フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
192 / 1,496
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

193.弟を助けにいけと命令すること、弟を助けてくれと頼むこと。ハーマルは、どちらも出来ずに、胸が苦しい。

しおりを挟む
「私共は、フィリス様の捜索に使っていた者も含め、全員で、ただちにハーマル様の警護態勢を整えます。」
ハーマルは、使用人を見回し、専属の執事や護衛を見た。誰も異論がないらしい。
「私の警護は、有り難い。けど、フィリスの捜索を止めなくても。」

「戦力が、人手が足りません。」
彼はやんわり断った。

「戦力。人手。」
ハーマルは思わず繰り返す。

「ここが、王都ではなく、ガラン領でしたら、両立出来たでしょう。」

「2人分は難しいんだね?」

「この王都邸にいるお2方を守るだけでしたら、まだ。」

「1人はどこにいるか探すところから、か。」
ガラン領内で迷子を探すのとは、わけが違う。

「ハーマル様を守りながら、行方不明のフィリス様を捜索するほどの手は、今の王都邸にはございません。」

「でも、私は、ここに、安全なところにいるわけで。フィリスが捕まったなら、私は、フィリスを助けたい。」
彼の言わんとすることはわかる。でも、それは、弟を見捨てることでは?

「ハーマル様。フィリス様が、捕まったと認識されているならば、なおさら。まだ、ご無事なハーマル様を守ることの重要さを考えなくては。」
捕まった方は諦めて、まだ捕まっていない方を守る。
2人とも捕まるわけにはいかないから。
でも、弟を諦めきれる?
ハーマルには、弟を探す力も、戦って勝つ力も持っていない。
ハーマル付きの執事も護衛も、ハーマルを危険にさらすことはない。
ハーマルは、どんなに願ったところで、自力ではフィリスを助けられない。
誰かに頼んで動いて貰わないと、何もできない。
自身は安全圏に退避しておきながら、弟を助けに行ってくれ、と人に頼む。
どれほど自分勝手なことか。
だって、頼んでおきながら、彼らの命を守る力も人生を背負う何かも、ハーマルにはない。
「フィリスは、助けを待っている。きっと、ずっと。助けが来ないなんて。」
だから。
助けにいけ、とハーマルは命令出来ない。
助けてくれないか、と頼むことの無責任さを理解しているので、口にすることもできない。

ただ、弟の苦境が苦しくて、喘いでいる。

「決して、未来永劫、助けを出さないのではありません。ただ、私共がフィリス様を奪還するには手勢が足りません。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

灰の底で君に出会う

鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。 それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。 これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。

【柳原学園】いやいや、俺は『俺様生徒会長』だから

西園 斎
BL
家の都合で『俺様』を演じてる生徒会長が、生徒会やら風紀やら教師やらから好かれるお話。 演技俺様会長総受け(愛され)/後固定CP *10年以上前の作品を、やや加筆修正していきます

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...