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第523話「ほう、この150階層から先がなあ……そこを探し出し、探索して君はどうするつもりかな?」
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イェレミアスは、媒介としたゴーレムを動かし、置かれた手紙を回収した。
一方、リオネルはといえば、微笑んだまま、その様子を見守っている。
そして、ゴーレムはリオネルを一瞥し、元の位置へ戻った。
再び、リオネルをじっと見ている。
互いの視線が合い、
「ふうむ……」
不可解だという趣きで腕組みをし、唸るゴーレム。
「イェレミアスさん、どうしました?」
「いや……リオネル・ロートレック君、どう考えても君という人間が分からないのだ。アールヴ族として1,000年近く生きた私の理解の域を遥かに超えている」
「そうですか?」
「うむ、私は探索の様子をずっと見させて貰った。君がこの世界で稀有な存在だという事はすぐに分かった。数多の魔物を従え、4つの属性魔法全てを使いこなす全属性魔法使用者である事、そして! 失われし、転移、飛翔の古代魔法をも! 完璧に使いこなす恐るべき術者だという事をな!」
リオネルはやはり監視されていた。
否、観察という方が妥当かもしれない。
下手に隠し立てせず、ここはある程度「認めた」方が良いだろう。
「はい、イェレミアスさんが御覧の通りです。まあ、俺が全属性魔法使用者である事や、古代魔法を使う事は公にしてはいませんが」
ここでリオネルは敢えて『視点』の事を言わなかった。
ただ見られているのを承知していたと、告げたのみ。
イェレミアスは、更に言う。
「うむ、加えて、リオネル君の圧倒的な強さには驚いた! 率いた魔物達の助力も得ず、ドラゴンや巨人どもをあっさりと倒した! 見事だ!」
「はあ、まあ、そうですね、ありがとうございます」
「うむ、全属性魔法使用者たるリオネル君が、どこで古代魔法を習得したのか、どうやってそこまで強くなったのかはぜひとも知りたいのだが、それは術者間の礼儀としてさすがに聞けない。逆に、私が同じ事を聞かれても、君へ教えるつもりはないからな」
「はい、そうですよね」
「だから、他の事を聞くぞ」
「はい、許容範囲内でお答えします」
「うむ、では聞こう。そこまで強い君は、地上では、その巨大な力を行使し、世界を統べるべく、思うがままに君臨出来るはずだ。それもあっさりとな」
「はあ……」
「それが何故、会ったばかりの年寄魔法使いのメッセンジャーを頼まれて、わざわざこんなフォルミーカ迷宮の深層に出向いたのだ? 君にはそういった野望や支配欲はないのか?」
ゴーレム……イェレミアスの質問に対して、リオネルは微笑みを崩さない。
「はい、俺には世界を統べるとか、野望、支配欲とかはないですね。迷宮へ入った理由は、他の冒険者と同じで、極めてシンプルです」
「む? 迷宮へ入った理由は、他の冒険者と同じで、極めてシンプルだと?」
「はい、このフォルミーカ迷宮の果てには一体何があるのかという好奇心、そして、戦いと探索で、己のレベルを更に上げ、一層強くなりたいという向上心ですね」
「な!? 一層強くなりたい!? むう、そこまで強いのにまだまだ不満か!?」
「はい、不満です。そもそもこの迷宮に入ったのは、ボトヴィッドさんの手紙には関係なく、自分の修行の為です。具体的な数字は言えませんが、俺の現在のレベルはそう高くはありませんから、……まだまだ発展途上なんですよ」
「む~、手紙はついでで、修行の為にこの迷宮へ……君はまだまだ発展途上か……」
「はい、おっしゃる通りです!」
戸惑い唸るゴーレム……イェレミアスへ、リオネルは微笑んだまま、
はっきりと答えていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「リオネル君、手紙は確かに受け取った。後でじっくりと読もう。ボトヴィッドには、私は元気だ。お前も達者で長生きしろと伝えてくれ」
「分かりました。間違いなく伝えておきます」
微笑むリオネルへ、更にイェレミアスは問う。
「ありがとう! アートスを修復してくれた事も感謝する。ところで、これから先、君はどうするつもりなんだい、リオネル君。迷宮はここ地下150階層が終点だが……」
はあ?
迷宮はここ地下150階層が終点?
「今更何を言っている?」とリオネルは思う。
みえみえの下手な芝居である。
イェレミアスは、真実を隠している。
フォルミーカ迷宮を探索する冒険者は、
そんな戯言を信じてはいない。
この地下150階層の先には未知の世界が広がっている。
……ただ人間族が足を踏み入れていないだけだ。
しかし、ここでむきになって反論し、けんか腰になるのは芸がない。
リオネルは先ほどからずっと感じていた。
イェレミアスは、リオネルの『人となり』を試し続けていると。
自分と更に近しい関係になっても、リオネルが問題ない人物かと。
「この地下150階層が終点ですか?」
「ああ、そうだ。ここが最終階層、行き止まりだ。君もフロアを1周し、分かっただろう」
「……ええっと、古文書、資料の記載や、冒険者達から聞いた話では、違うみたいです」
「違う? ふむ……そうなのか?」
「はい、確かに地下150階層は人間族の最終到達階ですし、下る階段らしきものはありませんが……この先に新たなフロア、地下151階層以降があると俺は考えています」
「ほう、この150階層から先がなあ……そこを探し出し、探索して君はどうするつもりかな?」
「はい、探索したいのは好奇心もありますが、この迷宮探索の経験を糧にし、今後の仕事に役立てたいと思います」
「むう……今後の仕事に役立てる?」
「はい、これまで俺は冒険者として、自分の能力を活かし、いくつもの町や村の復興のお手伝いをして来ました。……例えば、この迷宮でヒュドラを倒し、猛毒と瘴気に穢された大地を浄化する事が出来ましたから。地上へ戻っても同じ事をするつもりです!」
リオネルは目を輝かせ、きっぱり言い切ると、大きく頷いていたのである。
一方、リオネルはといえば、微笑んだまま、その様子を見守っている。
そして、ゴーレムはリオネルを一瞥し、元の位置へ戻った。
再び、リオネルをじっと見ている。
互いの視線が合い、
「ふうむ……」
不可解だという趣きで腕組みをし、唸るゴーレム。
「イェレミアスさん、どうしました?」
「いや……リオネル・ロートレック君、どう考えても君という人間が分からないのだ。アールヴ族として1,000年近く生きた私の理解の域を遥かに超えている」
「そうですか?」
「うむ、私は探索の様子をずっと見させて貰った。君がこの世界で稀有な存在だという事はすぐに分かった。数多の魔物を従え、4つの属性魔法全てを使いこなす全属性魔法使用者である事、そして! 失われし、転移、飛翔の古代魔法をも! 完璧に使いこなす恐るべき術者だという事をな!」
リオネルはやはり監視されていた。
否、観察という方が妥当かもしれない。
下手に隠し立てせず、ここはある程度「認めた」方が良いだろう。
「はい、イェレミアスさんが御覧の通りです。まあ、俺が全属性魔法使用者である事や、古代魔法を使う事は公にしてはいませんが」
ここでリオネルは敢えて『視点』の事を言わなかった。
ただ見られているのを承知していたと、告げたのみ。
イェレミアスは、更に言う。
「うむ、加えて、リオネル君の圧倒的な強さには驚いた! 率いた魔物達の助力も得ず、ドラゴンや巨人どもをあっさりと倒した! 見事だ!」
「はあ、まあ、そうですね、ありがとうございます」
「うむ、全属性魔法使用者たるリオネル君が、どこで古代魔法を習得したのか、どうやってそこまで強くなったのかはぜひとも知りたいのだが、それは術者間の礼儀としてさすがに聞けない。逆に、私が同じ事を聞かれても、君へ教えるつもりはないからな」
「はい、そうですよね」
「だから、他の事を聞くぞ」
「はい、許容範囲内でお答えします」
「うむ、では聞こう。そこまで強い君は、地上では、その巨大な力を行使し、世界を統べるべく、思うがままに君臨出来るはずだ。それもあっさりとな」
「はあ……」
「それが何故、会ったばかりの年寄魔法使いのメッセンジャーを頼まれて、わざわざこんなフォルミーカ迷宮の深層に出向いたのだ? 君にはそういった野望や支配欲はないのか?」
ゴーレム……イェレミアスの質問に対して、リオネルは微笑みを崩さない。
「はい、俺には世界を統べるとか、野望、支配欲とかはないですね。迷宮へ入った理由は、他の冒険者と同じで、極めてシンプルです」
「む? 迷宮へ入った理由は、他の冒険者と同じで、極めてシンプルだと?」
「はい、このフォルミーカ迷宮の果てには一体何があるのかという好奇心、そして、戦いと探索で、己のレベルを更に上げ、一層強くなりたいという向上心ですね」
「な!? 一層強くなりたい!? むう、そこまで強いのにまだまだ不満か!?」
「はい、不満です。そもそもこの迷宮に入ったのは、ボトヴィッドさんの手紙には関係なく、自分の修行の為です。具体的な数字は言えませんが、俺の現在のレベルはそう高くはありませんから、……まだまだ発展途上なんですよ」
「む~、手紙はついでで、修行の為にこの迷宮へ……君はまだまだ発展途上か……」
「はい、おっしゃる通りです!」
戸惑い唸るゴーレム……イェレミアスへ、リオネルは微笑んだまま、
はっきりと答えていたのである。
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「リオネル君、手紙は確かに受け取った。後でじっくりと読もう。ボトヴィッドには、私は元気だ。お前も達者で長生きしろと伝えてくれ」
「分かりました。間違いなく伝えておきます」
微笑むリオネルへ、更にイェレミアスは問う。
「ありがとう! アートスを修復してくれた事も感謝する。ところで、これから先、君はどうするつもりなんだい、リオネル君。迷宮はここ地下150階層が終点だが……」
はあ?
迷宮はここ地下150階層が終点?
「今更何を言っている?」とリオネルは思う。
みえみえの下手な芝居である。
イェレミアスは、真実を隠している。
フォルミーカ迷宮を探索する冒険者は、
そんな戯言を信じてはいない。
この地下150階層の先には未知の世界が広がっている。
……ただ人間族が足を踏み入れていないだけだ。
しかし、ここでむきになって反論し、けんか腰になるのは芸がない。
リオネルは先ほどからずっと感じていた。
イェレミアスは、リオネルの『人となり』を試し続けていると。
自分と更に近しい関係になっても、リオネルが問題ない人物かと。
「この地下150階層が終点ですか?」
「ああ、そうだ。ここが最終階層、行き止まりだ。君もフロアを1周し、分かっただろう」
「……ええっと、古文書、資料の記載や、冒険者達から聞いた話では、違うみたいです」
「違う? ふむ……そうなのか?」
「はい、確かに地下150階層は人間族の最終到達階ですし、下る階段らしきものはありませんが……この先に新たなフロア、地下151階層以降があると俺は考えています」
「ほう、この150階層から先がなあ……そこを探し出し、探索して君はどうするつもりかな?」
「はい、探索したいのは好奇心もありますが、この迷宮探索の経験を糧にし、今後の仕事に役立てたいと思います」
「むう……今後の仕事に役立てる?」
「はい、これまで俺は冒険者として、自分の能力を活かし、いくつもの町や村の復興のお手伝いをして来ました。……例えば、この迷宮でヒュドラを倒し、猛毒と瘴気に穢された大地を浄化する事が出来ましたから。地上へ戻っても同じ事をするつもりです!」
リオネルは目を輝かせ、きっぱり言い切ると、大きく頷いていたのである。
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