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第1章 異世界転生
第3話 アキと魔法
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アキの一日はディラによる魔法講座から始まる。
一度あまりにも目を覚まさないで寝ているナディアに業を煮やしたリリは、ナディアの頭上に水球を発生させて顔めがけて落下させているのをアキたちは見ていた。
魔法だ!!
地上で溺れるナディアを他所にアキは脳内会議を開催したところ、3人は手探りながら魔法を使おうと思い立った。
<ジブンのナカにシュウチュウする。モット>
ディラの異世界語習熟度はまだ不十分だったため、アニメで学んだ日本語でアキに指導は開始された。ディラによれば若干ではあるが、リリが魔法を使う前に魔力のようなものを感じとることができたらしい。
<チガウ。マワリのセイレイのコエをキク>
ディラは丁寧に教えてくれるのだが、アキにはさっぱり理解できない。特訓もすでに3カ月におよんでいるが、彼らには進歩が見られなかった。
「アキっ!!あなた!!」
アキの背後からリリは驚きの声を上げる。
「アキ、今魔法を使おうとしたわね?」
今日は本来ならリリは薬草医として開業している薬局に詰めているはずだった。リリの目を盗んで特訓をしていたアキは血の気が引くのを感じた。
「ばあちゃん……今日仕事は?」
「ちょっと忘れ物を取りに帰ったのよ。質問に答えなさい!あと、ナディアは、一体、どこに、いるの?」
怒気の孕んだ声でアキに問いかけるリリ。今までアキはリリに怒られたことはない。しかも普段ナディアに怒鳴る雰囲気とは明らかに異なる口調にアキは動揺を隠せないでいた。
「か、母さんなら井戸に水を汲みに行ったよ。」
絞るような声で弁明すると、ゆっくりと近づいてくるリリ。小さな溜息をつくと、先ほどとは異なる口調でアキに話しかける。
「アキ。ちょっと付いてきなさい。」
《アキ、っちょっと尋常じゃないね》
<ババサン、トテモコワイ>
リリに連れられ家を出るアキ。途中ですれ違ったナディアに「アキを預かるよ。」と一言リリは告げると村の井戸の近くにある建物の扉を開ける。リリが普段調合を行う薬屋である。
「適当に座りなさい。」
初めて来たなと思っているアキが来客用の椅子に腰かけると、リリは店の奥からビンに入った青色の液体を持ってきた。
「これは{魔解薬}と言ってね。簡単に説明すると、魔法が使えるようになる薬なの。…ただね、体が小さいうちは、魔法は体に毒になる。だから魔法を絶対に使ったらダメよ。いいね?」
アキはその迫力から心ならずも深く頷く。リリはアキを諭しながら説明を続ける。
・本来魔法は自分で使い始めることはできない。
・魔法が使えるようになるには10歳を過ぎたあたりで、薬品によって自分の魂との親和性を高めて使えるようにする。
・通常は魔法が使える大人が慣れるまで補助に付く。
・魔力の制御を誤ると死ぬ可能性もある。
「アキ。あなたが魔法を使おうとするのは嬉しいけれど、1つ間違えてしまうと死んでしまうの。だからお願い!今日みたいなことは絶対しないで!」
結局、アキはリリを説得することはできず、手を引かれて家へ連れて帰される。
《で?どうするの?諦めるつもり?》
(う~ん。糸口を掴んではいるんだけどね。ばあちゃんを心配させるのはちょっと嫌かな。)
《どういうこと?》
(家でばあちゃんが俺を怒鳴ったのは、魔力を感じたからだろ?きっとボクはあの時点で、魔法を使えていたはずなんだよ。)
アキたちは魔法の使用は保留にすることにした。さすがにあそこまで脅された上で、魔法の使用を強行することはできなかった。
虫たちが綺麗な鳴き声を披露し始め、空には星たちが色とりどりの光を放っている。
成長期真っ盛りのアキが深い眠りに就いた後、リリはナディアに声をかけ、外に呼びだした。
アキには聞かせられない話をするときはいつも家の裏の薪割り場がリリたちの会議場に変わる。
「今日アキが魔法を使おうとしていたわ。」
「えっ!リリさんどういうことですか?あの子はまだ2歳にゃんですよ?」
「そうよ。やっぱりあの子には何か特別な力があるのかもしれない。ナディア…、アキに魔法を教えてみようと思うの。」
ナディアにとって突拍子もない言葉に驚きの声を上げる。
「待ってください!そ、そんなことしたら魔力暴走でアキ死んじゃうかもしれにゃいじゃにゃいですか!絶対嫌です!そんにゃこと絶対させません。リリさん、どうしてそんにゃこと言うんですか?」
ナディアが怒ることなど滅多にあることではない。特に対象がナディアが尊敬して止まないリリであればなおさらである。
「いい?ナディア。アキはこの村で唯一の人族。いつも私やあなたが必ずアキを守れるとは限らないの。アキには正しい力を手に入れてもらいたいのよ。出来るだけ早く。」
「で、でもっ。それでもしアキが死んじゃったらわ、わたし…。」
リリはナディアの震え始めた体を包み込むように抱きしめ、話を続ける。
「もちろん、私が全力で傍にいてアキの魔力を抑え込むつもりよ。それに今日既にアキは魔力の解放を一部だけど成功させていたの。これは私の推測だけど、薬品の濃度を下げて段階的に投与すればアキに関しては成功するはずよ。」
ナディアもこの村の現状は知っているし、リリの言うことも理解できる。ただ、どうしても心が付いていかなかった。
「…少し、考えさせてください。」
「そうね。突飛なことを言って悪かったわね。もう夜も遅いし、早く寝ましょうか。」
朝になり鳥の鳴く声でリリは目を覚ます。すると、隣にいるはずのナディアがいないことに気付く。今までありえなかったことだ。寝間着のまま、急いで外套を羽織り外に出ようとすると台所の片隅の椅子に腰掛けるナディアを見つける。
「リリさん。お願いします。わたしの息子に魔法を教えてください。」
リリはナディアが昨夜から一度も眠りについていないことは目の下を見て直ぐにわかった。
その上で、
「わかりました。あなたの息子さんは私トスカトリリ=ラ=ガリアスが責任をもってお預かりいたします。」
エルフの名の下に正式にアキを弟子とすることにしたのである。
一度あまりにも目を覚まさないで寝ているナディアに業を煮やしたリリは、ナディアの頭上に水球を発生させて顔めがけて落下させているのをアキたちは見ていた。
魔法だ!!
地上で溺れるナディアを他所にアキは脳内会議を開催したところ、3人は手探りながら魔法を使おうと思い立った。
<ジブンのナカにシュウチュウする。モット>
ディラの異世界語習熟度はまだ不十分だったため、アニメで学んだ日本語でアキに指導は開始された。ディラによれば若干ではあるが、リリが魔法を使う前に魔力のようなものを感じとることができたらしい。
<チガウ。マワリのセイレイのコエをキク>
ディラは丁寧に教えてくれるのだが、アキにはさっぱり理解できない。特訓もすでに3カ月におよんでいるが、彼らには進歩が見られなかった。
「アキっ!!あなた!!」
アキの背後からリリは驚きの声を上げる。
「アキ、今魔法を使おうとしたわね?」
今日は本来ならリリは薬草医として開業している薬局に詰めているはずだった。リリの目を盗んで特訓をしていたアキは血の気が引くのを感じた。
「ばあちゃん……今日仕事は?」
「ちょっと忘れ物を取りに帰ったのよ。質問に答えなさい!あと、ナディアは、一体、どこに、いるの?」
怒気の孕んだ声でアキに問いかけるリリ。今までアキはリリに怒られたことはない。しかも普段ナディアに怒鳴る雰囲気とは明らかに異なる口調にアキは動揺を隠せないでいた。
「か、母さんなら井戸に水を汲みに行ったよ。」
絞るような声で弁明すると、ゆっくりと近づいてくるリリ。小さな溜息をつくと、先ほどとは異なる口調でアキに話しかける。
「アキ。ちょっと付いてきなさい。」
《アキ、っちょっと尋常じゃないね》
<ババサン、トテモコワイ>
リリに連れられ家を出るアキ。途中ですれ違ったナディアに「アキを預かるよ。」と一言リリは告げると村の井戸の近くにある建物の扉を開ける。リリが普段調合を行う薬屋である。
「適当に座りなさい。」
初めて来たなと思っているアキが来客用の椅子に腰かけると、リリは店の奥からビンに入った青色の液体を持ってきた。
「これは{魔解薬}と言ってね。簡単に説明すると、魔法が使えるようになる薬なの。…ただね、体が小さいうちは、魔法は体に毒になる。だから魔法を絶対に使ったらダメよ。いいね?」
アキはその迫力から心ならずも深く頷く。リリはアキを諭しながら説明を続ける。
・本来魔法は自分で使い始めることはできない。
・魔法が使えるようになるには10歳を過ぎたあたりで、薬品によって自分の魂との親和性を高めて使えるようにする。
・通常は魔法が使える大人が慣れるまで補助に付く。
・魔力の制御を誤ると死ぬ可能性もある。
「アキ。あなたが魔法を使おうとするのは嬉しいけれど、1つ間違えてしまうと死んでしまうの。だからお願い!今日みたいなことは絶対しないで!」
結局、アキはリリを説得することはできず、手を引かれて家へ連れて帰される。
《で?どうするの?諦めるつもり?》
(う~ん。糸口を掴んではいるんだけどね。ばあちゃんを心配させるのはちょっと嫌かな。)
《どういうこと?》
(家でばあちゃんが俺を怒鳴ったのは、魔力を感じたからだろ?きっとボクはあの時点で、魔法を使えていたはずなんだよ。)
アキたちは魔法の使用は保留にすることにした。さすがにあそこまで脅された上で、魔法の使用を強行することはできなかった。
虫たちが綺麗な鳴き声を披露し始め、空には星たちが色とりどりの光を放っている。
成長期真っ盛りのアキが深い眠りに就いた後、リリはナディアに声をかけ、外に呼びだした。
アキには聞かせられない話をするときはいつも家の裏の薪割り場がリリたちの会議場に変わる。
「今日アキが魔法を使おうとしていたわ。」
「えっ!リリさんどういうことですか?あの子はまだ2歳にゃんですよ?」
「そうよ。やっぱりあの子には何か特別な力があるのかもしれない。ナディア…、アキに魔法を教えてみようと思うの。」
ナディアにとって突拍子もない言葉に驚きの声を上げる。
「待ってください!そ、そんなことしたら魔力暴走でアキ死んじゃうかもしれにゃいじゃにゃいですか!絶対嫌です!そんにゃこと絶対させません。リリさん、どうしてそんにゃこと言うんですか?」
ナディアが怒ることなど滅多にあることではない。特に対象がナディアが尊敬して止まないリリであればなおさらである。
「いい?ナディア。アキはこの村で唯一の人族。いつも私やあなたが必ずアキを守れるとは限らないの。アキには正しい力を手に入れてもらいたいのよ。出来るだけ早く。」
「で、でもっ。それでもしアキが死んじゃったらわ、わたし…。」
リリはナディアの震え始めた体を包み込むように抱きしめ、話を続ける。
「もちろん、私が全力で傍にいてアキの魔力を抑え込むつもりよ。それに今日既にアキは魔力の解放を一部だけど成功させていたの。これは私の推測だけど、薬品の濃度を下げて段階的に投与すればアキに関しては成功するはずよ。」
ナディアもこの村の現状は知っているし、リリの言うことも理解できる。ただ、どうしても心が付いていかなかった。
「…少し、考えさせてください。」
「そうね。突飛なことを言って悪かったわね。もう夜も遅いし、早く寝ましょうか。」
朝になり鳥の鳴く声でリリは目を覚ます。すると、隣にいるはずのナディアがいないことに気付く。今までありえなかったことだ。寝間着のまま、急いで外套を羽織り外に出ようとすると台所の片隅の椅子に腰掛けるナディアを見つける。
「リリさん。お願いします。わたしの息子に魔法を教えてください。」
リリはナディアが昨夜から一度も眠りについていないことは目の下を見て直ぐにわかった。
その上で、
「わかりました。あなたの息子さんは私トスカトリリ=ラ=ガリアスが責任をもってお預かりいたします。」
エルフの名の下に正式にアキを弟子とすることにしたのである。
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