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第三十二話 恋の自覚
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(なんで、なんで?アウレリオ様のベッドの中で、こんなの不忠だと思われる・・・いや、気持ち悪いと思われたらどうしよう。従者失格だって追い出されるかもしれない。ああ、どうしよう、どうしよう・・・)
リオはアウレリオに身体の中心部が触れないように、腰をそろそろと後ろに引いた。
アウレリオはリオの暖かさが心地よかったのか、目をつむりウトウトしている。
「大人しくしろ」
一瞬目を開き、また、眠ってしまった。
アウレリオ様は、俺をただの「ゆたんぽ」としてお使いになっているだけなのに、腕に抱かれて発情している自分をどうしたらいいのかわからない。
だけど、リオの中心はパンパンにいきり立ち、油断したらこすりつけてしまいそうだ。
(ああ、つらい・・・これは、一種の拷問かも・・・)
アウレリオの寝息が定期的になり、すっかり眠りに落ちるまで、リオは人間ゆたんぽとして微動だにせず、息を殺していた。
もともと、アウレリオは不眠の気があるので、こんなにすぐに深く眠ることはない。
いつも忙しく動き回っているリオは、布団に入ればすぐに眠ってしまうが、時々目が覚めるとアウレリオが部屋の中を歩き回っていることがあった。
そんなときは、金色の目をしていたり、金色の粉のようなものがアウレリオの周りを舞っていることもあり、触れてはいけない部分なんだろうと、寝たふりをしているうちにまた眠ってしまった。
だが、今日は。
力の抜けたアウレリオはいつもより幼く見える。
眠っている頬に口づけたい。頬を触りたい。髪を撫でたい。
そんな気持ちがあふれだし、止まらなくなる。
(ああ、俺はどうしたら)
ただの召使いのリオからアウレリオに触れるなど、もってのほか。
不敬だと斬り殺されても文句は言えない。
だけど、こんなに深く眠っているならバレないんじゃないか?
誘惑に負け、そっと腕を伸ばす。指先で髪の先に触れると、胸が高鳴った。
(俺・・・俺、アウレリオ様が好きなんだ)
その瞬間、はっきりと自覚した。
いつもアウレリオのそばにいたくて、自分の知らないアウレリオがいることに耐えられなかった、その理由。
毎年給金をはたいて聖者様の日にはプレゼントを用意する理由。
毒見係をして、自分がアウレリオを守る役目を誰にも譲りたくなかった理由。
(ああ、そういうことだったのか)
同時にそれは失恋を意味していた。
叶うわけのない初恋は、淡く消え去るのみ。
(アウレリオ様・・・)
未練がましく手を伸ばす。
髪の先に触れれば、もっと触りたくなる。
ほほに触れれば、次は唇に触れたくなる。
唇に触れれば次は口づけを。
そして、その他の場所にも触れたくなる。
使用人たちがこそこそ逢引をしている現場に出くわしたこともあれば、噂を聞いたこともある。
恋人たちがどんなことをして愛を伝えるのか、リオだって頭では知っていた。
(ごめんなさい、一度だけ、許してください)
心の中であやまり、そっと髪の先に口づけた。
「なんだ・・・?」
アウレリオが目を開け、リオをじっと見ていた。
「あ、あ、あ、あの!」
どういいわけしたらいいんだろう。リオの心臓は今にも口から飛び出しそうだ。ベッドから転げ落ちて逃げ出したい。でも、アウレリオの視線からはそう簡単に逃げられなかった。
「む、虫が・・・」
「虫・・・?」
「そう、大きな虫がいたんです!なので、追い払おうと・・・!」
「真冬に・・・虫?」
「そ、そう、真冬なのに・・・」
「わかったから、寝ろ。明日も早いだろう」
「はい、もちろん・・・」
目を白黒させながら、なんとか言い訳を考えたが、納得してもらえたのかわからない。
アウレリオがまた目をつむったので、リオはそっと身体を寄せた。アウレリオが眠ったら、今度は身体を離して、自分の藁布団に戻ろう。
(そう、アウレリオ様がお眠りになったら・・・)
人肌が一番あたたかい。アウレリオ様の言う通りだ。それが最後の記憶で、はっと目覚めると、もう日が高く昇っていた。
(まずい!)
リオは慌ててベッドから降りようとしたが、アウレリオがリオの腰に手を回した。
「ここにいろ」
「でも、朝のお水を・・・」
「今は水よりも・・・寒い」
「では、暖炉に火を」
「いいから」
アウレリオに半ば引きずり込まれるようにベッドに戻されてしまい、また腕の中にすっぽりと閉じ込められてしまった。
「お前は温かいな」
「アウレリオ様・・・」
吸い寄せられるように頬を寄せ、鼓動を聞く。
温かいのはアウレリオ様ですよ、こころのなかだけでつぶやき、この貴重な瞬間を逃すまいと抱きついた。
俺が女ならば、愛人にでもしていただけたのかな。どこかに小さな家をいただいて、アウレリオ様の帰りを待つ暮らし。それもいいかも。でも・・・
がしゃん、と金属がゆかに当たる音がして一気に現実に帰った。
「あ、アウレリオ様・・・リオ・・・何を・・・」
リオはベッドの上に飛び起きた。
朝、アウレリオの洗顔用の湯を持ってきた侍従が、水差を床に取り落としていた。
「そんな、まさか・・・」
侍従も従僕も呆然として、入口に立ちすくんでいる。
「あ、アウレリオ様、お戯れとしても・・・リオは・・・」
「ちがいます!」
「落ち着け。扉を閉めろ」
困り果てたリオの声と落ち着き払ったアウレリオの声が重なった。
侍従ははっと我に返り、「失礼しました」と小声で言うと扉をしめた。
「誤解だ。なにもない。ただ、昨夜寒すぎただけだ」
アウレリオが冷静な声で告げると、侍従ははっとした。
「もちろんでございますとも。そうだと思っておりました。おい、お前」侍従が洗顔ボウルを運んでいた従僕に声をかけた。「余計なことは口外するんじゃないぞ。今すぐもう一杯湯を持って来い」「はい」従僕が部屋を出ると、侍従はアウレリオに近づいた。
「若様。なりませんぞ。誤解だとしても、敵につけこまれるようなことをなさってはいけません」
「わかっている」
「若様のような未婚の男性に、男色の噂が立ってはなりません。よろしいですよね」
侍従はリオをにらみつけた。
「お前!いつまで若様のベッドにいるんだ。さっさと仕事に入れ!」
「は、はい!」
リオはベッドから飛び降りた。
「お前、男色なのか?」
「え?」どきんと大きく胸が鳴った。アウレリオが好きだと自覚したばかりだけど、それは男色、ということなんだろうか。
「どうなんだ」侍従の目の色を見て分かった。もし、ここでうなずいたら、自分はアウレリオから遠ざけられてしまう。
「ま、まさか・・・そんなはずありません」
「本当か?」侍従はリオの目をじっと見た。「まさか、恐れ多くもアウレリオ様に、特別な情など抱いていないだろうな?」
「特別の情?」
「何のことか分かっているだろう?」
「・・・あ、あの、よくわかりません。ですが、アウレリオ様に忠誠心は抱いておりますが、それ以外の感情は・・・」
「私が言っているのはお前が男色家かどうか、ということだ」
「ちがいます!男色など、汚らわしい!」
*********************
※分かりづらいかもと思ったので注釈
侍従は個人の使用人
(侍従長は侍従・従僕・見習いまでを全員取りまとめる人)
従僕は侍従よりも下位の使用人
リオは従僕の見習いからスタートしましたが、十年経って従僕に出世しています。
侍従も従僕も従僕見習いも、全員が個人の使用人=召使いです。
(お礼)
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
ハートを贈ってくださった方、広告を回してくださった方、栞を挟んでくださった方、皆さんに感謝しています。
そして、ゆっくりとお風呂に入って、良い一日が過ごせますように、願ってます♡
リオはアウレリオに身体の中心部が触れないように、腰をそろそろと後ろに引いた。
アウレリオはリオの暖かさが心地よかったのか、目をつむりウトウトしている。
「大人しくしろ」
一瞬目を開き、また、眠ってしまった。
アウレリオ様は、俺をただの「ゆたんぽ」としてお使いになっているだけなのに、腕に抱かれて発情している自分をどうしたらいいのかわからない。
だけど、リオの中心はパンパンにいきり立ち、油断したらこすりつけてしまいそうだ。
(ああ、つらい・・・これは、一種の拷問かも・・・)
アウレリオの寝息が定期的になり、すっかり眠りに落ちるまで、リオは人間ゆたんぽとして微動だにせず、息を殺していた。
もともと、アウレリオは不眠の気があるので、こんなにすぐに深く眠ることはない。
いつも忙しく動き回っているリオは、布団に入ればすぐに眠ってしまうが、時々目が覚めるとアウレリオが部屋の中を歩き回っていることがあった。
そんなときは、金色の目をしていたり、金色の粉のようなものがアウレリオの周りを舞っていることもあり、触れてはいけない部分なんだろうと、寝たふりをしているうちにまた眠ってしまった。
だが、今日は。
力の抜けたアウレリオはいつもより幼く見える。
眠っている頬に口づけたい。頬を触りたい。髪を撫でたい。
そんな気持ちがあふれだし、止まらなくなる。
(ああ、俺はどうしたら)
ただの召使いのリオからアウレリオに触れるなど、もってのほか。
不敬だと斬り殺されても文句は言えない。
だけど、こんなに深く眠っているならバレないんじゃないか?
誘惑に負け、そっと腕を伸ばす。指先で髪の先に触れると、胸が高鳴った。
(俺・・・俺、アウレリオ様が好きなんだ)
その瞬間、はっきりと自覚した。
いつもアウレリオのそばにいたくて、自分の知らないアウレリオがいることに耐えられなかった、その理由。
毎年給金をはたいて聖者様の日にはプレゼントを用意する理由。
毒見係をして、自分がアウレリオを守る役目を誰にも譲りたくなかった理由。
(ああ、そういうことだったのか)
同時にそれは失恋を意味していた。
叶うわけのない初恋は、淡く消え去るのみ。
(アウレリオ様・・・)
未練がましく手を伸ばす。
髪の先に触れれば、もっと触りたくなる。
ほほに触れれば、次は唇に触れたくなる。
唇に触れれば次は口づけを。
そして、その他の場所にも触れたくなる。
使用人たちがこそこそ逢引をしている現場に出くわしたこともあれば、噂を聞いたこともある。
恋人たちがどんなことをして愛を伝えるのか、リオだって頭では知っていた。
(ごめんなさい、一度だけ、許してください)
心の中であやまり、そっと髪の先に口づけた。
「なんだ・・・?」
アウレリオが目を開け、リオをじっと見ていた。
「あ、あ、あ、あの!」
どういいわけしたらいいんだろう。リオの心臓は今にも口から飛び出しそうだ。ベッドから転げ落ちて逃げ出したい。でも、アウレリオの視線からはそう簡単に逃げられなかった。
「む、虫が・・・」
「虫・・・?」
「そう、大きな虫がいたんです!なので、追い払おうと・・・!」
「真冬に・・・虫?」
「そ、そう、真冬なのに・・・」
「わかったから、寝ろ。明日も早いだろう」
「はい、もちろん・・・」
目を白黒させながら、なんとか言い訳を考えたが、納得してもらえたのかわからない。
アウレリオがまた目をつむったので、リオはそっと身体を寄せた。アウレリオが眠ったら、今度は身体を離して、自分の藁布団に戻ろう。
(そう、アウレリオ様がお眠りになったら・・・)
人肌が一番あたたかい。アウレリオ様の言う通りだ。それが最後の記憶で、はっと目覚めると、もう日が高く昇っていた。
(まずい!)
リオは慌ててベッドから降りようとしたが、アウレリオがリオの腰に手を回した。
「ここにいろ」
「でも、朝のお水を・・・」
「今は水よりも・・・寒い」
「では、暖炉に火を」
「いいから」
アウレリオに半ば引きずり込まれるようにベッドに戻されてしまい、また腕の中にすっぽりと閉じ込められてしまった。
「お前は温かいな」
「アウレリオ様・・・」
吸い寄せられるように頬を寄せ、鼓動を聞く。
温かいのはアウレリオ様ですよ、こころのなかだけでつぶやき、この貴重な瞬間を逃すまいと抱きついた。
俺が女ならば、愛人にでもしていただけたのかな。どこかに小さな家をいただいて、アウレリオ様の帰りを待つ暮らし。それもいいかも。でも・・・
がしゃん、と金属がゆかに当たる音がして一気に現実に帰った。
「あ、アウレリオ様・・・リオ・・・何を・・・」
リオはベッドの上に飛び起きた。
朝、アウレリオの洗顔用の湯を持ってきた侍従が、水差を床に取り落としていた。
「そんな、まさか・・・」
侍従も従僕も呆然として、入口に立ちすくんでいる。
「あ、アウレリオ様、お戯れとしても・・・リオは・・・」
「ちがいます!」
「落ち着け。扉を閉めろ」
困り果てたリオの声と落ち着き払ったアウレリオの声が重なった。
侍従ははっと我に返り、「失礼しました」と小声で言うと扉をしめた。
「誤解だ。なにもない。ただ、昨夜寒すぎただけだ」
アウレリオが冷静な声で告げると、侍従ははっとした。
「もちろんでございますとも。そうだと思っておりました。おい、お前」侍従が洗顔ボウルを運んでいた従僕に声をかけた。「余計なことは口外するんじゃないぞ。今すぐもう一杯湯を持って来い」「はい」従僕が部屋を出ると、侍従はアウレリオに近づいた。
「若様。なりませんぞ。誤解だとしても、敵につけこまれるようなことをなさってはいけません」
「わかっている」
「若様のような未婚の男性に、男色の噂が立ってはなりません。よろしいですよね」
侍従はリオをにらみつけた。
「お前!いつまで若様のベッドにいるんだ。さっさと仕事に入れ!」
「は、はい!」
リオはベッドから飛び降りた。
「お前、男色なのか?」
「え?」どきんと大きく胸が鳴った。アウレリオが好きだと自覚したばかりだけど、それは男色、ということなんだろうか。
「どうなんだ」侍従の目の色を見て分かった。もし、ここでうなずいたら、自分はアウレリオから遠ざけられてしまう。
「ま、まさか・・・そんなはずありません」
「本当か?」侍従はリオの目をじっと見た。「まさか、恐れ多くもアウレリオ様に、特別な情など抱いていないだろうな?」
「特別の情?」
「何のことか分かっているだろう?」
「・・・あ、あの、よくわかりません。ですが、アウレリオ様に忠誠心は抱いておりますが、それ以外の感情は・・・」
「私が言っているのはお前が男色家かどうか、ということだ」
「ちがいます!男色など、汚らわしい!」
*********************
※分かりづらいかもと思ったので注釈
侍従は個人の使用人
(侍従長は侍従・従僕・見習いまでを全員取りまとめる人)
従僕は侍従よりも下位の使用人
リオは従僕の見習いからスタートしましたが、十年経って従僕に出世しています。
侍従も従僕も従僕見習いも、全員が個人の使用人=召使いです。
(お礼)
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
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