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第155話「笑顔いっぱい」
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デックアールヴへの全面的な協力を了承し、エリンとヴィリヤの夫という、自らの立ち位置を明確にしたダン。
双方が心置きなく、忌憚のない話をする準備は整った。
これから、新たなデックアールヴの国を造る為、協力し合うのだ。
リストマッティ達は、いろいろと質問と提案をぶつけて来た。
だが、質問と提案を受けるだけではない。
ダンからも逆に、いろいろと質問と提案もした。
結果、リストマッティは決断し、配下へも同意するよう申し入れをした。
ダンに大きな権限を与え、地上側との交渉役を任せる事を。
万能の戦士と称えられる『救世の勇者』ではないにしても……
創世神の神託を受け、災いを払う、勇者ダンの実力は申し分なかった。
デックアールヴ、リョースアールヴの長、直系の血筋を伴侶としており、神託をもたらす創世神の巫女がアイディール王国王女ベアトリス。
なので、実兄である宰相フィリップとも直接話せる間柄なのだ。
『外交担当』として、これ以上の、適任はいない。
リストマッティの申し入れは、『全員一致』で決まった。
「ダン殿、我が国の代表として、大きな権限を与えよう。私の責任で、方法も一切任せる、ダン殿なら……上手くやってくれるだろう」
「分かった、リストマッティ。俺がどこまでやれるか、分からないが……全力を尽くす事を約束しよう」
話し合いは、更に続いた。
まず、当面の目標は……
アイディール王国と、リョースアールヴの国イエーラの全面協力を取り付ける事という事で一致。
ただ、例の『ダークエルフは呪われている!』という、強力な迷信がある為……
両国民の意識を、すぐに変えるのは困難だろう、という話にもなった。
でもダンは言い切った。
アイディール王国国王とフィリップ、そしてイエーラのトップ『ソウェル』ヴェルネリ・アスピヴァーラの了解を取れば、それで良いと。
更に、両国の協力を得て、地上へ、『移住地』を造る。
最初は小さな町くらいの規模で。
そこへ、現状で移住可能な者達を、この国から少しずつ送り込む。
後は状況に応じて、徐々に移住者を増やし、町の規模、そして数を増やし……
最終的には『国家』とする。
いずれは、地下から地上への『完全移住』を達成するのだ。
配下のひとりから出た提案も、移住の早期達成の可能性を高めると期待された。
それは、ダンの変身魔法の使用である。
もし純粋なデックアールヴの容姿を持っていても、擬態すれば、誰にも咎められず地上で暮らす事が出来ると。
論より証拠。
ダンの妻、エリンが身をもって証明してくれた。
一緒に居ても、何をしても、けして呪われる事などない。
現に、宿敵だった? リョースアールヴのヴィリヤが、今やエリンの大親友なのだから。
それ故、デックアールヴ以外に擬態して、地上で『実績』を積む。
相手を騙している……
かもしれないが、これこそ『噓も方便』だといえよう。
長年に渡って染みついた、頑固な迷信を打ち破るのは、並大抵の方法では難しいのだ。
そしてダンからは、新たな国の民が、主な生業とする仕事も提案された。
それは……『冒険者』である。
冒険者といっても、単に己の欲求や利益のみを追い求めるのではない。
ダンは、リストマッティ達へ……
現冒険者ギルドマスター、ローランド・コルドウェルの話をしたのだ。
ローランドの一粒種、愛息ディーンの真の騎士への想い、降りかかった悲劇を……
そして、前ギルドマスター、バイロン・ウェブスターから託された遺志を継ぎ……
ローランドが、単なる荒くれの集団だった冒険者ギルドを、著しく変貌させた事を……
ダンは言う。
この崇高な思想を、新たな国にも導入すると。
新たな国の民の中から精鋭を選び、アイディールとイエーラの両国は勿論、世界各地で困った人々の為に尽力する。
その積み重ねで得られた信頼と実績が、必ず、つまらない迷信など打ち砕くと。
ダンの提案にこれまた、リストマッティ達は手を叩き、賛同した。
現在のデックアールヴの国にも冒険者である英雄バートクリードと弟ローレンスの意思が生きている。
元々、ふたりは冒険者でもあったから。
リストマッティは、目を輝かせ、言う。
「ダン殿、我が国の民が、難儀する人々の為に働く冒険者をやるという、それも世界中をまたにかけてか? 貴方の提案は、素晴らしいぞ!」
「いや、これくらいは、リストマッティだって、簡単に思いつくことさ」
「謙遜だな……ふふ、冒険者か……これぞ、難儀する民を救ったバートクリードと失われた民デックアールを助けたローレンス、偉大なる英雄、アイディール兄弟の導きだろう……私は、ぜひ実現すべきだと思う」
こうして……
ダン達の役割が決まった。
リストマッティ達との話し合いが終わり、『仲間』となったダン達は……
ニーナの兄ルネやクラン炎《フレイム》のチャーリー達と再会し、思う存分話し込んだ。
当然ながら、ルネ達は、ダン達を歓迎してくれた。
そしてエリンと、ヴィリヤの『正体』を知り、大いに驚き且つ喜んだ。
これで、がっちりと手を携え、目標に向かって共に邁進する事が出来る。
実は、チャーリーから、本音も出た。
これで、すぐ地上へ帰れると。
「何よ、チャーリーったら。俺は帰らないぞ、この国に絶対留まるとか言って! カッコよさが台無し!」
怒った? エリンから……
可愛い拳骨で、頭をぐりぐりされ、悲鳴をあげるチャーリー。
それを見て、クラン炎《ほのお》のメンバーは勿論、ルネまでもが笑った。
ダンもヴィリヤも釣られて、笑っている。
「ぐりぐり」したエリンも笑っている。
された当のチャーリーも、痛みなど吹き飛ぶくらい、思いっきり笑っていた。
誰もが……
希望に満ちた、未来の到来を実感し、笑顔がいっぱいであったのだ。
双方が心置きなく、忌憚のない話をする準備は整った。
これから、新たなデックアールヴの国を造る為、協力し合うのだ。
リストマッティ達は、いろいろと質問と提案をぶつけて来た。
だが、質問と提案を受けるだけではない。
ダンからも逆に、いろいろと質問と提案もした。
結果、リストマッティは決断し、配下へも同意するよう申し入れをした。
ダンに大きな権限を与え、地上側との交渉役を任せる事を。
万能の戦士と称えられる『救世の勇者』ではないにしても……
創世神の神託を受け、災いを払う、勇者ダンの実力は申し分なかった。
デックアールヴ、リョースアールヴの長、直系の血筋を伴侶としており、神託をもたらす創世神の巫女がアイディール王国王女ベアトリス。
なので、実兄である宰相フィリップとも直接話せる間柄なのだ。
『外交担当』として、これ以上の、適任はいない。
リストマッティの申し入れは、『全員一致』で決まった。
「ダン殿、我が国の代表として、大きな権限を与えよう。私の責任で、方法も一切任せる、ダン殿なら……上手くやってくれるだろう」
「分かった、リストマッティ。俺がどこまでやれるか、分からないが……全力を尽くす事を約束しよう」
話し合いは、更に続いた。
まず、当面の目標は……
アイディール王国と、リョースアールヴの国イエーラの全面協力を取り付ける事という事で一致。
ただ、例の『ダークエルフは呪われている!』という、強力な迷信がある為……
両国民の意識を、すぐに変えるのは困難だろう、という話にもなった。
でもダンは言い切った。
アイディール王国国王とフィリップ、そしてイエーラのトップ『ソウェル』ヴェルネリ・アスピヴァーラの了解を取れば、それで良いと。
更に、両国の協力を得て、地上へ、『移住地』を造る。
最初は小さな町くらいの規模で。
そこへ、現状で移住可能な者達を、この国から少しずつ送り込む。
後は状況に応じて、徐々に移住者を増やし、町の規模、そして数を増やし……
最終的には『国家』とする。
いずれは、地下から地上への『完全移住』を達成するのだ。
配下のひとりから出た提案も、移住の早期達成の可能性を高めると期待された。
それは、ダンの変身魔法の使用である。
もし純粋なデックアールヴの容姿を持っていても、擬態すれば、誰にも咎められず地上で暮らす事が出来ると。
論より証拠。
ダンの妻、エリンが身をもって証明してくれた。
一緒に居ても、何をしても、けして呪われる事などない。
現に、宿敵だった? リョースアールヴのヴィリヤが、今やエリンの大親友なのだから。
それ故、デックアールヴ以外に擬態して、地上で『実績』を積む。
相手を騙している……
かもしれないが、これこそ『噓も方便』だといえよう。
長年に渡って染みついた、頑固な迷信を打ち破るのは、並大抵の方法では難しいのだ。
そしてダンからは、新たな国の民が、主な生業とする仕事も提案された。
それは……『冒険者』である。
冒険者といっても、単に己の欲求や利益のみを追い求めるのではない。
ダンは、リストマッティ達へ……
現冒険者ギルドマスター、ローランド・コルドウェルの話をしたのだ。
ローランドの一粒種、愛息ディーンの真の騎士への想い、降りかかった悲劇を……
そして、前ギルドマスター、バイロン・ウェブスターから託された遺志を継ぎ……
ローランドが、単なる荒くれの集団だった冒険者ギルドを、著しく変貌させた事を……
ダンは言う。
この崇高な思想を、新たな国にも導入すると。
新たな国の民の中から精鋭を選び、アイディールとイエーラの両国は勿論、世界各地で困った人々の為に尽力する。
その積み重ねで得られた信頼と実績が、必ず、つまらない迷信など打ち砕くと。
ダンの提案にこれまた、リストマッティ達は手を叩き、賛同した。
現在のデックアールヴの国にも冒険者である英雄バートクリードと弟ローレンスの意思が生きている。
元々、ふたりは冒険者でもあったから。
リストマッティは、目を輝かせ、言う。
「ダン殿、我が国の民が、難儀する人々の為に働く冒険者をやるという、それも世界中をまたにかけてか? 貴方の提案は、素晴らしいぞ!」
「いや、これくらいは、リストマッティだって、簡単に思いつくことさ」
「謙遜だな……ふふ、冒険者か……これぞ、難儀する民を救ったバートクリードと失われた民デックアールを助けたローレンス、偉大なる英雄、アイディール兄弟の導きだろう……私は、ぜひ実現すべきだと思う」
こうして……
ダン達の役割が決まった。
リストマッティ達との話し合いが終わり、『仲間』となったダン達は……
ニーナの兄ルネやクラン炎《フレイム》のチャーリー達と再会し、思う存分話し込んだ。
当然ながら、ルネ達は、ダン達を歓迎してくれた。
そしてエリンと、ヴィリヤの『正体』を知り、大いに驚き且つ喜んだ。
これで、がっちりと手を携え、目標に向かって共に邁進する事が出来る。
実は、チャーリーから、本音も出た。
これで、すぐ地上へ帰れると。
「何よ、チャーリーったら。俺は帰らないぞ、この国に絶対留まるとか言って! カッコよさが台無し!」
怒った? エリンから……
可愛い拳骨で、頭をぐりぐりされ、悲鳴をあげるチャーリー。
それを見て、クラン炎《ほのお》のメンバーは勿論、ルネまでもが笑った。
ダンもヴィリヤも釣られて、笑っている。
「ぐりぐり」したエリンも笑っている。
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誰もが……
希望に満ちた、未来の到来を実感し、笑顔がいっぱいであったのだ。
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