言霊の手記

第2章 憶測で語らない。可能性は否定しない。

27.牡丹の庭中学校がある市の中学生と小中学生の保護者は何を思い？牡丹の庭中学校の制服受け取り日に仕事の斡旋が決まった三人の少女の卒業後は？

「市内の牡丹の庭中学校以外の校区の子持ち家庭は。

牡丹の庭中学校の二の舞いにはなるまいと戦々恐々で警戒している。」
と萃。

「牡丹の庭中学校の校区に住んでいない中学生も、小中学生が家族にいる家庭も。

牡丹の庭中学校に通っていなくて良かった、なんて言っていられないという危機感を持っているんじゃないかな。」
と透雲

中学一年生の女子から女子へと渡り、牡丹の庭中学校のある市を出て、私の元に届いたのは。

牡丹の庭中学校の状況を何とかしたくても、手出しが出来ない大人の支援があったかもしれない。」
と奈美

「市内で発見されたら、情報が握りつぶされる。

手記を隠し通しながら、市外へ情報を出した。」
と透雲。

「奈美のところへ手記が渡ったのは、偶然じゃない可能性がある。」
と萃。

奈美は、気を引き締める。

「牡丹の庭中学校が第一級の危険地帯になったのは、市の施策から始まってから。」
と奈美。

「牡丹の庭中学校の校区にある団地に補助を出し、入居者を外部から集めてきて、牡丹の庭中学校の校区に押し込んだのが。

牡丹の庭中学校を第一級危険地帯へ変えるきっかけ。」
と透雲。

「保護者が失明に追い込まれた二つの家庭の三人の少女は、中学校を卒業してからどうしている？」
と奈美。

「中学校卒業までの生活は、牡丹の庭中学校が斡旋する稼ぎでまかない、それ以降も稼ぎが必要なら、相談に応じるということになっていた。」
と萃。

「中学校卒業後は、牡丹の庭中学校から斡旋される仕事を一度、辞めている？」
と奈美。

三人は足抜けできたのか、と奈美と透雲は、ひとまず安心する。

「三人とも、一度辞めたけれど、バイトを復活させた。」
と萃。

「中学校卒業後の昼日中のバイトだけでは、食べていけなくなった？」
と透雲。

三人は生活のために再開したのか、と透雲は萃に尋ねる。

「中学校卒業までの三人は、牡丹の庭中学校が間接的に管理していた。」
と萃。

「牡丹の庭中学校の生徒だった三人に仕事を斡旋する窓口は、牡丹の庭中学校。　

三人を直接管理していたのは、制服を受け渡しにきて写真撮影をした業者？」
と奈美。

「業者は、一番下。」
と萃。

誰かをボコボコにするのは、下っ端の仕事と透雲は呟く。

「中学校が管理をやめたら、三人の身にどんなことが起きたかというと。

三人はどこにいても、四六時中、狙われるようになった。」
と萃。

「狙われるようになったというのは。

牡丹の庭中学校のホームページを見た人達が、牡丹の庭中学校の校区内へ押し寄せた？」
と奈美。

透雲は、奈美の懸念にいやいや、と手を振った。

「三人を狙ったのは、牡丹の庭中学校の校区に住む人間だったんじゃない？」
と透雲。

「近隣住民？」
と透雲の。

「牡丹の庭中学校を卒業後の三人は。

管理している人間がいなくなったから、中学校にお金を払わなくてもタダでやれる、と考えた人間に日々追い回されるようになり。

卒業して一度縁を切ったはずの牡丹の庭中学校に、再び斡旋を頼んだ。」
と萃。

「三人の少女の事情を知っている住民は、うるさ方に殴られる心配がなくなったから、安心して襲いにいった？」
と奈美。

「肥溜めで鶴を探すのは大変だ。

三人は、次にどんな契約を結んだんだろう。」
と透雲。

「再びの契約が、最初の契約より条件が良くなることはない。

最初の契約では、牡丹の庭中学校に身を守るように要求する必要はなかった。」
と奈美。

「牡丹の庭中学校に、第三者から身を守る条件をのんでもらう必要があった三人の少女は。

最初よりも悪条件になっても、牡丹の庭中学校が出す条件をのんだだろうね。」
と透雲。

「三人が牡丹の庭中学校とした再契約の内容を確認することまではしていない。」
と萃。

「今は契約内容を知らなくても大丈夫。」
と透雲。

「中学校入学前に、牡丹の庭中学校の支配下におかれた三人の少女は、卒業して解放された後、どんな気持ちで再びの契約を申し出たのか。」
と奈美。

奈美は、静かに怒りを溜めている。

「牡丹の庭中学校によるマッチポンプじゃない？」
と透雲。

「どのへんが？」
と萃。

「牡丹の庭中学校から解放された後、四六時中襲われるようになった三人が。

襲われるのは嫌だから、前みたいに牡丹の庭中学校に守ってほしい、と牡丹の庭中学校に申し出てきて。

牡丹の庭中学校は、契約してほしければ牡丹の庭中学校の言うことに逆らうな、と三人の少女を言葉で縛る立場になるまでの流れが。」
と透雲。

「言葉で縛る方が、抑制力が働く。」
と萃。

「最初の契約時点では、三人とも、暴力を見せつけられて、恐怖に竦み、支配されることに抵抗できなかった。」
と奈美。

「三人の少女が、中学校入学前の契約を拒否していたら？

保護者の怪我は、もっと増えた。」
と萃。

「支配されていない牡丹の庭中学校の同級生を横目に見ながらの三年間。

契約解除という考えが芽生えた三人の少女の反抗心をポッキリと折った。

再契約した三人の少女達は、牡丹の庭中学校に逆らおうとはもう考えないんじゃないかな。」
透雲。

「牡丹の庭中学校が、校区の住人を焚き付けて、三人の少女を襲わせたかどうかの事実についての確認は、とっていない。

住人は規律を重視しており、牡丹の庭中学校の働きかけがあろうとなかろうと、中学校を卒業したばかりの少女を襲うような人間ではない、という判断については棚上げする。」
と萃。