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黄金の檻
シリルの屋敷――それは、王宮と見紛うほどに豪華な白亜の城だった。
連れてこられた私は、数十人の侍女たちによって、まるで宝石でも扱うように丁寧に湯浴みをさせられ、最高級のシルクの寝巻きを纏わされた。
「……信じられない」
ふかふかのベッドに座り、自分の手を見る。
ついさっきまで泥にまみれていたはずなのに、今は薔薇の香りがする。
けれど、心はまだ雨の中に置き去りにされたままだった。
エドワード様の「無能」という言葉が、胸に深く突き刺さっている。
そこへ、コンコンと控えめなノック音が響いた。
「フィオナ、入るよ」
現れたシリルは、騎士服を脱ぎ、ゆったりとした部屋着姿だった。
それでも隠しきれない黄金のオーラに、私は思わず身を縮める。
「シリル……様。あの、私なんかが、こんな場所に……」
「また『様』をつけたね。それから、二度と『私なんか』なんて言わないで」
シリルはベッドの端に腰掛け、私の手を取った。
熱を帯びた彼の指先が、私の手首を優しく、けれど逃げられないようにしっかりと掴む。
「……なんで、助けてくれたの? 私はエドワード様に捨てられた、何の価値もない女なのに」
私の問いに、シリルの碧眼がわずかに細められた。
次の瞬間、彼は私の腰を抱き寄せ、そのままベッドに押し倒すようにして顔を近づけた。
「ひゃっ……!」
「フィオナ。君は本当に何もわかっていないんだね」
シリルの美しい顔が、鼻先が触れ合うほどの距離にある。
彼の瞳の奥に、揺らめくような「暗い熱」が見えて、私は息を呑んだ。
「あの日……僕が王位継承争いに巻き込まれて、誰も信じられずに独りで泣いていた時。君だけが僕を見つけて、抱きしめてくれた」
「……え?」
「『シリルは、王子様じゃなくてもシリルだよ』……そう言って笑った君が、僕の絶望をすべて焼き尽くしてくれたんだ。あの時から、僕の心臓は君のものだ。……君を失うくらいなら、この国ごと焼き払った方がマシだよ」
シリルの声は甘く、そして狂気を感じるほどに重かった。
「エドワードが君を捨てた?……はは、感謝しなくちゃいけないね。おかげでようやく、君を誰の手も届かない場所に閉じ込める口実ができたんだから」
「閉じ込める……?」
「そう。もう二度と、あのゴミのような男にも、外の冷たい雨にも、君を触らせたりしない。君の指先一本、髪の毛一筋にいたるまで、僕だけの光で満たしてあげる」
シリルは私の首筋に顔を埋め、深く、深く呼吸をする。
まるで、私の存在を自分の中に刻み込むように。
「ねえ、フィオナ。……ずっと、僕の腕の中だけで生きて。君にはそれ以外の生き方なんて、僕が許さないから」
シリルの独占欲を孕んだ微笑みは、この世の何よりも華やかで、そして残酷なまでに美しかった。
連れてこられた私は、数十人の侍女たちによって、まるで宝石でも扱うように丁寧に湯浴みをさせられ、最高級のシルクの寝巻きを纏わされた。
「……信じられない」
ふかふかのベッドに座り、自分の手を見る。
ついさっきまで泥にまみれていたはずなのに、今は薔薇の香りがする。
けれど、心はまだ雨の中に置き去りにされたままだった。
エドワード様の「無能」という言葉が、胸に深く突き刺さっている。
そこへ、コンコンと控えめなノック音が響いた。
「フィオナ、入るよ」
現れたシリルは、騎士服を脱ぎ、ゆったりとした部屋着姿だった。
それでも隠しきれない黄金のオーラに、私は思わず身を縮める。
「シリル……様。あの、私なんかが、こんな場所に……」
「また『様』をつけたね。それから、二度と『私なんか』なんて言わないで」
シリルはベッドの端に腰掛け、私の手を取った。
熱を帯びた彼の指先が、私の手首を優しく、けれど逃げられないようにしっかりと掴む。
「……なんで、助けてくれたの? 私はエドワード様に捨てられた、何の価値もない女なのに」
私の問いに、シリルの碧眼がわずかに細められた。
次の瞬間、彼は私の腰を抱き寄せ、そのままベッドに押し倒すようにして顔を近づけた。
「ひゃっ……!」
「フィオナ。君は本当に何もわかっていないんだね」
シリルの美しい顔が、鼻先が触れ合うほどの距離にある。
彼の瞳の奥に、揺らめくような「暗い熱」が見えて、私は息を呑んだ。
「あの日……僕が王位継承争いに巻き込まれて、誰も信じられずに独りで泣いていた時。君だけが僕を見つけて、抱きしめてくれた」
「……え?」
「『シリルは、王子様じゃなくてもシリルだよ』……そう言って笑った君が、僕の絶望をすべて焼き尽くしてくれたんだ。あの時から、僕の心臓は君のものだ。……君を失うくらいなら、この国ごと焼き払った方がマシだよ」
シリルの声は甘く、そして狂気を感じるほどに重かった。
「エドワードが君を捨てた?……はは、感謝しなくちゃいけないね。おかげでようやく、君を誰の手も届かない場所に閉じ込める口実ができたんだから」
「閉じ込める……?」
「そう。もう二度と、あのゴミのような男にも、外の冷たい雨にも、君を触らせたりしない。君の指先一本、髪の毛一筋にいたるまで、僕だけの光で満たしてあげる」
シリルは私の首筋に顔を埋め、深く、深く呼吸をする。
まるで、私の存在を自分の中に刻み込むように。
「ねえ、フィオナ。……ずっと、僕の腕の中だけで生きて。君にはそれ以外の生き方なんて、僕が許さないから」
シリルの独占欲を孕んだ微笑みは、この世の何よりも華やかで、そして残酷なまでに美しかった。
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