男装令嬢の願い

縁 遊

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45. 秘めた思い 〈アルス視点〉

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久しぶりにレオンに会えた。

国を離れてから何年経ったのだろうか。

私は現国王の弟として祖国にいるのが苦しくなった。

母違いの年の離れた優秀な兄と平凡な私…。

幼い頃から比べられて嫌になってしまった。

私は王族として役目を果たさなくてはならず窮屈さも感じていた。

そんな時だったレオンに出会ったのは…。

10歳以はなれた幼い子供のはずなのに、何故か悲哀が滲み出ていて気になったのが始まりだった。

クリフと仲が良かったので意外と会う事が多かった。

レオンは私の旅の話が好きな様で、目をキラキラと輝かせながら聞いていたのを覚えている。

そんな時、たまたまレオンの屋敷の近くを通り見てしまったのだ…。

レオンが2人いるのを…。

屋敷の庭で同じ顔の2人が並んで話をしている様子が伺えた。

2人は楽しそうに笑っていた。

私は、地上に天使が舞い降りたように感じたのだ。

何て…美しいんだ…。

私は秘密裏にレオンの事を調べた。

するとレオンには双子の姉がいる事がわかった。

しかし、姉は身体が弱く社交界に出てきた事がないらしく姿を見た者がいないらしい。

姉…私は引っ掛かる物があった。

庭で見た2人はどちらも髪が短かった…。

この国の女性は髪が長い方が美しいとされ、どの貴族令嬢も髪をのばしている。

だが、レオンの屋敷の庭で見かけた2人はどちらも髪が短かった…まるで、レオンが2人いるかの様に見えた。

もしかして…レオンから感じていた悲哀の原因はここにあるのか…?

本当に身体が弱いのは、レオンで姉はレオンの身代わりになっているのではないか…。

確かめる術はなかったが、私の中には何故か確信みたいな物があった。

それから、レオンに必要以上にかまうようになっていった。

私はレオンに…いや、レオンの姉にだんだんと惹かれていった。

歳は離れているが、どうしても気持ちを止める事ができなかった。

そんな時だった…クリフと遊んでいたレオンがケガをしたのは…。

私はすぐに意識のないレオンを抱き抱えて医師に見せにいった。

そして、そこで僕の予測が当たっていた事を知る。

医者が一言こう言ったのだ。

「女の子なのに身体に傷が沢山あるが、両親はいないのですか?」

女の子…やはりそうだったのか。

私はこの子を守りたい、助けてあげたい、大事にしてあげたい…この子はわたしの天使なのだ…と思うようになった。

しかし、レオンの両親にレオンの姉に会いたいと言ってみても体調が悪く会えるような状態ではないと断られ続けた。

私はだんだんとクリフに会いに来たレオンを見かける度に、このままさらって逃げてしまおうか…などと考えるようになっていった。

王族として許されない犯罪をおかしそうな自分が怖くなっていた。

レオンから離れればこの思いは無くなるのかもしれない…と思い、国から離れることを決めた。

こんな思いは誰にも言えないから誰にも言わずに黙って…。

しかし、またレオンに会ってしまった。

更に美しくなったレオン…いや、レオナに。


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