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第3章 異世界レジスタンス
第3話 偽りの静けさ
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ネスジーナ王国ホップス子爵領 領都ホストラ 領主館
「ぐははははははははは。」
目の前に積まれた白金貨をみてホップス子爵であるクリストは笑いが止まらなかったラウ村に派遣した騎士団長は想像通りの成果を持って帰参したからだ。
連れ帰った奴隷は20余名。奴隷の相場は1体当たり10000000~20000000ネス。白金貨で10枚から20枚。それが20体。今年の税どころか来年の税も、安泰なのだ。
「もっと早くやるべきだった。」
クリストはは航海する。もっと早く奴隷狩りをやっていれば、つまらない悩みで腹を立てる必要も無かったと。
「アルフレッド。ギルノートが持って来たワインがあったな。持ってこい」
今回の奴隷は一括して領内一の奴隷商人に売り払った。お互いに結託して黒いことを行ってきた。今回もその中の一つに過ぎない。
本来、奴隷狩りは王国では暗黙の了解で禁止されている。
不当な手段で奴隷にされた獣人が捨て身で歯向かうことが多々あったからだ。
過去、少なくない損害を王国は負っていた。もちろん、クリストもそのことは知っている。だが、過去とは規模が明らかに異なる。せいぜい20体強。
鎖に繋がれた状態で反乱を犯したところでたかが知れている。しかも反乱を起こしてくれれば持ち主に罰金を請求できる。
こんな美味い商売が他にあるはずもない。
証拠となる盗賊共も昨日、まとめて始末しており税の悩みも消えた。
「ラウ村か。また新しく養殖でも始めるか」
ドアがノックされ、アルフレッドがワインを持ってくる。
今日取引をした際、クリストが譲歩をギルノートに迫り、半ば取り上げたような形で手にいれたものである。
アルコールが入り、思考が溶け始めるクリスト。1人で飲んでいると、つまらないことも考え出す。彼の妻も彼と同じ年齢。しばらく事に及んでいない。
「獣人か。王都では、具合がいいと評判だがな…。」
クリストは徹底した差別主義者である。獣人族など、視界に入れるのも嫌がる。しかし、貴族会での評判とワインが彼の重たい背中を後押しした。
「アルフレッド!!」
ワインと交換に白金貨を地下に保管しに行っていた家令。主人の大声に駆け足で主人の居室に入る。
「はっ、旦那様。」
「アルフレッド。今日取引した…[ズドーーーーン] なっ、何だ?」
突如聞こえた巨大な音。急ぎ窓を開け、外を見れば西側の城門の一部分から炎が上がっている。
「敵襲かっ!?騎士団長を呼べ!!」
夜勤ではない騎士団長を呼ぶのは時間が掛かる。しかしアルフレッドはそのようなことを指摘せず、はっと短く返事をすると、屋敷の廊下を歩き始めた。
===========================================================
ギルノート商会 商会長邸宅
「くそっ!忌々しい!!」
ホストラ中央部に位置する貴族街。その一角にそびえ立つ古い屋敷。
屋敷の中で最も広い寝室にベットの同じと言わんばかりの大きさの男がいる。
豚より豚っぽい。陰口をたたく人は彼をそう比喩する。
ブルド=ギルノート。ギルノート商会の商会長である。
祖父ギルノートが興した小さな商店はブルドの父の代で大きくなった。
かつては郊外に鉱山を持ち、それを経営することで事業を拡大してきたギルノート商会。
しかし、今や鉱山も枯れ、主要な業務といえば領主の御用商人となっていた。
ブルドは今日買い取ってほしい奴隷がいると言われ、領主館を訪ねた。領主に見放されれば商会は潰れてしまう。有無を言える立場ではない。
買い取った奴隷は20余名。屋敷にあるほぼ全額を吐き出すハメとなった。商会の命運を掛けて奴隷らを売り切らねばならない。
領主である子爵のことは好んでいないが、これまで2人でかなりの悪事にも手を染めている。切っても切れない縁が2人にはあった。
しかし、子爵の悪口を垂れ流しながらもブルドは密かに企んでいることがあった。
商会の女性従業員に命令し、兎人族のガキから千金の情報を聞き出すことに成功していたのである。
「白虎族の子供。しかも女!」
白虎族の獣人は歴史書にもあまり登場しない。というよりも知っている人間自体少ないのだ。希少中の希少。
奴隷として売れば爵位すら買えるほどの財産が手に入るかもしれない。
想像するだけで笑いが止まらなかった。
「遂に耐え忍んだ甲斐があった。あの子爵というブタにはほえ面かかしてやる!」
決して起こることのないブタ戦争を起こそうとしていた。
ズドーーーーン
静かだった邸宅に衝撃が走る。
「何があった!?」
部屋から出ると、驚いた妻も廊下に飛び出していた。
「何があったの?」
「わかるかっ!少し落ち着け!!馬鹿が!!」
お前が落ち着け!と言わんばかりに、雇っている老執事がゆっくりと姿を見せる。
「どうやら、城壁近くで火災が起きているようです。」
「商会はどうなっている!?」
「今、人を向かわせております。」
ブルドは寝間着のまま執務室に移動し、部下からの報告を待つ。貧乏ゆすりがひどく、体重のせいか、この貧乏ゆすりのせいはわからないが、腰掛けている真新しい椅子は既に傾いていた。
「だ、旦那様!!」
執事が遣わしたのであろう下男が部屋に駆け込んでくる。
「商会が!商会が襲われました!!!」
「ぐははははははははは。」
目の前に積まれた白金貨をみてホップス子爵であるクリストは笑いが止まらなかったラウ村に派遣した騎士団長は想像通りの成果を持って帰参したからだ。
連れ帰った奴隷は20余名。奴隷の相場は1体当たり10000000~20000000ネス。白金貨で10枚から20枚。それが20体。今年の税どころか来年の税も、安泰なのだ。
「もっと早くやるべきだった。」
クリストはは航海する。もっと早く奴隷狩りをやっていれば、つまらない悩みで腹を立てる必要も無かったと。
「アルフレッド。ギルノートが持って来たワインがあったな。持ってこい」
今回の奴隷は一括して領内一の奴隷商人に売り払った。お互いに結託して黒いことを行ってきた。今回もその中の一つに過ぎない。
本来、奴隷狩りは王国では暗黙の了解で禁止されている。
不当な手段で奴隷にされた獣人が捨て身で歯向かうことが多々あったからだ。
過去、少なくない損害を王国は負っていた。もちろん、クリストもそのことは知っている。だが、過去とは規模が明らかに異なる。せいぜい20体強。
鎖に繋がれた状態で反乱を犯したところでたかが知れている。しかも反乱を起こしてくれれば持ち主に罰金を請求できる。
こんな美味い商売が他にあるはずもない。
証拠となる盗賊共も昨日、まとめて始末しており税の悩みも消えた。
「ラウ村か。また新しく養殖でも始めるか」
ドアがノックされ、アルフレッドがワインを持ってくる。
今日取引をした際、クリストが譲歩をギルノートに迫り、半ば取り上げたような形で手にいれたものである。
アルコールが入り、思考が溶け始めるクリスト。1人で飲んでいると、つまらないことも考え出す。彼の妻も彼と同じ年齢。しばらく事に及んでいない。
「獣人か。王都では、具合がいいと評判だがな…。」
クリストは徹底した差別主義者である。獣人族など、視界に入れるのも嫌がる。しかし、貴族会での評判とワインが彼の重たい背中を後押しした。
「アルフレッド!!」
ワインと交換に白金貨を地下に保管しに行っていた家令。主人の大声に駆け足で主人の居室に入る。
「はっ、旦那様。」
「アルフレッド。今日取引した…[ズドーーーーン] なっ、何だ?」
突如聞こえた巨大な音。急ぎ窓を開け、外を見れば西側の城門の一部分から炎が上がっている。
「敵襲かっ!?騎士団長を呼べ!!」
夜勤ではない騎士団長を呼ぶのは時間が掛かる。しかしアルフレッドはそのようなことを指摘せず、はっと短く返事をすると、屋敷の廊下を歩き始めた。
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ギルノート商会 商会長邸宅
「くそっ!忌々しい!!」
ホストラ中央部に位置する貴族街。その一角にそびえ立つ古い屋敷。
屋敷の中で最も広い寝室にベットの同じと言わんばかりの大きさの男がいる。
豚より豚っぽい。陰口をたたく人は彼をそう比喩する。
ブルド=ギルノート。ギルノート商会の商会長である。
祖父ギルノートが興した小さな商店はブルドの父の代で大きくなった。
かつては郊外に鉱山を持ち、それを経営することで事業を拡大してきたギルノート商会。
しかし、今や鉱山も枯れ、主要な業務といえば領主の御用商人となっていた。
ブルドは今日買い取ってほしい奴隷がいると言われ、領主館を訪ねた。領主に見放されれば商会は潰れてしまう。有無を言える立場ではない。
買い取った奴隷は20余名。屋敷にあるほぼ全額を吐き出すハメとなった。商会の命運を掛けて奴隷らを売り切らねばならない。
領主である子爵のことは好んでいないが、これまで2人でかなりの悪事にも手を染めている。切っても切れない縁が2人にはあった。
しかし、子爵の悪口を垂れ流しながらもブルドは密かに企んでいることがあった。
商会の女性従業員に命令し、兎人族のガキから千金の情報を聞き出すことに成功していたのである。
「白虎族の子供。しかも女!」
白虎族の獣人は歴史書にもあまり登場しない。というよりも知っている人間自体少ないのだ。希少中の希少。
奴隷として売れば爵位すら買えるほどの財産が手に入るかもしれない。
想像するだけで笑いが止まらなかった。
「遂に耐え忍んだ甲斐があった。あの子爵というブタにはほえ面かかしてやる!」
決して起こることのないブタ戦争を起こそうとしていた。
ズドーーーーン
静かだった邸宅に衝撃が走る。
「何があった!?」
部屋から出ると、驚いた妻も廊下に飛び出していた。
「何があったの?」
「わかるかっ!少し落ち着け!!馬鹿が!!」
お前が落ち着け!と言わんばかりに、雇っている老執事がゆっくりと姿を見せる。
「どうやら、城壁近くで火災が起きているようです。」
「商会はどうなっている!?」
「今、人を向かわせております。」
ブルドは寝間着のまま執務室に移動し、部下からの報告を待つ。貧乏ゆすりがひどく、体重のせいか、この貧乏ゆすりのせいはわからないが、腰掛けている真新しい椅子は既に傾いていた。
「だ、旦那様!!」
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「商会が!商会が襲われました!!!」
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