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第163話「ローランドの決意①」
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冒険者ギルドマスター専用の応接室を、沈黙が満たしていた。
衝撃の事実を明かした、余韻が残っている。
「……以上で、俺の話は終わりです」
「…………」
「…………」
ローランドとクローディアは、まずエリンの容姿に、そしてダンの話にも圧倒されてしまっていた。
もしも裏付ける事実が何も無ければ……
奇想天外な話と笑い飛ばしていたに違いない。
だが、目の前のエリンと関わり、不幸になどならないという事に始まる、ダンの話した事実の数々……
そして、デックアールヴの秘中の宝という『指輪と誓約書』を見せられては、反論しようがない。
ローランドは一瞬考えた。
全ての話が真っ赤な嘘、完全な作り話……
指輪と誓約書も後世の偽物……という可能性もなくはないと。
だが、それもダンには軽く一蹴されてしまった。
リストマッティなる、デックアールヴのリーダーが、一切嘘をついていない事を、魔法使いのダンは、『波動』から感じたという。
そして『論より証拠』である。
ダンは、この誓約書、つまり『オリジナル版』を携え、リョースアールヴの国イエーラ、そして王家に乗り込むらしい。
イエーラでは、ヴィリヤの祖父であるソウェル、ヴェルネリ・アスピヴァーラ。
王家では、国王の弟、宰相フィリップに直接会って話すというのだ。
結果……
イエーラと王家の宝物庫に、リストマッティの言った通り、材質違いの指輪と同内容の誓約書が秘蔵されていた場合、それが動かぬ証拠となる。
しかし、ダンは、あっさり言う。
「今迄の話が、もし認められなくとも、構わない。結果イエーラと王家が支援してくれなくても」
両国の協力が得られない?
それでも構わない!?
言い切ったダンへ、ローランドは驚き、思わず噛んでしまう。
「ダ、ダン殿! ど、どういう事だ?」
「いえ、両国からの支援は、あれば、確かにありがたいですが、それより心の問題が大事です」
「ふむ、心の問題が大事……か。成る程……」
「ええ、ローランド様も分かるでしょう? 俺達と共に歩もうとする気持ちの方が大切なのです」
「うむ! 確かにそうだ……」
「はい! 長い時を経る中で、祖父、父、子と同じ考えがずっと、受け継がれる保証などない。万が一、協力不可とか、何か危害を及ぼすなどの事態に陥れば、俺は遠慮なく忘却の魔法を使います」
「な! フィリップ殿下と、アールヴのソウェルにか!」
ダンの思い切った言葉に、ローランドは驚いた。
しかし、エルフのヴィリヤとゲルダは平然と聞いていた。
事前に、念入りな相談があったのは、間違いがなかった。
ダンは、少し唇を噛みながら、話を続ける。
「ええ、当然ですが、まずはふたりを説得します。ベアトリス様やヴィリヤとの兼ね合いもありますから……」
ダンが気遣うのは、当たり前であろう。
ローランドは知らないが、
創世神の巫女……フィリップの妹ベアトリスはダンを一途に慕っている。
妻となったヴィリヤも、祖父を敬愛している。
「…………」
無言となったローランドへ、ダンは言う。
「だけど、どうしても無理ならば、害のない方法で、相手の記憶を消すのです……結果、デックアールヴの案件は、最初からなかった事となる」
「…………」
「そうなったら、事を秘密裏に運びます」
「…………」
「敢えて、俺が使者となり、3国を結ぶのは、この誓約書の、素晴らしい遺志に報いたいからです」
「…………」
「だが、約束を違え、背かれたら、仕方がない。支援なしで、デックアールヴの国造りだけに邁進します」
「むう、成る程」
「はい! そして、いくら状況が変わろうとも、スタンスは変えません。アイディール王国の開祖バートクリードは、魔物や災害に難儀する人々を助け、国を打ち立てた。俺達も、難儀する人々の為に働く」
「難儀する人々の為に……」
「ええ、最初は冒険者の集まる、ほんの小さな町から始まって、徐々に規模を大きくし、最終的には、ひとつの国へと創り変えて行きますよ」
「…………」
「まあ……俺が言うほど、簡単には行かないでしょう。だが個々は小さな力でも、結集すれば、いずれ大志は成し遂げられる」
「…………」
考え込んだローランドへ、ダンは大きな声を出す。
「ローランド様!」
「お、おお!」
「前置きが長くなりましたが、結論を言います! 俺達には、貴方が必要です。共に働いてくれませんか?」
「…………」
ダンの申し入れに対し、ローランドはすぐ返事をしなかった。
しかしダンは、答えを貰うのを、焦らない。
「ローランド様……じっくり考えて返事を下さい。明日早朝、俺達はヴィリヤの屋敷から、イエーラへ向け、出発します……」
「…………」
相変わらず、ローランドは無言であった。
そんなローランドへ、エリンが叫ぶ。
「ローランド様! 覚えているよね?」
いきなりの、エリンの呼び掛けに、ローランドは反応する。
「エリンさん……」
「ローランド様、クローディアさん、人数が増えたけど……一緒にクランを組む約束は、今だって生きているよ。エリン、待ってるから!」
「…………」
だが……
エリンの問いかけにも、ローランドは無言で答えた。
片や、ダンは、予想通りという表情で告げる。
「と、いう事です。ちなみに返事は、俺達が戻って来てからでも構わないです。ずっと……待っています」
ダンはそう言い残すと……
クローディアへ声を掛け、エリン達を連れ、冒険者ギルドをあとにしたのである。
衝撃の事実を明かした、余韻が残っている。
「……以上で、俺の話は終わりです」
「…………」
「…………」
ローランドとクローディアは、まずエリンの容姿に、そしてダンの話にも圧倒されてしまっていた。
もしも裏付ける事実が何も無ければ……
奇想天外な話と笑い飛ばしていたに違いない。
だが、目の前のエリンと関わり、不幸になどならないという事に始まる、ダンの話した事実の数々……
そして、デックアールヴの秘中の宝という『指輪と誓約書』を見せられては、反論しようがない。
ローランドは一瞬考えた。
全ての話が真っ赤な嘘、完全な作り話……
指輪と誓約書も後世の偽物……という可能性もなくはないと。
だが、それもダンには軽く一蹴されてしまった。
リストマッティなる、デックアールヴのリーダーが、一切嘘をついていない事を、魔法使いのダンは、『波動』から感じたという。
そして『論より証拠』である。
ダンは、この誓約書、つまり『オリジナル版』を携え、リョースアールヴの国イエーラ、そして王家に乗り込むらしい。
イエーラでは、ヴィリヤの祖父であるソウェル、ヴェルネリ・アスピヴァーラ。
王家では、国王の弟、宰相フィリップに直接会って話すというのだ。
結果……
イエーラと王家の宝物庫に、リストマッティの言った通り、材質違いの指輪と同内容の誓約書が秘蔵されていた場合、それが動かぬ証拠となる。
しかし、ダンは、あっさり言う。
「今迄の話が、もし認められなくとも、構わない。結果イエーラと王家が支援してくれなくても」
両国の協力が得られない?
それでも構わない!?
言い切ったダンへ、ローランドは驚き、思わず噛んでしまう。
「ダ、ダン殿! ど、どういう事だ?」
「いえ、両国からの支援は、あれば、確かにありがたいですが、それより心の問題が大事です」
「ふむ、心の問題が大事……か。成る程……」
「ええ、ローランド様も分かるでしょう? 俺達と共に歩もうとする気持ちの方が大切なのです」
「うむ! 確かにそうだ……」
「はい! 長い時を経る中で、祖父、父、子と同じ考えがずっと、受け継がれる保証などない。万が一、協力不可とか、何か危害を及ぼすなどの事態に陥れば、俺は遠慮なく忘却の魔法を使います」
「な! フィリップ殿下と、アールヴのソウェルにか!」
ダンの思い切った言葉に、ローランドは驚いた。
しかし、エルフのヴィリヤとゲルダは平然と聞いていた。
事前に、念入りな相談があったのは、間違いがなかった。
ダンは、少し唇を噛みながら、話を続ける。
「ええ、当然ですが、まずはふたりを説得します。ベアトリス様やヴィリヤとの兼ね合いもありますから……」
ダンが気遣うのは、当たり前であろう。
ローランドは知らないが、
創世神の巫女……フィリップの妹ベアトリスはダンを一途に慕っている。
妻となったヴィリヤも、祖父を敬愛している。
「…………」
無言となったローランドへ、ダンは言う。
「だけど、どうしても無理ならば、害のない方法で、相手の記憶を消すのです……結果、デックアールヴの案件は、最初からなかった事となる」
「…………」
「そうなったら、事を秘密裏に運びます」
「…………」
「敢えて、俺が使者となり、3国を結ぶのは、この誓約書の、素晴らしい遺志に報いたいからです」
「…………」
「だが、約束を違え、背かれたら、仕方がない。支援なしで、デックアールヴの国造りだけに邁進します」
「むう、成る程」
「はい! そして、いくら状況が変わろうとも、スタンスは変えません。アイディール王国の開祖バートクリードは、魔物や災害に難儀する人々を助け、国を打ち立てた。俺達も、難儀する人々の為に働く」
「難儀する人々の為に……」
「ええ、最初は冒険者の集まる、ほんの小さな町から始まって、徐々に規模を大きくし、最終的には、ひとつの国へと創り変えて行きますよ」
「…………」
「まあ……俺が言うほど、簡単には行かないでしょう。だが個々は小さな力でも、結集すれば、いずれ大志は成し遂げられる」
「…………」
考え込んだローランドへ、ダンは大きな声を出す。
「ローランド様!」
「お、おお!」
「前置きが長くなりましたが、結論を言います! 俺達には、貴方が必要です。共に働いてくれませんか?」
「…………」
ダンの申し入れに対し、ローランドはすぐ返事をしなかった。
しかしダンは、答えを貰うのを、焦らない。
「ローランド様……じっくり考えて返事を下さい。明日早朝、俺達はヴィリヤの屋敷から、イエーラへ向け、出発します……」
「…………」
相変わらず、ローランドは無言であった。
そんなローランドへ、エリンが叫ぶ。
「ローランド様! 覚えているよね?」
いきなりの、エリンの呼び掛けに、ローランドは反応する。
「エリンさん……」
「ローランド様、クローディアさん、人数が増えたけど……一緒にクランを組む約束は、今だって生きているよ。エリン、待ってるから!」
「…………」
だが……
エリンの問いかけにも、ローランドは無言で答えた。
片や、ダンは、予想通りという表情で告げる。
「と、いう事です。ちなみに返事は、俺達が戻って来てからでも構わないです。ずっと……待っています」
ダンはそう言い残すと……
クローディアへ声を掛け、エリン達を連れ、冒険者ギルドをあとにしたのである。
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