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第五十二話 すれちがい
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まるで足元に大きな穴が空いてしまったよう。油断したらその真っ暗な穴に吸い込まれ、二度と戻って来られそうにない。
「あの・・・」
リオの唇が震えた。
その言葉を信じて良いんだろうか。でも、信じて裏切られたら、立ち直れない。
もう、生きていけるかどうかすら分からない。
愛する人に特別な存在だと言われたのに、よろこぶなんて思いもよらなかった。
(失敗した)
蒼白なリオを見て、アウレリオは思った。
魔法に狂気。自分だってそんな話を聞いたらゾッとする。
リオが怯えたのも無理はない。
「負担に思わなくていい。私の勝手な感情だ」
アウレリオが身体を引いた。
「もし、私に狂気の片鱗が見えたら・・・お前は逃げればいい」
「え?どうしてですか?」
肌が触れていないだけで、心細く、ひとり取り残されたような気分になる。
「俺はアウレリオ様の使用人ですよ?」
せめてそのつながりだけでも、忘れないでほしい。
「確かに使用人だが、気が違った主に仕える義務はないからな。そうなれば皆逃げ出していくだろう」
「アウレリオ様?」
何で逃げる話になるんだろう。
アウレリオの目はリオから逸らされ、急に遠ざかってしまったように思える。
リオには、アウレリオが急に壁を作った理由がわからなかった。
「お前とて・・・私のベッドの相手をしたからといって・・・」
アウレリオが言葉を飲み込み、リオに背を向けてしまった。
急に、取り残されたように寒くなる。
少しでもそばにいたくて、背中にそっと指先でふれる。
「俺は・・・アウレリオ様の忠実な部下です。今までもこれからも。俺のような者に、アウレリオ様の魔力をなだめる力があるわけも無いです。でも、少しでもお慰め出来たのなら、俺はそれで」
背中に頬を寄せると、アウレリオが唸り声を上げ、勢いよく振り返るとリオを抱きしめた。
「負担に思わないでくれ。お前がただの召使いじゃないということを伝えたかっただけなんだ」
「はい、ありがとうございます」
リオはアウレリオの背中に手を回し、体全体で温かさを求めた。
俺が、どこかのお嬢様だったら、違っていたのかな。
両親がいて、愛されていた子どもだったら、特別な存在だなんて言われて、有頂天になっていたのかも。
でも、俺は身分が低すぎるし・・・自信もない。だから、アウレリオ様の言葉をそう簡単に信じることが出来ない。
ただのベッドの相手だと言われたほうが、簡単に信じられた。
身分なんて・・・
でも、生まれながらに定められた運命はあまりにも過酷で。
ふたりの関係を単純にするには、重すぎた。
もし、ふたりに身分の差がなければ、もっと単純だったのかもしれない。
熱情、肉欲・・・もしかしたら、愛情、という名だったのかもしれない。
*******************
触れそうで触れない。
近そうで遠い。
最近のふたりの空気は、また少し変わっていた。
以前の慇懃無礼な他人行儀な雰囲気とも違う。
互いに相手の出方をうかがう、息の詰まる時間。
クッキーを銀のトレイにすべせたあと、白い指がクッキーを割り、かけらを口に含む。
ピンク色の舌がちらりと見え、アウレリオはそれを見て見ぬふりする。
静まり返った部屋の中で響く、小さな咀嚼音。喉を通る音。
「はい、大丈夫です。お召し上がりください」
リオが礼儀正しく伝えると、アウレリオはリオの手に残ったクッキーをぱくりと口に入れた。
「あ、アウレリオ様。新しいものを・・・」
「いや、うまい」
アウレリオは唇を舐めると、リオの腰を引き寄せ、自分の膝の上に座らせた。
指先に舌を這わせ、指のまたを舌でくすぐるように舐めると、リオが身震いをした。
「な、なにを・・・」
声は上ずり、頬は紅潮している。
アウレリオは含み笑いをすると、指の付け根周りを舌で刺激しながら、もう一方の手は指先でくすぐるように刺激した。
「なあ、リオ。そんなに怖がらないでくれないか?」
「な、何のことですか」
「お前は寂しくないのか?」
「・・・」
リオは真っ赤な顔のまま、視線を逸らせた。
「ひとり寝はさみしくないか?なあ?」
アウレリオがリオの首筋に吸い付き、舌先でチロチロと刺激する。
「な、な、何を突然・・・」
「もう限界だ」
そう言うとアウレリオはリオの上に覆いかぶさり、強引に唇を奪った。
熱い舌がリオの歯を割り、自分のものであるかのようにリオの口の中を動き回る。
リオの身体からは力が抜け、ぐにゃりとアウレリオに身体を預けた。
あの日から、これ以上アウレリオを愛してしまうのが怖くて、避けていたのに。
キスひとつでぐだぐだになってしまう。
「なあ、もう怖がるのはやめてくれ。もう戻ってきてくれよ」
アウレリオが耳元でささやき、リオはビクリと身体を揺らす。
背筋にピリピリと快感が走り、全身が敏感になっていくのを感じる。
「わ、わたしは・・・」
「こーら」
アウレリオがリオの鼻のてっぺんをつまんだ。
「なにが《わたし》だ。お前らしくもない。ここのところ、ずっとそんな他人行儀な態度で私を避けている」
「さ、避けてなんか」
「じゃあ、何故戸口で寝てるんだ?」
リオは目を泳がせた。
「冷たい恋人だな」
「こ、恋人?」
ドクンとリオの心臓が大きくはねた。
「違うのか?」アウレリオはさっきつまんだリオの鼻先にちゅっとキスと落とす。「すぐにピンクになる。皮膚が薄いんだな。かわいいリオ」
「か、かわ・・・」
「かわいい、かわいい、リオ。私達は恋人じゃないのか?なあ、そうだと言ってくれないか?」
「そ、そんな、まさか・・・」
リオが頬を真っ赤に染め、困った顔でアウレリオを見返すと、アウレリオはまたリオにキスを落とす。
「私は互いに望んであんなことをする相手は恋人だと思っていたが・・・かわいいリオは違うのか?」
「か、か、か・・・」
リオは動揺のあまり、舌がもつれて上手く反論できない。
「なあ、リオ。かわいいリオ。私のことを恋人にしてくれないのか?もしかして私のことを、弄んだのか?」
「あ、アウレリオ様!」
**********************
(お礼)
お読みいただきまして、ありがとうございました。
ハートと広告もありがとうございます。
明日は休載日なのですが、これから一週間程度更新が不安定になります。
もしかしたら、更新できないかもしれませんが、ご容赦ください。
体調不良とかではなく、もともと予定が入っていたところまで連載が食い込んでしまった、という感じです。
(アホみたいですが、12月中に連載が終わると思っていました)
もう少しすると話が動きはじめます。
ゆっくりペースですが、どうぞお付き合いいただければ幸いです。
ここで、1週間分の皆さんの健康と幸せを願っておきます♡
「あの・・・」
リオの唇が震えた。
その言葉を信じて良いんだろうか。でも、信じて裏切られたら、立ち直れない。
もう、生きていけるかどうかすら分からない。
愛する人に特別な存在だと言われたのに、よろこぶなんて思いもよらなかった。
(失敗した)
蒼白なリオを見て、アウレリオは思った。
魔法に狂気。自分だってそんな話を聞いたらゾッとする。
リオが怯えたのも無理はない。
「負担に思わなくていい。私の勝手な感情だ」
アウレリオが身体を引いた。
「もし、私に狂気の片鱗が見えたら・・・お前は逃げればいい」
「え?どうしてですか?」
肌が触れていないだけで、心細く、ひとり取り残されたような気分になる。
「俺はアウレリオ様の使用人ですよ?」
せめてそのつながりだけでも、忘れないでほしい。
「確かに使用人だが、気が違った主に仕える義務はないからな。そうなれば皆逃げ出していくだろう」
「アウレリオ様?」
何で逃げる話になるんだろう。
アウレリオの目はリオから逸らされ、急に遠ざかってしまったように思える。
リオには、アウレリオが急に壁を作った理由がわからなかった。
「お前とて・・・私のベッドの相手をしたからといって・・・」
アウレリオが言葉を飲み込み、リオに背を向けてしまった。
急に、取り残されたように寒くなる。
少しでもそばにいたくて、背中にそっと指先でふれる。
「俺は・・・アウレリオ様の忠実な部下です。今までもこれからも。俺のような者に、アウレリオ様の魔力をなだめる力があるわけも無いです。でも、少しでもお慰め出来たのなら、俺はそれで」
背中に頬を寄せると、アウレリオが唸り声を上げ、勢いよく振り返るとリオを抱きしめた。
「負担に思わないでくれ。お前がただの召使いじゃないということを伝えたかっただけなんだ」
「はい、ありがとうございます」
リオはアウレリオの背中に手を回し、体全体で温かさを求めた。
俺が、どこかのお嬢様だったら、違っていたのかな。
両親がいて、愛されていた子どもだったら、特別な存在だなんて言われて、有頂天になっていたのかも。
でも、俺は身分が低すぎるし・・・自信もない。だから、アウレリオ様の言葉をそう簡単に信じることが出来ない。
ただのベッドの相手だと言われたほうが、簡単に信じられた。
身分なんて・・・
でも、生まれながらに定められた運命はあまりにも過酷で。
ふたりの関係を単純にするには、重すぎた。
もし、ふたりに身分の差がなければ、もっと単純だったのかもしれない。
熱情、肉欲・・・もしかしたら、愛情、という名だったのかもしれない。
*******************
触れそうで触れない。
近そうで遠い。
最近のふたりの空気は、また少し変わっていた。
以前の慇懃無礼な他人行儀な雰囲気とも違う。
互いに相手の出方をうかがう、息の詰まる時間。
クッキーを銀のトレイにすべせたあと、白い指がクッキーを割り、かけらを口に含む。
ピンク色の舌がちらりと見え、アウレリオはそれを見て見ぬふりする。
静まり返った部屋の中で響く、小さな咀嚼音。喉を通る音。
「はい、大丈夫です。お召し上がりください」
リオが礼儀正しく伝えると、アウレリオはリオの手に残ったクッキーをぱくりと口に入れた。
「あ、アウレリオ様。新しいものを・・・」
「いや、うまい」
アウレリオは唇を舐めると、リオの腰を引き寄せ、自分の膝の上に座らせた。
指先に舌を這わせ、指のまたを舌でくすぐるように舐めると、リオが身震いをした。
「な、なにを・・・」
声は上ずり、頬は紅潮している。
アウレリオは含み笑いをすると、指の付け根周りを舌で刺激しながら、もう一方の手は指先でくすぐるように刺激した。
「なあ、リオ。そんなに怖がらないでくれないか?」
「な、何のことですか」
「お前は寂しくないのか?」
「・・・」
リオは真っ赤な顔のまま、視線を逸らせた。
「ひとり寝はさみしくないか?なあ?」
アウレリオがリオの首筋に吸い付き、舌先でチロチロと刺激する。
「な、な、何を突然・・・」
「もう限界だ」
そう言うとアウレリオはリオの上に覆いかぶさり、強引に唇を奪った。
熱い舌がリオの歯を割り、自分のものであるかのようにリオの口の中を動き回る。
リオの身体からは力が抜け、ぐにゃりとアウレリオに身体を預けた。
あの日から、これ以上アウレリオを愛してしまうのが怖くて、避けていたのに。
キスひとつでぐだぐだになってしまう。
「なあ、もう怖がるのはやめてくれ。もう戻ってきてくれよ」
アウレリオが耳元でささやき、リオはビクリと身体を揺らす。
背筋にピリピリと快感が走り、全身が敏感になっていくのを感じる。
「わ、わたしは・・・」
「こーら」
アウレリオがリオの鼻のてっぺんをつまんだ。
「なにが《わたし》だ。お前らしくもない。ここのところ、ずっとそんな他人行儀な態度で私を避けている」
「さ、避けてなんか」
「じゃあ、何故戸口で寝てるんだ?」
リオは目を泳がせた。
「冷たい恋人だな」
「こ、恋人?」
ドクンとリオの心臓が大きくはねた。
「違うのか?」アウレリオはさっきつまんだリオの鼻先にちゅっとキスと落とす。「すぐにピンクになる。皮膚が薄いんだな。かわいいリオ」
「か、かわ・・・」
「かわいい、かわいい、リオ。私達は恋人じゃないのか?なあ、そうだと言ってくれないか?」
「そ、そんな、まさか・・・」
リオが頬を真っ赤に染め、困った顔でアウレリオを見返すと、アウレリオはまたリオにキスを落とす。
「私は互いに望んであんなことをする相手は恋人だと思っていたが・・・かわいいリオは違うのか?」
「か、か、か・・・」
リオは動揺のあまり、舌がもつれて上手く反論できない。
「なあ、リオ。かわいいリオ。私のことを恋人にしてくれないのか?もしかして私のことを、弄んだのか?」
「あ、アウレリオ様!」
**********************
(お礼)
お読みいただきまして、ありがとうございました。
ハートと広告もありがとうございます。
明日は休載日なのですが、これから一週間程度更新が不安定になります。
もしかしたら、更新できないかもしれませんが、ご容赦ください。
体調不良とかではなく、もともと予定が入っていたところまで連載が食い込んでしまった、という感じです。
(アホみたいですが、12月中に連載が終わると思っていました)
もう少しすると話が動きはじめます。
ゆっくりペースですが、どうぞお付き合いいただければ幸いです。
ここで、1週間分の皆さんの健康と幸せを願っておきます♡
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