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第581話「ははは! 何の何の! リオネル様! お安い御用ですよ」
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元気よく返事をしたヒルデガルドは、
目に星を瞬かせるようにキラキラさせながら、まるで我が事のように、
リオネルの活躍の一部始終を語った。
「おじいさま! リオネル様の戦いぶりに、私は見惚れてしまいました! 剣、格闘、魔法を織り交ぜ、オークどもをガンガン倒し、オークキングの攻撃をあっさり受け止め、拳一発でノックアウトしてしまいましたの!」
「ははは、そうか」
「はい! 私、決めました! リオネル様へ、弟子入り致します! 剣、格闘、魔法、可能な限り、いろいろ教えて頂きたいと考えております」
「うむうむ、ところで、リオネル様がお造りになった岩石製防護壁の仕様確認はどう行ったのかな?」
「はい! お聞きください、おじいさま! 私、リオネル様に抱かれ、空を飛びましたの! 真っ青な大空を!」
「ほう! 真っ青な大空か!」
「はい! リオネル様が失われし古代魔法、飛翔魔法を行使されたのです! 心地よい風に包まれ、本当に素晴しい体験でした。あ! 念の為、誤解の無いよう申し上げますと、抱いたといってもリオネル様はとても紳士でした。邪な事なく、あくまで任務遂行の為、私を優しく抱きかかえただけですわ!」
「うむ、任務遂行の為だな?」
「はい、安全も考えて頂き、命綱の魔導ロープもつけ、飛翔して高所から、おじいさまがお尋ねになった岩石製防護壁の仕様確認を致しました。地上からの視認では困難な高さ、厚さ、そして長さの確認がばっちり出来ました」
「ふむ。そこまでの規模の防護壁だと、まともに造ればとてつもない時間と費用そして手間がかかる。工事の作業員も大勢必要だ」
「はい! 重々承知致しております」
「オーク討伐も含め、リオネル様には相応の契約金を支払っている。請け負う仕事によっては追加料金が発生する。そしてかかった経費はこちらで持つ約束だ」
「は、はい!」
「それらは全てイエーラの国費から支払われる。結構な金額となるだろう。であればソウェルたるお前は最大の費用対効果を考え、リオネル様に仕事をお願いするのだ」
「わ、分かりました! おじいさま……」
イェレミアスとヒルデガルドの話にひと段落つき、頃合いと見たのだろう。
リオネルが口を開く。
「さて! 俺の午後の仕事について、スケジュール調整をしましょうか?」
「え?」
「リオネル様の午後の仕事ですか?」
ヒルデガルド、イェレミアスとも、リオネルの言葉を聞き、驚いた。
対してリオネルは、
「はい! まだまだやる事はたくさんありますし、時間がもったいないですよ」
と、柔らかく微笑んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヒルデガルドが、リオネルへ話しかける。
「リオネル様。さすがにお疲れになっているのでは?」
対して、リオネルは笑顔のまま、首を横へ振る。
「いえ、大丈夫です。もし特に指示がないのなら、オーク討伐の国内への告知方法検討、戦利品の宝箱処理検討、またイェレミアスさんにまとめて貰っている開拓地候補の資料確認、武官さんたちへの武術指導など、いかがでしょう?」
つらつらつらと、リオネルから仕事を提示され、
「な、成る程! たくさんありますね!」
「ええ、まだまだありますが、ヒルデガルドさんから他にも何かあれば、お聞きします」
「はっ、はい!」
「真面目な話、心身とも頑丈すぎる俺とは違い、ヒルデガルドさんは、瘴気渦巻く魔境へ赴き、修行やら、オークやらで、いろいろあり、緊張もしたでしょう。ゆっくり休んでください」
「そ、そんな! ゆっくり休むなんて! 私も仕事を致しますわ! それにリオネル様から、たくさんたくさん学びたいっ!!」
ここでリオネルが拒むかと思えば、あっさり。
ヒルデガルドの意思を尊重する。
「分かりました。じゃあ、まずはのんびり出来る仕事をしましょう。疲れたら、回復魔法をかけますよ」
「あ、ありがとうございます!」
そんなふたりを見て、イェレミアスは笑顔である。
「ヒルデガルド」
「はい、おじいさま」
「リオネル様からご依頼された開拓地候補の資料作成は、もう少し時間がかかるぞ。それと、普段お前が行っているソウェルの通常業務は、とりあえず代行として、私が受け持とう。弟子入りしたお前は師匠のリオネル様と一緒に仕事をする事を優先しなさい」
「わあ!! ありがとうございますっ!! 助かりますわっ!! おじいさまっ!! 私、一生懸命頑張りますっ!!」
嬉しそうなヒルデガルドが祖父のフォローに礼を言えば、リオネルも頭を下げる。
「イェレミアスさん、申し訳ない、ありがとうございます」
対して、イェレミアスは満面の笑みを浮かべる。
生来、表情に乏しく、頑なで不器用な孫娘が、
リオネルと一緒だと、にこにこしていて、
仕事は勿論、全てにおいて前向きであるからだ。
「ははは! 何の何の! リオネル様! お安い御用ですよ。フォルミーカ迷宮で、仮住まいしていた時はのんびり出来ましたが、イエーラへ戻るとそうは行きません。ウチの孫娘を何卒宜しくお願い致しますぞ」
「分かりました! ではお茶も飲みましたし、早速仕事にとりかかりましょう!」
「「はいっ!!」」
リオネルの呼びかけに、息ぴったりに、ふたりが応えた。
こうして……
リオネルとヒルデガルドは、オーク討伐から戻ったばかりなのに、
午後も仕事をする事となったのである。
目に星を瞬かせるようにキラキラさせながら、まるで我が事のように、
リオネルの活躍の一部始終を語った。
「おじいさま! リオネル様の戦いぶりに、私は見惚れてしまいました! 剣、格闘、魔法を織り交ぜ、オークどもをガンガン倒し、オークキングの攻撃をあっさり受け止め、拳一発でノックアウトしてしまいましたの!」
「ははは、そうか」
「はい! 私、決めました! リオネル様へ、弟子入り致します! 剣、格闘、魔法、可能な限り、いろいろ教えて頂きたいと考えております」
「うむうむ、ところで、リオネル様がお造りになった岩石製防護壁の仕様確認はどう行ったのかな?」
「はい! お聞きください、おじいさま! 私、リオネル様に抱かれ、空を飛びましたの! 真っ青な大空を!」
「ほう! 真っ青な大空か!」
「はい! リオネル様が失われし古代魔法、飛翔魔法を行使されたのです! 心地よい風に包まれ、本当に素晴しい体験でした。あ! 念の為、誤解の無いよう申し上げますと、抱いたといってもリオネル様はとても紳士でした。邪な事なく、あくまで任務遂行の為、私を優しく抱きかかえただけですわ!」
「うむ、任務遂行の為だな?」
「はい、安全も考えて頂き、命綱の魔導ロープもつけ、飛翔して高所から、おじいさまがお尋ねになった岩石製防護壁の仕様確認を致しました。地上からの視認では困難な高さ、厚さ、そして長さの確認がばっちり出来ました」
「ふむ。そこまでの規模の防護壁だと、まともに造ればとてつもない時間と費用そして手間がかかる。工事の作業員も大勢必要だ」
「はい! 重々承知致しております」
「オーク討伐も含め、リオネル様には相応の契約金を支払っている。請け負う仕事によっては追加料金が発生する。そしてかかった経費はこちらで持つ約束だ」
「は、はい!」
「それらは全てイエーラの国費から支払われる。結構な金額となるだろう。であればソウェルたるお前は最大の費用対効果を考え、リオネル様に仕事をお願いするのだ」
「わ、分かりました! おじいさま……」
イェレミアスとヒルデガルドの話にひと段落つき、頃合いと見たのだろう。
リオネルが口を開く。
「さて! 俺の午後の仕事について、スケジュール調整をしましょうか?」
「え?」
「リオネル様の午後の仕事ですか?」
ヒルデガルド、イェレミアスとも、リオネルの言葉を聞き、驚いた。
対してリオネルは、
「はい! まだまだやる事はたくさんありますし、時間がもったいないですよ」
と、柔らかく微笑んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヒルデガルドが、リオネルへ話しかける。
「リオネル様。さすがにお疲れになっているのでは?」
対して、リオネルは笑顔のまま、首を横へ振る。
「いえ、大丈夫です。もし特に指示がないのなら、オーク討伐の国内への告知方法検討、戦利品の宝箱処理検討、またイェレミアスさんにまとめて貰っている開拓地候補の資料確認、武官さんたちへの武術指導など、いかがでしょう?」
つらつらつらと、リオネルから仕事を提示され、
「な、成る程! たくさんありますね!」
「ええ、まだまだありますが、ヒルデガルドさんから他にも何かあれば、お聞きします」
「はっ、はい!」
「真面目な話、心身とも頑丈すぎる俺とは違い、ヒルデガルドさんは、瘴気渦巻く魔境へ赴き、修行やら、オークやらで、いろいろあり、緊張もしたでしょう。ゆっくり休んでください」
「そ、そんな! ゆっくり休むなんて! 私も仕事を致しますわ! それにリオネル様から、たくさんたくさん学びたいっ!!」
ここでリオネルが拒むかと思えば、あっさり。
ヒルデガルドの意思を尊重する。
「分かりました。じゃあ、まずはのんびり出来る仕事をしましょう。疲れたら、回復魔法をかけますよ」
「あ、ありがとうございます!」
そんなふたりを見て、イェレミアスは笑顔である。
「ヒルデガルド」
「はい、おじいさま」
「リオネル様からご依頼された開拓地候補の資料作成は、もう少し時間がかかるぞ。それと、普段お前が行っているソウェルの通常業務は、とりあえず代行として、私が受け持とう。弟子入りしたお前は師匠のリオネル様と一緒に仕事をする事を優先しなさい」
「わあ!! ありがとうございますっ!! 助かりますわっ!! おじいさまっ!! 私、一生懸命頑張りますっ!!」
嬉しそうなヒルデガルドが祖父のフォローに礼を言えば、リオネルも頭を下げる。
「イェレミアスさん、申し訳ない、ありがとうございます」
対して、イェレミアスは満面の笑みを浮かべる。
生来、表情に乏しく、頑なで不器用な孫娘が、
リオネルと一緒だと、にこにこしていて、
仕事は勿論、全てにおいて前向きであるからだ。
「ははは! 何の何の! リオネル様! お安い御用ですよ。フォルミーカ迷宮で、仮住まいしていた時はのんびり出来ましたが、イエーラへ戻るとそうは行きません。ウチの孫娘を何卒宜しくお願い致しますぞ」
「分かりました! ではお茶も飲みましたし、早速仕事にとりかかりましょう!」
「「はいっ!!」」
リオネルの呼びかけに、息ぴったりに、ふたりが応えた。
こうして……
リオネルとヒルデガルドは、オーク討伐から戻ったばかりなのに、
午後も仕事をする事となったのである。
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