正義が勝たないデスゲームから脱出しよう。【R15】

かざみはら まなか

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421.支援団体が、北白川サナを絡め取ろうとした初手。

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「家族でコミュニケーションをとるのに、仕事の話題を俺からふったりはしていない。」
と北白川サナの父。

北白川サナの父の声の調子は、まさか、そんなことしないよ、するわけないよね、というかのように軽い。

一方、北白川サナの母の声は、硬質だ。

「お義父さん、いい加減にしてください。私達を傷つけるために嘘までつくんですか?

お義父さんには何が面白いか分からなかっただけで、サナは両親に話さずにいられないほど夢中になっていました。」
と北白川サナの母。

「お前達が、両親と家庭で話す話題は専門分野に限ると、小さいうちからサナに学習させたからだろうが。

両親や北白川くんと話すときに、専門分野以外の話題を話した経験がサナにはなかったんだ。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父は、終始腹立たしそうにしている。

北白川サナが受けていた教育と同じような教育を北白川秀蔵氏から受けていた母親の才能は、北白川秀蔵氏を超えなかった。

父を超えなかった娘とその娘婿の子どもの北白川サナは、誰の期待を背負っていたか?

「サナが調べてきた資料を受け取っても、机に置いたままにし、サナが手に取るように促しても開きもしなかったのは誰だ?

サナが説明しようとすると、後にしてと言われ続けたとサナは話していた。

お前達、身に覚えはないのか?」
と北白川サナの父方の祖父。

スラスラと出てくる言葉から、北白川サナの父方の祖父が、孫娘から話を聞き続けていたことがよく分かる。

「学校の進路相談の話でしたら、まず家族で話し合ってくださいと言われていました。」
と北白川サナの母。

「学校に進路相談に行って、まず家族で話し合ってくださいと言われたお前達がしたことが、サナの話を聞くことではなかったというのは、サナから聞いている。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父の皮肉に一番に反応したのは、母方の祖母。

「サナちゃんは、お話を聞いてほしかったですね。」
と北白川サナの母方の祖母。

北白川サナの母方の祖母は、顔を両手で覆った。

「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは、サナの話を聞いてくれる。

サナの話に反応してくれる。

サナのしたかった会話をしてくれる。

サナの相談にのって、考えてくれる。

こんな台詞を高校生の孫娘に言われる日がくるとは思わなかった。

俺も妻も。」
と北白川サナの父方の祖父。

「お祖父さんは、サナさんに実家から出るようにとは言わなかったのですか?」

両親の不理解についての理解者が北白川サナにはいた。

北白川サナは、父方の祖父母といれば良かったのではないか?

「サナに伝えると。

サナは、実家を出るのをためらった。

サナが話ししたいことを話し、したいことをするために、どうするのがいいかを話し合い、サナは俺と妻の住む家へ通うことを決めたんだ。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの行動を阻んだのは、家族というものに対する情か?

はたまた、家族への期待か。

「お義父さんお義母さんがうちに来てサナと過ごす方が、サナも喜んだのではないですか?

もっと早くに事情をお話ししていただけたら、そうしましたのに。」
と北白川サナの母。

「お父さんのところまで行こうとすると、往復にかかる時間の方が滞在時間より長くなる。

お父さん達がうちに来ていたら、サナの時間を無駄にしなくて済んだ。」
と北白川サナの父。

北白川サナの父の言葉は、妻の言葉に追従しているだけで、深い考えがあるようは見えない。

「時間をかけてでも、サナはうちに来て話をしたかったんだ。」
と北白川サナの父方の祖父。

「話なら、電話やメッセージでもできるのに。」
と北白川サナの父。

北白川サナの父は、愛娘の抱えていた悩みの本質をどう考えているのか?

考えようとしていないのかもしれない。

北白川サナの父本人の性格か。

婿入りした環境で生きていくための処世術か。

「サナは、北白川くんと両親であるお前達の影響から逃げ出せる場所を求めていた。

サナがこの家にいては、それがかなわなかったんだ。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父の苛立ちは、孫娘のためを思って行動しなかった息子に向かっている。

「それでも、お義父さんとお義母さんがうちに来ていたら、出先でお義母さんが襲われることなんてなかったのではありませんか。」
と北白川サナの母。

北白川サナの母方の祖母は、娘の発言に顔色を失っている。

ぴーんと糸を張ったかのように、父方の祖父の顔が強張る。

「お父さんとお母さんの家で過ごすのに限界があったから、人通りの多い都会に出かけることになって、お母さんは。」
と北白川サナの父。

「お前達は、まだ自分の都合ばかり言うのか。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父の声の重たさが、これまでと一変した。

「お父さんとお母さんとサナが出かけた先で、お母さんは襲われたんだ。

何もないところに住んでいるから、孫娘と街中に出かけようなんて思い立って、お母さんは。」
と北白川サナの父。

北白川サナの父は、自分の父親に追い討ちをかける。

「お義父さんとお義母さんが、うちに来てサナと会っていたら、お義母さんは今もまだお元気だったはずです。」
と北白川サナの母。

北白川サナの母は、自分の言っていることは疑いようもなく良いことだと信じているように見える表情で、夫に同調した。

「妻がサナを庇って犠牲になったところは、サナが祖父母と高校生の孫らしいお出かけをしたいと望んだ場所だ。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父の声は、押し殺されていても、はっきりと聞こえる。

北白川サナの父方の祖父は、この場にいる誰よりも滑舌がいい。

「サナちゃんが行きたがった場所にお出かけされていたのですね。」
と北白川サナの母方の祖母。

北白川サナの母方の祖母は、両手で顔を覆ったままだ。

顔を上げづらいのか。

「両親が、高校生の娘に高校生らしい楽しみを与えてやっていたら。

高校生の孫娘は、わざわざ祖父母の家に誘いに来たりしないだろうが。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父が息子夫婦に伝えたいことは、最初から一貫している。

手を変え品を変え、繰り返されている。

「お母さんの亡くなった場所の話は、もっと前に聞きたかった。」
と北白川サナの父。

北白川サナの父の発言に、今言うのはそれか、と俺は思ったが、北白川サナの父方の祖父は、激昂したりしなかった。

「話したが、聞きやしなかったのは誰だ。

妻が亡くなったときに、泣くサナと一緒に話しただろう。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父は、怒りというものを表に出さずに話すことが習慣化しているのかもしれない。

「お祖母ちゃんが亡くなったショックで泣いているものと思っていました。」
と北白川サナの母。

北白川サナの母は、声と顔に悲痛さが漂わせている。

「妻が亡くなったショックでサナが泣いたことは、間違いない。

サナにとって、誰よりも頼れる人を亡くしたんだ。

両親に与えられなかった経験をしたいと孫に頼まれて、妻は満面の笑みで即座に引き受けた。」
と北白川サナの父方の祖父。

「お義父さんは、即座に引き受けなかったのですか?」
と北白川サナの母。

北白川サナの母の顔と声から悲痛さが消えた。

「田舎から出てきた年寄りが二人もいたら、サナも苦労すると思ったんだ。

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの三人で行くとサナが言うから、一緒に行った。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの両親は、母方の祖母をちらちら見ながら口をつぐんでいる。

母方の祖母も口をつぐんでいる。

母方の祖母が、孫娘に外出を誘われたことはなかったのかもしれない。

「結果的には行ってよかった。

行かなかったら、俺は一生後悔することになった。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナの父方の祖父は、目の前で居心地悪そうに母方の祖母の様子をうかがう息子夫婦を目の当たりにしても、微動だにしない。

北白川サナの遺族のこれまでの会話から。

北白川サナが亡くなるまでの道筋を俺は理解した。

「サナさんの父方のお祖母さんが亡くなられたのは、サナさんが一番心を開いていた家族だからではありませんか?」

北白川サナの父方の祖父は、体をゆっくりと俺に向ける。

俺は、背を伸ばす。

北白川サナの父方の祖父は、息子夫婦や嫁の母との会話中、基本的に俺を視界に入れているだけで、真正面から見ようとしていなかった。

「俺は妻とサナの三人でいた。サナの顔を見て、見つけたと反応したやつは、最初から俺の妻に狙いをつけていた。」
と北白川サナの父方の祖父。

北白川サナを絡め取ろうとした初手は、父方の祖母を北白川サナが視認できる範囲で排除すること、だった。
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