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第七十八話 危険
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「ねえ、リオ。エミリア様を見かけなかった?」
エミリアの侍女が焦った様子でリオに話しかけてきた。
「ちょっと席を外したすきにエミリア様がお席にいらっしゃらなくなってしまって」
「え?なぜ?お席で食事を召し上がってたんじゃないのか?」
今日はリオはアウレリオのそばで控えていたので、エミリアの様子は見ていなかった。
侍女は唇をかんだ。
「ほんのちょっとだけ・・・ワインを飲まないかって誘われて・・・本当に、ほんの一口だけだったのよ」
「え、だめじゃないか。主人の傍を離れるなんて」
「わかってるわよ!そんなこと。でも、王宮の人にしつこく誘われて、断り切れなくて・・・」
「とにかく、エミリア様を探さないと」
「私はお嬢様の席の近くの方に聞いてみるから、あんたは外を探してくれない?」
「そうしよう」
リオはさっと踵を返し、駆け出した。
その姿を、アウレリオは見逃さなかった。
周りの貴族たちにしつこく話しかけられ続けいい加減うんざりしていたところだ。
(何かあったのか?)
無意識に剣があるはずの場所に手を置き、そういえばここに入るときに武器を預けたことを思い出す。
王宮の中で武器を手にすることができるのは、王族の護衛騎士か警備兵だけ。
ナイフを手に取りそっとズボンに隠すと、無言で立ちあがった。
「どうなさったんですか?」
「いえ、少し外の空気を吸いに」
「まあ、それはよかった。ちょうどわたくしも新鮮な外の空気を吸いたいと思ったところでしたの」
第三王女がにこやかに話しかけてきた。
面倒だ、と思ったが、次々にとりまきの貴族たちが立ち上がった。
「私もそうしたいと思ったところでした」
「わたしも」
「よろしければご一緒に」
「まぁ」第三王女は一瞬困ったような顔をしたが、さっと笑顔に変えた。
「それでは皆さん一緒に参りましょうか。アウレリオ様もぜひご一緒に」
「いや、私は」
「ほら、さっさとエスコートしなさい。第三王女様からのご指名なのですよ」
とりまきのひとりにたしなめられ、いやいや手を差し出すと、王女はふんわりとほほ笑んだ。
「ご迷惑だったかしら?」
「とんでもない。光栄です」
アウレリオとて、この程度の社交辞令は心得ている。ただし、あっさりとしか言えないが。
しかし、歯の浮くようなお世辞ばかり言われている王女からすると、そのそっけなさが新鮮だった。
アウレリオと第三王女とその取り巻きたちが、ぞろぞろと庭園に向かう。
「とても良い夕べですね」
「夜さえも王女様をお慕いしているからでしょう」
取り巻きが次々に話しかけてくるが、王女はあいまいにうなずきながら、アウレリオを見つめた。
(どうしてわたくしを見ないのかしら?もっとお話ししてみたいのに・・・)
「王宮は騒がしいですか?」話題を自分から提供したことのない王女が懸命に考え、小声で話しかけると、アウレリオはちらりと見た後、またそっぽを向いてしまった。なにか答えたようだが、よく聞こえない。
いつも自分の視線を欲しがる人ばかりに囲まれてきたので、こんなにそっけない人がいるなんて思ったこともなかった。自分がほほ笑みかければ、有頂天になる人ばかりだというのに。
アウレリオは何かを探すように視線を配り、王女には見向きもしない。
だが、皮肉にも、アウレリオのその態度が王女の心に火をつけた。絶対に振り向かせなくては気が済まない。
「わたくしは」王女が口を開いた瞬間、どこかから叫び声が聞こえた。
「失礼」アウレリオは王女の手を後ろにいた取り巻きの一人に預けると、大股に走り去ってしまった。
「まぁ!」
「なんて失礼な」
かんかんに怒った取り巻きの声が聞こえる。
だが、アウレリオはそれどころではなかった。
(リオの声だった・・・!!)
**********
「あんたは外を探してくれない?」
そういわれたリオは、エミリアの席から一番近い扉から外に出た。
そこは中庭とつながる回廊でずいぶんと薄暗い。
(こんなところに、お嬢様が?)
そうは思ったが念のため、近くをざっと見て回ることにした。
まさか、中庭には出ていらっしゃらないだろう。であれば、回廊につながるどこか?それとも反対側なのか。
リオはきょろきょろとあたりを見回し、不自然にろうそくが消えているランプがあることに気が付いた。
今日は第三王女の誕生パーティー、つまり王家の主催行事なのに、廊下のろうそくが消えているなんて。
廊下の端で何かが光った。
何だろう、と近づいてみると、それはエミリアの舞踏会用の靴だった。
ドレスが地味だから、靴だけは華やかにして、パーティー気分を味わいたいの、と笑っていた。
(どこだ?エミリア様。この近くを通ったはずだ)
近くにあったランプからろうそくを拝借し、真っ暗な廊下を進む。突き当りに、別棟があった。
目を凝らすと、その建物のなかでぼんやりとあかりが揺れている。
(誰かいる・・・まさか!)
リオはゆらめく明かりめがけて駆け出した。
勘違いであってほしい。そんなところにはいないでほしい。
まさか・・・リオは最悪の考えを振り払った。
どうか、間に合いますように。
『あなたが私付きになってくれて、とてもうれしいわ』
『ありがとう、リオ』
大嫌いになりたかった、でも、あまりにもいい方で嫌いになれなかった。
アウレリオ様とご結婚なさるのが、エミリア様ならば耐えられるとまで思っていたのに。
「お嬢様!」
リオが離れの扉に飛び込むと、そこには三人の男がいた。
床には酒瓶がころがり、男たちの着衣は乱れている。
下卑た笑いを浮かべながら話している内容は、令嬢には聞かせられないほど下品だった。
「なんだぁ?邪魔するな」
男が酒臭い息を吐きながらリオに近づくと、部屋の奥にベッドが見え、若草色のドレスが見えた。
スカートには白い花が縫い留められている。
「お前たち、何をしているんだ!!」
***********
ありがとうございました。
昨日書いておいたのでぎりぎりセーフ!
♡と広告も、いつもありがとうございます!
エミリアの侍女が焦った様子でリオに話しかけてきた。
「ちょっと席を外したすきにエミリア様がお席にいらっしゃらなくなってしまって」
「え?なぜ?お席で食事を召し上がってたんじゃないのか?」
今日はリオはアウレリオのそばで控えていたので、エミリアの様子は見ていなかった。
侍女は唇をかんだ。
「ほんのちょっとだけ・・・ワインを飲まないかって誘われて・・・本当に、ほんの一口だけだったのよ」
「え、だめじゃないか。主人の傍を離れるなんて」
「わかってるわよ!そんなこと。でも、王宮の人にしつこく誘われて、断り切れなくて・・・」
「とにかく、エミリア様を探さないと」
「私はお嬢様の席の近くの方に聞いてみるから、あんたは外を探してくれない?」
「そうしよう」
リオはさっと踵を返し、駆け出した。
その姿を、アウレリオは見逃さなかった。
周りの貴族たちにしつこく話しかけられ続けいい加減うんざりしていたところだ。
(何かあったのか?)
無意識に剣があるはずの場所に手を置き、そういえばここに入るときに武器を預けたことを思い出す。
王宮の中で武器を手にすることができるのは、王族の護衛騎士か警備兵だけ。
ナイフを手に取りそっとズボンに隠すと、無言で立ちあがった。
「どうなさったんですか?」
「いえ、少し外の空気を吸いに」
「まあ、それはよかった。ちょうどわたくしも新鮮な外の空気を吸いたいと思ったところでしたの」
第三王女がにこやかに話しかけてきた。
面倒だ、と思ったが、次々にとりまきの貴族たちが立ち上がった。
「私もそうしたいと思ったところでした」
「わたしも」
「よろしければご一緒に」
「まぁ」第三王女は一瞬困ったような顔をしたが、さっと笑顔に変えた。
「それでは皆さん一緒に参りましょうか。アウレリオ様もぜひご一緒に」
「いや、私は」
「ほら、さっさとエスコートしなさい。第三王女様からのご指名なのですよ」
とりまきのひとりにたしなめられ、いやいや手を差し出すと、王女はふんわりとほほ笑んだ。
「ご迷惑だったかしら?」
「とんでもない。光栄です」
アウレリオとて、この程度の社交辞令は心得ている。ただし、あっさりとしか言えないが。
しかし、歯の浮くようなお世辞ばかり言われている王女からすると、そのそっけなさが新鮮だった。
アウレリオと第三王女とその取り巻きたちが、ぞろぞろと庭園に向かう。
「とても良い夕べですね」
「夜さえも王女様をお慕いしているからでしょう」
取り巻きが次々に話しかけてくるが、王女はあいまいにうなずきながら、アウレリオを見つめた。
(どうしてわたくしを見ないのかしら?もっとお話ししてみたいのに・・・)
「王宮は騒がしいですか?」話題を自分から提供したことのない王女が懸命に考え、小声で話しかけると、アウレリオはちらりと見た後、またそっぽを向いてしまった。なにか答えたようだが、よく聞こえない。
いつも自分の視線を欲しがる人ばかりに囲まれてきたので、こんなにそっけない人がいるなんて思ったこともなかった。自分がほほ笑みかければ、有頂天になる人ばかりだというのに。
アウレリオは何かを探すように視線を配り、王女には見向きもしない。
だが、皮肉にも、アウレリオのその態度が王女の心に火をつけた。絶対に振り向かせなくては気が済まない。
「わたくしは」王女が口を開いた瞬間、どこかから叫び声が聞こえた。
「失礼」アウレリオは王女の手を後ろにいた取り巻きの一人に預けると、大股に走り去ってしまった。
「まぁ!」
「なんて失礼な」
かんかんに怒った取り巻きの声が聞こえる。
だが、アウレリオはそれどころではなかった。
(リオの声だった・・・!!)
**********
「あんたは外を探してくれない?」
そういわれたリオは、エミリアの席から一番近い扉から外に出た。
そこは中庭とつながる回廊でずいぶんと薄暗い。
(こんなところに、お嬢様が?)
そうは思ったが念のため、近くをざっと見て回ることにした。
まさか、中庭には出ていらっしゃらないだろう。であれば、回廊につながるどこか?それとも反対側なのか。
リオはきょろきょろとあたりを見回し、不自然にろうそくが消えているランプがあることに気が付いた。
今日は第三王女の誕生パーティー、つまり王家の主催行事なのに、廊下のろうそくが消えているなんて。
廊下の端で何かが光った。
何だろう、と近づいてみると、それはエミリアの舞踏会用の靴だった。
ドレスが地味だから、靴だけは華やかにして、パーティー気分を味わいたいの、と笑っていた。
(どこだ?エミリア様。この近くを通ったはずだ)
近くにあったランプからろうそくを拝借し、真っ暗な廊下を進む。突き当りに、別棟があった。
目を凝らすと、その建物のなかでぼんやりとあかりが揺れている。
(誰かいる・・・まさか!)
リオはゆらめく明かりめがけて駆け出した。
勘違いであってほしい。そんなところにはいないでほしい。
まさか・・・リオは最悪の考えを振り払った。
どうか、間に合いますように。
『あなたが私付きになってくれて、とてもうれしいわ』
『ありがとう、リオ』
大嫌いになりたかった、でも、あまりにもいい方で嫌いになれなかった。
アウレリオ様とご結婚なさるのが、エミリア様ならば耐えられるとまで思っていたのに。
「お嬢様!」
リオが離れの扉に飛び込むと、そこには三人の男がいた。
床には酒瓶がころがり、男たちの着衣は乱れている。
下卑た笑いを浮かべながら話している内容は、令嬢には聞かせられないほど下品だった。
「なんだぁ?邪魔するな」
男が酒臭い息を吐きながらリオに近づくと、部屋の奥にベッドが見え、若草色のドレスが見えた。
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「お前たち、何をしているんだ!!」
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ありがとうございました。
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