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第180話「また会う日まで①」
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ある日の事……
ここは都市国家シリウス内にある、ダンの一族が住む城館の中庭……
約300年前、ベアトリスがパトリシアを伴い、リハビリをしていた場所である。
その中庭の片隅には、レトロな趣きの小さな家が建っている。
実はシリウスの町を造った際、元あったダンの家を壊さずに移築し、補修しながら大切に保存して来たのだ。
この家の居間には……
かつてダンが、エリン、ニーナと共に、王都で購入した古ぼけたテーブルと椅子が昔のまま置かれていた。
その椅子には、エリンとヴィリヤが座っている……
エリンの髪は、長いストレートのシルバープラチナ、瞳は菫色。
ヴィリヤも同じく、流れるような美しい金髪をなびかせ、瞳は碧眼。
ダンと出会った時と全く同じ、ふたりの容姿は変わらない……
否!
却って端麗さに、益々磨きがかかったふたりが……
寂しそうな顔付きで向かい合い、お茶を飲んでいた。
アールヴのふたりは、遥か遠い記憶を手繰っている。
まるで走馬燈のように、いくつもいくつも、懐かしい思い出が甦り、巡って来る。
エリンも、ヴィリヤも、それぞれ、ダンとの運命的な出会いに始まり……
愛するダンとふたりきりで過ごした、楽しい思い出を追っている。
中でも……
地下深い英雄の迷宮で、3人が一緒に冒険した事は、絶対に忘れられない。
ダン、エリン、ヴィリヤにとって固い絆が結ばれた人生の転機、分岐点といえる大イベントだった。
シリウス建国後は……
3人にゲルダ、ローランド、クローディアを加えたクラン『ディーン』を組み、
全世界を股にかけ、難儀する人々を救い、心から感謝された……
その実績と信頼が、今やシリウスの根幹となっている。
世界各地を転戦したクラン『ディーン』であったが……
60歳半ばとなった時、ダンはあっさり引退した。
引退したダンは城館で暮らすようになり、殆どシリウスから出なかった。
結果、家族全員が揃って、彼の余生をシリウスで暮らした幸せな日々も、つい昨日のように甦る……
最近エリン達も、引退後のダン同様、シリウスからは殆ど出ない。
子孫達に様々な『仕事』を完全に引き継がせると、リストマッティとゲルダに監督役を任せ、自分達は単なる意見役に徹していたのだ。
また……
ふたりは類まれな美しさと身分から、同族であるアールヴとの再婚も度々勧められたが……
当然ながら断固として跳ね除け、絶対に受けはしなかった。
エリンが、ぽつりと言う。
今は亡き者達を想い、とても遠い目をしていた……
「ねぇ……ヴィリヤ、旦那様、今頃どうしているのかなぁ……」
対して、ヴィリヤもぽ~っとして、目の焦点が合っていない。
当然、エリンを見ておらず、言葉だけを戻す。
「うん、もう天国は飽きたとか言って、さっさと、どこかへ転生しているかも……」
そう……
ダンは異世界から召喚され、同時に創世神の勇者へと転生した稀有な人間だった。
ヴィリヤの召喚魔法により、突如、この異世界へ呼び出されたのだ。
今回の結果を踏まえ、創世神に勇者としての資質を見込まれていたら……
また、どこかの誰かにより、違う世界で呼び出されているかもしれない。
「……転生……かぁ」
エリンには、ピンと来なかった。
ダンのように特殊なケースになったらともかく……
数千年の長き時を生きるアールヴは、不慮の事故や死病にかからないかぎり、まだまだ死は訪れない。
全然、先の事としか思えないから……
それ故、エリンはこのままずっと待つのが、凄くもどかしくなって来る。
さすがに自死こそしないが……
少しでも早く、愛するダンに会いたいと思うのだ。
しかしふと、不安がよぎる。
死んだからといって、都合よく転生して、ダンに再会出来るのかと。
エリンが、少し渋い表情でヴィリヤへ問う。
「ねぇ、ヴィリヤ、私達また……旦那様に会えるかなぁ?」
しかし、案外ヴィリヤは楽観的だ。
不安な素振りなど全く見せず、きっぱりと言い切る。
「会えるわよ、エリン、きっと!」
「うん! そうだよね……私達家族に向かって、死ぬ時にきちんと約束したものね」
エリンとヴィリヤは、また記憶を手繰った。
すると、年老いたダンの爽やかな笑顔が、ふたりの心の中にはっきりと浮かんだのである。
「…………」
「…………」
暫し、ふたりの心はダンの笑顔に癒され、無言となった。
ダンの笑顔と同時に……
エリンとヴィリヤは、彼の遺言を思い出す。
ダンは、自分の今際《いまわ》を見守る、家族と親しい仲間達へ告げた。
「お前達は長生きしろ、人生をしっかり全うして、生まれ変わったら必ず会おう」と。
ふたりの脳裏にはまたダンの笑顔が浮かんで来た。
死ぬ直前まで……
ずっと嬉しそうに微笑んでいた……
年齢相応の渋い顔立ちの老人となった、ダンの爽やかな笑顔が。
「エリン、思い出して! 旦那様と全員で約束したじゃない、また会おうって」
実は、エリンとヴィリヤの、『この会話』は今回が初めてではない。
今迄に何度も何度も、否、数え切れないくらい繰り返されている。
それほど、ダンが恋しくてたまらないのだ。
そして、エリンとヴィリヤは願いも同じ。
まだまだ数千年くらい先の話だが……
もしもこの世を去った後、再び生まれ変わったら……
必ずダンと同じ人間族に生まれ、一緒に生き、一緒に死にたいと望んでいる。
またはダンに、長命のアールヴとして生まれ変わって欲しいとも願う。
でも……
「アールヴに生まれ変わったダンなんて、想像もつかないね」
と、ふたりは首をすぐ横に振り、いかにも面白そうに笑ったのである。
ここは都市国家シリウス内にある、ダンの一族が住む城館の中庭……
約300年前、ベアトリスがパトリシアを伴い、リハビリをしていた場所である。
その中庭の片隅には、レトロな趣きの小さな家が建っている。
実はシリウスの町を造った際、元あったダンの家を壊さずに移築し、補修しながら大切に保存して来たのだ。
この家の居間には……
かつてダンが、エリン、ニーナと共に、王都で購入した古ぼけたテーブルと椅子が昔のまま置かれていた。
その椅子には、エリンとヴィリヤが座っている……
エリンの髪は、長いストレートのシルバープラチナ、瞳は菫色。
ヴィリヤも同じく、流れるような美しい金髪をなびかせ、瞳は碧眼。
ダンと出会った時と全く同じ、ふたりの容姿は変わらない……
否!
却って端麗さに、益々磨きがかかったふたりが……
寂しそうな顔付きで向かい合い、お茶を飲んでいた。
アールヴのふたりは、遥か遠い記憶を手繰っている。
まるで走馬燈のように、いくつもいくつも、懐かしい思い出が甦り、巡って来る。
エリンも、ヴィリヤも、それぞれ、ダンとの運命的な出会いに始まり……
愛するダンとふたりきりで過ごした、楽しい思い出を追っている。
中でも……
地下深い英雄の迷宮で、3人が一緒に冒険した事は、絶対に忘れられない。
ダン、エリン、ヴィリヤにとって固い絆が結ばれた人生の転機、分岐点といえる大イベントだった。
シリウス建国後は……
3人にゲルダ、ローランド、クローディアを加えたクラン『ディーン』を組み、
全世界を股にかけ、難儀する人々を救い、心から感謝された……
その実績と信頼が、今やシリウスの根幹となっている。
世界各地を転戦したクラン『ディーン』であったが……
60歳半ばとなった時、ダンはあっさり引退した。
引退したダンは城館で暮らすようになり、殆どシリウスから出なかった。
結果、家族全員が揃って、彼の余生をシリウスで暮らした幸せな日々も、つい昨日のように甦る……
最近エリン達も、引退後のダン同様、シリウスからは殆ど出ない。
子孫達に様々な『仕事』を完全に引き継がせると、リストマッティとゲルダに監督役を任せ、自分達は単なる意見役に徹していたのだ。
また……
ふたりは類まれな美しさと身分から、同族であるアールヴとの再婚も度々勧められたが……
当然ながら断固として跳ね除け、絶対に受けはしなかった。
エリンが、ぽつりと言う。
今は亡き者達を想い、とても遠い目をしていた……
「ねぇ……ヴィリヤ、旦那様、今頃どうしているのかなぁ……」
対して、ヴィリヤもぽ~っとして、目の焦点が合っていない。
当然、エリンを見ておらず、言葉だけを戻す。
「うん、もう天国は飽きたとか言って、さっさと、どこかへ転生しているかも……」
そう……
ダンは異世界から召喚され、同時に創世神の勇者へと転生した稀有な人間だった。
ヴィリヤの召喚魔法により、突如、この異世界へ呼び出されたのだ。
今回の結果を踏まえ、創世神に勇者としての資質を見込まれていたら……
また、どこかの誰かにより、違う世界で呼び出されているかもしれない。
「……転生……かぁ」
エリンには、ピンと来なかった。
ダンのように特殊なケースになったらともかく……
数千年の長き時を生きるアールヴは、不慮の事故や死病にかからないかぎり、まだまだ死は訪れない。
全然、先の事としか思えないから……
それ故、エリンはこのままずっと待つのが、凄くもどかしくなって来る。
さすがに自死こそしないが……
少しでも早く、愛するダンに会いたいと思うのだ。
しかしふと、不安がよぎる。
死んだからといって、都合よく転生して、ダンに再会出来るのかと。
エリンが、少し渋い表情でヴィリヤへ問う。
「ねぇ、ヴィリヤ、私達また……旦那様に会えるかなぁ?」
しかし、案外ヴィリヤは楽観的だ。
不安な素振りなど全く見せず、きっぱりと言い切る。
「会えるわよ、エリン、きっと!」
「うん! そうだよね……私達家族に向かって、死ぬ時にきちんと約束したものね」
エリンとヴィリヤは、また記憶を手繰った。
すると、年老いたダンの爽やかな笑顔が、ふたりの心の中にはっきりと浮かんだのである。
「…………」
「…………」
暫し、ふたりの心はダンの笑顔に癒され、無言となった。
ダンの笑顔と同時に……
エリンとヴィリヤは、彼の遺言を思い出す。
ダンは、自分の今際《いまわ》を見守る、家族と親しい仲間達へ告げた。
「お前達は長生きしろ、人生をしっかり全うして、生まれ変わったら必ず会おう」と。
ふたりの脳裏にはまたダンの笑顔が浮かんで来た。
死ぬ直前まで……
ずっと嬉しそうに微笑んでいた……
年齢相応の渋い顔立ちの老人となった、ダンの爽やかな笑顔が。
「エリン、思い出して! 旦那様と全員で約束したじゃない、また会おうって」
実は、エリンとヴィリヤの、『この会話』は今回が初めてではない。
今迄に何度も何度も、否、数え切れないくらい繰り返されている。
それほど、ダンが恋しくてたまらないのだ。
そして、エリンとヴィリヤは願いも同じ。
まだまだ数千年くらい先の話だが……
もしもこの世を去った後、再び生まれ変わったら……
必ずダンと同じ人間族に生まれ、一緒に生き、一緒に死にたいと望んでいる。
またはダンに、長命のアールヴとして生まれ変わって欲しいとも願う。
でも……
「アールヴに生まれ変わったダンなんて、想像もつかないね」
と、ふたりは首をすぐ横に振り、いかにも面白そうに笑ったのである。
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