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第二十五話 近づく心
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アウレリオが魔力をこめた雪だるまは、その後一週間も溶けずに形を残した。
さすがのリオにも分かる。
(若様は、魔法使いなんだ・・・)
はじめて会ったとき、聞かれたことを思い出す。
”お前の一族は魔力を持っているのか?”
魔力なんてあるわけない。そういえば、あのとき、目のことを何か言っていたような・・・
若様の瞳、金色に光ってきれいだったなぁ。
多分、あの瞳と魔力とがなにか関係があるんだろう。そして、魔法使いは追放されたって話とも。
よくわからないけど、誰にも言っちゃいけない。
アウレリオに届ける軽食のワゴンを押しながら、ぼんやりと考える。
窓の外から見える景色は、ほんの数日で随分変わった。
雪は消え、通路や使用人たちのスペースで黄色のたんぽぽをよく見かけるようになった。空色の小さな花たちも。
若様の瞳のような、空にもにた小さな空色の花を見かけるたび、リオは心がぽかぽかする気分を味わった。
(俺は幸せものだな。あんなにお優しい主人にお仕えすることができて。噂なんて、うそばかりだ)
確かにアウレリオは愛想はない。大抵のことには無関心で、冷たい態度を崩さない。
だが、一度も理不尽に殴られたこともものを投げられたこともなかった。
「失礼いたします」
午前の授業が休憩に入ると告げられ、勉強部屋に入ると、アウレリオと家庭教師がいた。
大抵の場合、家庭教師は別室で軽食を取る。
アウレリオに招かれれば別だが、身分がちがうので一緒に食べることはまずなかった。
音を立てないようにワゴンを広げ、紅茶を入れている間に、家庭教師は退出し、アウレリオと二人きりになった。
「今日はどちらをお召し上がりになりますか?」
アウレリオが無言でいちごジャムののったクッキーを指差し、リオが毒見する。
以前とは違い、慌てて食べたりはしない。銀のさらに移し、変色しないことを確認してから、においを嗅ぎ、少しだけ口に含む。舌先でかけらを転がして・・・
「はい、今日も美味しいです!」
リオが笑顔で報告すると、アウレリオの顔がふわっとゆるんだ。
「まあ、座れ」
アウレリオが自分の座っているソファーの座面を軽く叩いた。
「え!そんなご無礼は・・・」
「命令だ。今すぐ座れ」
「は、はい・・・」
リオは急いでアウレリオの横に浅く腰掛けた。
(ご、ご命令だから・・・こ、これはご命令だからで、しかたなく)
「落ち着け」
アウレリオが抑揚のない声でつぶやき、同時にリオの口にクッキーを押し込んだ。
「あわわ」
食べないと、床に落としてしまう。ああ、でも若様がクッキーを、しかも、俺が一番すきなやつ・・・ジャムののったバタークッキー・・・あああ・・・むしゃむしゃ、ごっくん。
アウレリオはその姿を横目で見て、また次のクッキーを口の中に押し込んできた。今度はチョコレート味・・・口に押し込まれたクッキーを無言で頬張るリオを、アウレリオはじっと見ている。
「まるで、りすのようだな」
りす?とは思ったが、口の中はクッキーで一杯で何も話せない。
「面白い、とは思うが、”きれい”とは未だにわからんな」
リオはクッキーをなんとか飲み込んで言った。
「きれいなのは若様です!」
「は?」
「若様の空色の瞳もきれいですけど、金色に光ったときはそれはきれいで・・・若様は、多分、メイの次ぐらいにきれいだと思います!」
「メイ?」
「メイはいつも親切にしてくれた村の人で・・・」
「若い女か?」
「さあ?年は知りません。大人の息子が三人いて・・・」
「では結構な年だろう。年取った女がきれいだと?」
「はい!とてもきれいでした!」
「ふうん」
アウレリオはメイという村女がどんな顔をしているのか、想像もつかなかった。
まあいい、後で調べさせればいいことだ。そんなことより。
「恐ろしくないのか?」
「恐ろしい?」
「私の母は、産まれてすぐに私の金色の瞳を見た瞬間、私を捨てた。気味が悪い、化け物だと」
「俺・・・いえ、ぼく・・・わからないです。なんで奥様がそんなふうに感じるのか。星みたいにきらめいて、ほんとうにきれいで・・・」
「村の老女の次にか」
「はい!そうです!」リオは自信たっぷりに答えた。「だれだってそう思うに決まってます!でも、俺、ちゃんと誰にも言ってませんから!若様との約束を守ってます!あ、俺じゃなくてぼくですけど!」
「・・・そうか」
アウレリオは考え込むようにぽつりと言った。
「まあ、母親は嫌っているが、父親は関心がないだけで・・・私の瞳を見た父は、私にリカルドの名を授けた。リカルドはこの家で伯爵位を継ぐものにのみ与えられる名で、私だけがその名を与えられたことに毒蛇は腹を立てているんだ」
「どくへび・・・?」
「父の第二夫人のことだ。あの女は息子に伯爵位を継がせたくて仕方がないんだ。当の本人がどう思っているのかは知らんが」
「どくへび・・・ぴったりですね!あ、これも言っちゃいけないですよね?おれ、じゃなくてぼく、黙ってますから!」
「・・・俺でいい」
「でも、侍従長に怒られるんです・・・」リオはしゅんとなった。「俺は自覚が足りないって」
「・・・そうか」
アウレリオはリオの頭の上に手を伸ばし、そっと栗色の巻き毛を撫でた。
「では、侍従長がいないところで。これも黙ってろよ?」
「はい!」
リオがうれしそうに笑うと、アウレリオの胸の奥で何かがコトリと音を立てた。
「お前がここに来てから、もうどれくらいたった?」
「そろそろ一年になります」
「そうか、よく生き延びたな。なにか褒美をやろう。なにがいい?」
何なら家に帰ってもいい、と言ってやりたかったが、どうしても言葉が口から出てこない。
だが、それを望むのなら叶えてやるつもりだった。
「なんでもいいんですか?」
「私のできる範囲ならな」
「・・・ひとつだけ、お願いがあります」
************************
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました♪
♡と広告もありがとうございます!
本当にはげまされていますᕦ(ò_óˇ)ᕤ
明日から月曜日ですね。
そしてなんと12月です。
のこりひと月となりました……あわわ
皆さんの今年最後のひと月が素敵な月になりますように(*^^*)
さすがのリオにも分かる。
(若様は、魔法使いなんだ・・・)
はじめて会ったとき、聞かれたことを思い出す。
”お前の一族は魔力を持っているのか?”
魔力なんてあるわけない。そういえば、あのとき、目のことを何か言っていたような・・・
若様の瞳、金色に光ってきれいだったなぁ。
多分、あの瞳と魔力とがなにか関係があるんだろう。そして、魔法使いは追放されたって話とも。
よくわからないけど、誰にも言っちゃいけない。
アウレリオに届ける軽食のワゴンを押しながら、ぼんやりと考える。
窓の外から見える景色は、ほんの数日で随分変わった。
雪は消え、通路や使用人たちのスペースで黄色のたんぽぽをよく見かけるようになった。空色の小さな花たちも。
若様の瞳のような、空にもにた小さな空色の花を見かけるたび、リオは心がぽかぽかする気分を味わった。
(俺は幸せものだな。あんなにお優しい主人にお仕えすることができて。噂なんて、うそばかりだ)
確かにアウレリオは愛想はない。大抵のことには無関心で、冷たい態度を崩さない。
だが、一度も理不尽に殴られたこともものを投げられたこともなかった。
「失礼いたします」
午前の授業が休憩に入ると告げられ、勉強部屋に入ると、アウレリオと家庭教師がいた。
大抵の場合、家庭教師は別室で軽食を取る。
アウレリオに招かれれば別だが、身分がちがうので一緒に食べることはまずなかった。
音を立てないようにワゴンを広げ、紅茶を入れている間に、家庭教師は退出し、アウレリオと二人きりになった。
「今日はどちらをお召し上がりになりますか?」
アウレリオが無言でいちごジャムののったクッキーを指差し、リオが毒見する。
以前とは違い、慌てて食べたりはしない。銀のさらに移し、変色しないことを確認してから、においを嗅ぎ、少しだけ口に含む。舌先でかけらを転がして・・・
「はい、今日も美味しいです!」
リオが笑顔で報告すると、アウレリオの顔がふわっとゆるんだ。
「まあ、座れ」
アウレリオが自分の座っているソファーの座面を軽く叩いた。
「え!そんなご無礼は・・・」
「命令だ。今すぐ座れ」
「は、はい・・・」
リオは急いでアウレリオの横に浅く腰掛けた。
(ご、ご命令だから・・・こ、これはご命令だからで、しかたなく)
「落ち着け」
アウレリオが抑揚のない声でつぶやき、同時にリオの口にクッキーを押し込んだ。
「あわわ」
食べないと、床に落としてしまう。ああ、でも若様がクッキーを、しかも、俺が一番すきなやつ・・・ジャムののったバタークッキー・・・あああ・・・むしゃむしゃ、ごっくん。
アウレリオはその姿を横目で見て、また次のクッキーを口の中に押し込んできた。今度はチョコレート味・・・口に押し込まれたクッキーを無言で頬張るリオを、アウレリオはじっと見ている。
「まるで、りすのようだな」
りす?とは思ったが、口の中はクッキーで一杯で何も話せない。
「面白い、とは思うが、”きれい”とは未だにわからんな」
リオはクッキーをなんとか飲み込んで言った。
「きれいなのは若様です!」
「は?」
「若様の空色の瞳もきれいですけど、金色に光ったときはそれはきれいで・・・若様は、多分、メイの次ぐらいにきれいだと思います!」
「メイ?」
「メイはいつも親切にしてくれた村の人で・・・」
「若い女か?」
「さあ?年は知りません。大人の息子が三人いて・・・」
「では結構な年だろう。年取った女がきれいだと?」
「はい!とてもきれいでした!」
「ふうん」
アウレリオはメイという村女がどんな顔をしているのか、想像もつかなかった。
まあいい、後で調べさせればいいことだ。そんなことより。
「恐ろしくないのか?」
「恐ろしい?」
「私の母は、産まれてすぐに私の金色の瞳を見た瞬間、私を捨てた。気味が悪い、化け物だと」
「俺・・・いえ、ぼく・・・わからないです。なんで奥様がそんなふうに感じるのか。星みたいにきらめいて、ほんとうにきれいで・・・」
「村の老女の次にか」
「はい!そうです!」リオは自信たっぷりに答えた。「だれだってそう思うに決まってます!でも、俺、ちゃんと誰にも言ってませんから!若様との約束を守ってます!あ、俺じゃなくてぼくですけど!」
「・・・そうか」
アウレリオは考え込むようにぽつりと言った。
「まあ、母親は嫌っているが、父親は関心がないだけで・・・私の瞳を見た父は、私にリカルドの名を授けた。リカルドはこの家で伯爵位を継ぐものにのみ与えられる名で、私だけがその名を与えられたことに毒蛇は腹を立てているんだ」
「どくへび・・・?」
「父の第二夫人のことだ。あの女は息子に伯爵位を継がせたくて仕方がないんだ。当の本人がどう思っているのかは知らんが」
「どくへび・・・ぴったりですね!あ、これも言っちゃいけないですよね?おれ、じゃなくてぼく、黙ってますから!」
「・・・俺でいい」
「でも、侍従長に怒られるんです・・・」リオはしゅんとなった。「俺は自覚が足りないって」
「・・・そうか」
アウレリオはリオの頭の上に手を伸ばし、そっと栗色の巻き毛を撫でた。
「では、侍従長がいないところで。これも黙ってろよ?」
「はい!」
リオがうれしそうに笑うと、アウレリオの胸の奥で何かがコトリと音を立てた。
「お前がここに来てから、もうどれくらいたった?」
「そろそろ一年になります」
「そうか、よく生き延びたな。なにか褒美をやろう。なにがいい?」
何なら家に帰ってもいい、と言ってやりたかったが、どうしても言葉が口から出てこない。
だが、それを望むのなら叶えてやるつもりだった。
「なんでもいいんですか?」
「私のできる範囲ならな」
「・・・ひとつだけ、お願いがあります」
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そしてなんと12月です。
のこりひと月となりました……あわわ
皆さんの今年最後のひと月が素敵な月になりますように(*^^*)
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