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第149話「リザードマン討伐」
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渓谷に潜むゴブリンども2,000体を討伐。
次は今回受諾した討伐の最終案件……
湿地に潜むリザードマン500体討伐である。
渓谷で一旦休憩し、下流へ10kmほど行軍して、その広大な湿地はあった。
湿地にはリザードマンの姿は見当たらない。
彼らは完全に夜行性で、昼間は湿地へ潜って休んでいるらしい。
シモン達が休憩&作戦会議をするチャンスである。
付近を探索すると、湿地から少し離れた場所に、
シモン達100名余り全員が余裕で入れる小さな草原があった。
少し高台にあり、眼下に湿地帯を見下ろす趣きの場所となる。
駐屯地には最適であろう。
シモン達、支援開発戦略局局員、同行しているクラン候補者全員、そして応援部隊の指揮官数人が参加。
作戦会議が行われる。
それ以外の者は休息をとっていた。
ちなみに警戒対応はゴーレムとケルベロスを周囲に展開させ、シモン自身も魔力感知の索敵を行い、万全だ。
まずシモンは、局員以下、意見を述べさせる。
お題は、湿地帯のリザードマンを、リスクを極力ない形で討伐する為には、どうしたら良いのかを。
湿地はゆかるみ、行動の自由が束縛される。
一方、リザードマンは自由自在に動ける。
全軍で、湿地へ入って戦うのは相当不利だ。
対して……様々な意見が出た。
最も多かったのは、遠距離攻撃が可能な火属性魔法で湿地を焼き払い、高温で追われたリザードマンを討ち取るという意見であった。
冷気で、リザードマンごと凍らせて討ち取るという案もあった。
しかし、シモンはその有用性を認めながらも却下した。
何故?
と問われ、シモンは答えた。
良く干拓され、農地に転用されてしまう湿地だが……
実はそのままで大いに有用性があると告げたのだ。
魔法で攻撃して、湿地を破壊したくないと述べたのである。
それはシモンが、トレジャーハンター時代、世界各地を回って見て聞いた経験が裏付けしていた。
湿地の有用性についても学び、認識していたのである。
まず『水』にとって、『湿地』はとても有用な場所である。
様々な人から聞いた話とシモンが調べた結果、全てではないが、湿地は水を浄化し、洪水を防ぐ作用があるという。
この効果は人々の暮らしに直結する。
また湿地は、数多の生物の営みの根幹となる。
住処とし、餌場とし、子を育て、生命を紡ぐ場所にもなる。
以上の理由から、攻撃魔法を放ち、湿地ごと破壊するのはNGだと。
それでも「湿地ごと焼き払い、攻撃すべきだ!」という強硬派は居たが……
「では、シモンの立てる作戦をぜひ聞きたい」という声の方が大きかった。
「代案無き反対は受け入れがたい」というロジックである。
対してシモンはふたつの二段構えの作戦を立てた。
その作戦を聞いたエステル、ジョゼフ、ジュリエッタは面白がり、
他の者も賛成し……リザードマン討伐戦は、シモンの立てた作戦が遂行される事となったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
早速、シモンの立てた作戦が遂行された。
しかし、シモンとエステルには、その前にこんなやりとりがあった。
「なあ、エステル」
「何でしょう、局長♡」
「この作戦はさ、以前から考えていて」
「何をです?」
「生息範囲が近いし、リザードマンは、絶対こいつらを捕食してるって」
「まあ、そうかもしれません。可能性はありますね」
「だろ? だから、どうせだし、この肉、使おうと思って持って来たんだけどさ」
シモンが指さした不気味な肉塊を見て、エステルは顔をしかめ、首を振る。
「ダメです! ……さっき倒したゴブリンのお肉なんか、エサに使うのは却下です。さっさと、局長の葬送魔法で塵にしちゃってください」
「ぴしり!」と言われたシモン。
これは、結婚後、エステルとクラウディアに主導権を握られそう。
「はあ~い」
という事で……ひとつめの『罠作戦』が発動された。
湿地のすぐ周辺にシモンが予備の食料として持参した、
『たくさんの豚肉』を、リザードマン達をおびき寄せる『エサ』として、
それぞれ10数か所に置いたのである。
リザードマンが湿地から上がって来たら目につきやすい場所である。
周囲にはゴーレムとケルベロスを展開させ、豚肉が他者に食われないよう、厳重に警戒させた。
そしてシモン達は仮眠をしてから、夜を待つ。
やがて……夜がふけ……
湿地にはリザードマンの気配が多く感じられた。
何か所かある『たくさんの豚肉』へ向かって来て……
がつがつと食べ始める。
と、その時。
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお!
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお!
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお!
とんでもない数の鋭い風の弾が、『食事中』のリザードマンどもに降り注ぐ。
ぎゃああああああああっ!
ぎえええええええええっ!
ぐあああああああああっ!
そして間を置かず、
どっ! どっ! どっ! どっ! どっ!
ごおっ! ごおっ! ごおっ! ごおっ!
びしゅ! びしゅ! びしゅ! びしゅ!
ぶわっ !ぶわっ! ぶわっ! ぶわっ!
ぎゃああああああああっ!
ぎえええええええええっ!
ぐあああああああああっ!
エステル、ジョゼフ、クランメンバー候補者、そして後続部隊所属の魔法使いの、
様々な属性の攻撃魔法が次々と撃ち出された。
仮眠をし、じっくり待ったシモン達は、リザードマン自体を狙い撃ちではなく、
『たくさんの肉片』を置いた場所へ、魔法を撃ったのである。
最後の晩餐が中断され、大混乱に陥ったリザードマン達は、湿地へ逃げ帰ろうとした。
だが!
回り込んで逃げ道をふさいでいたケルベロスが大暴れ!
逃げ惑うリザードマン達を全て、噛み殺してしまった。
一方!
湿地では、ふたつめの作戦が発動していた。
シモンが習得したゴーレム召喚術を更にバージョンアップしたものだ。
シモンが連れて来たゴーレムを一旦停止。
新たなゴーレムを湿地の泥から生成するのだ。
これまた大混乱する湿地へ残ったリザードマン達を倒していたのである。
特殊な魔法をかけられ、生成された泥製ゴーレムは、リザードマン身体にまとわりつくと、即、石化。
次々と『物言わぬ石像』を増やしていた。
こうして……
シモン達は、全ての討伐案件をクリア。
留守番部隊の待つ小村へと戻ったのである。
次は今回受諾した討伐の最終案件……
湿地に潜むリザードマン500体討伐である。
渓谷で一旦休憩し、下流へ10kmほど行軍して、その広大な湿地はあった。
湿地にはリザードマンの姿は見当たらない。
彼らは完全に夜行性で、昼間は湿地へ潜って休んでいるらしい。
シモン達が休憩&作戦会議をするチャンスである。
付近を探索すると、湿地から少し離れた場所に、
シモン達100名余り全員が余裕で入れる小さな草原があった。
少し高台にあり、眼下に湿地帯を見下ろす趣きの場所となる。
駐屯地には最適であろう。
シモン達、支援開発戦略局局員、同行しているクラン候補者全員、そして応援部隊の指揮官数人が参加。
作戦会議が行われる。
それ以外の者は休息をとっていた。
ちなみに警戒対応はゴーレムとケルベロスを周囲に展開させ、シモン自身も魔力感知の索敵を行い、万全だ。
まずシモンは、局員以下、意見を述べさせる。
お題は、湿地帯のリザードマンを、リスクを極力ない形で討伐する為には、どうしたら良いのかを。
湿地はゆかるみ、行動の自由が束縛される。
一方、リザードマンは自由自在に動ける。
全軍で、湿地へ入って戦うのは相当不利だ。
対して……様々な意見が出た。
最も多かったのは、遠距離攻撃が可能な火属性魔法で湿地を焼き払い、高温で追われたリザードマンを討ち取るという意見であった。
冷気で、リザードマンごと凍らせて討ち取るという案もあった。
しかし、シモンはその有用性を認めながらも却下した。
何故?
と問われ、シモンは答えた。
良く干拓され、農地に転用されてしまう湿地だが……
実はそのままで大いに有用性があると告げたのだ。
魔法で攻撃して、湿地を破壊したくないと述べたのである。
それはシモンが、トレジャーハンター時代、世界各地を回って見て聞いた経験が裏付けしていた。
湿地の有用性についても学び、認識していたのである。
まず『水』にとって、『湿地』はとても有用な場所である。
様々な人から聞いた話とシモンが調べた結果、全てではないが、湿地は水を浄化し、洪水を防ぐ作用があるという。
この効果は人々の暮らしに直結する。
また湿地は、数多の生物の営みの根幹となる。
住処とし、餌場とし、子を育て、生命を紡ぐ場所にもなる。
以上の理由から、攻撃魔法を放ち、湿地ごと破壊するのはNGだと。
それでも「湿地ごと焼き払い、攻撃すべきだ!」という強硬派は居たが……
「では、シモンの立てる作戦をぜひ聞きたい」という声の方が大きかった。
「代案無き反対は受け入れがたい」というロジックである。
対してシモンはふたつの二段構えの作戦を立てた。
その作戦を聞いたエステル、ジョゼフ、ジュリエッタは面白がり、
他の者も賛成し……リザードマン討伐戦は、シモンの立てた作戦が遂行される事となったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
早速、シモンの立てた作戦が遂行された。
しかし、シモンとエステルには、その前にこんなやりとりがあった。
「なあ、エステル」
「何でしょう、局長♡」
「この作戦はさ、以前から考えていて」
「何をです?」
「生息範囲が近いし、リザードマンは、絶対こいつらを捕食してるって」
「まあ、そうかもしれません。可能性はありますね」
「だろ? だから、どうせだし、この肉、使おうと思って持って来たんだけどさ」
シモンが指さした不気味な肉塊を見て、エステルは顔をしかめ、首を振る。
「ダメです! ……さっき倒したゴブリンのお肉なんか、エサに使うのは却下です。さっさと、局長の葬送魔法で塵にしちゃってください」
「ぴしり!」と言われたシモン。
これは、結婚後、エステルとクラウディアに主導権を握られそう。
「はあ~い」
という事で……ひとつめの『罠作戦』が発動された。
湿地のすぐ周辺にシモンが予備の食料として持参した、
『たくさんの豚肉』を、リザードマン達をおびき寄せる『エサ』として、
それぞれ10数か所に置いたのである。
リザードマンが湿地から上がって来たら目につきやすい場所である。
周囲にはゴーレムとケルベロスを展開させ、豚肉が他者に食われないよう、厳重に警戒させた。
そしてシモン達は仮眠をしてから、夜を待つ。
やがて……夜がふけ……
湿地にはリザードマンの気配が多く感じられた。
何か所かある『たくさんの豚肉』へ向かって来て……
がつがつと食べ始める。
と、その時。
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお!
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお!
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお!
とんでもない数の鋭い風の弾が、『食事中』のリザードマンどもに降り注ぐ。
ぎゃああああああああっ!
ぎえええええええええっ!
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そして間を置かず、
どっ! どっ! どっ! どっ! どっ!
ごおっ! ごおっ! ごおっ! ごおっ!
びしゅ! びしゅ! びしゅ! びしゅ!
ぶわっ !ぶわっ! ぶわっ! ぶわっ!
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ぎえええええええええっ!
ぐあああああああああっ!
エステル、ジョゼフ、クランメンバー候補者、そして後続部隊所属の魔法使いの、
様々な属性の攻撃魔法が次々と撃ち出された。
仮眠をし、じっくり待ったシモン達は、リザードマン自体を狙い撃ちではなく、
『たくさんの肉片』を置いた場所へ、魔法を撃ったのである。
最後の晩餐が中断され、大混乱に陥ったリザードマン達は、湿地へ逃げ帰ろうとした。
だが!
回り込んで逃げ道をふさいでいたケルベロスが大暴れ!
逃げ惑うリザードマン達を全て、噛み殺してしまった。
一方!
湿地では、ふたつめの作戦が発動していた。
シモンが習得したゴーレム召喚術を更にバージョンアップしたものだ。
シモンが連れて来たゴーレムを一旦停止。
新たなゴーレムを湿地の泥から生成するのだ。
これまた大混乱する湿地へ残ったリザードマン達を倒していたのである。
特殊な魔法をかけられ、生成された泥製ゴーレムは、リザードマン身体にまとわりつくと、即、石化。
次々と『物言わぬ石像』を増やしていた。
こうして……
シモン達は、全ての討伐案件をクリア。
留守番部隊の待つ小村へと戻ったのである。
応援ありがとうございます!
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