隠れ勇者と押しかけエルフ

東導 号

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第74話「女子は買い物好き①」

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「凄いね~」

 と、きょろきょろするエリン。

「本当に凄いです」

 と、大きく目を見開いて固まるニーナ。

「ははは、確かにそうだな」

 ダンが、納得して大きく頷く。

 英雄亭を出たダン、エリン、ニーナは巨大な倉庫の中に居た。
 ここは王都にある大手商会、キングスレー本店の敷地内にある大倉庫だ。
 今は、3人の他に誰も居なかった。

 改めて、エリンが周囲を見る。
 天井が高い。
 室内は、果てしなく広い。
 建物の壁は、固い岩に表面が鋼鉄製の板で補強されており、だいぶ頑丈そうだ。
 多分、泥棒対策なのだろう。

 更に観察すると天井まで届く巨大なラックが据え付けられて、様々な商品がきちんと分けられて並べられていた。
 木材、金具、敷物、家具、食器から始まり、酒を含めた夥しい加工食材、ニーナが大好きな可愛い服もたくさんある。
 果ては怖ろしげな武器、とても頑丈そうな防具まで置いてあった。
 普段は、客の求めに応じて品出しする為の倉庫らしいが、何故か案内されたのである。

 ニーナは、先程からずっと吃驚しっ放しなのだ。

 3年弱勤めた英雄亭を出る時に、ダンからは念を押された。
 吃驚しても、決して大声を出さないようにと……
 念を押された時は、ダンが魔族というきつい冗談に、絶対関係があるのだろうとは思った。

 でもニーナは、所詮普通の女の子だ。
 驚いたら、どうしても声が出てしまう。
 だから声が出そうな時には、咄嗟に口を、手で押さえる事にしたのである。

 時間は、少し遡る……

 英雄亭の私室で荷造りしている時、ニーナは恐縮しきりであった。
 荷物の量が半端ない。
 非常に多いのだ。
 その殆どは、ニーナの私服……であった。
 趣味の極端に少ない、ニーナの唯一の楽しみは服であったからだ。
 今迄好きな服を、着れなかった反動に違いない。

 ニーナは、可愛い服が大好きだ。
 英雄亭のメイド仕様の制服も大好きで、モーリスに頼んで数着貰ったくらいである。

 ちなみに、この世界の服で新品は殆どがオーダーメイドだ。
 採寸をして、発注した客専用の服を作る。
 なので、自然と高価になってしまう。

 だから服の発注者は大抵、金持ちだ。
 しかし、金持ちは気儘で飽きっぽい。
 流行にも敏感である。
 すぐに新しいものを欲しくなり、折角オーダーメイドで作った特注服もすぐ売るか捨てるかして、処分してしまう。

 主人から廃棄を命じられた使用人達は、正直に捨てる者も居たが、殆どがこっそり中古業者へと売っていた。
 かくして、市場には膨大な量の中古服が出回るのである。
 オーダーメイドを依頼出来ない庶民としては、とてもありがたい事であった。

 ニーナは、モーリスから給金を貰うと、まめに好きな中古服を探した。
 小綺麗で値段的にも手ごろなブリオーが、ニーナのお気に入りである。
 組み合わせて、更に可愛くなる小物にも目がない。

 こうしてニーナは、英雄亭に勤めている間、大量の服を買ったのである。

「ダンさん、御免なさい……荷物が多くて」

 消え入るような声で、謝るニーナであったが、ダンは「にこにこ」していた。

「ニーナ、逆によくやってくれたよ、助かった」

「へ?」

 ダンの意外な反応、答えであった。
 もしニーナが逆の立場であれば、たくさんの荷物を全て持っていく事に相当難色を示すだろうから。

「そうだよ、ニーナ、助かったよ」

 エリンも、満面の笑みを浮かべている。
 とても嬉しそうである。

「???」

 頭の上に?マークが飛び交っているニーナにダンは言う。

「英雄亭の制服を借りて分かったけど、ニーナの服はエリンにもぴったりだから買う手間が省けた」

「あ!」

 ニーナは、思わず「ポン」と手を叩いた。
 ちょっと悔しく思えるくらい、エリンにメイド服は似合っていた。
 その上エリンは、ニーナと身長もほぼ同じ、更に巨乳同士で服のサイズもぴったりだったのである。

 エリンが、両手を合わせる。
 そして「ぺこり」と頭を下げた。

「ニーナ、お願い! エリン、ニーナの服をたまに借りて良い?」

 エリンから、ぜひにと頼まれたが、ニーナには全く異存がない。
 自分が、服でお洒落するのが大好きなニーナだが……
 街中で、他の女の子が可愛く服を着こなすのを見るのも、大好きであったからだ。

「は、はい! 全然OKですよ、私の服なんかで良ければ……」

 ニーナから了解を貰ったエリンは、はしゃぐ、はしゃぐ。

「やった! やった! やったぁ! その代わりエリンが貰った服もニーナに着て貰う」

 エリンの貰った服……
 一体、どのような服であろう?
 ニーナも嬉しくて、ついはしゃぎたくなって来る。

「あ、それ嬉しい、楽しみですね!」

「よっし、エリンとニーナ、お互いに服を着て見せっこしよう」

 話は、簡単に纏まった。
 これから、楽しくなるだろう。
 しかし、何かを思い出したように、ニーナはハッとする。
 楽しく話していたのが、口籠ってしまう。

「でも……」

「でも?」

 元気がなくなったニーナを、心配そうに見るエリン。
 ニーナは、顔をどんどん下に向け、完全に俯いてしまった。
 その原因は……

「やっぱり、こんなに一杯の服をいちいち運ぶの大変です……私達、旅をするのですよね?」

 ニーナの心配は、尤もである。
 しかし、ダンが手を横に振った。
 「心配ないぞ」というサインである。

 あまりにも自信たっぷりなダンの態度に、ニーナはまたも?マークを飛ばしてしまったのであった。
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