32 / 121
第2章 憶測で語らない。可能性は否定しない。
33.市は牡丹の庭中学校の校区の団地の再開発を断念した過去がある?牡丹の庭中学校に進学しようとしない牡丹の庭小学校の児童がいた場合、市は?
しおりを挟む
「市議の質問は、市長の市政の一貫。
施策は失敗していない、不足していたところは、もうケアしたから、満点、となるような答弁をするための質問。
質問したのは、市長サイドの市議だから。」
と萃。
ああ、と唸る透雲。
「牡丹の庭中学校の校区の団地から入居者が出ていって入居希望者がなかったのは。
入居する気にならない理由か、その団地に入居を決めるまでには至らなかった原因として、何人にも共通する理由があったんじゃないのか。
せめて、牡丹の庭中学校の校区から人が出ていったら戻らない原因を突き止めていたら。」
と透雲。
「土地の開発の仕方に問題があるから人が出ていくんだという根本的な問題に気付いて、全部壊して再開発に舵を切れるタイミングは、団地に入居者を増やす前にあったんじゃない?」
と奈美。
「タイミングはあった。
団地の取り壊しと再開発は断念した、という発表が市から数度出ている。」
と萃。
「現状維持した結果、牡丹の庭中学校の団地の空洞化に拍車がかかる、と。」
と奈美。
「最終的に市が下した決断は、人が出ていくことを許可しない方向に舵を切ること。」
と萃。
「牡丹の庭中学校の校区は、かつての市の仕事を否定しない人達が、面倒な仕事を増やさないようにした傑作か。」
と透雲。
透雲は、ふー、と息を吐く。
奈美は、ここで市長と市議の仕事談議を打ち切ることにした。
「市が、転出手続きの引き伸ばしをする期間。
保護者は、市役所へ日参することにならない?
市のやり方が通るのはなぜ?」
と奈美。
「中学校にあがる年齢の子どもだけを親戚宅や祖父母宅へ送り出すことについて、虐待の調査が必要になると市からストップがかかる。」
と萃。
「どの口が、と何人も言ったんじゃないかな。」
と透雲。
「保護者は市役所からの急な呼び出しも含めて、市役所の動向を無視できない。
子どもを牡丹の庭中学校以外へ進学させるつもりでいるうちは。」
と萃。
透雲は、眉をひそめる。
「大人の仕事って、何日も休んでいいものじゃないよね。」
と透雲。
「市の対応に保護者が我慢し続けられるかどうか。
精神的な我慢よりも、仕事の調整が難しくなって降参する?」
と奈美。
「大人が仕事をクビになったり、減給になって稼ぎがない、となったら、家族が生活に困る。」
と透雲。
透雲のイメージする大人は、仕事をしてお金を稼ぐ人だ。
「同時に。
住所を移そうとした段階で、親戚宅、祖父母宅、それぞれの近隣に、悪評がばら撒かれたり、小さな不幸が相次ぐ。」
と萃。
「牡丹の庭中学校のある市だけで出来ること?」
と透雲。
「ばら撒かれた悪評に諦めずに転出を強行しようとすると。
引っ越し先の親戚宅や祖父母宅に、子どもを引き受けられない事情が生じる。」
と萃。
「住まいは移さずに小学校受験や中学校受験へ、という逃げ道もないということ?」
と透雲。
「牡丹の庭小学校の外で行われた、牡丹の庭小学校に在籍する小学生が受けた中学受験への妨害のうち、確認がとれたものは、以下の四つ。
受験用の塾への通塾の妨害。
試験日に試験を受けさせない。
合格していたら合格辞退を強要。
合格後に、入学金の支払いをさせなかったり、説明会に行かせなかったということも起きている。」
と萃。
「監視だけじゃなくて、実力行使に出ている?」
と奈美。
「家の中にも乗り込んできて妨害している?
家の周りで張っていて、小学生が家を出ると、目的地と違うところに連れて行かれたりは?」
と透雲。
「ある。塾に行かせずに、塾から帰る時間まで説得してから家に送り届ける。」
と萃。
「牡丹の庭小学校が、牡丹の庭中学校の校区にある小学校だから、まかり通っている。」
と透雲。
「小学校から直接塾へ行こうとすると?」
と奈美。
「小学校のクラスメイトが妨害に協力する。」
と萃。
「牡丹の庭中学校の校区の団地に入居した子持ち家庭が、牡丹の庭中学校では多数派になっているんだから、同じ校区にある牡丹の庭小学校の児童数で少数派になることはない。」
と透雲。
「小学校のクラスメイトが協力するくらいなら、小学校の中では何が起きている?」
と奈美。
「嫌がらせ。」
と萃。
「嫌がらせ?無視とか?」
と透雲。
「無視、連絡事項の連絡がない。
提出物をはじめとする私物の紛失、汚損。
共有物の紛失や破壊の責任の押し付け。
大怪我はしなくても、擦り傷や打撲は毎日。」
と萃。
「例えば?」
と奈美。
「牡丹の庭小学校では、毎年児童が運動会の入場門を手作りする。」
と萃。
「入場門を手作りするのは、本格的だね。
私のところは、小学校も中学校も、飾り花を作って土台に貼り付ける。完成まで一日もかからない。」
と透雲。
「透雲の中学校の入場門の土台作りはどうしている?」
と奈美。
「土台は、保護者の有志の方の力作を使う。
絵が得意な有志の方が張り切ってくれた年は、絵や色塗りが凝っているから、飾り花は風景になるようにつける。
凝っていないときは、虹の七色になるらしい。」
と透雲。
入場門には、学校の個性が出る、と呟いてから、萃に話の続きを促す奈美。
「牡丹の庭小学校のその年の中学受験希望者がふざけて入場門にぶつかり、入場門の一部が破損した事例を話す。」
と萃。
「入場門にぶつかっている人は見たことがない。
入場門は、くぐるもの。
元より、ぶつかるためには作っていない。
ぶつかれば壊れもするかな。」
と透雲。
「学年裁判にかけられた当該中学受験希望の児童は。
全校生への謝罪の意味を込めて運動会までに一人で破損箇所の修復をすること、と。
運動会のための自主的な手伝いを申し出ること、を言い渡されている。
両方が滞りなく済んだため、当該児童の反省を認めた事例がある。」
と萃。
萃のスラスラとした説明を聞いていた奈美と透雲は、えっと驚いて顔を見合わせて、ハイっと挙手した。
「学年裁判とは?」
と透雲。
「牡丹の庭小学校で裁判?」
と奈美。
施策は失敗していない、不足していたところは、もうケアしたから、満点、となるような答弁をするための質問。
質問したのは、市長サイドの市議だから。」
と萃。
ああ、と唸る透雲。
「牡丹の庭中学校の校区の団地から入居者が出ていって入居希望者がなかったのは。
入居する気にならない理由か、その団地に入居を決めるまでには至らなかった原因として、何人にも共通する理由があったんじゃないのか。
せめて、牡丹の庭中学校の校区から人が出ていったら戻らない原因を突き止めていたら。」
と透雲。
「土地の開発の仕方に問題があるから人が出ていくんだという根本的な問題に気付いて、全部壊して再開発に舵を切れるタイミングは、団地に入居者を増やす前にあったんじゃない?」
と奈美。
「タイミングはあった。
団地の取り壊しと再開発は断念した、という発表が市から数度出ている。」
と萃。
「現状維持した結果、牡丹の庭中学校の団地の空洞化に拍車がかかる、と。」
と奈美。
「最終的に市が下した決断は、人が出ていくことを許可しない方向に舵を切ること。」
と萃。
「牡丹の庭中学校の校区は、かつての市の仕事を否定しない人達が、面倒な仕事を増やさないようにした傑作か。」
と透雲。
透雲は、ふー、と息を吐く。
奈美は、ここで市長と市議の仕事談議を打ち切ることにした。
「市が、転出手続きの引き伸ばしをする期間。
保護者は、市役所へ日参することにならない?
市のやり方が通るのはなぜ?」
と奈美。
「中学校にあがる年齢の子どもだけを親戚宅や祖父母宅へ送り出すことについて、虐待の調査が必要になると市からストップがかかる。」
と萃。
「どの口が、と何人も言ったんじゃないかな。」
と透雲。
「保護者は市役所からの急な呼び出しも含めて、市役所の動向を無視できない。
子どもを牡丹の庭中学校以外へ進学させるつもりでいるうちは。」
と萃。
透雲は、眉をひそめる。
「大人の仕事って、何日も休んでいいものじゃないよね。」
と透雲。
「市の対応に保護者が我慢し続けられるかどうか。
精神的な我慢よりも、仕事の調整が難しくなって降参する?」
と奈美。
「大人が仕事をクビになったり、減給になって稼ぎがない、となったら、家族が生活に困る。」
と透雲。
透雲のイメージする大人は、仕事をしてお金を稼ぐ人だ。
「同時に。
住所を移そうとした段階で、親戚宅、祖父母宅、それぞれの近隣に、悪評がばら撒かれたり、小さな不幸が相次ぐ。」
と萃。
「牡丹の庭中学校のある市だけで出来ること?」
と透雲。
「ばら撒かれた悪評に諦めずに転出を強行しようとすると。
引っ越し先の親戚宅や祖父母宅に、子どもを引き受けられない事情が生じる。」
と萃。
「住まいは移さずに小学校受験や中学校受験へ、という逃げ道もないということ?」
と透雲。
「牡丹の庭小学校の外で行われた、牡丹の庭小学校に在籍する小学生が受けた中学受験への妨害のうち、確認がとれたものは、以下の四つ。
受験用の塾への通塾の妨害。
試験日に試験を受けさせない。
合格していたら合格辞退を強要。
合格後に、入学金の支払いをさせなかったり、説明会に行かせなかったということも起きている。」
と萃。
「監視だけじゃなくて、実力行使に出ている?」
と奈美。
「家の中にも乗り込んできて妨害している?
家の周りで張っていて、小学生が家を出ると、目的地と違うところに連れて行かれたりは?」
と透雲。
「ある。塾に行かせずに、塾から帰る時間まで説得してから家に送り届ける。」
と萃。
「牡丹の庭小学校が、牡丹の庭中学校の校区にある小学校だから、まかり通っている。」
と透雲。
「小学校から直接塾へ行こうとすると?」
と奈美。
「小学校のクラスメイトが妨害に協力する。」
と萃。
「牡丹の庭中学校の校区の団地に入居した子持ち家庭が、牡丹の庭中学校では多数派になっているんだから、同じ校区にある牡丹の庭小学校の児童数で少数派になることはない。」
と透雲。
「小学校のクラスメイトが協力するくらいなら、小学校の中では何が起きている?」
と奈美。
「嫌がらせ。」
と萃。
「嫌がらせ?無視とか?」
と透雲。
「無視、連絡事項の連絡がない。
提出物をはじめとする私物の紛失、汚損。
共有物の紛失や破壊の責任の押し付け。
大怪我はしなくても、擦り傷や打撲は毎日。」
と萃。
「例えば?」
と奈美。
「牡丹の庭小学校では、毎年児童が運動会の入場門を手作りする。」
と萃。
「入場門を手作りするのは、本格的だね。
私のところは、小学校も中学校も、飾り花を作って土台に貼り付ける。完成まで一日もかからない。」
と透雲。
「透雲の中学校の入場門の土台作りはどうしている?」
と奈美。
「土台は、保護者の有志の方の力作を使う。
絵が得意な有志の方が張り切ってくれた年は、絵や色塗りが凝っているから、飾り花は風景になるようにつける。
凝っていないときは、虹の七色になるらしい。」
と透雲。
入場門には、学校の個性が出る、と呟いてから、萃に話の続きを促す奈美。
「牡丹の庭小学校のその年の中学受験希望者がふざけて入場門にぶつかり、入場門の一部が破損した事例を話す。」
と萃。
「入場門にぶつかっている人は見たことがない。
入場門は、くぐるもの。
元より、ぶつかるためには作っていない。
ぶつかれば壊れもするかな。」
と透雲。
「学年裁判にかけられた当該中学受験希望の児童は。
全校生への謝罪の意味を込めて運動会までに一人で破損箇所の修復をすること、と。
運動会のための自主的な手伝いを申し出ること、を言い渡されている。
両方が滞りなく済んだため、当該児童の反省を認めた事例がある。」
と萃。
萃のスラスラとした説明を聞いていた奈美と透雲は、えっと驚いて顔を見合わせて、ハイっと挙手した。
「学年裁判とは?」
と透雲。
「牡丹の庭小学校で裁判?」
と奈美。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる