言霊の手記

かざみはら まなか

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第2章 憶測で語らない。可能性は否定しない。

33.市は牡丹の庭中学校の校区の団地の再開発を断念した過去がある?牡丹の庭中学校に進学しようとしない牡丹の庭小学校の児童がいた場合、市は?

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「市議の質問は、市長の市政の一貫。

施策は失敗していない、不足していたところは、もうケアしたから、満点、となるような答弁をするための質問。

質問したのは、市長サイドの市議だから。」
と萃。

ああ、と唸る透雲。

「牡丹の庭中学校の校区の団地から入居者が出ていって入居希望者がなかったのは。

入居する気にならない理由か、その団地に入居を決めるまでには至らなかった原因として、何人にも共通する理由があったんじゃないのか。

せめて、牡丹の庭中学校の校区から人が出ていったら戻らない原因を突き止めていたら。」
と透雲。

「土地の開発の仕方に問題があるから人が出ていくんだという根本的な問題に気付いて、全部壊して再開発に舵を切れるタイミングは、団地に入居者を増やす前にあったんじゃない?」
と奈美。

「タイミングはあった。
団地の取り壊しと再開発は断念した、という発表が市から数度出ている。」
と萃。

「現状維持した結果、牡丹の庭中学校の団地の空洞化に拍車がかかる、と。」
と奈美。

「最終的に市が下した決断は、人が出ていくことを許可しない方向に舵を切ること。」
と萃。

「牡丹の庭中学校の校区は、かつての市の仕事を否定しない人達が、面倒な仕事を増やさないようにした傑作か。」
と透雲。

透雲は、ふー、と息を吐く。

奈美は、ここで市長と市議の仕事談議を打ち切ることにした。

「市が、転出手続きの引き伸ばしをする期間。

保護者は、市役所へ日参することにならない?

市のやり方が通るのはなぜ?」
と奈美。

「中学校にあがる年齢の子どもだけを親戚宅や祖父母宅へ送り出すことについて、虐待の調査が必要になると市からストップがかかる。」
と萃。

「どの口が、と何人も言ったんじゃないかな。」
と透雲。

「保護者は市役所からの急な呼び出しも含めて、市役所の動向を無視できない。

子どもを牡丹の庭中学校以外へ進学させるつもりでいるうちは。」
と萃。

透雲は、眉をひそめる。

「大人の仕事って、何日も休んでいいものじゃないよね。」
と透雲。

「市の対応に保護者が我慢し続けられるかどうか。

精神的な我慢よりも、仕事の調整が難しくなって降参する?」
と奈美。

「大人が仕事をクビになったり、減給になって稼ぎがない、となったら、家族が生活に困る。」
と透雲。

透雲のイメージする大人は、仕事をしてお金を稼ぐ人だ。

「同時に。

住所を移そうとした段階で、親戚宅、祖父母宅、それぞれの近隣に、悪評がばら撒かれたり、小さな不幸が相次ぐ。」
と萃。

「牡丹の庭中学校のある市だけで出来ること?」
と透雲。

「ばら撒かれた悪評に諦めずに転出を強行しようとすると。

引っ越し先の親戚宅や祖父母宅に、子どもを引き受けられない事情が生じる。」
と萃。

「住まいは移さずに小学校受験や中学校受験へ、という逃げ道もないということ?」
と透雲。

「牡丹の庭小学校の外で行われた、牡丹の庭小学校に在籍する小学生が受けた中学受験への妨害のうち、確認がとれたものは、以下の四つ。

受験用の塾への通塾の妨害。

試験日に試験を受けさせない。

合格していたら合格辞退を強要。

合格後に、入学金の支払いをさせなかったり、説明会に行かせなかったということも起きている。」
と萃。

「監視だけじゃなくて、実力行使に出ている?」
と奈美。

「家の中にも乗り込んできて妨害している?

家の周りで張っていて、小学生が家を出ると、目的地と違うところに連れて行かれたりは?」
と透雲。

「ある。塾に行かせずに、塾から帰る時間まで説得してから家に送り届ける。」
と萃。

「牡丹の庭小学校が、牡丹の庭中学校の校区にある小学校だから、まかり通っている。」
と透雲。

「小学校から直接塾へ行こうとすると?」
と奈美。

「小学校のクラスメイトが妨害に協力する。」
と萃。

「牡丹の庭中学校の校区の団地に入居した子持ち家庭が、牡丹の庭中学校では多数派になっているんだから、同じ校区にある牡丹の庭小学校の児童数で少数派になることはない。」
と透雲。

「小学校のクラスメイトが協力するくらいなら、小学校の中では何が起きている?」
と奈美。

「嫌がらせ。」
と萃。

「嫌がらせ?無視とか?」
と透雲。

「無視、連絡事項の連絡がない。
提出物をはじめとする私物の紛失、汚損。
共有物の紛失や破壊の責任の押し付け。
大怪我はしなくても、擦り傷や打撲は毎日。」
と萃。

「例えば?」
と奈美。

「牡丹の庭小学校では、毎年児童が運動会の入場門を手作りする。」
と萃。

「入場門を手作りするのは、本格的だね。

私のところは、小学校も中学校も、飾り花を作って土台に貼り付ける。完成まで一日もかからない。」
と透雲。

「透雲の中学校の入場門の土台作りはどうしている?」
と奈美。

「土台は、保護者の有志の方の力作を使う。

絵が得意な有志の方が張り切ってくれた年は、絵や色塗りが凝っているから、飾り花は風景になるようにつける。

凝っていないときは、虹の七色になるらしい。」
と透雲。

入場門には、学校の個性が出る、と呟いてから、萃に話の続きを促す奈美。

「牡丹の庭小学校のその年の中学受験希望者がふざけて入場門にぶつかり、入場門の一部が破損した事例を話す。」
と萃。

「入場門にぶつかっている人は見たことがない。

入場門は、くぐるもの。

元より、ぶつかるためには作っていない。

ぶつかれば壊れもするかな。」
と透雲。

「学年裁判にかけられた当該中学受験希望の児童は。

全校生への謝罪の意味を込めて運動会までに一人で破損箇所の修復をすること、と。

運動会のための自主的な手伝いを申し出ること、を言い渡されている。

両方が滞りなく済んだため、当該児童の反省を認めた事例がある。」
と萃。

萃のスラスラとした説明を聞いていた奈美と透雲は、えっと驚いて顔を見合わせて、ハイっと挙手した。

「学年裁判とは?」
と透雲。

「牡丹の庭小学校で裁判?」
と奈美。
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