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2 学園編

71 聖女の自由

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「まあ、殿下をからかうのもここまでにいたしましょう」
カラカラとヴィダル先生が笑った。
「幼い頃から意地っ張りな性格は変わりませんな」

「くそっ。相変わらずだな、教授。」
「鉄面皮をゆさぶることができるのは私だけだと思っておりましたが、新たにもっと殿下を動揺させる存在が現れた、と」
「ち、違うぞ、たまたま、ちょっと、その、だ」
ハルヴァートは耳が熱くなるのを必死で抑えようとしたが、どうにもならない。
そもそも、耳をどうしたらコントロール出来るというのだ!
しかも、心臓がおかしくなったように激しく鼓動している。
平常心、平常心、そう、ここにいるのは騎士団の‥‥‥

「ヴィダル先生は、殿下の家庭教師をしてらっしゃったんですよ。今回も殿下にご紹介いただきましたの。一番信頼の置ける神学教授を、と」
タチアナ様がこっそりとステラに耳打ちをしている。
「あんなに仲がよろしかったなんて知りませんでしたわ」

(よ、余計なことを、タチアナ・グラン!黙ってろ!)
騎士団員の妄想に頼ろうと思っていたハルヴァートはタチアナに邪魔されて、動揺を収めることができなかった。
腹立ち紛れに冷気を飛ばすがタチアナはどこ吹く風だ。
この間まで、同じことをすれば小さくなっていたはずなのに。
なぜこんなに舐められているのだ。くそっ。イラつく。

ステラは面白がっているタチアナと教授をちょっと驚きながら見ていた。
(え、仲がいいっていうか、教授ハル様のこといじめてない?タチアナ様も教授も絶対面白がってるよね?おもちゃ的に。)

教授はしたり顔でハルヴァート殿下に話しかける。
「しかしながら!聖女様に結婚を強要することはできませんぞ。殿下!そのようなことをしたら聖女の自由を奪い、心が死んでしまいます。聖女様が不幸になると、国が安定しなくなります。それに聖女様にしてみても、国外に脱出する、永久に連絡を断つなどいろいろな方法で逃げることは可能ですからな?教団の信者一同は聖女様を熱烈に支援致しますし!もちろん私もです。」
「ぐううう」くそっ、ヴィダルめ。相変わらず食えないやつだ。ハルは心の中で歯噛みした。

「聖女様。いえ、ステラ様とおよびした方がよろしいかな?我が生徒殿」
ヴィダル先生が私に優しく話しかけてくる。ちょっと、ハル様に対する態度と私に対する態度の違いがやばい。
「ステラとお呼びください」私はそっと答えた。

教授は大きく頷くと話を続けた。
「とはいえ、今すぐに殿下との婚約を解消するのが得策とはいえないことはお分かりでしょう。まだまだ、あなた様は中等部の生徒にすぎず、殿下の庇護により守られていることも多くあります」
「はい。それは理解しております」
「よろしい」

「殿下も私の可愛い弟子なのです。そして可愛い弟子の幸せを望むのもまた当然のこと。ただ、ステラ様もまた我が教え子です。時間をかけて二人で幸せになる道を探すか、それとも別の道を歩むのかを決めなさい。どちらにしても、自分の頭と心で考えて道を探すのです。世に定められた道はありません。全てが自分が選んだ道なのです。成功の喜びも後悔の悲しみも、自分で選んだことにより初めて自分に対して責任を負うことができるのですから」

「はい、先生」
「わかりました」
ハル様も諦めたように答えた。

「我が弟子が聖女様のお心を掴めるように期待しておりますぞ。殿下!」
そう言うとヴィダル先生はカラカラと声を立てて笑った。

「くそっ」殿下は小さな声で毒づくと大声で答えた。
「ははは、もちろんですよ。師匠殿。この私に不可能なことがあるとお思いか!」
「この勝負どうなるか、楽しみにしておりますぞ!我が弟子よ!」

はーっはっはっは!
殿下とヴィダル先生は大声で張り合うように笑い、睨み合った。
仲がいいんだか悪いんだかわからないけど。
まあ、仲がいいんだよね?この二人。
なんだか、似た者同士に見えてきたけど、大丈夫かなあ?


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なかなかラブくならなくてすみません。
いつか、そのうちラブい展開があるといいなと期待しています。

ちょっと凹んでいた時期に先生の言葉で私(作者)が励まされてしまいました。不思議です。
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