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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

495.レベッカ・ショア。貴族は逃げない。私は逃げなかった。バネッサが、私の頑張りを認めてくれた。私は、私の在り方を固めていく。

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レベッカ・ショアは、厄介事が一つ減って、一安心。

男子学生を寝かせた台をもう一度綺麗に掃除。

男子学生の一番最初の人格に切りつけられた箇所は、手持ちの救急セットで応急処置。

後は、マーゴット、キャスリーヌ、バネッサの帰りを待つだけ。

おっ?

使用人を帯同しない貴族の男子寮の切り抜かれていた壁が、元に戻っていくではないか。

どうやら、バネッサが呼ばれた件での話し合いも済んで、撤収作業に入ったのだろう。

男子学生の前世と前前世の件は、マーゴット、キャスリーヌ、バネッサに後で報告しないと。

男子学生は、校舎内で、バネッサに会ったら、天女本人と分かるかな?

マーゴットとキャスリーヌ、バネッサが戻ってきた。

マーゴットの後ろを歩いている大人は、シグル・ドレマン。

バネッサの後ろには、誰もいない。

けれど、キャスリーヌの後ろには、明らかに大人の男性がいる。

まさか、ニンデリー王国の王太子殿下だったりはしないよね?

レベッカ・ショアは、礼儀作法を頭の中で復習した。

レベッカ・ショアに近づいてきた5人のうち、レベッカ・ショアに話しかけたのは、キャスリーヌ。

「ただいま。片付け終わっているね、ありがとう。今から撤収するよ。
怪我しているけど、移動はできるね?
報告は移動先で聞くよ。」
とキャスリーヌ。

「できるよ。後ろに人が増えているけれど?」
とレベッカ・ショア。

「スカウトしてきたよ。」
とキャスリーヌ。

キャスリーヌがスカウトしたなら、私の将来の同僚になる?

大人だから、私の先輩になるかもしれない。

配属された職場によるから、まだ分からないよね。

レベッカ・ショアは、キャスリーヌに紹介されるのを待つことにした。

「撤収しながら、一度、学園から出て打ち合わせをして、休んでから寮に戻る。」
とマーゴット。

よく見ると、シグル・ドレマンではない男性は、誰かをおんぶしている。

どこかで、見た背格好だけど、どこで見たんだろう?とレベッカ・ショアは、思った。

レベッカ・ショアの視線に気づいたバネッサは、レベッカ・ショアにこそっと耳打ち。

「時々、観察していた、耳が欠けている男子学生よ。」
とバネッサ。

男子学生は、スカウトしたわけじゃないようだ。

預かってきたのか、人質か分からないけど、お客様なんだろう。

レベッカ・ショアは、分かったと答えた。

レベッカ・ショアの顔や手の甲に応急処置がしてあるのを見て、バネッサは、レベッカ・ショアをたたえた。

「1人になってから、頑張ったのね?
ここで待っていたということは、1人で戦って、負けなかったのね。
偉かったわね。」
とバネッサ。

「ありがとう。
貴族は、逃げない。
私は、貴族だから逃げなかったよ。」
とレベッカ・ショアは胸を張った。

「レベッカは、立派な淑女ね。」
とバネッサは、微笑んだ。
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