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第542話「全ての能力を明かすわけではないが、 人間族にも、アールヴ族と張り合える者が居ると、しっかり証明してやろう」

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……アールヴ族の前ソウェル、イェレミアス・エテラヴオリと、
『イエーラ富国作戦』の契約を締結したリオネルであったが……

何はともあれ、まずは、
「イエーラへ出発するまでの、リオネル君の住居を決めようか」
という話となり……

イェレミアスがいくつも所有する屋敷の中から、
同じフロアで、同じ規模くらいの屋敷を、無償で借り受けると、
翌日から多忙な日々が始まった。

多忙なのも当然であった。

リオネルは公私にわたって、あまりにも、やる事、やりたい事が多すぎる。
なので、きちっとスケジュールを立てる事にした。

……朝は夜明け前、かと言って魔力の塊である人工太陽が照らし始めるのだが、
仲間とともに、午前3時前過ぎには、きっちりと起床。 

仮住まいである屋敷の庭で、準備運動にストレッチに軽いランニング。

シャワーを浴びた後、そのまま庭において、
上層で捕獲した、各素材製ゴーレムたちの修復、
更に自身の真理の文字を刻んで、再起動を進めて行く。
またゴーレムが、様々な作業を出来るよう、手に取り付けるアタッチメントも、
若干、造っておく。

そんなこんなで、朝食準備の時間となり、
リオネルは、イェレミアスへ訪問し、朝食の支度。

朝食後、イェレミアスから、アールヴ族及びイエーラについて教授される。
リオネルはアールヴ族について一般的な知識を持っていたが、より深く知る為には、
イェレミアスからの『取材』が必須であった。

更には、互いのスペックの共有と意見交換も行う。

イェレミアスは魔導水晶の『視点』で、探索の模様を見ていたので、
リオネルのスペックは一応認識していた。

なので、リオネルからイェレミアスのスペック聞き取りが中心となる。
但し、互いに手の内を全て明かさないのは、暗黙の了解であり、
相手を深く追求しすぎるような事はしない。

スペックの共有が終わると、イエーラ富国作戦の立案相談となる。

リオネルの能力披露を口火とするイメージで、『町村支援施策』の数多の項目から、
イエーラで必要な項目を精査し、チョイスして行く。

そんなこんなで、昼食準備の時間となり、再びリオネルが昼食の支度。
昼食後に、フォルミーカ迷宮全体について、イェレミアスから教授される。

教授後、フォルミーカ迷宮古代都市フロアを、イェレミアスとともに散策&見学。

散策&見学から帰宅後、再びイェレミアスから古代迷宮個別の知識を教授される。

朝昼晩を演出し、地底庭園を支える人工太陽、降雨装置を始めとした、
天候装置について。

ストーンサークル転移装置について。

復活させた人間型ゴーレムについて

……以上。

えええ?
おいおいおい!

リオネルが学ぶのは、たったこれだけ?
と、誰もが突っ込みたくなるに違いない。

しかし、シンプルな理由があった。
時間的に、無理なのである。
何故なら、この古代迷宮の叡智は、あまりにも多すぎるから。

イエーラへ赴くまでのたった約1か月では、学びきれないのが明白であり、
リオネルは泣く泣く『優先順位』をつけ、『テーマ』をいくつかに絞ったのだ。

またいつか、この古代迷宮を訪れ、学ぶ機会が来るだろうと思いつつ……

ちなみに、契約締結を後押ししてくれたティエラは、打合せ終了後……

「リオ、そしてイェレミアス。このまま地下迷宮に居たいけれど、残念ながら、私も結構忙しいの!」

と、きっぱり言い、

「一旦、フェードアウトして、キーポイントとなる各所へ、いろいろ根回ししておくから、1か月後の出発前にまたここで会いましょう! じゃあね~!」

可愛らしくぶんぶん、手を振ると、
転移魔法らしき術で、「ぱっ!」とその場から、姿を消していたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

コメントの最後で分かる通り、どうやら、ティエラは、
イェレミアスとリオネルがイエーラへ赴く際、同行してくれるらしい。

ティエラは、協力すると言ってくれてはいたが、
ふたりにとって、これはありがたかった。

最初が肝心という、ことわざがある。

いかなる物事も、最初に失敗があると、その後もうまくいかない事の戒めとして、
良く使われる言葉だ。

その事を、ティエラはしっかりと考えているに違いない。

前ソウェルのイェレミアスだけではなく、地界王アマイモンの愛娘、地の最上級精霊ティエラを連れ、イェレミアスの孫娘以下、アールヴ族たちと会う。

であれば、リオネルのファーストインプレッションとしては、
強力なアドバンテージとなるだろうから。

人間族を下に見るアールヴ族は、前ソウェルのお墨付きを受けたリオネルと、
親しげに振舞うティエラの姿を見て、衝撃を受けるのは確実だ。

その上で、俺はアールヴ族の前で、自身の能力をオープンにする!

全ての能力を明かすわけではないが、
人間族にも、アールヴ族と張り合える者が居ると、しっかり証明してやろう。

そうすれば、イェレミアスの孫娘は自分に一目置き、聞く耳を持ってくれる。

イエーラ富国作戦……
とんでもなく超高難度の依頼だが、イェレミアスの案内と説得、
リオネルのパフォーマンス、ティエラのフォロー、
そして4大属性の精霊たちの協力があれば、何とか完遂出来るんじゃないか。

はっきりした手ごたえを感じたリオネルは、日々、イエーラ富国作戦立案と、
古代迷宮の知識習得&実践を、前向きに行っていたのである。
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