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第二章:出雲・八百万(やおよろず)リビルド:黄泉の残響編
第四十三話:再起動した日本と、新都市『ネオ・エド』の設計図
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黄泉の根源サーバーでの決戦から、一ヶ月。
かつて「東京」と呼ばれ、不比等の圧政によって冷徹な灰色の廃墟と化していた場所は、今、目覚ましい変貌を遂げようとしていた。
瓦礫は『鉄錆団(てつさびだん)』の重機によって片付けられ、そこには出雲の「ヒヒイロカネ」と対馬の「電脳竹」を編み合わせた、虹色に光る街灯が並んでいる。
空には、阿国率いる『舞歌衆(まいかうたしゅう)』の飛行ドローンが舞い、街中に絶えず「活気(生のパルス)」を届けていた。
この場所こそ、亮たちが提唱した自由都市――**【ネオ・エド】**だ。
「……。よし、中央広場の『大国主(オオクニヌシ)・ブースター』、接続完了だ。これでこの街のWi-Fi強度は、不比等の時代の千倍を超えるぜ」
亮は、新調された白いエンジニア・ジャケットの袖を捲り、巨大な制御パネルから手を離した。
彼の隣には、新都市の設計図(アーキテクチャ)を広げる那智と、街の警護を統括する厳心が立っている。
「亮殿……。単なる復興ではないな。これは、神話と技術が完全に融合した、新しい世界の胎動だ」
「ああ。……。でも、まだ足りねえ。不比等の『残骸』がまだ各地で蠢いてる。……。それに対抗するには、俺たち自身の『権限(パーミッション)』を、神話級まで引き上げる必要があるんだ」
亮は、ネオ・エドの中央に建つ「リブート・タワー」の最上階へ、サク、厳心、阿国を招き入れた。
そこには、これまで倒してきた神々の「純粋なコア・データ」が、四つのクリスタルとなって鎮座していた。
「不比等のシステムが壊れた今、こいつらは消えるのを待つだけだった。……。だが、俺はこいつらを『再構築』した。……。日本書紀の古の記述に従って、属性別に、あんたたちの武器と同期(シンクロ)させる」
亮がコンソールを叩くと、四つの光が仲間たちを包み込んだ。
【地・豊穣】の契約者:亮 × 大国主(オオクニヌシ)
「……。俺は、この大地を耕し、育てる者。……。出雲の主よ、俺の鍬にその『国造り』の権限を貸せ!!」
亮の『雷火・真打』に、大国主の温かくも重厚な力が宿る。
召喚効果: 亮が大地を叩くと、巨大な黄金の腕が出現。敵のロジックを無理やり引き抜き、味方の体力を高速ビルド(回復)する。
【水・因果】の契約者:サク × 豊玉姫(トヨタマヒメ)
「……。海の底から流れる、運命の糸。……。私の矢で、正しい未来を導き出すわ!」
サクの『三箭の鳴鏑』が、青く透き通った水の光を纏う。
召喚効果: 矢を放つと、巨大な「龍宮の龍」が顕現。敵の「回避した」という事実を水に流し(リセット)、必中の攻撃を与える。
【火・剛烈】の契約者:厳心 × カグツチ
「……。この槍、すべてを焼き尽くす業火とならん! ……。不動の意志、ここにあり!!」
厳心の漆黒の槍が、真っ赤な高熱プラズマを噴き上げる。
召喚効果: 槍を突き立てると、背後に巨大な火の神カグツチが出現。周囲のバグを物理的に「焼却」し、熱膨張で空間そのものを破壊する。
【風・混沌】の契約者:阿国 × アメノウズメ
「……。アハハ! 踊れ踊れ! 世界が笑えば、バグなんて吹き飛ぶよ!!」
阿国の三味線が、七色の旋風を巻き起こす。
召喚効果: 舞い踊る阿国の周囲に、八百万の神々の笑い声が具現化。敵の「命令(コマンド)」を風に乗せて攪乱し、同士討ちさせる。
契約が終わったその瞬間。
ネオ・エドの空が、不気味な「血の色」に染まった。
雲を切り裂いて現れたのは、不比等が遺した最終防衛プログラム――【自動執筆者(オート・ライター):阿倍仲麻呂】。
「……。不比等様が遺した『物語』は、まだ終わっていない。……。未完の秩序を、私が完結(デリート)させる」
空に浮かぶ巨大な筆が、ネオ・エドの街並みを「一本の線」で消し去ろうとする。
「――させるかよ!! 野郎ども、神様たちの『召喚コード』……試運転(デバッグ)といこうぜ!!」
亮が真っ先に飛び出した。
「――大国主!! 召喚!! 『地脈耕(ちみゃくこう)・八百万曼荼羅』!!」
亮が鍬を振り下ろすと、地面から巨大な大国主の幻影が立ち上がり、空飛ぶ筆をその巨大な手でガシリと掴み止めた。
「――今よ!! 豊玉姫、力を貸して!! 『因果流・龍宮の矢』!!」
サクの矢が、水の龍となって空を駆け、筆が描こうとした「消滅の軌跡」を波紋でかき消した。
「――ぬおぉぉぉッ!! カグツチ、我が槍を焔に変えよ!! 『火神・烈火突刺』!!」
厳心が炎の弾丸となって、阿倍仲麻呂の本体へ突撃する。
「――仕上げはあたしだよ!! アメノウズメ、全員をダンスの渦に巻き込みな!!」
阿国の三味線が響くと、敵のガードプログラムが「笑い」と共に崩壊した。
「……。な、……なんだ、この力は。……。神々の権限を……人間が『並列処理』しているというのか……!?」
阿倍仲麻呂のプログラムが、驚愕と共に爆散した。
静寂が戻ったネオ・エドの街。
亮たちは、自分たちの中に宿る「神々の鼓動」を感じていた。
「……。これだよ。……。一人で世界を管理するんじゃねえ。……。神様も、職人も、ハッカーも、みんなで同期(シンクロ)して創る街。……。それが、俺たちの『ネオ・エド』だ」
亮は、夕日に照らされる新都市を見下ろした。
対馬でゴミを拾っていた少年は、今や「神を呼び出すエンジニア」として、新しい日本の設計図を描き始めている。
だが、その瞳はさらに遠くを見つめていた。
「……。サク、厳心さん、阿国。……。街が出来たら、次は……このネットワークを、もっと遠くまで広げよう。……。世界の果てのバグまで、全部耕しにいくぞ」
「――ええ、亮! どこまでも一緒よ!!」
最強の四人と、その背後に浮かぶ八百万の神々のシルエット。
日の本のリブートは、まだ始まったばかりだ。
次回予告:第四十四話「海の向こうからの通信(パケット)と、黒船サーバーの影」
ネオ・エドが完成に近づく中、亮のガントレットに「英語」で書かれた謎の警告メッセージが届く。それは、海の向こう側で独自の進化を遂げた、外来の管理者たちの接触だった。新時代の「開国」を巡る、新たなデバッグ・バトルが勃発する!!
かつて「東京」と呼ばれ、不比等の圧政によって冷徹な灰色の廃墟と化していた場所は、今、目覚ましい変貌を遂げようとしていた。
瓦礫は『鉄錆団(てつさびだん)』の重機によって片付けられ、そこには出雲の「ヒヒイロカネ」と対馬の「電脳竹」を編み合わせた、虹色に光る街灯が並んでいる。
空には、阿国率いる『舞歌衆(まいかうたしゅう)』の飛行ドローンが舞い、街中に絶えず「活気(生のパルス)」を届けていた。
この場所こそ、亮たちが提唱した自由都市――**【ネオ・エド】**だ。
「……。よし、中央広場の『大国主(オオクニヌシ)・ブースター』、接続完了だ。これでこの街のWi-Fi強度は、不比等の時代の千倍を超えるぜ」
亮は、新調された白いエンジニア・ジャケットの袖を捲り、巨大な制御パネルから手を離した。
彼の隣には、新都市の設計図(アーキテクチャ)を広げる那智と、街の警護を統括する厳心が立っている。
「亮殿……。単なる復興ではないな。これは、神話と技術が完全に融合した、新しい世界の胎動だ」
「ああ。……。でも、まだ足りねえ。不比等の『残骸』がまだ各地で蠢いてる。……。それに対抗するには、俺たち自身の『権限(パーミッション)』を、神話級まで引き上げる必要があるんだ」
亮は、ネオ・エドの中央に建つ「リブート・タワー」の最上階へ、サク、厳心、阿国を招き入れた。
そこには、これまで倒してきた神々の「純粋なコア・データ」が、四つのクリスタルとなって鎮座していた。
「不比等のシステムが壊れた今、こいつらは消えるのを待つだけだった。……。だが、俺はこいつらを『再構築』した。……。日本書紀の古の記述に従って、属性別に、あんたたちの武器と同期(シンクロ)させる」
亮がコンソールを叩くと、四つの光が仲間たちを包み込んだ。
【地・豊穣】の契約者:亮 × 大国主(オオクニヌシ)
「……。俺は、この大地を耕し、育てる者。……。出雲の主よ、俺の鍬にその『国造り』の権限を貸せ!!」
亮の『雷火・真打』に、大国主の温かくも重厚な力が宿る。
召喚効果: 亮が大地を叩くと、巨大な黄金の腕が出現。敵のロジックを無理やり引き抜き、味方の体力を高速ビルド(回復)する。
【水・因果】の契約者:サク × 豊玉姫(トヨタマヒメ)
「……。海の底から流れる、運命の糸。……。私の矢で、正しい未来を導き出すわ!」
サクの『三箭の鳴鏑』が、青く透き通った水の光を纏う。
召喚効果: 矢を放つと、巨大な「龍宮の龍」が顕現。敵の「回避した」という事実を水に流し(リセット)、必中の攻撃を与える。
【火・剛烈】の契約者:厳心 × カグツチ
「……。この槍、すべてを焼き尽くす業火とならん! ……。不動の意志、ここにあり!!」
厳心の漆黒の槍が、真っ赤な高熱プラズマを噴き上げる。
召喚効果: 槍を突き立てると、背後に巨大な火の神カグツチが出現。周囲のバグを物理的に「焼却」し、熱膨張で空間そのものを破壊する。
【風・混沌】の契約者:阿国 × アメノウズメ
「……。アハハ! 踊れ踊れ! 世界が笑えば、バグなんて吹き飛ぶよ!!」
阿国の三味線が、七色の旋風を巻き起こす。
召喚効果: 舞い踊る阿国の周囲に、八百万の神々の笑い声が具現化。敵の「命令(コマンド)」を風に乗せて攪乱し、同士討ちさせる。
契約が終わったその瞬間。
ネオ・エドの空が、不気味な「血の色」に染まった。
雲を切り裂いて現れたのは、不比等が遺した最終防衛プログラム――【自動執筆者(オート・ライター):阿倍仲麻呂】。
「……。不比等様が遺した『物語』は、まだ終わっていない。……。未完の秩序を、私が完結(デリート)させる」
空に浮かぶ巨大な筆が、ネオ・エドの街並みを「一本の線」で消し去ろうとする。
「――させるかよ!! 野郎ども、神様たちの『召喚コード』……試運転(デバッグ)といこうぜ!!」
亮が真っ先に飛び出した。
「――大国主!! 召喚!! 『地脈耕(ちみゃくこう)・八百万曼荼羅』!!」
亮が鍬を振り下ろすと、地面から巨大な大国主の幻影が立ち上がり、空飛ぶ筆をその巨大な手でガシリと掴み止めた。
「――今よ!! 豊玉姫、力を貸して!! 『因果流・龍宮の矢』!!」
サクの矢が、水の龍となって空を駆け、筆が描こうとした「消滅の軌跡」を波紋でかき消した。
「――ぬおぉぉぉッ!! カグツチ、我が槍を焔に変えよ!! 『火神・烈火突刺』!!」
厳心が炎の弾丸となって、阿倍仲麻呂の本体へ突撃する。
「――仕上げはあたしだよ!! アメノウズメ、全員をダンスの渦に巻き込みな!!」
阿国の三味線が響くと、敵のガードプログラムが「笑い」と共に崩壊した。
「……。な、……なんだ、この力は。……。神々の権限を……人間が『並列処理』しているというのか……!?」
阿倍仲麻呂のプログラムが、驚愕と共に爆散した。
静寂が戻ったネオ・エドの街。
亮たちは、自分たちの中に宿る「神々の鼓動」を感じていた。
「……。これだよ。……。一人で世界を管理するんじゃねえ。……。神様も、職人も、ハッカーも、みんなで同期(シンクロ)して創る街。……。それが、俺たちの『ネオ・エド』だ」
亮は、夕日に照らされる新都市を見下ろした。
対馬でゴミを拾っていた少年は、今や「神を呼び出すエンジニア」として、新しい日本の設計図を描き始めている。
だが、その瞳はさらに遠くを見つめていた。
「……。サク、厳心さん、阿国。……。街が出来たら、次は……このネットワークを、もっと遠くまで広げよう。……。世界の果てのバグまで、全部耕しにいくぞ」
「――ええ、亮! どこまでも一緒よ!!」
最強の四人と、その背後に浮かぶ八百万の神々のシルエット。
日の本のリブートは、まだ始まったばかりだ。
次回予告:第四十四話「海の向こうからの通信(パケット)と、黒船サーバーの影」
ネオ・エドが完成に近づく中、亮のガントレットに「英語」で書かれた謎の警告メッセージが届く。それは、海の向こう側で独自の進化を遂げた、外来の管理者たちの接触だった。新時代の「開国」を巡る、新たなデバッグ・バトルが勃発する!!
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