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第593話「一方、リオネルは想定の範囲内らしく、淡々としていた」
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交易を盛んにし、イエーラの経済を活発化させ、国内の景気を良くして、
税収をアップ、つまり国家予算の増収をはかる為、
国外の商人専用の特別地区を造る事を決めたリオネル。
ヒルデガルド、イェレミアスと特別地区の候補地を相談した結果、
「都フェフに近すぎるのは、万が一何かトラブル等があった場合、宜しくない。隣のアクィラ王国から通じる本街道から、国境を越えたすぐの場所がベストだろう」
という事で意見が一致した。
都フェフから、遥かに離れた国境ならば、不測の事態が起きても、
影響を及ぼすには、結構な時間がかかる。
時間を稼いだその間に、いろいろ手を打って、対処する事は可能だろう。
安全度が増した等の状況が変われば、特別地区を移転させても。
という含みも持たせ、外部からの訪問者をチェックする『関所』がある場所に隣接した土地へ、小さな町――『特別地区』を造る事となった。
こうして話さえ決まれば、相変わらず、リオネルの動きは電光石火。
立て込んだもろもろのスケジュールをさっくり調整して時間を捻出。
国境を守る関所勤務の武官達へ、今回の説明を兼ねた事前連絡をした上で、
とある日の朝早く、ヒルデガルド、若干名の武官、事務官を連れて訪問した。
関所へ詰める武官達と簡単に初対面のあいさつを交わし、
低姿勢で柔らかく慰労したリオネルは、改めて事情を説明。
早速、作業に取り掛かった。
ちなみに……
関所隣接の土地は私有地ではなく、イエーラの国有地である。
ヒルデガルドとイェレミアスの許可を得ているので、
ガンガンばりばり町造りをする事に何の問題もない。
防衛の要である関所は新たに建て直す予定だ。
規模も大きくし、耐久度を大幅に上げる。
設備も最新のものに変える。
また関所前に設置され、これまで使っていた、
防衛のシンボルともいえる国境防護壁も相当年季が入っていた。
なので、こちらもついでにと、
リオネルが生成した岩石製のものに取り換えるか、という話になっている。
さてさて!
これらの工事だが、農地開拓同様、
リオネルが繰り出した200体ものゴーレム達が大活躍。
特別地区建設予定地に生い茂る雑木林を伐採。
但し、切った木は無駄にせず、二次使用。
後で建築用資材、まき等に使う為、片隅へ積み上げさせた。
更に点在する邪魔な岩などを、どかした上で、綺麗に綺麗に整地する。
整地が終了し……充分な広さが確保されると、リオネルは、地属性魔法を行使。
特別地区建設予定の土地を、高さ20mの岩壁でぐるりと囲み、
町の防護壁部分を生成した。
更に元々あった関所が、居留地の一部に上手く収まるよう、
国境用の防護壁も新たに生成。
特別地区の防護壁としっかりと組み合わせ、全てを一体化させた。
既に農地開拓を目の当たりにしていた武官、事務官達は、
「さすがはリオネル様だ!」と誰もが笑顔で納得し、見守っていた。
だが、リオネルの魔法初体験である関所詰めの武官達は、
「何だ、あれは!?」と超大ショック。
鮮やか過ぎるリオネルの手際を目の当たりにして唖然、呆然。
全員が目を見開き、口もぽかん状態であったのである。
次いでリオネルはゴーレムへ命じ、整地した特別地区の敷地にて、
『基礎工事』を敢行。
中央広場、街区、道路などの下工事をざっくりと行う。
時は金なりという事で、ゴーレムが基礎工事をしている最中に、
関所詰めの武官達へ、準備運動、ストレッチ、素振り、体さばき、足さばきなど、
基礎の武術指導を行った。
あいさつした際もそうだが、ここで再び主ヒルデガルドは勿論、
同行した武官、事務官が、心酔したリオネルを凄い人だ!と褒めちぎった。
……そこまでヒルデガルド達が言うのなら、
試してみようという気持ちになったのだろう。
武術指導は、抵抗なくスムーズに行われ、
リオネルの熱心で丁寧かつ分かりやすいやり方もあり、彼らも大いに納得。
終いには、やはりというか剣の模擬戦で瞬殺の嵐!
完膚なきまでに圧倒された事もあり……
関所詰めの武官達も、リオネルに心酔。
ディープなシンパになったのは、言うまでもなかった。
そんなこんなで、もろもろの業務をお昼までに終えると、
リオネル一行は、転移魔法で一旦、官邸へ帰還。
官邸で手早く昼食&休憩を取ると、すぐにヒルデガルド、イェレミアスを交え、
アールヴ族の工事関係者を加えて、実務に関して、打合せを行う。
再び転移魔法で、工事関係者達を連れ、特別地区建設予定地へ戻り、
工事を手伝うゴーレムと用意しておいた数々の資材を搬出。
結局この日は夕方まで、ヒルデガルドとともに、
特別地区建設の工事に立ち会ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……そんな日が1週間続き、特別地区はあっという間に基礎工事が終わった。
区割りが終わり、大中小、石畳の道路も造られ、
後は『上物』を建てるのみとなっている。
井戸も各所に掘られ、水場も確保。
特別地区が大きくなる事に備え、水路も造り、近くの川からも水を引く予定もある。
予定通り関所も改めて建て直され、規模を大きくして『砦』とし、
使い勝手も良くした。
各種魔法で、耐久性も著しく上昇させている。
力仕事を担うゴーレムの貢献は計り知れず……
体力に限界があるアールヴ族の工事関係者は、驚嘆の連続であった。
ここまでお膳立てすれば、後はアールヴ族の工事関係者にお任せするのみ。
何かあれば、魔法鳩便で報せるという約束を取り交わし、
リオネルは次の仕事に取り掛かる事にした。
特別地区という『箱』は出来つつある。
改めて商人達を参集させ……
今後の方針を伝え、希望を聞く事にしたのだ。
数日後、官邸の大会議室にて、説明会が行われた。
ヒルデガルドから、イエーラ国内の主要な商人達へ説明と通達が為されたのである。
交易を盛んにし、イエーラの経済を活発化させ、国内の景気を良くして、
税収をアップ、つまり国家予算の増収をはかるという意図。
その為には、改めて新たな交易のシステム、ルートの構築をしなければならない。
具体的な方法は、鎖国政策の緩和と特別地区における国外商人との商取引き実施。
「鎖国政策を緩和する」といきなり言われ、商人達は不安の色を見せたが、
従来通り国外商人の入国は厳禁であり、商取引は特別地区に限定すると聞き、
すぐにホッとした表情を見せた。
そして肝心の、実務を担う『国外商人との商取引き希望者』を募ったが、
残念ながら、オーク宝箱の中身売却の際と同じで、誰もが臆して名乗り出なかった。
持ち帰りで検討するという事もなく、頑として「お断りしたい」という返事である。
長らくイエーラの国内のみの『狭い世界』で商売をして来た商人達は、
従来の方法を変え、挑戦してやろう!
という、前向きな気概に欠けていたのであろう。
ヒルデガルドは、「そういう事もあるかもしれない」と、
事前にリオネルに止められていて、口を出さず無言であったが、
あまりにも臆病で保守的な商人達に対し、しかめっ面の『激おこ』であった。
一方、リオネルは想定の範囲内らしく、淡々としていた。
これで事前に話をし、意思確認を行い、商人達へ筋を通した事になるからである。
少なくとも彼らを『騙し討ち』にはしていない。
「成る程。貴方達の判断と意思はよく分かりました。ならば強制はしませんので国外との交易は国直営の公社を設立し、独占的に行います。その代わり、こちらの交易により、そちらの商売に大きな影響が出たとしても、理不尽な苦情や不満ならば、一切受け付けません」
リオネルは笑顔でそう言うと、商人達全員へ、サイン入りの誓約書を書かせ、
次の段階へと進んだのである。
税収をアップ、つまり国家予算の増収をはかる為、
国外の商人専用の特別地区を造る事を決めたリオネル。
ヒルデガルド、イェレミアスと特別地区の候補地を相談した結果、
「都フェフに近すぎるのは、万が一何かトラブル等があった場合、宜しくない。隣のアクィラ王国から通じる本街道から、国境を越えたすぐの場所がベストだろう」
という事で意見が一致した。
都フェフから、遥かに離れた国境ならば、不測の事態が起きても、
影響を及ぼすには、結構な時間がかかる。
時間を稼いだその間に、いろいろ手を打って、対処する事は可能だろう。
安全度が増した等の状況が変われば、特別地区を移転させても。
という含みも持たせ、外部からの訪問者をチェックする『関所』がある場所に隣接した土地へ、小さな町――『特別地区』を造る事となった。
こうして話さえ決まれば、相変わらず、リオネルの動きは電光石火。
立て込んだもろもろのスケジュールをさっくり調整して時間を捻出。
国境を守る関所勤務の武官達へ、今回の説明を兼ねた事前連絡をした上で、
とある日の朝早く、ヒルデガルド、若干名の武官、事務官を連れて訪問した。
関所へ詰める武官達と簡単に初対面のあいさつを交わし、
低姿勢で柔らかく慰労したリオネルは、改めて事情を説明。
早速、作業に取り掛かった。
ちなみに……
関所隣接の土地は私有地ではなく、イエーラの国有地である。
ヒルデガルドとイェレミアスの許可を得ているので、
ガンガンばりばり町造りをする事に何の問題もない。
防衛の要である関所は新たに建て直す予定だ。
規模も大きくし、耐久度を大幅に上げる。
設備も最新のものに変える。
また関所前に設置され、これまで使っていた、
防衛のシンボルともいえる国境防護壁も相当年季が入っていた。
なので、こちらもついでにと、
リオネルが生成した岩石製のものに取り換えるか、という話になっている。
さてさて!
これらの工事だが、農地開拓同様、
リオネルが繰り出した200体ものゴーレム達が大活躍。
特別地区建設予定地に生い茂る雑木林を伐採。
但し、切った木は無駄にせず、二次使用。
後で建築用資材、まき等に使う為、片隅へ積み上げさせた。
更に点在する邪魔な岩などを、どかした上で、綺麗に綺麗に整地する。
整地が終了し……充分な広さが確保されると、リオネルは、地属性魔法を行使。
特別地区建設予定の土地を、高さ20mの岩壁でぐるりと囲み、
町の防護壁部分を生成した。
更に元々あった関所が、居留地の一部に上手く収まるよう、
国境用の防護壁も新たに生成。
特別地区の防護壁としっかりと組み合わせ、全てを一体化させた。
既に農地開拓を目の当たりにしていた武官、事務官達は、
「さすがはリオネル様だ!」と誰もが笑顔で納得し、見守っていた。
だが、リオネルの魔法初体験である関所詰めの武官達は、
「何だ、あれは!?」と超大ショック。
鮮やか過ぎるリオネルの手際を目の当たりにして唖然、呆然。
全員が目を見開き、口もぽかん状態であったのである。
次いでリオネルはゴーレムへ命じ、整地した特別地区の敷地にて、
『基礎工事』を敢行。
中央広場、街区、道路などの下工事をざっくりと行う。
時は金なりという事で、ゴーレムが基礎工事をしている最中に、
関所詰めの武官達へ、準備運動、ストレッチ、素振り、体さばき、足さばきなど、
基礎の武術指導を行った。
あいさつした際もそうだが、ここで再び主ヒルデガルドは勿論、
同行した武官、事務官が、心酔したリオネルを凄い人だ!と褒めちぎった。
……そこまでヒルデガルド達が言うのなら、
試してみようという気持ちになったのだろう。
武術指導は、抵抗なくスムーズに行われ、
リオネルの熱心で丁寧かつ分かりやすいやり方もあり、彼らも大いに納得。
終いには、やはりというか剣の模擬戦で瞬殺の嵐!
完膚なきまでに圧倒された事もあり……
関所詰めの武官達も、リオネルに心酔。
ディープなシンパになったのは、言うまでもなかった。
そんなこんなで、もろもろの業務をお昼までに終えると、
リオネル一行は、転移魔法で一旦、官邸へ帰還。
官邸で手早く昼食&休憩を取ると、すぐにヒルデガルド、イェレミアスを交え、
アールヴ族の工事関係者を加えて、実務に関して、打合せを行う。
再び転移魔法で、工事関係者達を連れ、特別地区建設予定地へ戻り、
工事を手伝うゴーレムと用意しておいた数々の資材を搬出。
結局この日は夕方まで、ヒルデガルドとともに、
特別地区建設の工事に立ち会ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……そんな日が1週間続き、特別地区はあっという間に基礎工事が終わった。
区割りが終わり、大中小、石畳の道路も造られ、
後は『上物』を建てるのみとなっている。
井戸も各所に掘られ、水場も確保。
特別地区が大きくなる事に備え、水路も造り、近くの川からも水を引く予定もある。
予定通り関所も改めて建て直され、規模を大きくして『砦』とし、
使い勝手も良くした。
各種魔法で、耐久性も著しく上昇させている。
力仕事を担うゴーレムの貢献は計り知れず……
体力に限界があるアールヴ族の工事関係者は、驚嘆の連続であった。
ここまでお膳立てすれば、後はアールヴ族の工事関係者にお任せするのみ。
何かあれば、魔法鳩便で報せるという約束を取り交わし、
リオネルは次の仕事に取り掛かる事にした。
特別地区という『箱』は出来つつある。
改めて商人達を参集させ……
今後の方針を伝え、希望を聞く事にしたのだ。
数日後、官邸の大会議室にて、説明会が行われた。
ヒルデガルドから、イエーラ国内の主要な商人達へ説明と通達が為されたのである。
交易を盛んにし、イエーラの経済を活発化させ、国内の景気を良くして、
税収をアップ、つまり国家予算の増収をはかるという意図。
その為には、改めて新たな交易のシステム、ルートの構築をしなければならない。
具体的な方法は、鎖国政策の緩和と特別地区における国外商人との商取引き実施。
「鎖国政策を緩和する」といきなり言われ、商人達は不安の色を見せたが、
従来通り国外商人の入国は厳禁であり、商取引は特別地区に限定すると聞き、
すぐにホッとした表情を見せた。
そして肝心の、実務を担う『国外商人との商取引き希望者』を募ったが、
残念ながら、オーク宝箱の中身売却の際と同じで、誰もが臆して名乗り出なかった。
持ち帰りで検討するという事もなく、頑として「お断りしたい」という返事である。
長らくイエーラの国内のみの『狭い世界』で商売をして来た商人達は、
従来の方法を変え、挑戦してやろう!
という、前向きな気概に欠けていたのであろう。
ヒルデガルドは、「そういう事もあるかもしれない」と、
事前にリオネルに止められていて、口を出さず無言であったが、
あまりにも臆病で保守的な商人達に対し、しかめっ面の『激おこ』であった。
一方、リオネルは想定の範囲内らしく、淡々としていた。
これで事前に話をし、意思確認を行い、商人達へ筋を通した事になるからである。
少なくとも彼らを『騙し討ち』にはしていない。
「成る程。貴方達の判断と意思はよく分かりました。ならば強制はしませんので国外との交易は国直営の公社を設立し、独占的に行います。その代わり、こちらの交易により、そちらの商売に大きな影響が出たとしても、理不尽な苦情や不満ならば、一切受け付けません」
リオネルは笑顔でそう言うと、商人達全員へ、サイン入りの誓約書を書かせ、
次の段階へと進んだのである。
応援ありがとうございます!
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