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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。
358.マーゴット。『人は霞を食べては生きていけない。』
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キリルは、使用人を帯同しない貴族の男子寮に覚えがある商人を集めたが、現在、出入りしている商人はいないという。
かつて、使用人を帯同しない貴族の男子寮の仕事をしたことがあるという商人が1人だけ、部屋の中にいた。
「契約を切られた時期に何か?」
とマーゴット。
「王太子殿下が在学中でしたから、その余波かと。」
とキリル。
シグル・ドレマンが、王太子の不興をかったから、ドレマンの民は、王立学園の仕事を切られた、と解釈していた、ということか。
主人が、王太子の不興をかったせいだと、部下が考えていたなら、原因の追求はしないか。
マーゴットは、念のため、直接、商人に尋ねた。
「新しく取引先に抜擢された商人について、知っていることを話しなさい。
長年の固定客をとられて、唯々諾々と引き上げてはいまい。」
とマーゴット。
商人は、キリルを見た。
キリルが頷いたので、商人は、話すことに決めた。
「けんもほろろに追い出されて、後釜がどこか、などは一切情報がもらえませんでした。」
と商人。
「自分で調べなかった?」
とマーゴット。
「いきなり打ち切られまして、当時は、調べるどころでは。規模を縮小して、なんとか。」
と商人。
「情報は、ない。今も?」
とマーゴット。
「はい。」
と商人。
「男子寮の構造や、仕掛けについての、担当の覚え書きや引き継ぎ資料は?」
とマーゴット。
「縮小した際に、手放しまして、どれも手元にありません。」
と商人。
「手放し先は?」
とマーゴット。
「そちらにも、既にないと。」
と商人。
「キリル。この商人は、今日から使わない。」
とマーゴット。
「横暴です。」
と商人は眉を釣り上げた。
「商機が分からない商人と取引する貴族がどこにいる?」
とマーゴット。
「商機?話を聞きたいというから、仕事を中断してきたのですよ。バカバカしい。」
と商人。
「貴族の御用聞きの意味を理解できないのは、商人として致命的。
手放した資料は、打ち切りの代償か?」
とマーゴット。
「代償ですか?」
と話についていけなかったキリルが繰り返す。
「シグル・ドレマンだけが、王太子の不興をかったわけではない。
シグル・ドレマンが目立っているから、目立たないこともある。」
とマーゴット。
「それは。確認しませんでした。」
と当時を思い出し、言葉を失うキリル。
「商人と仲良くしたい構成員をつけて、派手に送り届けさせなさい。
この件の謝礼は必要ない。商人は、別口から貰うアテがある。」
とマーゴット。
「なんですか、それは。」
とキリルは、商人を見るが、商人は涼しい顔。
「わたしは、貴族の時間を無駄にした迷惑料を、商人から徴収する。」
とマーゴット。
「何を勝手な!」
と商人は憤慨した。
「キリル。ドレマンの民の幻想は解けた?
ドレマンの民だけの世界で完結しているならともかく。
ドレマンの民というくくりは既になく、外の世界に生かされていると知っている者には、ドレマン至上主義は通用しない。
ドレマンの民は、過去の遺物。
思い出だけで、生活はできない。
人は、霞を食べて生きているわけではない。
商人が、ドレマンの民の自負を捨てても、キリルになあなあにしていた理由。キリルは分かる?」
とマーゴット。
かつて、使用人を帯同しない貴族の男子寮の仕事をしたことがあるという商人が1人だけ、部屋の中にいた。
「契約を切られた時期に何か?」
とマーゴット。
「王太子殿下が在学中でしたから、その余波かと。」
とキリル。
シグル・ドレマンが、王太子の不興をかったから、ドレマンの民は、王立学園の仕事を切られた、と解釈していた、ということか。
主人が、王太子の不興をかったせいだと、部下が考えていたなら、原因の追求はしないか。
マーゴットは、念のため、直接、商人に尋ねた。
「新しく取引先に抜擢された商人について、知っていることを話しなさい。
長年の固定客をとられて、唯々諾々と引き上げてはいまい。」
とマーゴット。
商人は、キリルを見た。
キリルが頷いたので、商人は、話すことに決めた。
「けんもほろろに追い出されて、後釜がどこか、などは一切情報がもらえませんでした。」
と商人。
「自分で調べなかった?」
とマーゴット。
「いきなり打ち切られまして、当時は、調べるどころでは。規模を縮小して、なんとか。」
と商人。
「情報は、ない。今も?」
とマーゴット。
「はい。」
と商人。
「男子寮の構造や、仕掛けについての、担当の覚え書きや引き継ぎ資料は?」
とマーゴット。
「縮小した際に、手放しまして、どれも手元にありません。」
と商人。
「手放し先は?」
とマーゴット。
「そちらにも、既にないと。」
と商人。
「キリル。この商人は、今日から使わない。」
とマーゴット。
「横暴です。」
と商人は眉を釣り上げた。
「商機が分からない商人と取引する貴族がどこにいる?」
とマーゴット。
「商機?話を聞きたいというから、仕事を中断してきたのですよ。バカバカしい。」
と商人。
「貴族の御用聞きの意味を理解できないのは、商人として致命的。
手放した資料は、打ち切りの代償か?」
とマーゴット。
「代償ですか?」
と話についていけなかったキリルが繰り返す。
「シグル・ドレマンだけが、王太子の不興をかったわけではない。
シグル・ドレマンが目立っているから、目立たないこともある。」
とマーゴット。
「それは。確認しませんでした。」
と当時を思い出し、言葉を失うキリル。
「商人と仲良くしたい構成員をつけて、派手に送り届けさせなさい。
この件の謝礼は必要ない。商人は、別口から貰うアテがある。」
とマーゴット。
「なんですか、それは。」
とキリルは、商人を見るが、商人は涼しい顔。
「わたしは、貴族の時間を無駄にした迷惑料を、商人から徴収する。」
とマーゴット。
「何を勝手な!」
と商人は憤慨した。
「キリル。ドレマンの民の幻想は解けた?
ドレマンの民だけの世界で完結しているならともかく。
ドレマンの民というくくりは既になく、外の世界に生かされていると知っている者には、ドレマン至上主義は通用しない。
ドレマンの民は、過去の遺物。
思い出だけで、生活はできない。
人は、霞を食べて生きているわけではない。
商人が、ドレマンの民の自負を捨てても、キリルになあなあにしていた理由。キリルは分かる?」
とマーゴット。
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