142 / 192
《第8章》 叛逆のデスデモーナ
その言葉
しおりを挟む
彼女が何をしようとしているか察知した瞬間、反射的に飛豪は動いていた。いま自分がどちらの人格なのか、それを意識する間もなかった。
「瞳子、やめろッ‼」
だが、伸ばした手が包丁に届くよりも先に、先端が彼女の左胸に着地して柔らかい肌を抉った。
「……ッはぅ…」
あまりの痛みに、彼女は喉の奥から悲鳴をほとばしらせる。
ようやく、彼の手が刃物に届いた。無我夢中で払いのける。
刃先は先端を体に埋めたまま無理やりに軌道をそらされて、一センチ強の深さで胸部を削りとっていったのちに抜け落ちた。落下した包丁は、飛豪の足に直撃して跳ねかえり、床に転がった。
しかし瞳子はそれでも止まらなかった。
彼の手を振りはらいながら「放して!」と絶叫し、食器棚の抽斗をあけてナイフを掴もうとした。ナイフを彼が叩きおとすと、フォークを。それも奪われると、スプーンを。けたたましい金属音が間断なく響く。
錯乱したように暴れる彼女の腕を、飛豪はまず封じこめた。そのままキッチンから引きずりだして、リビングのソファまで強制連行する。瞳子を全力で抱きしめて、ソファに倒れこんだ。
彼女は唸り声のような、獣の咆哮のような声を低くあげて、力のかぎり抗ってくる。体重をかけ、羽交いじめにして、彼は瞳子を下に押さえつけた。
「……ジゼル」
その言葉を口にしたのは、飛豪だった。
彼女を全身で拘束したまま、耳元で何度も囁きかける。彼女が自分を取り戻すまで。
「ジゼル、ジゼル、ジゼル、ジゼル……。瞳子、お願いだからやめてくれ。止まってくれ。君を失いたくないんだ。もういい、もういいから」
ジゼル。
それは麻布で知りあった最初の夜、ホテルで体を重ねる前に決めたセーフワードだった。
瞳子が「ジゼル」と口にすれば、飛豪はなにをしていても動きを止め、彼女から離れる。そう約束をした。
彼女を守るための言葉だ。だが、瞳子は最後までその言葉を使おうとしなかった。だから彼が言うしかなかった。
低い声でゆっくりと、何度もその言葉を繰りかえす。彼女を落ちつかせるように。宥めるように。しばらくすると、腕の中で彼女が嗚咽してしゃくり上げていることに飛豪は気づいた。
泣いてはいるものの、自分の腕のなかで、彼女の昂奮が徐々に鎮まっていくのを感じる。
手足のばたつきがおさまり、肩で呼吸するようにしていた息がなめらかになっていく。首筋にそよいでゆく、彼女のゆるやかな呼気が心地よかった。
頭痛はまだ続いているが、きっと引いてゆく。だしぬけに、そんな予感がおとずれた。
なによりも、頭の中から黒い霧が薄らいできている。水深二メートルのプールの底から、ようやく水面に顔をだせたような解放感があった。長い雨の日々のあとに、ようやく太陽の光をあびたような心地がした。
腕の拘束をゆるめて、飛豪は鼻先を彼女の髪にうずめた。
「瞳子、もう大丈夫か?」
「『大丈夫?』って、こっちのセリフだよ……。飛豪さん、今どっち?」
まだ事態に混乱したままの状態で、彼女は不安げに訊いてくる。
「どっちもいる。だけどもう一人の方、君にすごくビビってる。いるのに出てこれなくなってる。そんな感じがする」
「なんで?」
「…………」
彼は答えに窮した。間違いなく、彼女のあの狂気なのか本気なのか分からない行動のせいだ。
あの時――瞳子が自分の胸に刃をつき立てたとき――全身の血液が逆流しはじめた。脳の血管が膨張して、石化していた心臓に激しく血が流れこんでいった。
ただ、「危ない」と思ったのだ。
制止しないと、瞳子は全力で自分自身を殺す、彼よりも先に。その瞬間、意識の奥深くで、堅固に彼を縛りあげていた鎖が砕けた。
――お前、あの恐ろしさ、分かってないのかよ。本気で自分の心臓に刃物を向ける人間、こっちは初めて遭遇したっていうのに。
それは言わなくてもいいことだ。とにかく、飛豪の内側に巣食っていたもう一人が、萎縮して表に出てこれなくなっているのは事実だった。
存在はしている。だがそいつは、今まで自在に出入りしていた扉に背をむけた。
生煮えで黒焦げのまま、意識の片隅にしがみついている。今も息をひそめて、こちらの隙を眈々と狙っている。だが一方で、飛豪は抑圧されていた元の自分が足枷から解き放たれたことにも気づいていた。
――これでようやく五〇・五〇か。いや、形勢的には逆転して、七・三くらいで勝ってる。今後、あっちの暴力欲求をどこまで押さえこめるか……。
彼の様子を下からおそるおそる窺っている瞳子に気づいて、飛豪は「ごめん」と謝った。体をずらして彼女を自由にする。二人の胸に、腕に、彼女の血がぬるりとべたついて付着していた。
「その傷、相当痛いだろ。まず病院行こう」
左腕と胸の上部から、音もなく出血がつづいていた。致命傷ではないと目算はしていたが、猶予のある傷でもない。一刻もはやく処置する必要がある。
彼は床に落ちていた自分のTシャツを拾うと、壊れ物にふれるような慎重な手つきで、まず彼女に着せた。だが、これだけでは足りない。
「ちょっと待ってな」
この子の体を冷やさないように、なにか羽織るものを持ってこないと。あと、車のキーか――飛豪はスウェットの下だけはいて自室に服を探しにいこうとした。だが、「待って!」とか細い声で呼びとめられる。半身を起こした彼女は真っ黒な瞳で縋りつくようにこちらを見ていた。
「飛豪さん、置いてかないで」
「すぐ戻る。病院に行くための服、取りにいくだけ」
「それでもやだ! 一緒に行く」
瞳子は少女のような頑是ない仕草で、首を振る。体から血を滴らせたまま、無理に立ちあがろうとした彼女を押しとどめて、飛豪は横抱きにした。
――やれやれ。置いてかれるのが怖いのは、もう俺の方だっていうのに。
首に腕がまわってくる。彼女から顔が寄せられて、彼は思わず勘違いした。
「瞳子、俺はそういうのやぶさかではないけれど。ただ、今は先に怪我を……」
「違う。一つだけ」
「なに?」いぶかしげに問いかける。
「飛豪さん、お誕生日おめでとう。もう日付まわったから、今日だよ。一緒にお祝いしたかったの」
瞳子は鼻のあたりに大きく皺をよせて、泣きながら笑った。
踊っている時には絶対に見せないような、気取りのない大輪の笑顔。だけど、彼が一番好きなファニーフェイスの彼女だった。
「瞳子、やめろッ‼」
だが、伸ばした手が包丁に届くよりも先に、先端が彼女の左胸に着地して柔らかい肌を抉った。
「……ッはぅ…」
あまりの痛みに、彼女は喉の奥から悲鳴をほとばしらせる。
ようやく、彼の手が刃物に届いた。無我夢中で払いのける。
刃先は先端を体に埋めたまま無理やりに軌道をそらされて、一センチ強の深さで胸部を削りとっていったのちに抜け落ちた。落下した包丁は、飛豪の足に直撃して跳ねかえり、床に転がった。
しかし瞳子はそれでも止まらなかった。
彼の手を振りはらいながら「放して!」と絶叫し、食器棚の抽斗をあけてナイフを掴もうとした。ナイフを彼が叩きおとすと、フォークを。それも奪われると、スプーンを。けたたましい金属音が間断なく響く。
錯乱したように暴れる彼女の腕を、飛豪はまず封じこめた。そのままキッチンから引きずりだして、リビングのソファまで強制連行する。瞳子を全力で抱きしめて、ソファに倒れこんだ。
彼女は唸り声のような、獣の咆哮のような声を低くあげて、力のかぎり抗ってくる。体重をかけ、羽交いじめにして、彼は瞳子を下に押さえつけた。
「……ジゼル」
その言葉を口にしたのは、飛豪だった。
彼女を全身で拘束したまま、耳元で何度も囁きかける。彼女が自分を取り戻すまで。
「ジゼル、ジゼル、ジゼル、ジゼル……。瞳子、お願いだからやめてくれ。止まってくれ。君を失いたくないんだ。もういい、もういいから」
ジゼル。
それは麻布で知りあった最初の夜、ホテルで体を重ねる前に決めたセーフワードだった。
瞳子が「ジゼル」と口にすれば、飛豪はなにをしていても動きを止め、彼女から離れる。そう約束をした。
彼女を守るための言葉だ。だが、瞳子は最後までその言葉を使おうとしなかった。だから彼が言うしかなかった。
低い声でゆっくりと、何度もその言葉を繰りかえす。彼女を落ちつかせるように。宥めるように。しばらくすると、腕の中で彼女が嗚咽してしゃくり上げていることに飛豪は気づいた。
泣いてはいるものの、自分の腕のなかで、彼女の昂奮が徐々に鎮まっていくのを感じる。
手足のばたつきがおさまり、肩で呼吸するようにしていた息がなめらかになっていく。首筋にそよいでゆく、彼女のゆるやかな呼気が心地よかった。
頭痛はまだ続いているが、きっと引いてゆく。だしぬけに、そんな予感がおとずれた。
なによりも、頭の中から黒い霧が薄らいできている。水深二メートルのプールの底から、ようやく水面に顔をだせたような解放感があった。長い雨の日々のあとに、ようやく太陽の光をあびたような心地がした。
腕の拘束をゆるめて、飛豪は鼻先を彼女の髪にうずめた。
「瞳子、もう大丈夫か?」
「『大丈夫?』って、こっちのセリフだよ……。飛豪さん、今どっち?」
まだ事態に混乱したままの状態で、彼女は不安げに訊いてくる。
「どっちもいる。だけどもう一人の方、君にすごくビビってる。いるのに出てこれなくなってる。そんな感じがする」
「なんで?」
「…………」
彼は答えに窮した。間違いなく、彼女のあの狂気なのか本気なのか分からない行動のせいだ。
あの時――瞳子が自分の胸に刃をつき立てたとき――全身の血液が逆流しはじめた。脳の血管が膨張して、石化していた心臓に激しく血が流れこんでいった。
ただ、「危ない」と思ったのだ。
制止しないと、瞳子は全力で自分自身を殺す、彼よりも先に。その瞬間、意識の奥深くで、堅固に彼を縛りあげていた鎖が砕けた。
――お前、あの恐ろしさ、分かってないのかよ。本気で自分の心臓に刃物を向ける人間、こっちは初めて遭遇したっていうのに。
それは言わなくてもいいことだ。とにかく、飛豪の内側に巣食っていたもう一人が、萎縮して表に出てこれなくなっているのは事実だった。
存在はしている。だがそいつは、今まで自在に出入りしていた扉に背をむけた。
生煮えで黒焦げのまま、意識の片隅にしがみついている。今も息をひそめて、こちらの隙を眈々と狙っている。だが一方で、飛豪は抑圧されていた元の自分が足枷から解き放たれたことにも気づいていた。
――これでようやく五〇・五〇か。いや、形勢的には逆転して、七・三くらいで勝ってる。今後、あっちの暴力欲求をどこまで押さえこめるか……。
彼の様子を下からおそるおそる窺っている瞳子に気づいて、飛豪は「ごめん」と謝った。体をずらして彼女を自由にする。二人の胸に、腕に、彼女の血がぬるりとべたついて付着していた。
「その傷、相当痛いだろ。まず病院行こう」
左腕と胸の上部から、音もなく出血がつづいていた。致命傷ではないと目算はしていたが、猶予のある傷でもない。一刻もはやく処置する必要がある。
彼は床に落ちていた自分のTシャツを拾うと、壊れ物にふれるような慎重な手つきで、まず彼女に着せた。だが、これだけでは足りない。
「ちょっと待ってな」
この子の体を冷やさないように、なにか羽織るものを持ってこないと。あと、車のキーか――飛豪はスウェットの下だけはいて自室に服を探しにいこうとした。だが、「待って!」とか細い声で呼びとめられる。半身を起こした彼女は真っ黒な瞳で縋りつくようにこちらを見ていた。
「飛豪さん、置いてかないで」
「すぐ戻る。病院に行くための服、取りにいくだけ」
「それでもやだ! 一緒に行く」
瞳子は少女のような頑是ない仕草で、首を振る。体から血を滴らせたまま、無理に立ちあがろうとした彼女を押しとどめて、飛豪は横抱きにした。
――やれやれ。置いてかれるのが怖いのは、もう俺の方だっていうのに。
首に腕がまわってくる。彼女から顔が寄せられて、彼は思わず勘違いした。
「瞳子、俺はそういうのやぶさかではないけれど。ただ、今は先に怪我を……」
「違う。一つだけ」
「なに?」いぶかしげに問いかける。
「飛豪さん、お誕生日おめでとう。もう日付まわったから、今日だよ。一緒にお祝いしたかったの」
瞳子は鼻のあたりに大きく皺をよせて、泣きながら笑った。
踊っている時には絶対に見せないような、気取りのない大輪の笑顔。だけど、彼が一番好きなファニーフェイスの彼女だった。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
おじさんは予防線にはなりません
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」
それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。
4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。
女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。
「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」
そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。
でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。
さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。
だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。
……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。
羽坂詩乃
24歳、派遣社員
地味で堅実
真面目
一生懸命で応援してあげたくなる感じ
×
池松和佳
38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長
気配り上手でLF部の良心
怒ると怖い
黒ラブ系眼鏡男子
ただし、既婚
×
宗正大河
28歳、アパレル総合商社LF部主任
可愛いのは実は計算?
でももしかして根は真面目?
ミニチュアダックス系男子
選ぶのはもちろん大河?
それとも禁断の恋に手を出すの……?
******
表紙
巴世里様
Twitter@parsley0129
******
毎日20:10更新
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる