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第482話「ドラゴンでも、巨人でもどんと来い!だ」

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『うむ! 話は分かった! このような時に我ら兄弟の探知、追跡力は役に立つぞ! 冥界の魔獣の異名は伊達ではない』

『兄貴の言う通りだ! わずかな魔力でも行き先を突き止める!』

……休憩中、急きょ召喚された魔獣兄弟ケルベロス、オルトロスは、
自ら進んで地下123階層の探索調査を申し出た。

『そうか! 助かる! 休んでいたところを急に召喚して悪かった』

手短にだが、アールヴの魔法使い、イェレミアスの件をリオネルが話したら、
快く引き受けてくれたのだ。

厳秘にする。
決して誰にもしゃべってはいかない。

……という『ゼバオトの指輪』と交わした魂の約束もあり、
ボトヴィッド本人も『指輪の正体』を知らないうちに、
『世界の至宝』を譲ってくれた事は、ケルベロス達仲間にも明かせない。

だが、そんな事情はあずかり知らぬとばかり、
リオネルの話を聞いた冥界生まれの魔獣兄弟は、恩義、信義を重んじる。

世話になったボトヴィッドへの恩、敬愛、友情の証として、
旧友イェレミアスへの手紙を届ける依頼を引き受けたあるじリオネルの心意気を、良しとしたのだ。

というわけで、ひと足先に、転移魔法でキャンプ地へ戻ったリオネル。

ジズ、フロストドレイク、アスプ20体、そしてジャンとともに『吉報』を待つ。

当然、索敵……魔力感知を最大範囲で張り巡らせ、外敵への警戒は怠らない。

……しかし、魔獣兄弟がわずかな痕跡を丁寧にたどり、123階層から、124階層、
そして125階層まで足を延ばしても、イェレミアスの行方をつかむ事は出来なかった。

残念ながら魔力残滓……痕跡は、完全に消えていたのである。

魔獣兄弟は忠実だ。
このままではいけない。

放っておいたら、意地でも最下層地下300階層まで、
イェレミアスを探しに行くだろう。

リオネルは、深追いを命じてはいない。

魔獣兄弟から念話で報告を受けたリオネルは、謝る彼らをいたわり、礼を告げ、
123階層のキャンプ地まで帰還するように命じた。

まもなく、魔獣兄弟は無事に帰還。

魔獣兄弟帰還後『イェレミアス捜索』をいうミッションを、改めて仲間達へ周知。
他にも念の為『注意事項』を告げた。

魔力残滓を発見したジャンが『お手柄だ』とリオネルから褒められ、
鼻高々だったのは言うまでもない。

この魔力残滓は3日以内に残されたとリオネルは、判断した。

魔力残滓の発見、確認で、イェレミアス生存の確率が高まったからだ。

そして今度こそという事で魔獣兄弟、そしてジズを休ませると……
フロストドレイク達に交代で、番をして貰い、リオネルは、就寝したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さてさて! 翌朝早めに起床。

今日の目標は123階層を抜け、124階層、もしくは125階までを目指す。

そう決めて、支度をし、朝食を摂り、リオネルは出発した。

小さな竜に擬態した凍れる竜フロストドレイク、
妖精ピクシーのジャンが空中から探索し、
地上はコブラ蛇のような魔獣アスプ20体がカバーする。

冥界の魔獣兄弟とジズが休憩の為抜けて、戦力はダウンしたが、
その分はリオネルがカバーすれば問題ない。

リオネルは、相変わらず、シーフ職スキルを駆使し、

『隠形』『忍び足』で、すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。

当然、先ほど同様、索敵も発動……
魔力感知を最大範囲で張り巡らせ、外敵への警戒も怠らない。

心身のアンテナを張り、敵を警戒しながらも、リオネルは考える。

あと、戦っていないのは、両頭のレッドドラゴンであるアンフィスバエナか。

補足しよう。
アンフィスバエナとは、尾の先にもう1つの頭のついている双頭の竜……
蛇に近いドラゴンである。

名称は「両方」を意味する「アンフィス」と「行く」を意味する「バイネイン」に由来する。
他の竜族より寒さに強く、口からは猛毒を噴き出す。
前方の頭が後方の頭へかみつき、転がって移動するという特異な動き方をする。

リオネルは、ワレバットの冒険者ギルド総本部図書館で読んだ資料を思い出す。

猛毒を吐く邪竜か!

俺に毒は効かない。
そして、アンフィスバエナには炎を吐くなどの特殊攻撃もない。

経験則で言えば……
アンフィスバエナは、ヒュドラの劣化バージョンというところか、
油断はしないが、怖れる事はない。

うん!

竜……ドラゴンでも、巨人でもどんと来い!だ。

戦闘だけではない。

リオネルは、122階層までの探索で、地形の踏破、クリアも完璧。

軽快にすいすいっと移動して行く……

行く手に障害物があっても、ノープロブレム、全く問題はない。

先述した通り、高い崖は飛翔魔法でひとっ飛び。

ごつごつした巨石だらけの岩場、砂漠も同じで、軽々とクリアする。

転移魔法も臨機応変に使う。

道がなく倒木等でまっすぐ進めない複雑な地形の密林では、

飛翔魔法、転移魔法で高い樹木の一番上に上る。

辺りを見回し、木伝いにこれまた飛翔魔法、転移魔法で移動し、ゆうゆうと脱出する。

渡河不可能な川では、飛翔可能以外に、転移魔法を使い、向こう岸へ移動。

沼や浅瀬、湿地帯も同様だ。

また、川や沼において、水中に潜む敵が居ない事を確認した上で、

ウンディーネのマイムから、そして水界王アリトンから授かった『水の加護』により……

水上を歩き、あるいは水上に立ったまま、水を操り、波を立て、渡ったりもした。

リオネルは、次のレベルアップに向け、順調に熟練度を増していたのである。
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