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第3章 学生の数だけ、物語がある。物語には創り手と演じ手がいるわけで。主役と脇役が交差したりもするよね。
57.ナユカ・ジョンストン。母の療養に合わせて、父が2号さんと娘を屋敷に引っ張り込み、娘を養女にして、貴族に仲間入りさせた家の正妻の娘。
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時を少々遡り。
入寮も授業もまだ始まっていなかったころのこと。
ナユカ・ジョンストンは、一人、ジョンストン伯爵家の寝室で、ジョンストン家のスキャンダルに悩んでいた。
ナユカの母が体調を崩して療養をするタイミングで、父が2号さんとその娘を屋敷に呼び寄せ、娘をジョンストン家の養女にしたのだ。
父曰く、養女は、父の実の娘で、唯一の父の娘だそう。
予想はついている。
ナユカにとっての父は、金を無心する度に屋敷にきて、金を貰えば、そそくさと屋敷から出ていく。
ナユカは、その後ろ姿しか父に関する記憶がない。
家のことは、母が全て切り盛りしてきた。
父が帰ってくるのは、金の無心のタイミングのみ。
父は、市井で、2号さんと娘と3人で、誰一人働きもせず、仲良く暮らしてきた。
今日初めて。
ジョンストン伯爵になった父、第2夫人、養女ハーメリーとナユカの4人で顔を合わせをした。
食事前の顔合わせは、決して和やかではなかった。
第2夫人からは憎々しげに睨まれた。
養女には、父に愛されない娘だと馬鹿にされた。
父は、第2夫人と養女の側から一歩も動かないで、ナユカを3人の輪の中に入れようとしなかった。
顔合わせをしてはじめて。
正妻の娘である自分と2号さんの娘が同学年だとナユカは知った。
2号さんの娘は、勉強が出来たようで、平民でありながら、ナユカと同じニンデリー王立学園を受験し、難なく入学を決めていた。
平民クラスは、貴族クラスより試験が難しいとされている。
平民として受験し、合格を勝ち取った義姉妹の頭の出来は悪くない、ということになる。
父も2号さんも、その娘も、一生自分に関わらないで欲しかったとナユカは思う。
愛されることを期待する度に、素通りされて傷ついてきた。
父が、家によりつかず、遊び暮らしたせいで、ナユカが子どもらしくあれた時間は消えた。
ナユカの母が1人で切り盛りするために、ナユカは母に構われることなく育ち、ナユカの母はナユカを構うことがないまま、過労のために常に不調。
感情をむき出しに出来る相手が、ナユカにはいない。
唯一、同居してきた母とでさえ、仕事の関わり以外の関わりを知らない。
ナユカは、母と過ごしたくて、苦労している母を助けたくて、早くから家の仕事を覚えた。
ナユカが一人前に家の仕事をこなすのは、母といるため。
仕事に関係あることなら、母は時間を作ってくれた。
ナユカは、貴族の子ども時代に必須の社交らしい社交をしないまま、王立学園に入学することになった。
ナユカの母は、毎日の仕事に追われて、ナユカの生活を気にしていなかった。
ナユカは、いっぱしの労働力だったから、母の中で、子どもの枠からはみ出ていたのかもしれない。
ナユカには、仕事関係の大人しか、知り合いがいない。
王立学園の寮に入れば、同い年の話し相手が出来ると期待している。
そして。
父と母とハーメリーだけが家族として生活し、ハーメリーと同い年の12歳のナユカは、3人を尻目に、1人で食事をし、食事以外は仕事をしている。
それが、最近のジョンストン伯爵家だ。
お母様がいてくださったら、まだ、と思わない時はない。
12歳のナユカは、どんなことを願おうとも、目の前に積まれる仕事を片付ける手を休めることが出来ない。
物心ついたときから、仕事をしてきたナユカは、仕事以外の過ごし方を知らない。
期待を胸に、入寮してみたが。
ニンデリー王立学園の入学前にジョンストン家で起きたスキャンダル。
ニンデリー王国の貴族で、知らぬ者はいなかった。
火中の栗を拾うことを恐れて、ナユカに声をかける者はいない。
ナユカの家の家庭内のいざこざに巻き込まれるうまみがないから、誰も近づかない。
ナユカは、伯爵家の後継ぎなのに。
ナユカの周りだけ、いつもガラガラ。
陰口はたたかれないが、人に避けられる。
一人ぼっちで、幸せな3人家族を見続けながら、屋敷で仕事をして過ごすのが、あまりにも惨めで。
仕事を持ち込んでまで寮に入ったのに。
ナユカは、寮の部屋にこもり、一人、仕事をして過ごす。
授業が始まれば、何かが変わらないか、と期待しながら。
入寮も授業もまだ始まっていなかったころのこと。
ナユカ・ジョンストンは、一人、ジョンストン伯爵家の寝室で、ジョンストン家のスキャンダルに悩んでいた。
ナユカの母が体調を崩して療養をするタイミングで、父が2号さんとその娘を屋敷に呼び寄せ、娘をジョンストン家の養女にしたのだ。
父曰く、養女は、父の実の娘で、唯一の父の娘だそう。
予想はついている。
ナユカにとっての父は、金を無心する度に屋敷にきて、金を貰えば、そそくさと屋敷から出ていく。
ナユカは、その後ろ姿しか父に関する記憶がない。
家のことは、母が全て切り盛りしてきた。
父が帰ってくるのは、金の無心のタイミングのみ。
父は、市井で、2号さんと娘と3人で、誰一人働きもせず、仲良く暮らしてきた。
今日初めて。
ジョンストン伯爵になった父、第2夫人、養女ハーメリーとナユカの4人で顔を合わせをした。
食事前の顔合わせは、決して和やかではなかった。
第2夫人からは憎々しげに睨まれた。
養女には、父に愛されない娘だと馬鹿にされた。
父は、第2夫人と養女の側から一歩も動かないで、ナユカを3人の輪の中に入れようとしなかった。
顔合わせをしてはじめて。
正妻の娘である自分と2号さんの娘が同学年だとナユカは知った。
2号さんの娘は、勉強が出来たようで、平民でありながら、ナユカと同じニンデリー王立学園を受験し、難なく入学を決めていた。
平民クラスは、貴族クラスより試験が難しいとされている。
平民として受験し、合格を勝ち取った義姉妹の頭の出来は悪くない、ということになる。
父も2号さんも、その娘も、一生自分に関わらないで欲しかったとナユカは思う。
愛されることを期待する度に、素通りされて傷ついてきた。
父が、家によりつかず、遊び暮らしたせいで、ナユカが子どもらしくあれた時間は消えた。
ナユカの母が1人で切り盛りするために、ナユカは母に構われることなく育ち、ナユカの母はナユカを構うことがないまま、過労のために常に不調。
感情をむき出しに出来る相手が、ナユカにはいない。
唯一、同居してきた母とでさえ、仕事の関わり以外の関わりを知らない。
ナユカは、母と過ごしたくて、苦労している母を助けたくて、早くから家の仕事を覚えた。
ナユカが一人前に家の仕事をこなすのは、母といるため。
仕事に関係あることなら、母は時間を作ってくれた。
ナユカは、貴族の子ども時代に必須の社交らしい社交をしないまま、王立学園に入学することになった。
ナユカの母は、毎日の仕事に追われて、ナユカの生活を気にしていなかった。
ナユカは、いっぱしの労働力だったから、母の中で、子どもの枠からはみ出ていたのかもしれない。
ナユカには、仕事関係の大人しか、知り合いがいない。
王立学園の寮に入れば、同い年の話し相手が出来ると期待している。
そして。
父と母とハーメリーだけが家族として生活し、ハーメリーと同い年の12歳のナユカは、3人を尻目に、1人で食事をし、食事以外は仕事をしている。
それが、最近のジョンストン伯爵家だ。
お母様がいてくださったら、まだ、と思わない時はない。
12歳のナユカは、どんなことを願おうとも、目の前に積まれる仕事を片付ける手を休めることが出来ない。
物心ついたときから、仕事をしてきたナユカは、仕事以外の過ごし方を知らない。
期待を胸に、入寮してみたが。
ニンデリー王立学園の入学前にジョンストン家で起きたスキャンダル。
ニンデリー王国の貴族で、知らぬ者はいなかった。
火中の栗を拾うことを恐れて、ナユカに声をかける者はいない。
ナユカの家の家庭内のいざこざに巻き込まれるうまみがないから、誰も近づかない。
ナユカは、伯爵家の後継ぎなのに。
ナユカの周りだけ、いつもガラガラ。
陰口はたたかれないが、人に避けられる。
一人ぼっちで、幸せな3人家族を見続けながら、屋敷で仕事をして過ごすのが、あまりにも惨めで。
仕事を持ち込んでまで寮に入ったのに。
ナユカは、寮の部屋にこもり、一人、仕事をして過ごす。
授業が始まれば、何かが変わらないか、と期待しながら。
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