~記憶喪失の私と魔法学園の君~甘やかしてくるのはあの方です

Hikarinosakie

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50:ただの戦いではない~対抗戦~

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いよいよ、対抗戦の日。
アリセアは、会場の記録係の1人として、指定されていた場所に座っていた。

観客席より少しだけ前方にある位置。

隣には他の学年の先輩が座っている。

(いよいよだわ……)

どきどきする鼓動をおさえるように、心臓に当てていた指をぎゅっと握る。

昨日、フォートに楽しみにしてるとは言ったものの、怪我をしないか不安な気持ちも大きい。

アリセアが周りを、見渡すと、観客の生徒も、円になるように椅子に座っていて……。

しん、と不思議と静まり返っている。

(緊張しているのは……皆同じなのね)

代表選手は、まだ、テント内にいるようだ。

そこへーー。

数名の教師が会場となる中心に並びはじめ。

教師全員が、ゆるやかに杖を掲げ、そっと地面へと突き立てた。

「天の柱よ、風と光を導きたまえ──《境界結界・天儀の聖域アストラル・ドメイン》」

その瞬間、校庭に刻まれた魔法陣が白銀の光を放ち、澄んだ鈴の音が空に響きわたる。
空気が脈打つように揺れ、風が優雅に旋回しながら舞い上がり。

やがて──天空から降る光の帯が地上に届き、観客と競技者を包みこむように
“ドーム”のような神聖なフィールドが形成された。

足元の地面は静かに土から姿を変え、石畳がどんどん広がっていく。
静寂と尊厳に満ちた空間が、いまここに“聖なる戦場”として降臨した。

ドーム内側にいたアリセアは、言葉を失って足元を見る。
靴を鳴らすと、コツッと、確かに鳴った。
「本物みたい……」

「皆さん、会場設営完了しました!
それでは、選手が、出てきます」


魔法科の声を届ける風魔法。


今度は、会場にいる生徒たちが一気にわっと歓声をあげる。

ビリビリくる人の声に、アリセアはビクッと体が跳ねた。

「すごいわ……」


アリセアが、そう言いながら出てきた選手を見てみると。


遠目に、フォートが、歩いてきたのが分かった。

所定の位置に立つフォート。

(なんだか、表情が見えない遠い位置でも、彼だと分かる立ち方ね……)

肩の力が抜けたような、そのリラックスした立ち姿が、彼らしくて、くすりと笑った。

しかし、テントから続けて出てきた人物に、アリセアの視線は一瞬で彼に惹き付けられた。
背筋をまっすぐに伸ばし、迷いのない足取りで歩く姿に、胸が高鳴る。
騎士科3年……あの金髪……。

「ユーグ?」

驚いた声を出してしまい、咄嗟に自分の口を手で覆った。

(昨日も今日も、対抗戦に、出るなんて言ってなかったのに)

アリセアが、じっとユーグストをみていると、不思議と、目が合った気がして……。


遠すぎて表情までは見えない――けれど、絶対に笑ってる。
あの、からかうような、でもどこか優しい笑みが、脳裏に甦ってくる。

(……出るんだったら教えて欲しかったな。頑張ってって、応援の言葉もかけれたのに)

絶対見えないだろうからと、安心したからだろうか。

アリセアは、自然と小さく頬を膨らませたのだった。

「もう、ユーグったら……」


*******
「アリセア……」

ユーグストは思わず、笑ってしまいそうになる。

理性で抑えようとするように、口元に手を添えたが――

もう、笑みは隠しきれなかった。

(本当に、アリセアは……俺の理性を簡単に崩してくる)


あんなふうに頬を膨らませる姿は、初めて見た。

実は――悪いと思ったけれど、「遠視」魔法を使って、観客席の隅にいるアリセアを見ていた。

確かに最近の彼女は、以前よりもずっと感情表現に素直になった。

けれど、あんな無防備な仕草を見せるなんて――初めてだった。


昨日、フォートの出場を応援すると、話していた彼女の笑顔。

それに、ほんの少し胸がざわついて。



それは、ほんの出来心だった。

俺が出場する事を黙ってしまったのは。

彼女がどんな反応をするのか、知りたくなったから。



けれど――


「……思った以上だったよ、アリセア」


……俺の想像の、ずっと先を行く。

もう、目で追うことしかできないくらいに。

小さく膨らませた頬、ふてくされたような唇、驚いた瞳。

全部が、いとおしくてたまらない。


(……君を見ていると、心が温かくなるな)


ふっと、ユーグストの表情が柔らかくなった。

「絶対、勝ってみせる。アリセアに...胸を張って、隣に立てるように」

胸ポケットに忍ばせた、それにそっと触れた。

王子の肩書きも、名誉も、剣の腕もいらない。

ただ、“彼女にとっての俺”でありたい。

それだけが、今の俺を突き動かしている。




そうして、ちらりとフォートを見ると、彼と視線が交わった。

彼はすぐに不敵な笑みを浮かべ。

「決勝で」

彼の唇が音をのせずに動く。

「あぁ」
互いに、譲る気など、はじめからなかった。


フォートの自信満々なあの態度……。

やはり、こういう戦いの場に慣れている者の目をしている。

気負う姿はどこにもなかった。

(フォート……まさか、君と堂々と真正面からぶつかりあえる日が来るとは)

あの日...。

彼は俺の水の柱攻撃を避けた。

その彼の実力が分かるーーいい機会だ。

向こうもそう思っているに違いない。



ーアリセア嬢は...俺がもらうー


そして、以前、フォートから言われたあの言葉も。

忘れた日は1度としてなかった。


きっとフォートも、アリセアを想うその強い気持ちで、俺と対峙して来るつもりだろう。

ユーグストは静かに拳を握った。


それは確かな決意ーー。

これは、ただの対抗戦では無い。


アリセアをかけた、想いの強さを表す戦いとなる。


「でも......なんだろうな、この高揚する気持ちは」






「試合開始──!」


教師が手を掲げると、参加者の身体に淡い光が走った。

それは、傷を防ぐ守護のベール。

一見、何も変わらないように見えるが、肉体に直接魔法防護の膜が纏わりついている。

このベールが破られた時──その者の敗北が決まる。



アリセアから見た初戦は、フォートも、ユーグも、難なく相手を倒していた。

楽しそうに唇を歪めながら、気負うことも無く、けれど、迷いのない魔法攻撃を次々に繰り出すフォート。

それに対して、防御に徹し、押される一方の騎士科生徒。


フォートの、軽く笑ったような顔つきに反して、魔法力の展開に関する間口の精度と、相手にぶつかる滝のように放出される水の速度は尋常ではない。
それに。
「軌道に“無駄”が、一切ない...?」

そこが、彼の本質の「底知れなさ」を感じさせる。


それとほぼ同時、別の試合中の、ユーグスト。

剣を構え真剣な表情で、静かに前を見据えていた。

その構え自体......もう、隙がないように見える。

さらには、ユーグの太刀筋は、未来さえ見えているようで、相手が反撃する前にもう次の一手を構えていた。

「相手の動きを...よんでいるのね」

そして彼らしい、正確な打撃を与える剣技を披露。

観客の歓声が耳に入らないほど、アリセアの心が強く揺れた。

「2人とも。す、すごい……」

フォートに関しては普段からその実力を見ていたので、不安もあったけれど安心して見ていられた。

けれど、ユーグストの御業は、初めて見るものばかりで、ドキッとしてしまう。

普段、彼の戦いを見ることもないから、気がつけば目が離せなくて。


迷いのない太刀筋は圧倒的で、対戦相手も負けてはいないものの、如何せん実力が出せていないような気もする。
相手も決して弱くはない。
それどころか、攻めの型も美しい、実力派の魔法科生徒だった。

ユーグストは普段は穏やかで笑みを浮かべているけれど、
今回に限っては真剣な表情で、相手の魔法攻撃を、
魔法を纏わせた剣で、なぎ払い、受け止め。

そして剣技で相手を圧倒する気迫。

相手が怯んでいるような気がする。


淡々と、彼もまた気負うことなく相手にダメージを、追わせていき……ついに。


相手選手のベールが破られた。

(ユーグ、すごい!……かっこいい……)


アリセアはぼうっと見とれてしまった。

ここまで早く終わる試合は見たことがない。


ハッとそこでアリセアは我に返る。

「あ……記録玉に、結果を刻まないと」


記録玉とは公式演習の結果や、トーナメント戦の戦い内容を、魔法で刻む係である。
魔法の流し込みを始めようとしたそのとき――

ふと視線を感じて、顔を上げる。

剣を納めたばかりのユーグストが、観客席のこちらを見ていた。
静かな眼差し。
けれど、どこか優しくて、確かにアリセアを捉えていた。

その瞳に、あたたかな笑みがにじむ。
戦いの張りつめた空気の中で、まるでそこだけが違う時間みたいに、静かに優しかった。

(ユーグも……私を見てくれてたの?)

顔が熱くなって、視線を下げ...ようとしたけれど。

例え聞こえていなかったとしても伝えたくなった。

「ユーグの戦い、かっこよかったです!」

思ったよりも小さな声だったけれど、ユーグが一瞬、驚いたようにみえた。

(え?距離あったけど...もしかして聞こえちゃったかしら)

急に恥ずかしくなって、目を伏せる。

アリセアは、内心の動揺を隠し、そっと玉に触れた。

詠唱し、魔法を流し込んでいく。

得点内容と、技の精度や種類。

先生に確認を取りながら慎重におこなう。

こうして記録玉は、学園に大切に保管され、何かの折には映像を見ることもできるようになっている。

何とか記録を刻み、でも、再びユーグを見る勇気はなかった。


「えっと、フォートは……」

ちらっと、アリセアがそちらを向くと、騎士科相手に最後の追い込みをしているところだった。

フォートが、相手の足元へ風魔法を放ち、相手生徒を吹き飛ばしーー。

床にたたきつけられた瞬間、相手のベールが破られた。

アリセアは、その攻撃の威力に息を呑む。

(すごい!...あれが、フォートの本気なのね)




フォートの結果は、隣にいた先輩が記録玉に記録をしてくださった。

先程までよりも近い場所にいたフォートの横顔が、こちらに向いた。

ニッと嬉しそうに笑いかけてきた彼に、アリセアも笑って拍手したのだった。







***
試合後、フォートがこちらに向かってきて、アリセアの前に立つ。
その表情は先程とは違って、少し緊張しているような表情で、アリセアは違和感を感じた。

(どうしたんだろう)


「さっきの凄かったわね、おめでとうフォート。でも、無理してない?」


それが気になりつつも、アリセアが笑顔を向けて先程の試合を労うと。


「……こんな時に無理しなきゃ、いつ、無理するんだって気持ちで戦ってたからさーーアリセアの、前だし」


真剣な表情の彼の言葉が、アリセアの、心の真ん中に届いた。

その言葉の意味を理解した瞬間、アリセアは酷く動揺し、ドキッと胸が高鳴った。

「……え?」

(私の前だから?)


フォートがその私の表情の変化を、逃すまいとするかのようにじっと見てきて……それから耳もとに顔を近づけ、囁いた。














「俺が、アリセアの視線独占したいっていったら、どうする?」







「独占って……フォート?……も……もちろん、みてるよ?」

その言葉にアリセアの心の中はザワつく。


(どういう事……?)


まさか……。


その意味の可能性に辿りついたアリセアはーーそれでも、首を振る。

フォートが、私のこと……なんて、きっと気のせいだよね?

彼の雰囲気が変わった気がして、アリセアは戸惑いながらも、頬を赤らめ、彼を見上げた。

……けれど、一瞬で視線を横に流した。

「っ、……」

フォートは、そんな、アリセアを、ふっと笑いながらも、切なそうに、目を細める。

「決勝……本気で勝つから」

「う、うん!頑張って」
彼の気迫に驚きつつも、ゆっくりと頷く。

彼が去っていった後、ユーグストの方をみると、彼もこちらを見ていてーー。

「ユーグ……」
アリセアは、不安そうな表情でユーグを見つめた。


*******



アリセアに近付くフォートが見えて、ユーグストの眉がピクリと反応する。


「またか」



飄々としながらも、ここぞと言う時は、アリセアに踏みこんでくるフォート。

先程の彼は、アリセアに対して、本気なんだということが分かる、男の表情だった。

「フォート……やはり、油断ならないな」

彼女に気持ちを仄めかしたのだろうか。


アリセアが、困惑しながらも頬を染めたのを見て、胸が傷んだ。

しかし、それも一瞬で、アリセアは彼から目を逸らした。


そして最後には縋るようにオレを見つめてくれた。

その視線が、どれほど救いだったか──彼女には、まだ言えない。

それに...。先程の言葉。

ーユーグの戦い、かっこよかったです!ー


風魔法で声を拾わずとも、唇の動きを読めたユーグにとって、彼女の言葉の破壊力といったら...。

胸が、じんわりと熱くなった。

確かに、不安ではないかと言われれば嘘になる。

それでも、アリセアがどんなに誰かに心を傾けようが、ただ、真っ直ぐにアリセアと向き合うだけだ。


「アリセア……今はそれだけで……充分だよ」

ユーグは、意識的に、深呼吸をして、精神を落ち着かせる。

「絶対に勝つ……例えアリセアが揺らいでも、それさえなくしてみせるよ」



ユーグストは決勝に向けて静かな闘志を燃やし、次の試合に臨んだ。

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