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第5章 丸付けは、全部終わってからだよ?後手に回ったからって、それが何?

114.転生貴族令嬢レベッカ・ショア。いつまでも、絶対的な味方でいる。

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結果。
「貴女とは、お話したくないわ。」
「一緒にいた、なんて、噂が立ったらどう責任を取る気かしら。」
「声をかけるのは、これっきりにしてくださる。」
嫌悪を一切隠さず、言葉にして、私に伝えてきた3人。

ストレートな拒絶を銛のように突き立てられて、私の思考と感情は、一時停止してしまった。

『あのう。なんで、そこまで言うの?私、貴女達に何かした?』
咄嗟に、そういう返しが出来ていたら。

私は、突然、言われっぱなしになって、面食らい、3人が、私に向かって、順番に拒絶の言葉を吐き捨てるのを黙って聞いていた。

3人が吐き捨てた言葉。

3人と同じ様に、私も拾わずに捨てることが出来ていれば。

私は、露わにされた嫌悪の感情と共に、拒絶の言葉を受け取ってしまった。

捨てたくても、べったりと皮膚にくっついて、皮膚から体内に侵食していく。

3人に対し、何も反応出来ないまま、見送るとき。

真正面から、拒絶と嫌悪をぶつけられて。
多分、防御反応なのだろうと思うけど。
私は、3人の後ろ姿を見ながら、笑ってしまった。

ははは、と笑う私。
3人は、振り返りもせず、
「頭がおかしい。」
「気味が悪い。」
「気持ち悪い。」
と話しながら、去っていく。

私の内面は、この時点で、ボロボロになっていた。

セメントが固まる前に、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、スコップを突き刺したままにされ、でこぼこ、ザラザラ、トゲトゲした状態で、冷えて固まってしまった。

3人の姿を見送ったら、笑いが止まらないのに、泣けてきた。

私は、その場で、涙を流しながら笑い続けた。

前世の意識は、
『切り替えて、次にいこう。』
とは言わなかった。

『あいつら、むかつく。むかつく。むかつくんだけど。なんなの?変な食べ物食べたの?ろくに話したことがないのに、悪口言い過ぎじゃない?!』
前世の意識は、七転八倒する勢いで、怒っている。

前世の意識は、
私に言い返せ、と発破をかけたり、
もっとうまくやれたでしょう?と詰ったりしない。

今日も含めて、前世の意識は、私がどんなヘマをしても、私を責めたことがない。
『どんなことが、起きたって、自分だけは、自分の味方。これ、鉄則。』
前世の意識は、その方針を曲げたことはない。

今日も、ずっと。

私自身が、予定通りに進まない原因だと、私も前世の意識も承知している。

でも。
最初にうまくやっていれば、こんな苦労はしなくて済んだ、とは決して言葉にしてこない。

私が、予定通りに動けるように、と知恵を絞り、助言を与えることに徹してくれている。

3人組の姿が見えなくなると、私の笑いはおさまった。

私は涙が出るに任せて、泣き続けた。


泣ききったのでは?というくらい泣いたら、涙が出なくなった。

『清潔な水をハンカチに含んだら、かたく絞って、目に当ててごらん。目の腫れがマシになるから。目が腫れ過ぎて、痛いのは辛い。』
前世の意識の助言に従い、濡れたハンカチを目に当てる。
「気持ちいい。」

『良かった。もう、今日は、止めにする?』
前世の意識が、私の意思を確認してくる。

止めないで続けるのが、最良の選択だと分かっている。
私も前世の意識も。
それでも、私の意思を優先するのが、前世の意識。

もし、私が、今日は、止めた、と言ったら、私には何も言わずに、明日以降の作戦を考えてくれるだろう。

私であって、私ではない前世の意識。

私の中にあって、私のためだけに存在している。

前世の意識があることで、私が優越感を抱いていた時間は、長かったと思う。

何のチートもない、と気づくまでは、なんでも出来る気になっていた。

『子ども特有の万能感は、現実にぶつかってからが勝負。ぶつかって、何かを掴めたら、それは一生の財産になる。』
前世の意識は、ときどき、そんな風に話していた。

ひょっとして、今、私は、ぶつかっている真っ最中?

ぶつかって、何かを掴みたいと藻掻いているから、苦しいのかな。

そう考えるうちに、少しずつ、昂ぶっていた感情が落ち着いてくる。

『落ち着いたね?』
と前世の意識。
「うん。」

『どうする?帰る?行く?』

前世の意識は、帰る?を先に聞いてくれた。

だから。
「行く。」
私は、笑った。

心の底から、笑えた。

私が、私を応援する。

とても自然なことに思える。

「朝から頑張ってきたのに、何の成果もあげずに帰りたくない。」
私は、顔をあげた。
「今日中に、1人だけでもいいから、話を聞く。」

『合点承知の助。』
と前世の意識。

前世の意識は、いつまで私の中に、在り続けることが出来るのかな。

前世の意識には、居なくなってほしくないなあ。

私は、気合いを入れる。

「今日中に、最低でも、1人!」
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