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53. カロンの話し 〈カロン視点〉
しおりを挟むまさか、王宮であの女に会うとは思わなかった。
しかも、シャルル様を見られてしまった。
このままでは、間違いなくシャルル様の身が危険だ。
お兄様達に話しをつけてからと、思っていたけど…そんな悠長なことを言ってられなくなってしまった。
こうなったら、信じてもらえるかは、わからないけど…両陛下にシャルル様とシャリル様の事をお話しした方が良いわね。
「身分から言えば、姫様が正室で娘が側妃になるのが一般的ですよね。…これは王妃様の古い友人の話しとして聞いていただきたいのですが…」
私はこの国の王妃様とは所謂、学友というものだった。この国に嫁ぐまではロンデール国の公爵家の娘だったからだ。
同じ家格だったので気兼ねすることもなくシャリル様と3人でよく遊んだ仲間だった。
「わかったわ、カロン。それは、シャリルにそっくりな貴方の娘に関係しているのかしら…」
流石ね…。何となくわかったのね、親友にそっくりな私の娘の本当の母親の事を…。
「ええ…。王妃様が考えている通り…私の娘は、私とは血が繋がっていません。この子を産んだのはシャリル様です…。」
「どうして、貴方が育てているの?確か、死産だったと聞いたけど…」
「先程のキャロル様に殺される可能性が高かったので、嘘の情報を流しました」
両陛下の顔が驚いて固まっている…。
「シャリル様がたまたまキャロル様の話しを聞いてしまったのが始まりでした…」
「何を聞いたら自分の子供を死んだ事にしようなんて思うの…」
普通はそう思いますよね。
「それは、シャリル様にある薬を飲ませていると言う話しでした」
「ある薬?」
「ええ、子供を作れないようにする薬です。しかも、医者にはわからない様に作られた、不妊薬」
「そんな薬があるの!?」
「私もそう思いましたが、それを知ってからシャリル様が口になさる全ての物をすり替えました所、妊娠いたしましたので、薬はあったのだと思っております」
「信じられない話ね…子供をおろす薬が使われた話は聞いた事があるけど…」
「それだけ子供を作らせないようにしていた人に、シャリル様に子供が出来たなんてことが知られると…想像できますよね」
「そうね…母子共々どうなるかわからないわね…」
「王様に話せば良かったんでわないか?」
男としてはそう思いますよね。
「話そうかと思われたみたいですが、残念ながら証拠がつかめず…子供の事も王様にお話しすると…きっと嬉しさを隠せないだろうからと…産まれたらお話しをしようと言っておられたのですが…」
「そうか…そうだな、アイツはシャリル様の事を溺愛していたからな…子供ができたとなれば顔の緩みがとまらなかっただろう…すぐにわかるな」
そうなんですよ王様。さすが、ロンダールの国王と親友なだけのことはありますね。よく、わかっていらっしゃいます。
「結局、シャリル様は産後の体調が優れず、シャルル様を守る事ができないと思い…私に託されたのです…」
「シャリル…辛かったでしょうね」
王妃様が涙を見せると王様が王妃様を抱き寄せた。
上手くいっているようね…良かったわねアリルナ王妃…。
「でも…許せないのは…キャロル様ね」
王妃様が涙を拭いて顔をあげた。
「もしかして…今回の件も何かあるかもしれないわね」
「そうだな…しっかり調べさせよう」
両陛下は顔を見合って頷いていらっしゃる。
私は横で泣いているシャルル様を抱きしめた。
天国のシャリル様…やっとあなたの親友にも本当の事を話せましたよ。
きっと、このお二人はシャルル様の力になってくれます。
どうか皆が幸せになれますように見守ってくださいね。
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