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第580話「うふふふ、残念でしたわね、おじいさま」

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「ええ、持ち帰った、たくさんのおみやげを並べるの。オーク討伐の成果をお披露目しますからね」

ヒルデガルドは、そう言い、うふふふ♡と含み笑いをした。

「では、リオネル様! 訓練場へ参りましょう!」

「分かりました」

ヒルデガルドは、リオネルの手を取り握ると、足取り軽く歩き出した。

官邸敷地内にある訓練場は、武官、魔法使いが普段の鍛錬に使用している。

楕円形のトラックと、トラックの内側にある円形内には芝生が植えられ、
片隅には、砂地や障害物も設置されていた。

「リオネル様! 先に案内した際、ご覧頂きましたが、冒険者目線で、この訓練場も改善の余地はありますね」

「はい、冒険者として見るならば、良い訓練場だとは思いますが、少し手を入れればもっともっと使いやすくなると思いますね」

そんな話をしているうち、武官が数人、敷物を抱え、現れた。
数人の事務官も一緒だ。
彼ら彼女たちはびっくりした。

あるじヒルデガルドがリオネルと手をつなぎ、
恋人のように寄り添っていたから。

とは言っても、さすがに問い質したりなどの突っ込みは出来ないが。

「あなたたち、持って来た敷物をそこへ広げてください」

「は!」
「かしこまりました!」

武官たちにより、円形内の芝生上へ5枚の敷物が敷かれた。
敷物は大きく、枚数も充分である。

「よろしい! 敷物から、10m離れてくれるかしら」

ヒルデガルドの言葉を聞き、武官たちは敷物から離れる。

「「はい!」」

武官たちが離れたのを見て、ヒルデガルドは言う。

「リオネル様、空間魔法に仕舞っているものの、お披露目をお願い致します」

「分かりました」

リオネルは、収納の腕輪から、オークキング、オークの死骸計10体。
更に宝箱を4つ搬出した。

「「「「おお!!」」」」

「「「「あああっ!!」」」」

いきなり出現したインパクトある『おみやげ』にどよめき、
大いに驚く武官、事務官たち。

と、そこへちょうど、イェレミアスもやって来た。

「おお! もう戻られたか! リオネル様! 全く心配はしていなかったが、ヒルデガルドも無事のようだな!」

そして、並べられたおみやげ、オーク討伐の証拠品の数々をしげしげと眺める。

「……おおおおお!! こ、これは!!」

「ただいま戻りました、おじいさま! オーク討伐、無事終了致しました! では、リオネル様、おじいさまへご報告をお願い致します!」

「はい! ご報告致します。イエーラ国境付近に跋扈していたオークどもを追い払い、魔境まで追跡し、巣を突き止め、殲滅しました。奴らの数は約2千体。群れのリーダーは、このオークキングです。持ち帰った以外の死骸は葬送魔法等で処理。宝箱は巣にあったものを回収、戦利品ですね」

簡潔明瞭なリオネルの報告を聞き、ヒルデガルドもさっと手を挙げる。

「私が少々補足致します! オークどもが侵入していた地点から、長さ約100㎞にも及ぶ岩石製防護壁もリオネル様により造って頂き、私がしっかりと確認致しました。ちなみに、岩石製防護壁は、高さも20m、厚さも10mあり、申し分ありません。オークだけでなく、他の魔物の侵入にも、とても大きな効果が見込めると思いますわ」

完璧ともいえる、ふたりの報告を聞き、
イェレミアスたちは、とても喜んだのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

武官、事務官も交えたイェレミアスへの報告が終わり……
詳しい事は「昼食を摂りながら」という事となった。

訓練場で披露されたオークキング以下の討伐証拠品は、
再び、リオネルの収納の腕輪へ搬入された。

この討伐証拠品をどのように活用するのかは、イェレミアスも交え、
じっくり相談する事に。

その間、ヒルデガルドは、リオネルと手をつないだままだ。

ヒルデガルドの手を振りほどくわけにも行かず、
リオネルは苦笑しながらも任せている。

官邸の大広間へ入ると、既に食事の用意がされていた。
席次は朝食の時と変わらない。

リオネルが最も上座。
対面にヒルデガルドが着席。
イェレミアスがその下座に座った。

じっくり話をする為、まずは食事を終わらせてしまおうと3人の意見は一致。

イェレミアスが破顔する。

「はははは、私の予想が外れたよ。それも大外れだ。オーク討伐には、早くても一日はかかると思い、夕飯を3人一緒に食べると思っていたよ。それがたったの6時間、半日かからずとはね」

「うふふふ、予想が大外れで、残念でしたわね、おじいさま」

「ははは! まあ、嬉しい誤算というわけだ。ただ、フォルミーカ迷宮でリオネル様の戦いぶりを私は見ていたからな。充分、納得は出来る」

「ええ、おじいさまのおっしゃる通り、リオネル様はとんでもなくお強いです。お手紙に書いてあった事も私はたっぷり思い知らされましたわ」

そんなやりとりの後、夕食が始まった。

やはりというか料理は、アールヴ族が好むハーブをふんだんに使ったもの、
朝食よりも、ややボリューミー。
鶏肉と野菜がメインで、卵も多い。

好き嫌いがほとんどないリオネルは、味付けに慣れた事もあり、
旺盛な食欲を見せる。

ぱくぱく食べるリオネルは、時間を作り、アールヴ料理を習おうと決めた。

やがて食事が終わり……
食後のハーブティーが出される。

お茶を飲みながらという感じで、まずイェレミアスが口を開く。

「リオネル様のご報告とヒルデガルドの補足説明でおおよそは理解した。今度はヒルデガルドが詳しい説明をしてくれるかな。朝の出発後から、帰還するまでをな」

「はいっ!」

と元気よく返事をしたヒルデガルドは、
目に星を瞬かせるようにキラキラさせながら、まるで我が事のように、
リオネルの活躍の一部始終を語ったのである。
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