政略結婚しましたが、王子は愛人に夢中です!

クリオネ

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《第2章》 ワルツの成果

衣装あわせ 2

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 先ほど散った火花を意に介していないかのように、青のドレスをエリーに着せかけながらジャンヌが訊いてきた。

「そういえば、ワルツは踊れるようになりましたか?」
「あれだけ練習したもの。ちゃんと仕上がったわ」エリーも気持ちを切りかえて返答する。

「成人して、今年が初めてのお披露目のワルツですからね。領地の全員が期待してます」
「クロード様もびっくりされますよ。お嬢様、すごく上達されましたから」

 侍女たちの誉めそやす言葉は、いつも額面どおりに受けとらないように自制していたが、今日ばかりはくすぐられるように嬉しい。ワルツをずっと熱心に練習してきたのも、思いきったデザインのドレスを選んだのも、三日後の夜にクロードと踊るためだった。

 基本的なステップは、メッシーア時代に家庭教師から教わっていた。しかし社交の場で踊った経験がエリーにはない。それを補ってくれたのは家令やノーアたちで、彼らは時間のあいているときに付きあってくれた。傍で見ていたジェイは、最初こそつまらなそうにしていたが、踊っているエリーたちを暇つぶしに眺めていただけでいつの間にか習得していた。

 苦労して身につけたエリーはジェイのそんな器用さが気にいらず、後で突っかかってケンカになった。

「こういうのは俺のほうが才能ある」

 と、得意げに笑ったジェイの足をわざと踏みつけて、しばらく口をきいてもらえなかった。

「騎士長の赤毛の息子と、最近とみに親しいようですが、ワルツの練習も彼とされたんですか?」
「えぇ。彼だけでなく、お父様のノーアや、家令とも。皆さん、それぞれお上手でいらっしゃるから」

 エリーにとってジェイは、唯一の気のおけない友人だ。変な勘ぐりなどされたくない。エリーが天真爛漫に答えると、ジャンヌはさらに言葉をかさねた。

「お嬢様が本当に攻略しなければならない相手は、クロード様ですからね」
「…………」
「四階の『奥様』にまだ御子がいないのですから、お嬢様にもきっとチャンスはありますよ。そのドレスで頑張ってお手付きになってくださいませ」

 生々しいことを言いながら、裾丈やウェスト、バストサイズをエリーの体にあうよう手際よく詰めていく。

「そういうのは成り行きに任せることにしたわ」
「子胤(こだね)に結びつかない貴族の婚姻なんてありえません。クロード様をその気にさせて種つけさせておやりにならないと」

 あからさまな言葉に、エリーはさっと頬を染めて目を伏せた。

 ――子供。

 彼女が真に欲しているのは、子供ではなく、一かけらの優しさと気づかいだけだ。

 自分は本当に彼を望んでいるのだろうか。クロードに、どこまで触れてもらえば満足するのか。

 問いかければ問いかけるほど混乱をきたしてしまう。泣きたくなるような途方に暮れてしまうような気分のとき、探してしまうのは彼ではない気もしている。

 エリーは無言で首をふり、誰にも気づかれないよう隠れて溜息をついた。
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