上 下
465 / 658

第465話「リオネルは改めて、索敵……魔力感知を張り巡らす」

しおりを挟む
突如。

リオネルの行く手、少し先に横たわる白骨化した巨大な竜の死骸が、
ぎしぎしぎし!と音を立て、ゆっくりと起き上がった。

白骨化した巨大な竜の死骸……ドラゴンスケルトンは、完全に起き上がると、
リオネルを威嚇、竜族特有のファイティングポーズをとった。

生きていた頃は相当な巨竜だっただろう。
白骨化していても、ドラゴンスケルトンの体長は30m近かった。

補足しよう。

ドラゴンスケルトン……
竜の白骨化死骸が不死者アンデッド化した魔物である。

全身からおびただしい瘴気を発し、敵を穢し、腐らせ、
かみ砕き、踏み潰しなど、巨体を活かした物理攻撃を仕掛けて来る。
個体によっては再生能力も高い。

強さはドラゴンゾンビには及ばない。
だが、冒険者にとって相当の強敵である事は間違いない。

しかし……
先ほどのタラスクス同様、リオネルと仲間達にはどうという事のない敵である。

ドラゴンスケルトンが発する瘴気はリオネルには通じない。
全てを無効化してしまうからだ。

緩慢な物理攻撃も全てかわしてしまえばOK!

タラスクスの前に倒した炎を吐く竜……ドラゴン3体の方がまだ手ごわい。

倒す方法はいくつもあるし、差し当たって相手は1体。
リオネルひとりで充分だ。

『皆、こいつは俺が倒すよ。新手あらての出現だけを注意してくれ』

リオネルの指示を聞いた仲間達は、

『了解!』

と全員が同意、周囲を固めた。

ひとりで倒すと決めてすぐ、リオネルは戦法も決めている。

触れずして、ドラゴンスケルトンを放つ『魔力のみ』で倒す!

リオネルは、体内魔力の圧力を上げると、腕組みをしたまま
鋭い眼差しと合わせ、襲って来るドラゴンスケルトンを威圧の念で突き刺した。

瞬間!

リオネルが放った巨大且つ強力な、
威圧と破邪の魔力に包まれたドラゴンスケルトンは、

ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!

と、破裂したような大音響で、あっさりと四散してしまった。

更に四散した破片は、塵となり、どこへともなく消えて行く……

よしっ!
使ったのはまだ数回だけど……上手く行った!

並みの不死者アンデッドなら、この技だけで無双可能だ!

そう!
リオネルは自身が編み出した必殺技を。

対不死者魔法アンチアンデッドマジック
秘奥義『破魂撃はこんげき』を行使したのだ。

しかし!

リオネルが勝利の余韻に浸る余裕は全くなかった。

この戦いが引き金となったように、あちこちの竜の白骨化死骸が次々に復活。

数十体のドラゴンスケルトンの大群として、リオネルひとりへ襲いかかって来たからだ。

でも、リオネルは慌てず泰然自若。

ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!
ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!
ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!

ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!
ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!

破魂撃はこんげき』を連発し、数十体のドラゴンスケルトンを、
あっという間に消滅させてしまったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ふう……死にぞこないの奴らを昇天させてやったか」

数十体のドラゴンスケルトンを、
あっという間に消滅させてしまったリオネルへ、仲間達から念話で連絡が入る。

あるじ! 湿地帯から新手あらてが現れた! 複数だ!』

『おう! 兄貴の言う通り! ドラゴンゾンビ4体が出た! 主が放つ巨大な魔力と魔族たる俺達が来た事で、瘴気が活性化し、刺激を受けたのかもな!』

ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟がそう言えば、

『!!!!!!!!!!』

ファイアドレイク、ジズ、アスプ達も『今度は俺にも任せてくれ!』

と意思の波動を送って来た。

リオネルはいつものように、ぱぱぱぱぱぱぱ!と考える。

そして、すぐに仲間達へ指示を出す。

『ケルベロス! オルトロス! お前達には各1体の討伐を任せる! ファイアドレイク、ジズはふたりで協力し、1体を討伐してくれ! アスプ達は勢子となり、残りの1体を俺の下へおびき寄せてくれ! 以上だ!』

リオネルの判断……

冥界の門番を務める兄ケルベロス、弟ケルベロスは不死者の扱いに慣れている。
魔獣兄弟同士、競わせる意味でもそれぞれに一体を任せる。

ファイアドレイクは火の化身、ジズは風の化身ともいえる従士である。

火と風は相性の良い属性であり、連携してドラゴンゾンビを1体を倒す事で、
心の絆が深まると判断。

そして、アスプの武器である、毒と睡眠誘因は不死者のドラゴンゾンビには効きにくい。

それゆえ、敢えて戦わせず、『かく乱役』として働いて貰う事が妥当だと考えたのだ。

対して、仲間達からは、

『了解!』の返事が戻って来た。

リオネルは改めて、索敵……魔力感知を張り巡らす。

仲間の動きと状況、そして敵の動きと状況を随時、把握する為だ。

ずっちゃ、ずっちゃ、ずっちゃ、ずっちゃ……

やがて……
囮となったアスプ20体に導かれ、巨大なドラゴンゾンビ1体が、
リオネルへ向かい、進んで来たのである。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

剣豪令嬢と家出王子の逃避行

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:61

スパイだけが謎解きを知っている

ミステリー / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:3

【R18】あんなこと……イケメンとじゃなきゃヤれない!!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:575pt お気に入り:60

【BL】死んだ俺と、吸血鬼の嫌い!

BL / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:240

ハヤテの背負い

青春 / 連載中 24h.ポイント:738pt お気に入り:0

箱入りの魔法使い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,171pt お気に入り:11

処理中です...