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第5章 丸付けは、全部終わってからだよ?後手に回ったからって、それが何?
142.一度は、諦めた。鼻ぐすりをかがされて、可能性をにおわされたら、もう二度と、諦めることはできなくなる。
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「バネッサの侍女は、裏表がないよね。」
とキャスリーヌが感心している。
あけっぴろげすぎないか?と。
まあ、アレックスに関しては、今さらだが。
「兄に傾倒していくタイプの真逆が、トゥーミラよ。」
とバネッサ。
「最後まで信用できるわね。」
とマーゴット。
「そう言われると、嬉しいから、もっと喋ります。」
とトゥーミラ。
「アレックス様に引っかかるか、ひっかからないか、は、仕事に対する考え方だと思います。」
とトゥーミラは、前置きした。
「お金目的で、伯爵家に就職していて、がっつり稼ぎたい、お金大好き、タイプは、ひっかかりません。」
トゥーミラは、正直だ。
「貢がれたいタイプも、ひっかかりません。」
「自由に動かせる金額が決まっているから。」
とバネッサ。
「甘いなあ。バネッサ様。
1人あたりの予算は、決まっていても、伯爵家の次男ですよ?伯爵家で働く平民よりは、ずっといいですって。」
とトゥーミラ。
「アレックス様って、自分のためには、予算いっぱい使うけれど、誰かのためにお金を使いません。
ご自身がお金を使った相手は、絶対に忘れないんです。
あのとき、お前に買ってやったじゃないか?というやつを、いつでも持ち出してきます。」
とトゥーミラ。
「アレックス様をちやほやしても、なんにも買ってもらえませんからね。おだてても、おだて損になる男に時間は使いません。彼女達は。」
とトゥーミラ。
うんうん、と頷くキャスリーヌ。
領地で商売している関係で、釣った魚に餌はやらないタイプと、餌が貰えないなら、と逃げていく魚を目撃したのだろう。
「アレックス様を胡散臭いと思うタイプは、近寄りません。仕事先の家の次男に、面倒事に巻き込まれたら、逃げられないじゃないですか。私は、このタイプです。」
と歯に衣着せぬトゥーミラ。
「後。アレックス様の昔からの素行を知っている人間は、敬遠します。尊敬できない人間とは、仕事以外の関わりは持ちたくありません。」
トゥーミラは、少し、言い淀んだが、言い切った。
「アレックスに引っかかるタイプが絞れてきたね。」
とキャスリーヌ。
「アレックスが、ニンデリー王立学園に入学した後に、オッドア伯爵領にきて、オッドア伯爵領の事情に明るくない人達。」
とキャスリーヌ。
「ピンポン、大正解。」
とトゥーミラ。
「オッドア伯爵領は、領主一族が、平民寄りなんですよ。小競り合いから、いつ戦争になるか分からない土地だから、貴族らしさは、社交でしか出しません。いつ戦火にまかれても動けるように、生活全般が、質実剛健なんです。」
とトゥーミラ。
「よく勉強しているわね。」
とマーゴット。
「私は、領地なしの男爵家の娘で、条件につられて、就職したクチなんで。」
とトゥーミラ。
「就職先の情報は必要よ。」
とマーゴット。
「ありがとうございます。」
とトゥーミラ。
「前情報なしに、オッドア伯爵家が、貴族だから、いい思いできるかも、と期待して就職すると、泥臭い仕事の多さに辟易するんですよ。こんなの、貴族の屋敷に就職した意味がないって。」
「そういうタイプは、仕事は、仕事、生活の糧と、自分に言い聞かせて、働いているんですよ。」
とトゥーミラ。
「いくら自分で自分に言い聞かせても。
無くならないんですよね。夢も希望も。
今の仕事をしていれば。生活できる。
我慢しようって、我慢しているだけで。」
とトゥーミラ。
「割り切るんじゃなくて、我慢なんです。だから、ふいに、アレックス様から、諦めていた夢や希望の鼻ぐすりをかがされると、判断が鈍るんですよ。」
トゥーミラは、何人もの同僚がダメになっていくのを見てきた。
「蓋をした思いを取り出したら、また蓋をすることはできなくなります。一回は、諦められた。でも、可能性を匂わされたら、諦めたくなくなります。」
地獄の釜へ、自ら飛び込んでいく同僚達。
制止の声が届くことはない。
「引っかかると、ずぶずぶとのめり込んでいくんです。」
とトゥーミラ。
「アレックス様は、夢を見させて、気を惹くんですよ。叶えてやる気なんか、さらさらないのに。」
トゥーミラの中で、アレックスは極悪人だ。
「夢を見てしまったら。アレックス様が、夢を叶えてくれないのは、自分がいたらないから、とか、ライバルに負けているから、と理由を探しだします。」
無理やり理由を作ってでも、自分を納得さないと、耐えられなくなる。
極楽の花園に飛び込んだと思っていたら、花園ではなく、熱湯がたぎる釜の中にいるのだから。
「献身的な態度が加速していく人もいれば、途中で引き返す人もいます。」
「アレックス様の周囲に集まったのは、引き返さなかった人達です。」
とトゥーミラ。
とキャスリーヌが感心している。
あけっぴろげすぎないか?と。
まあ、アレックスに関しては、今さらだが。
「兄に傾倒していくタイプの真逆が、トゥーミラよ。」
とバネッサ。
「最後まで信用できるわね。」
とマーゴット。
「そう言われると、嬉しいから、もっと喋ります。」
とトゥーミラ。
「アレックス様に引っかかるか、ひっかからないか、は、仕事に対する考え方だと思います。」
とトゥーミラは、前置きした。
「お金目的で、伯爵家に就職していて、がっつり稼ぎたい、お金大好き、タイプは、ひっかかりません。」
トゥーミラは、正直だ。
「貢がれたいタイプも、ひっかかりません。」
「自由に動かせる金額が決まっているから。」
とバネッサ。
「甘いなあ。バネッサ様。
1人あたりの予算は、決まっていても、伯爵家の次男ですよ?伯爵家で働く平民よりは、ずっといいですって。」
とトゥーミラ。
「アレックス様って、自分のためには、予算いっぱい使うけれど、誰かのためにお金を使いません。
ご自身がお金を使った相手は、絶対に忘れないんです。
あのとき、お前に買ってやったじゃないか?というやつを、いつでも持ち出してきます。」
とトゥーミラ。
「アレックス様をちやほやしても、なんにも買ってもらえませんからね。おだてても、おだて損になる男に時間は使いません。彼女達は。」
とトゥーミラ。
うんうん、と頷くキャスリーヌ。
領地で商売している関係で、釣った魚に餌はやらないタイプと、餌が貰えないなら、と逃げていく魚を目撃したのだろう。
「アレックス様を胡散臭いと思うタイプは、近寄りません。仕事先の家の次男に、面倒事に巻き込まれたら、逃げられないじゃないですか。私は、このタイプです。」
と歯に衣着せぬトゥーミラ。
「後。アレックス様の昔からの素行を知っている人間は、敬遠します。尊敬できない人間とは、仕事以外の関わりは持ちたくありません。」
トゥーミラは、少し、言い淀んだが、言い切った。
「アレックスに引っかかるタイプが絞れてきたね。」
とキャスリーヌ。
「アレックスが、ニンデリー王立学園に入学した後に、オッドア伯爵領にきて、オッドア伯爵領の事情に明るくない人達。」
とキャスリーヌ。
「ピンポン、大正解。」
とトゥーミラ。
「オッドア伯爵領は、領主一族が、平民寄りなんですよ。小競り合いから、いつ戦争になるか分からない土地だから、貴族らしさは、社交でしか出しません。いつ戦火にまかれても動けるように、生活全般が、質実剛健なんです。」
とトゥーミラ。
「よく勉強しているわね。」
とマーゴット。
「私は、領地なしの男爵家の娘で、条件につられて、就職したクチなんで。」
とトゥーミラ。
「就職先の情報は必要よ。」
とマーゴット。
「ありがとうございます。」
とトゥーミラ。
「前情報なしに、オッドア伯爵家が、貴族だから、いい思いできるかも、と期待して就職すると、泥臭い仕事の多さに辟易するんですよ。こんなの、貴族の屋敷に就職した意味がないって。」
「そういうタイプは、仕事は、仕事、生活の糧と、自分に言い聞かせて、働いているんですよ。」
とトゥーミラ。
「いくら自分で自分に言い聞かせても。
無くならないんですよね。夢も希望も。
今の仕事をしていれば。生活できる。
我慢しようって、我慢しているだけで。」
とトゥーミラ。
「割り切るんじゃなくて、我慢なんです。だから、ふいに、アレックス様から、諦めていた夢や希望の鼻ぐすりをかがされると、判断が鈍るんですよ。」
トゥーミラは、何人もの同僚がダメになっていくのを見てきた。
「蓋をした思いを取り出したら、また蓋をすることはできなくなります。一回は、諦められた。でも、可能性を匂わされたら、諦めたくなくなります。」
地獄の釜へ、自ら飛び込んでいく同僚達。
制止の声が届くことはない。
「引っかかると、ずぶずぶとのめり込んでいくんです。」
とトゥーミラ。
「アレックス様は、夢を見させて、気を惹くんですよ。叶えてやる気なんか、さらさらないのに。」
トゥーミラの中で、アレックスは極悪人だ。
「夢を見てしまったら。アレックス様が、夢を叶えてくれないのは、自分がいたらないから、とか、ライバルに負けているから、と理由を探しだします。」
無理やり理由を作ってでも、自分を納得さないと、耐えられなくなる。
極楽の花園に飛び込んだと思っていたら、花園ではなく、熱湯がたぎる釜の中にいるのだから。
「献身的な態度が加速していく人もいれば、途中で引き返す人もいます。」
「アレックス様の周囲に集まったのは、引き返さなかった人達です。」
とトゥーミラ。
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