彼女だけだった。
 肩まで伸びた黒髪はまっすぐで髪質も傷んでいないのを見るとちゃんと手入れをしているのが伺える。それに加えどこか上品な雰囲気を出している彼女を見て冠崎は、話したいのに話せずにいた。
「......何かわたくしに様ですの?」
「え?!あ、いや、そのー。コウギさんって前からスカフリに興味あったのかな~って」
「興味があったか?」
「う、うん!そう......です」
 高圧的な鴻戯に圧倒され同い年なのに敬語になってしまった自分を奮い立たせるように拳に力を入れると、
「もしそうなら話聞きたいな~と思って!」
 話を振ってみた。
 彼女は、静かにジャージに着替えながら口を開こうとしたが一瞬躊躇いそのまま黙ってしまう。
 あれ?もしかして私聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな?
 素早く脈を打つ心臓を抑えながら冠崎もそのままジャージに着替え、ロッカーのドアを閉めた時あることに気付いた。
 ロッカーにはそれぞれ使用者の名前が貼ってあるのだが冠崎の隣の扉に消えかかっていながらも辛うじてまだ読めるシールがあった。
 そこに書かれていた名前は「鴻戯」だった。
 同じ名字...だよね?漢字も一緒なのかな?
「コウギさんってこの人と同じ漢字で書くの?」
 声に反応するように彼女も名前を見ると目を見開き、少し怒った様子で「そうですけど」と言って更衣室からそそくさと去ってしまった。
「このロッカーを使っていた鴻戯さんと何か関係があるのかな」
 疑問だけが部屋に漂っているのだった。
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