男装令嬢の願い

79. 夢ではなかった… 〈クリフ視点〉

レオナが目覚めて嬉しさを噛み締めていたはずなのに、今は驚きと謎だらけの事で混乱している。

レオナに近づいた時にリオンが寝ているのが見えた。

その姿があまりにも自然な感じがして、冗談のつもりでレオナの子供の様だと言ったのに…。

まさか、本当にそうだと言われるとは予想外だった。

いつの間にレオナは結婚していたんだ？

相手は誰だ？

もしかして、叔父上なのか？

そんな素振りをレオナは見せていなかったし、お腹も大きくなっていなかったぞ？

それに…てっきりレオナも私の事を好きだと思っていたのに…只の自惚れだったのか。

それなのに、私はレオナとのことをいろいろと想像して、しかも…淫らな夢まで見て満たされていたなんて、恥ずかしい。

しかし、相手は本当に誰なんだ！？

レオナと仲が良い人…。

騎士のジルか？

書記官のカハル？

あ～、誰なんだ！

レオナがヒントをくれたが…。

夢だと思っている？

なんて奴だ！

レオナと子供ができるような事をしておいて、夢だと？！

何故そんな事になるんだ。

普通は忘れられないものじゃないのか。

私なんか夢で見たレオナの産まれたままの姿を忘れたことなんか1日もないと言うのに…。

ん？

夢だと思っている。

私は何故、夢だとわかったんだ。

たしか、あの時は旅先で体調を崩してレオナに介抱してもらって…。

朝になったらスッキリしていたんだ。

あの時はレオナの事をレオンだと思っていたから…。

あれ？

…と言うことは、あれは夢ではなく現実だった？

いや、しかし次の日はレオナは普通に接していたではないか。

何事もなかったかの様に…。

そういえば…あの時たしかレオナの顔が赤かった。

あれは、恥ずかしかったのか？

あの時は火のせいにしていたが…。

そうだな、考えてみればあの時に子供ができたと考えればレオナが休みを取った時期も合ってくる。

それに、リオンが私の子供の頃にそっくりな訳も説明できる。

私がリオンの父親なら…。

本当にそうなのか…。

こんな…嬉しい事があっていいのか…。

愛するレオナとの子供が…こんなに可愛い子供がいたなんて。

これは、レオナに聞くしかない。

父親は私なのか…と。

「レオナ…その夢だと思っている相手は私なのか？」

頼むから「そうだ」と言ってほしい。

愛しいレオナ。