最弱の俺が神の血を継いで世界を救う旅に出る(仮)

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第2話:荒野の出会い

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トライザ村を後にして三日目の朝焼けが、荒涼とした大地を赤く染めていた。ゼイク・ヴァルディスは、母と妹ミナの手を引きながら、聖域大陸の北端に広がる荒野を歩いていた。焼け落ちた村の記憶が頭から離れず、足取りは重い。腕に巻いた布は角狼の爪痕から滲んだ血で汚れ、握り潰した拳は震えていた。「もう誰も死なせたくない…」その決意だけが彼を支えていたが、どこへ向かえばいいのか、何をすればいいのか、答えは見えない。

空は曇り、風が乾いた土を巻き上げて顔に叩きつける。食料は村から持ち出した僅かなパンと水だけ。ミナの小さな手がゼイクの服を掴み、「お兄ちゃん、お腹すいた…」と呟く。母は疲れ果てた顔で「もう少し頑張りましょう」と励ますが、その声にも力がなかった。ゼイクは立ち止まり、周囲を見回した。荒野は果てしなく続き、岩と枯れ草が点在するばかり。遠くに丘の影が見えるが、そこまで辿り着く体力は残っていない。「このままじゃ…みんな死ぬ…」喉がカラカラで、視界がぼやける。

その時、遠くから低く響く唸り声が耳に届いた。「また…?」ゼイクは振り返り、目を凝らす。丘の向こうから黒い影が現れる――角狼だ。しかも一頭じゃない、三頭の群れがこちらへ向かってくる。「母さん、ミナ、隠れて!」ゼイクは叫び、近くの岩陰に二人を押し込んだ。自分は焼けた村から持ち出した鍬を手に持つが、手が震えてまともに握れない。「俺に…何ができるんだ…?」恐怖が全身を包み、足がすくむ。

角狼が近づき、赤い目がゼイクを睨みつける。『ガウゥッ!』咆哮が荒野に響き、一頭が飛びかかってきた。ゼイクは鍬を振り上げるが、『シュッ!』と空を切るだけ。爪が肩をかすめ、『ズキッ!』と痛みが走る。「うっ!」よろめきながらも、母とミナを守るため立ち塞がる。だが、二頭目が横から襲いかかり、鍬を弾き飛ばした。『カラン!』鍬が地面に落ち、ゼイクは無防備に晒される。「やられる…!」絶望が胸を締め付けた瞬間、『ドガァン!』と重い衝撃音が響いた。

角狼が宙を舞い、『ギャウン!』と地面に叩きつけられる。ゼイクが呆然と見上げると、そこには大男が立っていた。ガルド・トレヴァン、25歳。赤茶の短髪に筋肉質な体躯、革鎧に土の紋様が刻まれ、巨大な盾とハンマーを手に持つ。ガルドは豪快に笑い、「お前、死に場所探してんのか?」とゼイクに声をかけた。角狼が再び襲いかかるが、ガルドは盾を構え、『ゴンッ!』と弾き返す。そのままハンマーを振り下ろし、『ドガッ!』と一頭の頭を砕いた。「弱っちい奴には荷が重いぜ、これ!」ガルドの声が荒野に響く。

ゼイクは立ち尽くし、ガルドの動きに目を奪われた。二頭目の角狼が横から飛びかかるが、ガルドは盾で受け止め、『ガキン!』と跳ね返し、ハンマーで『バキッ!』と胴体を叩き潰す。最後の角狼が唸りながら距離を取るが、ガルドは一歩踏み出し、「逃がさねえ!」と叫んでハンマーを投げつけた。『ゴォン!』鈍い音と共に角狼が倒れ、動かなくなる。戦いは一瞬で終わり、荒野に静寂が戻った。

ガルドは汗を拭い、ゼイクに近づいた。「お前、生きてるか?」その声に、ゼイクはようやく我に返る。「あ…ありがとう…」震える声で礼を言うが、力尽きて膝をついた。母とミナが岩陰から出てきて、ゼイクに駆け寄る。「お兄ちゃん!」ミナが泣きながら抱きつき、母が「無事で良かった…」と涙を流す。ガルドは三人を見下ろし、「家族か。いいねえ、守るもんがあるってのは」と呟いた。

ゼイクは地面に座り込み、息を整えた。肩の傷が疼き、血がシャツに滲む。ガルドは倒した角狼の角をハンマーで叩き割り、「これで少しは金になる」と笑う。ゼイクは呆然と見つめ、「あなた…誰なんですか?」と尋ねた。ガルドは盾を背中に担ぎ直し、「俺か? ガルド・トレヴァン。傭兵だよ。魔物を退治しながら旅してんだ」と答える。その豪快な声と態度に、ゼイクは圧倒される。

ガルドは近くの岩に腰掛け、水袋を取り出した。「お前ら、こんなとこで何してんだ? 見りゃわかるが、旅慣れてねえな」ゼイクは目を伏せ、「村が…焼かれたんです。魔物に…」と呟く。ミナが「父さんが…死んじゃって…」と泣き出し、母が妹を抱きしめる。ガルドは眉を上げ、「角狼か。最近、数が妙に増えてやがる。ザルゴスの影響って噂もあるがな」と言い、水をゼイクに差し出した。「飲め。死にそうな顔してんな」

ゼイクは水袋を受け取り、少し飲んでミナと母に渡す。「ザルゴス…?」聞き慣れない名前に首を傾げると、ガルドは「闇神だよ。昔、神々に封じられたって話だが、最近また動き出したらしい。魔物が増えたのもそのせいだな」と説明する。ゼイクは目を丸くし、「そんなことが…」と呟く。ガルドは立ち上がり、「ま、そんな話はどうでもいい。お前ら、このままじゃ死ぬぜ。どこ行くつもりだ?」と問う。

ゼイクは拳を握り、「村を…救いたいんです。もう誰も死なせたくない…」と力を込めて言う。だが、その声は震え、自信がないことが丸わかりだった。ガルドは一瞬黙り、『ガハハ!』と大笑いした。「救いたい? お前、そりゃいい心がけだ! だがな、そのガリガリの体じゃ無理だぜ!」ゼイクは顔を赤らめ、「でも…やらなきゃ…!」と反論する。ガルドは笑いを止め、真剣な目でゼイクを見た。「やる気はあるみたいだな。気に入ったぜ」

ガルドはハンマーを肩に担ぎ、「なら俺と来い。お前みたいな弱っちい奴には、俺みたいな強え味方が必要だろ?」と誘う。ゼイクは驚き、「え…?」と声を漏らす。母が「ゼイク、この人に頼った方が…」と囁き、ミナが「私、お兄ちゃんにいてほしいけど…」と涙目で言う。ゼイクは迷った。家族を置いて旅に出るなんて考えられなかったが、このままではまた無力な自分を繰り返すだけだ。「俺…強くなりたい。家族を守れるくらい…」決意が固まり、ガルドを見上げた。「お願いします、一緒に旅させてください!」

ガルドは『ガハッ!』と笑い、「いいぜ! お前、名前は?」。「ゼイク…ゼイク・ヴァルディスです」「ゼイクか。いい名前だ。俺と組めば、弱虫でも何とかなるさ!」ガルドが手を差し出し、ゼイクは震える手で握り返す。初めての仲間ができた瞬間だった。ガルドは母とミナに「近くに街がある。そこまで送ってやるよ」と言い、荷物をまとめ始めた。

荒野に風が吹き抜け、ゼイクはガルドの背中を見た。豪快で頼もしいその姿に、希望が灯る。「俺…変われるかな…」呟きながら、ミナの手を握る。母が「気をつけてね」と涙を拭い、四人で街を目指して歩き出した。夕陽が荒野を染め、新たな旅の第一歩が刻まれた。

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