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第18話:ヴェールウッドの炎と誓い

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夜がヴェールウッド村を黒い帳で包み込んだ。広場の焚き火は薪を貪り、パチパチと乾いた音を立てて燃え盛る。炎の舌が宙を舐め、飛び散る火の粉が闇に儚く消える。タクミ、リア、エリナがその周りに腰を下ろし、疲れ果てた顔に橙色の光が揺らめいていた。風が冷たく頬を掠め、森の奥から微かな獣の唸りが届く。  

リアが膝を抱え、震える声で呟いた。
「貴族に…家族を殺された。私、弱くて…何もできなかった…」
彼女の目から涙が溢れ、火明かりに濡れてきらめく。滴が頬を伝い、膝に落ちて小さな染みを広げた。タクミが視線を上げ、彼女の横顔をじっと見つめる。彼の声は低く、どこか遠くを彷徨うようだった。
「俺もだ。あの少年を救えなかった。鉱山で死なせて、ずっと後悔してる。」
拳が固く握られ、骨が白く浮く。炎を見つめる瞳に、過去の影がちらつく。リアが涙を乱暴に拭い、タクミを見上げた。
「タクミも…?」
その声には驚きと、微かな安堵が混じっていた。  

タクミが小さく頷き、リアの肩に手を置く。煤だらけの指が、彼女の細い肩に温もりを伝えた。
「でも、お前はもう一人じゃねえ。俺もエリナも、村のみんなもいる。」
言葉に力が宿り、夜の冷気を切り裂く。リアが顔を上げ、涙に濡れた目でタクミを見つめた。
「私…戦える?」
声はまだ震えていたが、その奥に小さな火種が灯り始めていた。タクミが力強く頷き、口の端を吊り上げる。
「お前の風と俺の魔鋼機なら、やれるさ。貴族なんかに負けねえ。」  

エリナが火に薪を放り込み、炎が一瞬高く跳ねた。彼女が静かに微笑む。
「村はお前たちを信じる。私もだよ。タクミ、リア、二人ともこの村の希望だ。」
その声は穏やかだが、剣士としての鋭さが滲む。タクミが設計図に手を置き、火の光に照らされた紙を見つめた。低く、決意に満ちた声が響く。
「なら、誓う。この村を守る。そして…貴族を潰す。」
遠くの空に不穏な雲が広がり、森の奥から魔獣の咆哮が低く唸る。三人の決意が、焚き火の明かりに刻まれていた。

朝がヴェールウッドに一時的な平穏をもたらした。薄靄が村を包み、朝露が草葉に光る。タクミは倉庫でガイストMk-Iの改良に没頭していた。高さ3メートルの魔鋼機の炉に、簡易水冷パイプを追加で取り付ける。鉄片と木材で補強されたパイプが、炉の熱を吸い取るように水を流し、微かな滴が地面に落ちて染みを広げた。タクミが呟く。
「これで冷却が少しマシになる。」
汗が額を伝い、煤けた手で拭う仕草が無造作だった。 

ガイストのAIコアがコックピット前面で赤く瞬き、警告する。
「過熱リスクは減ったが、まだ脆いぞ。炉の耐久性が限界に近い。」
タクミが工具を握る手を止め、鋭い視線をガイストに投げた。
「分かってる。次はもっと強くする。少しずつでも進化させりゃいい。」
ガイストが冷静に返す。
「冷却効率82%、エネルギー維持時間がさらに3分延長。戦闘での安定性は向上した。次の改良案を検討しろ、タクミ。」
その無機質な声に、タクミの眉がわずかに跳ねた。  

倉庫の外では、リアが風魔法の練習に励んでいた。彼女が両手を広げ、小さな呪文を唱えると、微弱な風が渦を巻き、地面の落ち葉を軽やかに舞い上げた。リアが不安げに呟く。
「私、役に立てるかな…」
その声は風に溶けそうに儚い。タクミが倉庫から出て、彼女のそばに立った。笑いながら言う。
「その風、戦場で使えれば十分だ。前回の火球を逸らしたみたいにな。」
リアが小さく笑い、もう一度呪文を唱えた。風が少し強くなり、近くの木の枝を揺らす。彼女の目に、自信の光が宿り始めていた。  

広場では村人たちが動き始めていた。物資が運び込まれ、鍛冶屋がウェアラブル型の制御装置を調整する。鉄の軋む音と汗の匂いが混じり合い、戦士たちに配られた装置が朝日に鈍く光る。子供たちが水桶を運び、女たちが食料を仕分ける中、エリナが剣を手に皆に呼びかけた。
「貴族が黙ってるはずない。備えなさい。次が来る前に、力を蓄えるんだ。」
戦士の一人がウェアラブルを装着し、スイッチを押す。腕が締まり、鉄片を軽く握り潰した。鍛冶屋が豪快に笑う。
「こいつがあれば、騎士とも渡り合えるな!」  

タクミが設計図を手に倉庫から出て、村人たちを見回した。呟く。
「次はお前らを守る盾だ。」
設計図には新たなスケッチが描かれていた――ガイストMk-I用の防御装甲と、村人用の簡易盾。タクミがリアに目をやり、言う。
「お前の風と合わせりゃ、貴族の魔法も防げる。」
リアが頷き、小さな風を起こしてタクミの設計図を軽く揺らした。紙がカサリと鳴り、彼女の笑みが柔らかく広がる。  

夕暮れが迫り、空が茜色に染まる。タクミがガイストMk-Iのコックピットに乗り込んだ。炉が静かに唸り、改良されたパイプから水滴が滴る。ガイストが報告する。
「エネルギー残量99%、冷却効率82%、トルク最大85N・m。戦闘準備は整った。」
エリナがタクミのそばに立ち、森の奥を見つめた。
「魔獣の咆哮が近づいてる。貴族が何か企んでるかもしれない。」
タクミがレバーを握り、呟く。
「奴らが何を企もうが、こっちは負けねえ。」  

リアがタクミとエリナの間に立ち、掌に風を感じながら言った。
「私も…戦うよ。家族のため、村のために。」
その声に迷いはなく、風が彼女の髪を軽く揺らす。村人たちが三人を囲み、静かな決意が広場に満ちていた。遠くの空に広がる不穏な雲と、森の奥からの魔獣の咆哮が、次なる戦いの前触れを告げる。ヴェールウッドの未来は、彼らの手に握られていた。

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