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14. 嬉しいプレゼント
しおりを挟むあれから色々とあったが、やっとお姉様の住む隣国までやって来る事が出来た。
「レオナ!」
お姉様が駆け寄って来た。
「お久しぶりです、お姉様。この度は色々と申し訳ありません」
「いいのよ、気にしないで…。それより、体調は大丈夫なの?」
「はい。悪阻はまだあるのですがましになりました」
「そう。良かったわ」
私達は話しながら屋敷の中に入っていった。
義兄は仕事で国を離れているらしく、暫くは帰って来ないらしい。
「ゆっくりすると良いわ。実家では落ち着かないでしょうから…。もちろん、ここにいる間はレオナとしてドレスを着て過ごしなさいね」
「良いのですか?」
「勿論よ」
嬉しい…。
何年ぶりのドレスだろう。
ずっと男装スタイルで過ごしていたから…。
この国にいる間は女性として過ごせるのね…。
誰にも何も言われないレオンのいない世界…。
期限つきだけど…。
姉は私のドレスを部屋に用意してくれていた。
「本当に貰って宜しいのですか…」
「勿論よ。私は実家にいる間、貴方を守ってあげる事ができなかった…そのお詫びよ」
お姉様には助けて頂いていたのに…。
1人だったらあんな家には入られなかった。
「ありがとう…ございます。お姉様…」
心が解放される感じがする。
私が私で良いなんて…。
レオナが存在する世界があっても良いの…。
私は久しぶりに…何年ぶりかのドレスを着た。
お腹を締め付けないようにコルセットは無しにしてもらった。
髪が短いのでドレスが似合っているかといえば微妙な感じだけど…でも、嬉しい。
もしかした、おばあちゃんになるまでドレスはもう着れないかもしれないと思っていたから…。
こんなに早くに着ることができたなんて…。
「もう一つ私からのプレゼントよ」
そう言ってお姉様は大きな箱を渡してくださった。
何だろう…これ?
開けてみると、私の欲しかった物が入っていた。
「ありがとうございますお姉様。ウィッグまで用意してくださったのですね」
「貴女の本当の髪の色だと目立つから髪色は違うけど、長い方がドレスには合うだろうと思って用意させたのよ」
鏡で確かめて見る。
髪色が違うだけで別人になれたみたいだ。
これなら外を歩いても誰もレオンだとは思わないだろう。
誰の目も気にせずに歩ける…ありのままの自分でいられる…。
そう思うと、自然に涙が溢れていた。
「どうしたのレオナ」
お姉様が驚いて私の顔を覗き込んだ。
「嬉しいのです。ただ嬉しいだけなのです。私はこんなに幸せで良いのでしょうか…」
お姉様が何も言わず私を抱きしめてくださった。
お姉様の体温が心地良い…お母様に抱きしめられた時とは違う。
私はお姉様に抱きついて泣いた。
こんなに泣いたのはレオンが亡くなって以来かもしれない…。
レオン…しばらく私はレオナとして生きる事を許されるみたいよ。
また、国に帰ったら貴方になるからしばらく休ませてね。
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