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六頁目「小道と白い家族たちと」
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カランカラン……
涼やかな音色が、来客を伝える。
「こんにちは」
「いらっしゃいませー」
迎えたのは彼女の笑顔と、香ばしいコーヒーの香り。
それは、ログハウスに使われている香木の香りと調和して、鼻腔をくすぐるその香りが、「コーヒーを一杯飲んでいこう」という気持ちにさせる。
「というわけでユウちゃん、とりあえず生麦酒を中カップで」
「はい、コーヒーですね、かしこまりましたー」
「えっ、いや、麦……」
「コーヒーですね?」
有無を言わせぬ謎の気迫が篭った笑顔が目の前にある。
「じゃあ、それで……」
かなわないな、という風に肩を竦めて、すごすごとカウンターに座った。
言うが早いか、芳しいコーヒーが注がれたカップが目の前に出される。
「相変わらずおいしいねぇ」
一口飲んで、店内を見渡す。
地面より一段上にある木の床の玄関から入ると、そう広くもない店内があり、正面に店主のユウがいるカウンター、左手には4人がけのテーブルが二つ、右手には大きくとった窓から外を見ることのできる一人がけ、あるいは二人がけの小さなテーブルが3つ並んでいる。
カウンターのすぐ横には住居へと続くと思われる扉がある。その前には、リンと呼ばれている小さなオーガ族の子供がたたずんでいた。
「子供じゃないよ?」
カウンターも広くはない、席が三つあるばかりで、大量の客がきたら、とてもさばくことはできないだろう。
もちろん、立地を考えればここに大量の客が訪れるようなことはありえないのだが。
「余計なお世話ですよね?」
考えていることに対してツッコんでくるのはやめてもらいたいなぁ、と思わず苦笑いする。
「大体そんな事言ったら、こんな辺鄙なお店に足しげく通う、頭からフードを被った怪しげな客が一人、とか言われちゃうんですよ?」
ユウがふっと鼻で笑う。
「余計なお世話ですよねぇ?」
目を閉じて――フードで見えないだろうが――ふっと笑う。
そして、ユウと顔を見合わせて、はっはっはと乾いた笑い声をあげた。
「…お客様、コーヒー、お代わり、あるよ?」
ジト目でみていたリンが客に声をかけてくる。
「おかわりいただけるだろうか?」
「無料じゃないですけどね」
ふふっと笑って、ユウがお湯の入ったビンを火にかけた。
「僕はね、この店とコーヒーが気に入ってるんだ」
「そんな人がどうして、麦酒を注文するんでしょうね?」
リンと同じくジト目をして目の前にコーヒーを差し出すユウ。
「うん、美味い。いやぁ、ほら、よく男の子が好きな女の子をいじめる的な?
ここまでがテンプレっていう――」
「は?」
何言ってるんだこの人、という風に、ユウだけでなくリンまでが呆れたような目線を送ってくる。
「早く何とかしなければ」
リンがぐっと拳を握り締めて呟くと、意を決した表情でローブをぐいぐいと引っ張り始めた。
「ちょ、え、やめるんだ、リンリン!」
「お客様のおかえりですー」
「ひどい!」
「あ、コーヒー2杯と迷惑量で金貨1枚になります」
「たけぇ!」
ローブをぐいぐいと引っ張るリンに噴出しているユウが、追い討ちと言わんばかりに料金の請求をかける。
苦笑いをしながら、それでもひどく楽しくて、ユウやリンとじゃれあうのであった。
──滅多に人の来ない喫茶店「小道」
そこにはとびきり笑顔の女性店主と、小さなウェイトレスがいる。
お勧めはコーヒー。スパイスにはウェイトレスのジト目を沿えて。
「……なんてね?」
美味しかったよ、と一言残してローブの男は帰って行った。
すでに夕暮れ時が迫っていて、窓から差し込む光が紅い。
ユウが伸びをすると、思わず欠伸がでてくる。
「ふぁう……」
「ふあ……」
釣られてかリンも大きな欠伸をこぼしていた。
「あくびって、なんで伝染するんだろうね……」
そんなどうでもいいことを呟いて、自分用に入れたコーヒーを片手にユウは窓側の席に腰掛ける。
陽が山の影に隠れているけれど、空を紅く燃やしていた。陽と反対のほうからは夜が差し迫っていて、東から西へ、黒、青、紅のグラデーションを彩る。
ぼーっとした目でそのグラデーションのうつろう様子を、時折コーヒーに口をつけながらみているユウ。
「のどかだね……」
誰に言うでもなく呟いた――
暗闇が迫ることにおびえるように飛び立っていく小鳥たち。
寂しくないように、と声をあげている虫たち。
四本足の獣は、暗闇が深くなればなるほどその目を光らせて獲物を探し回る。
やがて、空からは紅と青が混ざって紫に染まり、それは黒へと滲んでいく。
風が通り抜けるたびに森の木々がざわざわとかすかに騒いで、やがてまた静かになれば虫たちが鳴き始める。
獣や鳥たちが夜の目を覚まし、動き始めた音が、微かに聞こえてくる。
――今夜もいつもどおりの夜。
いつのまにか隣にはリンがコーヒーのお代わりと自分用のミルクをもって座っていた。
少し大きめの窓にむかって二人並んで山と森の間の草原を眺めている。
月光が二人を照らして、少し薄暗い店内に二人の影を落とした。
二人は何を喋るでもなく寄り添って外を眺めていた――
「あ!」
突然リンが椅子から立ち上がって窓の外を指差した。
「んん?」
指差した窓の外とユウの顔を交互に何度も見ながら、珍しくリンが目をきらきらと輝かせている。
「白い!」
夜空に穴を開けたように光る月の下、微かに小さな獣の姿が見える。
元々人間でないリンにはハッキリと見えているのだろう。
ユウにはそこまでハッキリと見えなかったが、リンの言葉を聴けば、白い獣がこちらをみているという。
「ちっちゃいの、いる!」
その獣の後ろからぞろぞろと列をつくって3,4匹の同じく白いちっちゃい獣が歩いてきた。
「そっかぁ、お母さん、なのかな?」
「お父さん!」
「そっか、お父さんだったかぁ」
珍しく興奮しているリンに、ユウはニッコリと笑みを浮かべた。
小さい子達が喧嘩をはじめたとか、じゃれあってるとか、
お父さんが鼻で割って入ってとめたとか、リンがはしゃいで実況してくる。
ユウはそんなリンに相槌を打ちながら、はしゃぐリンに優しい眼差しをむけていた。
「あ……」
しばらくはしゃいでいたリンが突然落胆したような声をあげた。
「もどった」
白い獣の親子は、十分に子供たちを遊ばせたから、草原から去っていったという。
「ふぁ……」
一通りはしゃいで、獣もいなくなったから、自分の眠気に気づいたリンがおおきなあくびをする。
「ふふ、楽しかった?」
「うみゅ、今度、遊びたい」
「そうだねぇ、混ぜてもらえるといいねぇ」
眠そうに目をこするリンの頭をぽふぽふとしてやった。
「子供じゃないよ?」
「さ、寝ようか? リン」
「うん」
白い獣の子とリン、どちらが早く寝るか競争だ。
そう言うユウに子供じゃないと半分寝ている声でリンは抗議するのであった。
こうして今日も二人の一日は終わっていく。
明日になればまた新しい今日が始まる。
相変わらず客はこないけれど、のんびりと、ゆっくりと一日を生きていく。
それがユウにとっても、リンにとっても何よりも楽しいことなのだ。
だから、今日はゆっくり寝て、また明日ものんびりしよう。
「おやすみなさい、リン」
「おやすみ、ユウ」
――ここは喫茶店『小道』
白い家族達も、ユウ達も、もう夢の中。
素敵な夢を。おやすみなさい──
涼やかな音色が、来客を伝える。
「こんにちは」
「いらっしゃいませー」
迎えたのは彼女の笑顔と、香ばしいコーヒーの香り。
それは、ログハウスに使われている香木の香りと調和して、鼻腔をくすぐるその香りが、「コーヒーを一杯飲んでいこう」という気持ちにさせる。
「というわけでユウちゃん、とりあえず生麦酒を中カップで」
「はい、コーヒーですね、かしこまりましたー」
「えっ、いや、麦……」
「コーヒーですね?」
有無を言わせぬ謎の気迫が篭った笑顔が目の前にある。
「じゃあ、それで……」
かなわないな、という風に肩を竦めて、すごすごとカウンターに座った。
言うが早いか、芳しいコーヒーが注がれたカップが目の前に出される。
「相変わらずおいしいねぇ」
一口飲んで、店内を見渡す。
地面より一段上にある木の床の玄関から入ると、そう広くもない店内があり、正面に店主のユウがいるカウンター、左手には4人がけのテーブルが二つ、右手には大きくとった窓から外を見ることのできる一人がけ、あるいは二人がけの小さなテーブルが3つ並んでいる。
カウンターのすぐ横には住居へと続くと思われる扉がある。その前には、リンと呼ばれている小さなオーガ族の子供がたたずんでいた。
「子供じゃないよ?」
カウンターも広くはない、席が三つあるばかりで、大量の客がきたら、とてもさばくことはできないだろう。
もちろん、立地を考えればここに大量の客が訪れるようなことはありえないのだが。
「余計なお世話ですよね?」
考えていることに対してツッコんでくるのはやめてもらいたいなぁ、と思わず苦笑いする。
「大体そんな事言ったら、こんな辺鄙なお店に足しげく通う、頭からフードを被った怪しげな客が一人、とか言われちゃうんですよ?」
ユウがふっと鼻で笑う。
「余計なお世話ですよねぇ?」
目を閉じて――フードで見えないだろうが――ふっと笑う。
そして、ユウと顔を見合わせて、はっはっはと乾いた笑い声をあげた。
「…お客様、コーヒー、お代わり、あるよ?」
ジト目でみていたリンが客に声をかけてくる。
「おかわりいただけるだろうか?」
「無料じゃないですけどね」
ふふっと笑って、ユウがお湯の入ったビンを火にかけた。
「僕はね、この店とコーヒーが気に入ってるんだ」
「そんな人がどうして、麦酒を注文するんでしょうね?」
リンと同じくジト目をして目の前にコーヒーを差し出すユウ。
「うん、美味い。いやぁ、ほら、よく男の子が好きな女の子をいじめる的な?
ここまでがテンプレっていう――」
「は?」
何言ってるんだこの人、という風に、ユウだけでなくリンまでが呆れたような目線を送ってくる。
「早く何とかしなければ」
リンがぐっと拳を握り締めて呟くと、意を決した表情でローブをぐいぐいと引っ張り始めた。
「ちょ、え、やめるんだ、リンリン!」
「お客様のおかえりですー」
「ひどい!」
「あ、コーヒー2杯と迷惑量で金貨1枚になります」
「たけぇ!」
ローブをぐいぐいと引っ張るリンに噴出しているユウが、追い討ちと言わんばかりに料金の請求をかける。
苦笑いをしながら、それでもひどく楽しくて、ユウやリンとじゃれあうのであった。
──滅多に人の来ない喫茶店「小道」
そこにはとびきり笑顔の女性店主と、小さなウェイトレスがいる。
お勧めはコーヒー。スパイスにはウェイトレスのジト目を沿えて。
「……なんてね?」
美味しかったよ、と一言残してローブの男は帰って行った。
すでに夕暮れ時が迫っていて、窓から差し込む光が紅い。
ユウが伸びをすると、思わず欠伸がでてくる。
「ふぁう……」
「ふあ……」
釣られてかリンも大きな欠伸をこぼしていた。
「あくびって、なんで伝染するんだろうね……」
そんなどうでもいいことを呟いて、自分用に入れたコーヒーを片手にユウは窓側の席に腰掛ける。
陽が山の影に隠れているけれど、空を紅く燃やしていた。陽と反対のほうからは夜が差し迫っていて、東から西へ、黒、青、紅のグラデーションを彩る。
ぼーっとした目でそのグラデーションのうつろう様子を、時折コーヒーに口をつけながらみているユウ。
「のどかだね……」
誰に言うでもなく呟いた――
暗闇が迫ることにおびえるように飛び立っていく小鳥たち。
寂しくないように、と声をあげている虫たち。
四本足の獣は、暗闇が深くなればなるほどその目を光らせて獲物を探し回る。
やがて、空からは紅と青が混ざって紫に染まり、それは黒へと滲んでいく。
風が通り抜けるたびに森の木々がざわざわとかすかに騒いで、やがてまた静かになれば虫たちが鳴き始める。
獣や鳥たちが夜の目を覚まし、動き始めた音が、微かに聞こえてくる。
――今夜もいつもどおりの夜。
いつのまにか隣にはリンがコーヒーのお代わりと自分用のミルクをもって座っていた。
少し大きめの窓にむかって二人並んで山と森の間の草原を眺めている。
月光が二人を照らして、少し薄暗い店内に二人の影を落とした。
二人は何を喋るでもなく寄り添って外を眺めていた――
「あ!」
突然リンが椅子から立ち上がって窓の外を指差した。
「んん?」
指差した窓の外とユウの顔を交互に何度も見ながら、珍しくリンが目をきらきらと輝かせている。
「白い!」
夜空に穴を開けたように光る月の下、微かに小さな獣の姿が見える。
元々人間でないリンにはハッキリと見えているのだろう。
ユウにはそこまでハッキリと見えなかったが、リンの言葉を聴けば、白い獣がこちらをみているという。
「ちっちゃいの、いる!」
その獣の後ろからぞろぞろと列をつくって3,4匹の同じく白いちっちゃい獣が歩いてきた。
「そっかぁ、お母さん、なのかな?」
「お父さん!」
「そっか、お父さんだったかぁ」
珍しく興奮しているリンに、ユウはニッコリと笑みを浮かべた。
小さい子達が喧嘩をはじめたとか、じゃれあってるとか、
お父さんが鼻で割って入ってとめたとか、リンがはしゃいで実況してくる。
ユウはそんなリンに相槌を打ちながら、はしゃぐリンに優しい眼差しをむけていた。
「あ……」
しばらくはしゃいでいたリンが突然落胆したような声をあげた。
「もどった」
白い獣の親子は、十分に子供たちを遊ばせたから、草原から去っていったという。
「ふぁ……」
一通りはしゃいで、獣もいなくなったから、自分の眠気に気づいたリンがおおきなあくびをする。
「ふふ、楽しかった?」
「うみゅ、今度、遊びたい」
「そうだねぇ、混ぜてもらえるといいねぇ」
眠そうに目をこするリンの頭をぽふぽふとしてやった。
「子供じゃないよ?」
「さ、寝ようか? リン」
「うん」
白い獣の子とリン、どちらが早く寝るか競争だ。
そう言うユウに子供じゃないと半分寝ている声でリンは抗議するのであった。
こうして今日も二人の一日は終わっていく。
明日になればまた新しい今日が始まる。
相変わらず客はこないけれど、のんびりと、ゆっくりと一日を生きていく。
それがユウにとっても、リンにとっても何よりも楽しいことなのだ。
だから、今日はゆっくり寝て、また明日ものんびりしよう。
「おやすみなさい、リン」
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