591 / 658
第591話「でも! 楽しみ! 明日が本当に待ち遠しい!!」
しおりを挟む
原野の開拓、農地化が終わった。
ゴーレム達の活躍が大きく、あっという間の作業終了であった。
リオネルとヒルデガルド一行とともに、村へ戻った村長達は、やる気満々である。
……当然かもしれない。
村長達は、事前に簡単な説明を、官邸の事務官から受けていた。
国が開拓する村近郊の良質で広大な農地を、
これまた、国の大きな援助付きで耕作出来るかもしれないと。
そして、論より証拠。
リオネルによる大規模な農地開拓作業を実際に目の当たりにし、
気持ちは大いに高ぶった。
これは!
本当に良い話に違いない!と。
渡りに船、大歓迎、アゲアゲ気分の村長達へ、ヒルデガルドと事務官達が、
「改めて詳しく説明します。今回の農地開拓は、まず国内用の食糧増産を、そして国外との交易用ハーブの名産品化が主要目的です」
そう告げて、改めて契約書を提示し、村長以下へ丁寧に説明。
……最初の3年間こそ、収穫高の50%という高額の税金を納めなければならないが、
反面、大きな負担となる必要経費がほとんどかからない。
農作業着、農機具は要返却の無料貸与で、
種、苗、肥料などは無料提供。土地代も徴収しない。
4年目以降は、税金も大幅に軽減されて行く。
「至れり尽くせり」の手厚い支援を受けられると村長達は実感する。
頑張って目標を達成すれば、最短11年目にその土地を村で所有出来るというのも、
大きなモチベーションアップにつながった。
何より、身体ひとつで働けるというのは、
村にとっては、とんでもなく魅力的なのだ。
説明後、不明点等に関して、質疑応答も行われた。
遠慮なく、思った事、考えた事を言って欲しい。
柔らかい笑顔のヒルデガルドが、優しく促せば、
「食糧増産ならば、主食であるパンの原料となる小麦、ライ麦などをメインに耕作した方が良いでしょうか?」
「国策作物のハーブを多く育てれば、現在より、現金収入は増えるでしょうか?」
「作物を加工した食品を売りたいと考えていますが、何か、良い方法はありますか?」
「春まきと秋まきで、年に2回収穫可能な『かぶ』を育てれば、人の食料、家畜の飼料、両方に使えると思いますが、いかがでしょう?」
質疑応答では、村長達から前向きな意見も多く出され、
活発なやりとりが交わされた。
主に話すのはヒルデガルドと事務官達であったが、
リオネルもこれまでの経験を活かし、適宜、アドバイスを行った。
そんなこんなで、打合せの結果、村長と助役は、さすがに即答はせず、
一旦預かり、後日返答する事に。
「申し訳ございませんが、少しお時間を頂けますでしょうか? 契約書をお預かりして熟読し、村民達と相談し、前向きに検討し、回答させて頂きます」
と答えたものの、YESの返事が来るのはほぼ間違いなかったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
気を良くした一行は明日以降の『仕込み』をする事にした。
昨日はリオネルだけで前準備を行ったのだが、今後の事も考え、
ヒルデガルド以下が、経験値を積むという趣旨である。
具体的な段取りとして、イェレミアスがピックアップした、
いくつかの『開拓候補地』へ、まず転移魔法でケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟を送り込み、偵察及び状況確認を徹底。
魔物、肉食獣などの敵が居たら、追い払い、かつ掃討して貰った。
しっかりと安全が確保されたら、満を持して全員で転移。
改めて状況の確認を行い、地属性魔法を行使。
頑丈な岩石製防護壁を生成し、開拓候補地をぐるりと囲んでしまう。
魔境付近へ設置した防護壁に比べ、遥かにスケールダウンするとはいえ……
地響きを立て出現する『開拓候補地の防護壁』を目の当たりにし、
ヒルデガルドは気圧されたようになってしまう。
既に岩石製防護壁生成を見ていたヒルデガルドさえそうなのだから、
生成目撃が『未経験』であった武官、事務官達はびっくり仰天。
ごごごごごごごご!
と重低音でせり出してくる岩石を見て、呆然としてしまっていた。
そんな事前セッティングを計4か所行ってから、官邸へ戻った。
……時間は午後4時。
ヒルデガルドは、本日追加で事前セッティングした、
開拓候補地の契約書作成を事務官へ命じ、リオネルとともに訓練場へ移動。
訓練中の留守番部隊?の武官へ合流。
ともに、格闘術の指導を受けた。
リオネルが指導するのは勿論、師モーリス・バザン直伝の、
破邪聖煌拳である。
準備運動、ストレッチから始め、初歩の体さばきをたっぷり行う。
体さばきが終われば、
中段突き、連突き、追い突き、逆突き、前蹴り、回し蹴り、
下段払い、上げ受け、手刀受けなどの基本練習をこれまたたっぷり行う。
基本練習が終わると、組手の練習へ。
組み手が様になって来たら、明日以降はいよいよ模擬戦を行う事となる。
武官達は真剣だが、剣技、格闘術、魔法、スキルを織り交ぜ戦う、
リオネルの戦闘スタイルを見知ったヒルデガルドは、特に熱心だ。
この訓練後も、リオネルとヒルデガルドの予定はびっしり。
夕食を摂ったら、イェレミアスを入れて3人で、
本日の報告共有と、明日以降の業務について打合せをしなければならない。
配下達から見れば、ヒルデガルドは、とんでもなく多忙である。
実際のところ、現在イェレミアスが引き継いでいる、
以前担っていた、ソウェルの仕事量よりも、遥かに多い。
しかし、リオネルと組む仕事は面白くてたまらない、
充実感に満ちあふれたヒルデガルドに、不安は全くない。
加えて、たまにしか尋ねては来ないが、
リオネルはヒルデガルドの健康状態を常に案じており、
こまめな確認と、こまめな回復魔法の行使を欠かさないのだ。
そんなリオネルの、さりげない優しさを感じ、
ヒルデガルドは、満面の笑みを浮かべる。
うふふ……今日も忙しく、とんでもなく早い1日だった。
多分明日もいろいろあって、今日と同じくらいの多忙さだろう。
でも! 楽しみ!
明日が本当に待ち遠しい!!
心地よい汗をかきながら、ヒルデガルドは、リオネルとペアになり、
熱心に組み手を行っていたのである。
ゴーレム達の活躍が大きく、あっという間の作業終了であった。
リオネルとヒルデガルド一行とともに、村へ戻った村長達は、やる気満々である。
……当然かもしれない。
村長達は、事前に簡単な説明を、官邸の事務官から受けていた。
国が開拓する村近郊の良質で広大な農地を、
これまた、国の大きな援助付きで耕作出来るかもしれないと。
そして、論より証拠。
リオネルによる大規模な農地開拓作業を実際に目の当たりにし、
気持ちは大いに高ぶった。
これは!
本当に良い話に違いない!と。
渡りに船、大歓迎、アゲアゲ気分の村長達へ、ヒルデガルドと事務官達が、
「改めて詳しく説明します。今回の農地開拓は、まず国内用の食糧増産を、そして国外との交易用ハーブの名産品化が主要目的です」
そう告げて、改めて契約書を提示し、村長以下へ丁寧に説明。
……最初の3年間こそ、収穫高の50%という高額の税金を納めなければならないが、
反面、大きな負担となる必要経費がほとんどかからない。
農作業着、農機具は要返却の無料貸与で、
種、苗、肥料などは無料提供。土地代も徴収しない。
4年目以降は、税金も大幅に軽減されて行く。
「至れり尽くせり」の手厚い支援を受けられると村長達は実感する。
頑張って目標を達成すれば、最短11年目にその土地を村で所有出来るというのも、
大きなモチベーションアップにつながった。
何より、身体ひとつで働けるというのは、
村にとっては、とんでもなく魅力的なのだ。
説明後、不明点等に関して、質疑応答も行われた。
遠慮なく、思った事、考えた事を言って欲しい。
柔らかい笑顔のヒルデガルドが、優しく促せば、
「食糧増産ならば、主食であるパンの原料となる小麦、ライ麦などをメインに耕作した方が良いでしょうか?」
「国策作物のハーブを多く育てれば、現在より、現金収入は増えるでしょうか?」
「作物を加工した食品を売りたいと考えていますが、何か、良い方法はありますか?」
「春まきと秋まきで、年に2回収穫可能な『かぶ』を育てれば、人の食料、家畜の飼料、両方に使えると思いますが、いかがでしょう?」
質疑応答では、村長達から前向きな意見も多く出され、
活発なやりとりが交わされた。
主に話すのはヒルデガルドと事務官達であったが、
リオネルもこれまでの経験を活かし、適宜、アドバイスを行った。
そんなこんなで、打合せの結果、村長と助役は、さすがに即答はせず、
一旦預かり、後日返答する事に。
「申し訳ございませんが、少しお時間を頂けますでしょうか? 契約書をお預かりして熟読し、村民達と相談し、前向きに検討し、回答させて頂きます」
と答えたものの、YESの返事が来るのはほぼ間違いなかったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
気を良くした一行は明日以降の『仕込み』をする事にした。
昨日はリオネルだけで前準備を行ったのだが、今後の事も考え、
ヒルデガルド以下が、経験値を積むという趣旨である。
具体的な段取りとして、イェレミアスがピックアップした、
いくつかの『開拓候補地』へ、まず転移魔法でケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟を送り込み、偵察及び状況確認を徹底。
魔物、肉食獣などの敵が居たら、追い払い、かつ掃討して貰った。
しっかりと安全が確保されたら、満を持して全員で転移。
改めて状況の確認を行い、地属性魔法を行使。
頑丈な岩石製防護壁を生成し、開拓候補地をぐるりと囲んでしまう。
魔境付近へ設置した防護壁に比べ、遥かにスケールダウンするとはいえ……
地響きを立て出現する『開拓候補地の防護壁』を目の当たりにし、
ヒルデガルドは気圧されたようになってしまう。
既に岩石製防護壁生成を見ていたヒルデガルドさえそうなのだから、
生成目撃が『未経験』であった武官、事務官達はびっくり仰天。
ごごごごごごごご!
と重低音でせり出してくる岩石を見て、呆然としてしまっていた。
そんな事前セッティングを計4か所行ってから、官邸へ戻った。
……時間は午後4時。
ヒルデガルドは、本日追加で事前セッティングした、
開拓候補地の契約書作成を事務官へ命じ、リオネルとともに訓練場へ移動。
訓練中の留守番部隊?の武官へ合流。
ともに、格闘術の指導を受けた。
リオネルが指導するのは勿論、師モーリス・バザン直伝の、
破邪聖煌拳である。
準備運動、ストレッチから始め、初歩の体さばきをたっぷり行う。
体さばきが終われば、
中段突き、連突き、追い突き、逆突き、前蹴り、回し蹴り、
下段払い、上げ受け、手刀受けなどの基本練習をこれまたたっぷり行う。
基本練習が終わると、組手の練習へ。
組み手が様になって来たら、明日以降はいよいよ模擬戦を行う事となる。
武官達は真剣だが、剣技、格闘術、魔法、スキルを織り交ぜ戦う、
リオネルの戦闘スタイルを見知ったヒルデガルドは、特に熱心だ。
この訓練後も、リオネルとヒルデガルドの予定はびっしり。
夕食を摂ったら、イェレミアスを入れて3人で、
本日の報告共有と、明日以降の業務について打合せをしなければならない。
配下達から見れば、ヒルデガルドは、とんでもなく多忙である。
実際のところ、現在イェレミアスが引き継いでいる、
以前担っていた、ソウェルの仕事量よりも、遥かに多い。
しかし、リオネルと組む仕事は面白くてたまらない、
充実感に満ちあふれたヒルデガルドに、不安は全くない。
加えて、たまにしか尋ねては来ないが、
リオネルはヒルデガルドの健康状態を常に案じており、
こまめな確認と、こまめな回復魔法の行使を欠かさないのだ。
そんなリオネルの、さりげない優しさを感じ、
ヒルデガルドは、満面の笑みを浮かべる。
うふふ……今日も忙しく、とんでもなく早い1日だった。
多分明日もいろいろあって、今日と同じくらいの多忙さだろう。
でも! 楽しみ!
明日が本当に待ち遠しい!!
心地よい汗をかきながら、ヒルデガルドは、リオネルとペアになり、
熱心に組み手を行っていたのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
319
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる