【完結】「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ

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後編

星空の載冠

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​ バルガ帝国の降伏から数ヶ月。

 エリュシオン王国の王都は、これまでにない神聖な空気に包まれていた。

 今日執り行われるのは、この国、そして大陸全体に「浄化」をもたらした聖女を、王族の一員として、そしてエリュシオンの守護神として正式に認める『聖域戴冠式』であった。

​ 私は王宮の頂上にあるバルコニーに立っていた。

 纏っているのは、ドレスではなく、純白の絹に銀の刺繍を施した、聖女としての正装。背中まで流れる黒髪は、もはや「不吉」などではなく、平和と安らぎを象徴する最も尊い色彩として、民衆に称えられていた。

​「準備はいいかい、ミア。……君がこの冠を戴くことで、この国は本当の意味で『楽園』になる」

​ 隣に立つゼノ様が、私の手を取った。

 彼の赤い瞳は、かつての焦燥や執着を完全に捨て去り、いまやただ一点、私への純粋な愛と信頼だけを宿している。

​「ゼノ様。……私、この冠の重さに耐えられるでしょうか」

​「君が耐える必要はない。その冠を支えるのは、僕の槍であり、アポロの魔法であり……この国の人々の感謝なんだから」

​ ゼノ様はそう言って微笑むと、私の腰をそっと抱き寄せた。

​ 大きな鐘の音が響き渡り、私は王宮の壇上へと進み出た。

 眼下には、見渡す限りの人、人、人。

 かつて伯爵家の地下室で、誰にも名前を呼ばれず、泥の中に転がされていた少女は、いま、数万の人々の歓声の中に立っていた。

​「エリュシオンの聖女、ミア・エリュシオンに。この星々の祝福を」

​ 王が私の頭上に、黄金の王冠を授けた。

 その瞬間、私の内側から、かつてないほど巨大で温かな光が溢れ出した。
 
 光は王都を超え、国境を超え、バルガ帝国やかつてのサンクチュアリの土地までも飲み込んでいく。

 枯れていた泉が湧き出し、病に伏せていた人々が起き上がり、大地が豊かな緑を取り戻していく。

​「グルゥゥゥゥォォォォォン!!」

​ 上空では、黒龍が祝福の咆哮を上げていた。

 漆黒の鱗に赤く発光する魔力の脈動が、かつてないほど力強く、安定したリズムを刻んでいる。

​「ミア。……愛している。君と、君が救ったこの世界を、僕は一生をかけて守り抜こう」

​ ゼノ様が、皆の前で私の手をとり、恭しく頭を下げた。

 そこにあるのは、支配でも執着でもない。

 ただ一人の騎士が、自分だけの女神に捧げる、永遠の忠誠であった。
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